タグ別アーカイブ: 建築家

明治の女性と炭火アイロン‐1785‐

 3月下旬、ユキヤナギが咲きだしたなと思っていたら、あっという間に今日から4月。

  新年度が始まりました。

 今日が入学式なら何とか桜も持ちそうです。

 会社の近くで、随分立派な建物を見つけました。

 前川國男を連想させるレンガ色の建物は、平野区画整理記念会館とあります。

 会社の近所なのですが、この道は通ったことが無かったよう。

 中に入って尋ねてみると、区画整理事業が終わった際に残った予算で建てられたもので、簡単に言えば貸し部屋業をしていますと。

 南面したホールは、この規模の吹き抜け。 

 開口部から、平野郷の模型がちらと見えており、それもあって入ってみたくなったのです。

 ホールには所せましと展示があります。

 脱穀機は数十年間に、この地域で実際に使われていたものだそう。

 こちらは長原古墳群のコーナー。

 実際に出土した子供用の棺です。

 一番目を引いたのが近代の生活用品の展示群です。

 まずは炭を入れて暖をとる炬燵。

 足焙りは炬燵と同じ使い方でしょう。

 火鏝は灰の中で熱し、布類のしわを伸ばす道具です。

 こちらは炭火アイロンとあります。

 明治頃のもので、中に炭を入れ、更にその下には水を入れて使用したのだそうです。

 私が興味津々なのを見て、館の方が実際に開けてくれました。
 

 2階も案内してくれたのですが、吹抜けに面する廊下にはこの立派な機織り機が置いてあります。

 何故こんな場所に押しやられているのか尋ねてみました。以前は右下に見えるキューブ状の空間が展示室だったそうです。

 しかし館の運営を考え、賃貸しすることになったということでした。

 面白い展示が沢山ありましたが、日当りが良いので劣化するのでは、と危惧していると。経営が成り立ってこそ存続できる訳で、何となく微妙な気持ちで会社に戻ったのです。

 日々のアイロン掛けを妻にやいやい言わなくて良いように、Yシャツは多めに買っています。

 100年前の炭火アイロンと比べると断然性能は良いはずですが、それでも時間がない、時間がないと。

 明治の女性はそんな事を言っていたのでしょうか。

 多分言っていたのだと思います。で、男のほうはこう思っていたはずです。

 「火鏝よりは随分便利になっただろうに」と。

  もし、小声でもそんな事を言ったなら間違いなくこうなります。

 「それなら自分でしなさいよ!」

 それはそうです。この自由で平等な時代、女性がアイロンを掛けるという決まりはありません。

 ですので、しっかり働いて沢山Yシャツを買います。間違っても「早くアイロンをかけてよ」と言わなくてよいように。

 Yシャツ代、税金、子供の学費と、働き甲斐はおつりがくるくらいあります。
 
 今年の標語は「絶対に下がらない」。2021年度は絶対に下がらない覚悟です。 

■■■1月27日 『Best of Houzz 2021』「中庭のある無垢な珪藻土の家」が受賞

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【News】
■12月28日発売『suumoリフォーム(関西版)』にインタビュー記事掲載
■10月23日『homify』の特集記事に「阿倍野の長屋」掲載
■9月11日発売『リフォームデザイン2020』「回遊できる家」掲載

■2017年11月27日ギャラクシーブックスから出版『建築家と家を建てる、という決断』守谷昌紀がamazon <民家・住宅論>で1位になりました

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◇一級建築士事務所 アトリエ m◇
建築家 守谷昌紀のゲツモク日記
アトリエmの現場日記

かわいい不分律‐1782‐

 金曜日には、大阪でも桜の開花宣言がでました。

 ソメイヨシノの満開はもう少し先のようですが、街のあちこちで花が開き始めました。

 濃いピンクはヒガンザクラの一種でしょうか。
 
 遅咲きの八重桜まで合わせて、1ヵ月くらいは楽しませて貰えそうです。
 

 土手に咲く野草も色鮮やか。

 中でも、淡い紫のハナニラがお気に入りです。

 ニラに似た匂いからついた名のようで、あくまで見た目重視。

 別名には、イエス・キリストの誕生を知らせたという「ベツレヘムの星」を持つという記事もありました。その高貴な名に恥じない美しさなのです。

 翌土曜日は春分の日。太陽が真東から顔をだしました。

 大阪なら東は生駒山です。

 日の出の時刻は6:02となっていましたが、実際は6:30近くでした。

 もしかすると、山の高さは計算に入っていないのかもしれません。

 この道は東西に走っているので、影も道に真っすぐに伸びています。

 暦のない太古の時代でも、大阪平野なら生駒山と正反対に伸びる影を見て「そろそろ暖かくなってくるな」と分かったでしょう。

 最も分かり易い春分、秋分の日を中心に、1年のスケジュールを考えたはずです。

 その日を、煩悩の川を越えた先にある悟りの世界、「彼岸」と例えたことが、どれ程特別な日だったかを想像させてくれるのです。

 春分の日には、娘が卓球の試合に出ていました。

 未経験者の新人戦という位置付けで、優勝を狙えるかもと頑張っていたのですが、この時期なので観戦は不可。

 残念ながら準優勝だったのですが、いきなり優勝よりよかったかもしれません。

 勉強もその位頑張ってくれると嬉しい……というと嫌味になってしまうのですが。

 面白いことを教えて貰いました。

 試合の後は、どんな展開だったか順に聞くのですが、11対0という試合がありませんでした。

 卓球は11点先取ですが、相手を0で終わらせない不分律(unwritten rules)があるそうです。

 実力差がかなりある時に限られる訳ですが、テニスで言うラブゲームは駄目で、何かしらの方法で相手に1点を取らせてあげるのです。

 アメリカのMLB(メジャー・リーグ・ベースボール)にも多くの不分律(unwritten rules)が存在します。

 大差の時に、3ボールから打ったり盗塁をしてはいけないや、ホームランを打った後にバットを投げる等のオーバージェスチャーもご法度です。

 もしそういった行為をすると、その後主力バッターに対してデッドボールでの報復行為があり、それが暗に認められているのです。

 卓球においてなら、張本君の実力は間違いないと思いますが、点数が入った時などに大きな声を上げるのも、似た行為だと感じていました。

 長男にそう伝えると「勝てば何でもいいやん」と言うので、「勝つことも相手がいるからできることで、自分が優位に立った時にそういう行為をするのは、スポーツマンとして駄目だと思う」と伝えました。

 すると長男は「お父さんが張本君より強いなら分かるけど、そんなん自由やん」と。
 
 その通りですが、だからトップ選手は自分に厳しくなければならないのです。

 多くの子供が見ており、その影響は大きいものがあります。しかし、卓球だけではなく、強いという価値はいつか衰え、無くなります。

 はっきり言えば、世の中に良い影響を与えないなら、プロ選手として存在する価値はないと思っているのです。

 アマチュアとは言え、もしかすると優勝できるかもと言う試合で、娘も真剣だったはずです。

 ある試合の終盤、相手に1点も奪われていないという状況になったとします。

 すると「あっ、失敗した!」のような感じで、わざとネットに掛けたり、オーバーしたりするのです。

 全く知らなかったので、その情景を想像すると笑ってしまいました。

 迷いや苦しみのない悟りの世界を彼岸とするなら、多くの人はたどり着くことの出来ない理想の世界です。

 しかし、卓球におけるかわいい不分律は、彼岸の景色の一端をうかがわせてくれるもののような気がするのです。 

■■■1月27日 『Best of Houzz 2021』「中庭のある無垢な珪藻土の家」が受賞

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大阪ハコもの日和‐1778‐

 昨日は心斎橋に出ていました。

 交差点の正式名称は「新橋」ですが、「心斎橋」のほうが通りは良いでしょう。

 南を見ると、左側に大丸が見えます。

 その先には、ナンバヒップス。

 パチンコ施設ですが、設計者は高松伸さんです。

 4年前に偶然会食する機会を頂きました。

 大規模建築であればあるほど、オリジナリティを発揮する建築家と言って良いと思います。

 中央の砂時計のような空間には、当初はフリーフォールがあり衝撃的でした。

 反対に「新橋」から北を見ると、左手に黒いビルが見えます。

 マリオット・インターナショナルが展開するラグジュアリーブランド「W大阪」は間もなく開業のようです。

 デザイン主導で設計するという言葉通り、なかなかに切れ味鋭いデザイン。

 設計は日本設計ですが、設計顧問に安藤忠雄が就いているとのことで、オープンが楽しみなところです。

 敷地調査にやってきたので辺りを歩いたのですが、周辺は大阪屈伸の高級ブランド街でもあります。

 ファッションだけでなくフェラーリの店舗もありました。

 W大阪の足下まで来ました。

 ホテルはある程度最大公約数をとらざるを得ないケースが殆どだと思います。

 オープン前なので、これが最終形なのか分かりませんが、内部が全く見えないとはなかなか思い切っているなと感じていました。

 それで今日調べてみると、そのコンセプトが分かったのです。

 「ハコもの」という言葉はバブルの弊害と言ったニュアンスが含まれていると思います。

 また住宅は指さない言葉でしょうか。

 ただ、建物は植物ではないので勝手に生えてはきません。間違いなく誰かの意思と意図が反映されているのです。

 そのまま御堂筋の西へと入っていくと、オーガニックビルが見えてきます。

 大阪で最も面白いビルのひとつでしょう。

 この日も、小牧ナンバーの車を止めて一眼レフで撮影している女性が居ました。

 設計はイタリア人建築家、ガエターノ・ペッシェ。

 他に類がないように、日本人ではここまではなかなか思い切れないことを、施主である昆布の老舗、小倉屋山本の経営者は見抜いていたのでしょうか。

 施主の叔母が、作家・山崎豊子さんと知り、やはり血筋というものはあるのだろうと思っていました。

 色合い、コンセプトとも唯一無二のものだと思います。

 同じ創り手として、名作には多少嫉妬心が入るのですが、ここまでくると全くそういった感情が湧いてこないから不思議です。

 久し振りにこの辺りも歩きました。

 私も一眼レフを持っていたので、職業柄パシャパシャとやってしまいます。

 あんなところにmarimekkoの店舗があったのか、とか。

 このあたり、アメリカ村の北にあるのでカナダ村と呼ばれていたこともあるそうです。

 フェラーリの店舗から一本中に入ると300円の餃子屋さんまで。

 これこそがミナミの真骨頂でしょう。

 写真を撮っていて思ったのですが、良い季節は御堂筋のイチョウが写るので、多少日が長くなった今こそ、ハコもの撮影日和かもしれません。

 15年程前に受け入れたオープンデスク生にこう言われたことがあります。

 「住宅だけを設計だけしている人を、僕は建築家だとは思いません」

 カチンときましたが、反論するのも大人げないので「そうだね。それが君の考え方ならそうなんだろうね」と答えました。

 その彼は、大手ディベロッパーにアルバイトとして就職したことを喜んでいました。1年間頑張れたら、正社員に昇格するというオプション付きだそうです。

 仕事を始めてすぐに大きな仕事がくることはありません。

 どんなに小さなリノベーションの仕事でも、私の仕事を求めて下さり、その条件を受け入れてくれたクライアントの為に、命以外の全てを捧げて来たつもりです。

 少しずつ認知して頂き、店舗、クリニック、オフィスなど、住宅以外の仕事も依頼頂くようになりました。

 住宅がハコものより簡単であることはありません。懸命に働いたお金で建てる訳ですから、非常にシビアな目で設計者も選ばれるはずです。

 その方々に選んで貰えるよう、自分なりに精進してきたつもりです。

 建築家と言う国家資格はありません。それは誰かに与えて貰うものではなく、宣言するものであり、生き方です。

 元オープンデスク君。今君が建築家なら、今度はミナミのハコもので勝負だ。心しておきなさい。

 そんな事を今でも覚えていることが大人げないのかもしれません。

 ただ、もしかすると本気で反論した方が、彼の為には良かったのかもと思いだすこともあるのです。

■■■1月27日 『Best of Houzz 2021』「中庭のある無垢な珪藻土の家」が受賞

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■12月28日発売『suumoリフォーム(関西版)』にインタビュー記事掲載
■10月23日『homify』の特集記事に「阿倍野の長屋」掲載
■9月11日発売『リフォームデザイン2020』「回遊できる家」掲載
■5月16日『homify』(英語)の特集記事に「下町のコンクリートCUBE」掲載
■5月10日『Houzz』の特集記事に「阿倍野の長屋」掲載
■4月8日『Sumikata』東急リバブル発行に巻頭インタビュー掲載

■2017年11月27日ギャラクシーブックスから出版『建築家と家を建てる、という決断』守谷昌紀がamazon <民家・住宅論>で1位になりました

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さよなら、青春のSAVAGE‐1776‐

 今日、関西2府1県の緊急事態宣言が解除されました。
 
 様々なリスク、懸念があることを良く理解した上で、まずは前向き気持ちで受け止めたいと思います。

 2017年の12月、17歳から30年乗ったLOWEの14フィートを廃船にしました。

 最近は、2004年から17年連れ添ったSAVAGE(サベージ)の12フィートをどうするか考えていました。

 海、湖兼用でLOWEの14フィートを使っていましたが、ようやくバスフィッシング専用のボートを手に入れたのが33歳の時。
 
 それがSAVAGEの12フィートで、当初はLOWEとエンジンを兼用していたので、40万円位だったはずです。

 学生時代から、ボートは車の上に積むものだと思っていました。

 ところが世の中はトレーラー時代に入っていき、カートップで湖にやって来る人は少数派に。

 私の車は、ハイラックスサーフに始まり、ディスカバリーと背の高い車ばかりで、積み下ろしでギックリ腰になったこともあります。

 そんなこともあり、トレーラーのバスボート、EAGLEに乗り換えたのが2018年。47歳の時です。

 SAVAGEの12フィートはめっきり出番が減ってしまいました。

 家の建て替え計画においても、2台のボートを置くスペースは勿体ないかなと思い、手放すことにしたのです。 

 この1年で2回も車を擦ってしまい……その度に修理して貰っている、サイトウ自動車サービスの社長に相談してみました。

 「売ってみましょうか」と言ってくれたのでお願いした次第です。

 ディスカバリーは車重が3tonあり、それまでメンテナンスをお願いしていた工場ではジャッキアップが難しいと言われました。

 どこか良いところが無いかなと探していた時、池原ダムつながりで知ったのがサイトウ自動車サービスでした。

 「僕の車も見て貰えますか?」と聞くと社長が「ウチはフェラーリまで見てるので、どんな車でも大丈夫ですよ」と。

 いつもニコニコと明るい人ですが、社長自ら運転して引き取りに来てくれました。
 
 自動車工場も繁盛していますが、その向かいにある「JUNKY’S」というルアーショップも経営しています。
 
 facebookページの方には中古ボート情報も。ちなみに釣りの腕も勿論のことです。

 同じくオーストラリア製のステーサーが人気だそうですが、そこは社長の人柄で宜しくお願いします。

 長男を初めて乗せたのは、2009年で4歳の時。

 雨の中での釣りはちょっと早かったと反省しました。

 それで6歳くらいから再開したのですが、何より昼に食べるカレーヌードルを楽しみにしていました。

 ちなみにエンジンはホンダの4サイクルで、セルモーターを付けています。よってスターターロープを引っ張る必要はありません。

 最近でこそあまり付き合ってくれませんが、娘も7歳くらいから連れていきました。

  結構釣ります。 

 長男が最後に乗ったのは、2017年の7月でした。

 車やボートを手放す時、その期間を振り返りますが、17年という時間はやはり短いものではないのがよく分かるのです。 

 もともと付いていた魚探もEAGLEと言いますが「これは使い物になりませんね」と社長。

 これならどうですがと、昨年までEAGLEに付けていたLOWRANCEの魚探も渡してあります。  

 どういうシステムになるかは全てお任せですが、サイドスキャンも搭載しており、ベイトフィッシュがボートのどちら寄りにあるかも画像化されます。

 右上の画面、中央より左のベイトボールが大きいのが分かるでしょうか。

 底だけでなく、左右方向にもソナーが発信されているのです。

 私が最後に乗ったのは、2017年12月でした。

 最期の乗船で、20年振りの60cmオーバーとはなりませんでしたが、そこに迫るサイズでした。

 家でも、車でも「ツキ」は大切なはずです。

 人は変わる。だから酒の味は変えるな。そうすればお客様がバーに来た時、昔の自分に合える。

 バーの漫画にあるセリフだと教えて貰いました。

 車やボートも同じようなことかもしれません。変わっていく自分達を、変わらない彼らが、鮮やかに蘇らせてくれるのです。

 33歳からの18年ですが青春と書いてみます。
 
 さよなら、青春のSAVAGE。心からありがとうを言うよ。

 誰か釣りが好きな人に貰って貰えると、本当に嬉しいのです。

■■■1月27日 『Best of Houzz 2021』「中庭のある無垢な珪藻土の家」が受賞

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深紅の花は、ボケの花‐1774‐

 長男も間もなく高校2年生となり、大学進学のことを意識せざるを得ません。

 日曜日は朝から、妻と塾の説明を聞きに行くと。

 私は計画地をいくつか回る予定だったので、調査終わりで梅田まで迎えに行きました。

 娘は私に同行して貰ったので、テイクアウトの弁当でも買って大阪城公園に寄ろうかとなりました。

 昨日は快晴。

 OBPのクリスタルタワーも、青空を映して宝石のようです。

 この建物は、見る角度によって全く違う景色になります。

 真東から観るのが一番美しいのですが、これには長男も驚いていました。

 大阪城公園の魅力は色々ありますが、大きなお濠がある景色は他にはないものでしょう。

 穏やかな水面が、石垣の美しさを際立たます。

 ただ、水あるところには羽虫あり……

 気温は20℃まで上がり、人も虫も外に出ずにはおれないのです。

 月末には宣言が解除されるという話もありますが、感染防止と日々の暮らしを何とか両立させたいところです。

 天守閣を囲む木々も、先端がほんのりと桜色に染まっているのが分かります。

 天守閣東にある梅林が見頃とのことで立ち寄ってきました。

 白、桃、濃淡。

 色とりどりの梅がまさに満開。

 下がっているものあり。

 上がっているものあり。

 淡桃色のものにはメジロが止まっていました。

 桜のような儚さはありませんが、枝ぶりが面白いのは梅でしょう。

 毎年、桜も梅も撮りますが、写真写りも梅に軍配が上がるのです。

 梅林のすぐそばに、「豊臣秀頼 淀殿ら自刃の地」という石碑がありました。

 先日、淀殿の太融寺にある立派なお墓を訪れたばかりで、何とも寂しい感じは否めません。 

 現在の天守閣は、徳川家の建てた復刻版と言ってよく、本来の天守閣はもう少し南にありました。

 1615年、大坂夏の陣の際に焼失したので、この石碑からはもっと離れていたことになります。

 ですので、こういった景色を見あげた訳ではないのですが、天下人の妻として、嫡男として、我が世の春を謳歌したあとの最期とは、いかばかりのものだったのか……

 お濠の外の植込みに、真っ赤な3cmくらいの花が咲いていました。

 ボケの花のようです。

 ウイグル問題にしても、ミャンマーの軍政にしても、この21世紀に考えられないことが実際に起こります。

 戦後という言葉は、1970年生まれの私達にはピンときませんが、現在、この地球上で起っているとなると別です。

 「平和ボケ」などと言われないよう、日々を精一杯生きなければと思うのです。
 
 このボケの花の赤の濃いこと。まさに目の覚めるような深紅です。

 誰が名付けたのか知りませんが「ぼんやりせんと、しゃきっとせい!」と言っているかのようでもあります。
 
 仕事は真剣勝負だと思いますが、命までは取られません。

 その事が、どれだけ有り難いことなのか。1時間でもでもウイグル人として生きたなら痛感するでしょう。

 あくまで報道を信じたとするならですが、我が事と思える想像力こそが人生の成否を分けるような気がします。

 併せて、日本語ってやっぱり面白いなあと思いますし、使うだけで頭が良くなる言葉なのではと、常日頃から思っているのです。

■■■1月27日 『Best of Houzz 2021』「中庭のある無垢な珪藻土の家」が受賞

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オープンデスク日本一‐1773‐

 昨日は大阪でも小雪がちらつき、今日は氷点下を記録したようです。

 しかし一昨日は暖かく、一日現場を回っていました。

 先週からオープンデスクに参加している21歳の学生君も一緒に連れて行きました。

 この環境下で、行動を起こす勇気や良し、です。将来の自分の仕事にするべきかと、真剣に現場を見ていました。

 1件目は、まだ現場日記に公開していないリノベーション計画。

 これまでも劇的に風景を変えてきたつもりですが、こちらの計画もなかなかに歯ごたえがあります。詳細についてはまた追々。 

 2件目は、新築計画の現場まで20分程移動しました。

 こちらは間もなく現場日記にUPするつもりですが、現在解体工事が始まったところです。
 

 内部をのぞくと、土壁の下地、小舞が置いてありました。 

 50年前の人の手跡を感じるのです。

 奈良盆地から、生駒山地の北端を走る163号線で大阪平野に戻りました。

 そのまま「かやしま写真スタジオOhana」へ向かいます。

  Ohanaは残念ながら道路計画によって収容となることが決まっています。
 
 数年前からそれは聞いていたのですが、昨年の初めから本格的に建て替え計画を進めていました。

 ウクレレ大好き、カメラマンの石井さんも現Ohanaが大好きだと言ってくれます。

 寂しいのは寂しいですが、前に進んで行くしかありません。いよいよ新Ohanaの競争見積りに入りました。

 それで、新敷地をスタッフと再度確認しに寄った次第です。

 4つ目の現場へ向かう途中、門真のPanasonic本社前を通りました。

 創業者、松下幸之助翁の銅像が見えます。

 創業100年の2018年にオープンしたパナソニックミュージアムが面白いと聞いているのですが、日曜が休館日につき未だ訪れたことがなく……

 新Ohanaの工事中に、何とか訪れたいと思っているのです。

 隣あうさくら広場は安藤忠雄の設計だったはず。

 満開の時期なら尚楽しいでしょう。

 淀川を渡り、「The Longing House」の現場に到着しました。

 こちらでは、電気設備の位置決め最終回。

 学生君にも手伝って貰い、みっちり4時間の打合せを終えたのが18時。

 体の頑丈さには自信がありますが、帰りの車では少し眠かった。電車移動なら昼寝が出来ますが、車はそれが出来ないのが難点です。
 
 21歳の時、自分の将来をどう考えていたのだろうと思い出してみます。

 高校生の時に、建築家として生きて行きたいと決めたので、職業は決めていました。

 ただ、具体的に誰に師事したいかなどは、明確なイメージを持てていませんでした。それで、父の友人に紹介して貰った建築家の下へ弟子入りするのですが、これが完全に失敗でした。

 自分の意思で決めた訳ではないので、言い訳が先に立つのです。

 「でも……」「だけど……」「仕方がない……」

 全部NGです。

 以来、悔いのない決断をすることを心掛けてきたつもりなので、この話はオープンデスク生によくしています。

 学生君が「所長から、ネガティブな言葉は聞いたことがないですね」と言ってくれました。

 それはそうです。特にりっしんべんに亡くなるという日本語は絶対使わないようにしています。英語で言えば ”busy” のあれ。(英語はOKということではないのですが)

 ハリー・ポッターで言えば「ヴォルデモート」みたいなもので、使えば使う度、心を亡くしていくと教えて貰ったからです。

 以前は嘆いてばかりでしたが、全ては仕事が教えてくれました。嘆いていても誰も助けてくれませんし、それなら一つでも二つでも手を打つべきです。

 今、Yahoo!で「オープンデスク」と検索すると当社は6位にでてきました。一時は1位だったので、よく「オープンデスク日本一」と言っていたものです。

 どんなことでもそうですが、誰かが必ず一番になります。私がその一番に絶対なれないという法律はありません。そんな気持ちで、いつも自分を、チームを鼓舞してきました。

 失敗することを恐れるよりも、真剣でないことを恐れたい。
-松下幸之助- パナソニック創業者

 さあオープンデスク君、どちらが真剣か、僕と真剣勝負だ。何せウチは、オープンデスク日本一だから。

 こんな感じが嫌いでない学生は遠慮なく応募下さい。

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続・幸福論「笑うからしあわせ」‐1772‐

 通りがかった庭先から、ナンテンが顔を出していました。

 これだけ立派なものはなかなかお目に掛かりません。


 「難を転じるからナンテン」

 鬼門封じが駄洒落ですから、日本人も逞しいものです。

 二十四節気は中国の暦のようなもので、1年を24等分して季節を表す名前が付けられています。

 等分だとは分かっていませんでした。

 2月の初めには「節分」があったので、次は15日後の「雨水」です。 

 「雨水」は雪から雨に変わる頃という意味で、春を表す季語としても使われます。

 娘の誕生日もこの時期で、ささやかながら家族でお祝いしたのです。 

 最近はめっきり減ったのですが、「コメントがあった」とブログのシステムが知らせてくれました。

 久し振りだなと思い見に行くと中條先生からでした。

 中條先生は高槻中学・高校で国語を教えて下さった恩師で、昨年6月に『蒼穹』(そうきゅう)という句集を出版されました。

 ご連絡頂いたお礼に、私も著書を送らせて頂きましたが再読して下さったとのこと。

 ここまで褒めて貰ったことは、これまでの人生でもちょっと思いつきません。

中学二年生で初めて会った当時野球部の
生徒さんは今… 「ゲツモク日記」という
とても上質(上から目線でごめんなさい)
なブログを毎週月曜日と木曜日に更新し
続けています… 上記最新記事は花の画像
から始まっています… 仕事のプロは仕事
以外を語るプロでもある… いい文章です。


 私は人を褒めるのが得意ではありません。

 それは、中学生以降の人生でほぼ褒めて貰ったことが無かったからだということは自覚しています。

 親からすれば「褒めるようなことがひとつも無かった」と言われれば全くその通りで、返す言葉もありません。

 また、スタッフにしても子供にしても、素晴らしいと思えば最大限の賛辞を贈りますが、褒めて育てるという気持ちもあまり持っていません。

 嘘っぽい言葉を発するのも嫌ですし、それで本当の成長があるとも思えないからです。

 ただ、言葉の専門家に褒めて頂くのがこれ程嬉しいことなら、考え方を少し改めなければなりません(笑)
 

 先生もアランの『幸福論』を取り上げて下さったので、よく知られた行ですが引用してみたいと思います。

 幼な子がはじめて笑うとき、その笑いは何ひとつ表現していないのだ。しあわせだから笑っているのではない。むしろぼくは、笑うからしあわせなのだと言いたい。幼な子は笑って楽しんでいるのである。ちょうど食べて楽しむのと同じように。

-アラン- 哲学者

 アランは特に難しいことは記していません。かつ押しつけがましいところもないのが素晴らしいのです。

 しかし規則をつくりたいと書いています。

 「ほんとうの生き方」の中に、ぼくは「楽しませるべし」という規則を入れたい。

 アランのよく知る男の言葉として紹介されていますが、彼はこの規則によって、自分の性格までもつくり変えてしまったそうです。

 嘘を言わないで卑劣にもならないで、機会が訪れる度いつも楽しませる。

 「仕事というのは、サービス精神を忘れたらおしまい」という、松本人志の言葉とも重なるのです。

 教え子の教え子になる雨水かな
 
 今回、先生がピックアップして下さったのは、以前も触れようか、触れまいか迷った句でした。

 雪が雨になるという季語から、教え子からも教えられることがあると、心が融解していく様を詠んだものでしょうか。

 時期なのか年齢なのか、もしくはその両方なのか。要らない拘りが融けて行く。そんな実感は私にもあるのです。

 
■■■1月27日 『Best of Houzz 2021』「中庭のある無垢な珪藻土の家」が受賞

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【News】
■12月28日発売『suumoリフォーム(関西版)』にインタビュー記事掲載
■10月23日『homify』の特集記事に「阿倍野の長屋」掲載
■9月11日発売『リフォームデザイン2020』「回遊できる家」掲載
■5月16日『homify』(英語)の特集記事に「下町のコンクリートCUBE」掲載
■5月10日『Houzz』の特集記事に「阿倍野の長屋」掲載
■4月8日『Sumikata』東急リバブル発行に巻頭インタビュー掲載

■2017年11月27日ギャラクシーブックスから出版『建築家と家を建てる、という決断』守谷昌紀がamazon <民家・住宅論>で1位になりました

メディア掲載情報

◇一級建築士事務所 アトリエ m◇
建築家 守谷昌紀のゲツモク日記
アトリエmの現場日記

私を越えて行け‐1771‐

 建国記念日の今日、家族全員が休みと分かったのが先週末。

 「それならスキーに行こう」となりました。

 第2波は収束傾向にあるものの、完全自粛されている方には本当に申し訳ない次第で……済みません。

 なのですが、雪山をみると一気にテンションが上がります。

 もう少し言えば、子供達が喜ぶお出掛けが、スキーかお寿司くらいしかないというのが現実です。

 外食は流石にこの時期なので我慢してもらい、スキーにしました。

 ゴンドラがなく、比較的すいているかなと期待してホワイトピアたかすへ。

 思った以上に人出はありましたが、それでも経営が楽ということはないでしょう。

 スキーと書きましたが、長男だけはボードです。

 私も長男が始めた7年前に一緒に始めました。

 その時にコーチ役を買ってでてくれたのは「滋賀の家」のクライアントでした。

 私が未経験なもので、道具まで全て準備して貰ったのです。

 立ち上がるところからのスタートです。

 しかし一日で、何とか滑れるところまで指導して貰いました。

 それ以来、長男はほぼボード。私は時々ボードです。

 娘もボードをしたいと言っていましたが、今回は大事な試合が控えているのでスキーにしてもらいました。

 板に乗る位置がとても安定してきて、ショートターンがかなり上達しました。

 昼食は密を避けるためにインスタント焼きそばです。

 朝が早かったので、皆が昼寝をしている中、娘は駐車場横で遊んでいました。

 私が思うより雪山が好きなようです。

 妻もスキーは上手いほうですが、ターンの前半にもう少し素早い体重移動が出来ると、もっとターンが切れるはずです。

 まあ楽しく滑れればそれでよいのですが。

 私がボード初心者なので、長男にアドバイスできることは限られるのですが、ターンの原理はそう変わらないはずです。

 「ゲレンデがピカピカの氷だったとイメージして、丁寧に体重移動してみたら」と伝えてみました。

 すると見違えるようにターンが切れてきました。

 本人も「とても良いイメージができた」と。

 自分の行きたい景色を明確にイメージできれば、必ずそこへ到達できるはずです。

 技術が上達したこともそうですが、この原理原則を分かってくれると一番嬉しいのです。 

 2014年のボード初体験の時も論語から「耳順ふ」を引いてみました。再度ここに記してみます。 

子曰はく、 吾十有(ゆう)五にして学に志す。
三十にして立つ。
四十にして惑はず。
五十にして天命を知る。
六十にして耳順(したが)ふ。
七十にして心の欲する所に従って、矩(のり)を踰(こ)えず

 長男は現在15歳なので、学に志しているはずです。多分。

 しかし、ここからの15年がすっぽり抜けているのは以前から気になっていました。

 学を修めるのに15年掛かるとも解釈できますし、かの孔子でも説明が出来ない期間と言えなくもありません。

 私においてなら、25歳で創業したあと5年でボロボロになりました。30歳の1年は完全に仕事を休み、その間に海外を旅しました。

 やっぱり建築設計しかないと日本に戻り、第二期アトリエmとして再スタートしたのが31歳。

 孔子の言葉をなぞるように生かされていることに驚きますし、人は違うようで、殆ど変わらないのかもと思うのです。

 高校一年生の春休みを境に、長男もある程度大学受験を見据えた動きに入っていくようです。

 ここからの十五年で、何者にもなれますし、何者にもなれないかもしれません。出来れば前者であって欲しいですが、こればかりは親が何を言っても始まりません。 

 子供にしてあげれることは、彼らの選択肢をどこまで増やしてやれるかだけ。よって精一杯働くだけです。

 長男に「大学へ行くまでは全部おごりだから」と言うと、「子供を育てることを、おごりって言う?」と長男に突っ込まれました。

 そういう意味では、あまり親だと思っていないのかもしれません。

 男である以上、全員がライバルです。それは子供でも同じ。私を越えて行けよと思うのです。

 ボードでは完全に越えられてしまいましたが、勿論仕事でね。

■■■1月27日 『Best of Houzz 2021』「中庭のある無垢な珪藻土の家」が受賞

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建築家 守谷昌紀のゲツモク日記
アトリエmの現場日記

アランの幸福論‐1770‐

 今年の冬は寒いのかなと思っていたら、暖かい日が続きます。

 土曜、日曜は10℃を大きく上回り、日差しも春を感じさせるものでした。 

 近鉄奈良線から見る生駒山の緑も、若干鮮やかさが戻ってきた感があります。

 と思っていたら、庭木の梅もポツポツと花が開き始めました。

 しかし現場打合せはほぼ外部なので、クライアントには「寒さ対策だけは万全でお願いします」と伝えています。

 打合せ前に現場を見て回っていると、ちょうど休憩時間に入ったようで、棟梁がコーヒーを煎れてくれました。

 私が写真を撮ると「前にも一度コーヒーの写真が上がってましたよね」と。

 この現場もいずれ公開する予定ですが、現場の活気や面白さを伝えるのも私の仕事かなと思い、勝手に使命感に燃えているのです。 

 「コンクリート打放し H型プランの平屋」からの移動でしたが、こちらの現場は左官職人が下地調整をしているところでした。

 年末にコンクリートを打設しました。

 すぐに硬化が始まるので、その前に形を整えなければなりません。

 左官職人はその際も、八面六臂の活躍です。

 面積が広い部分ならトンボを使うのです。

 コンクリートの半生感は、現場に居る人間だけが目にするものだと思います。

 YouTuberになりたい訳ではありませんが、この動画は是非観て欲しいと思いUPしました。

 左官仕事は、生ものを扱うという意味において、極めて料理に似ています。

 

 ミキサーでコンクリートを練る様子は、お菓子の生地を作っているのとほぼ同じ。

 仕上げている様は、まさにパティシエのそれ。

 硬化した後の硬さだけは全く違いますが。

 玄関ドアの原寸模型があったり。

 モルタルの色サンプルがあったりと、現場はエンターテイメント空間なのです。

 産経新聞に日本画の大家、平山郁夫さんを紹介している記事がありました。そのタイトル部に、以下の言葉がありました。

 人間は意欲すること、そして創造することによってのみ幸福である。
-アラン- 哲学者

 もし粗相があってはと、クライアントへは冗談半分に以下のようなことを伝えます。

 「まさか勉強大好きという人達ばかりが現場に集まる訳ではないので、多少は荒っぽい人も……」

 体を動かす方が得意という人達が多いのは間違いありませんし、稼ぎが良いからという人達も居るでしょう。

 しかしアランの言葉の通り、何かを創り上げていくことは根源的な歓びなのです。

 こちらの左官職人チームは、いつ見ても穏やかに、よどみなく仕事をしてくれています。

 物創りに歓びを感じられる人と仕事をしたいですし、そういう人達と本気で取り組めば、良い仕事にならないはずがありません。

 「お金は好きだけど仕事は嫌い」

 こういう輩は、間違っても私の現場に入って貰っては困りますし、実際追い出したこともあります。

 むしろ、荒っぽいのは私だったかもしれません(笑)

 平山郁夫さんは広島で被爆していたと初めて知りました。

 実際、その後遺症が徐々に体をむしばんでいったともありましたが、自身が愛したシルクロードを守る活動を続けながら、あの穏やかな画を描き続けたのです。

 人はどこまで強くなれるのだろうかと思います。

 「幸福論」で知られるフランスの哲学者アランの言葉は、これまでにも紹介したことがあります。
 

 悲観主義は気分によるもの、楽観主義は意思によるもの。

 気分に左右されず、強い意思をもって、真っすぐな物創りをしなさいと、先人達は行動を持って導いてくれるのです。

■■■1月27日 『Best of Houzz 2021』「中庭のある無垢な珪藻土の家」が受賞

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快進撃はとまらない‐1769‐

 
 現場での定例打合せは、隔週を基本としています。

 「おいでよhouse」は、第1、第3の水曜日。

 クライアントの予定、監督の予定、そして私の予定を擦り合わせるのは、なかなか大変です。

 それで、曜日と周期のルールを決めて、2ヵ月から3ヵ月位先くらいまでは、スケジュールを決めているのです。   

 工事の序盤、中盤と比べると、終盤は徐々に課題も減ってくるので、自然と雑談も増えてきます。

 昨日も課題の打合せを終え、四方山話をしているとあっという間に3時間が経っていました。

 ご主人に「そろそろ仕事に戻りますね」と声掛けをして貰い気付いた次第で。
 

 私も飛ぶように会社に戻り、お握りだけ買って京阪萱島へ向かいました。

 ひとりの移動は、運転手付きの電車に限ります。

 駅前からの裏道を抜けて「かやしま写真スタジオOhana」へ。
 

 2009年秋の竣工なので、11年目に入りました。 

 レセプションと階段は、この時期が特に暖かいのです。

 2階ものぞいてきました。

  勝手知ったると言うか、苦闘の結果と言うか……

 本当に懐かしい気持ちになるのですが、道路収容に掛かり取り壊すことになったと聞いたのが4年前。

 何とか近所に敷地が見つかり、昨年からOhana第2章が動き出したのです。

 新店舗のコンセプトは「あの森のOhana」。

 まだ競争見積りがスタートしたばかりですが、このタイミングで現場日記もスタートするつもりです。良ければそちらもまたのぞきにきて下さい。
 

 現場説明を終え、予定していた帰りの電車に飛び乗り「ふ~」と一息。

 この数年、一番沢山仕事をして貰っている建築会社の社長に「所長、そんなに慌てなくてもいいんじゃないですか」と言われます。

 もっと早く進めて欲しいと言われるクライアントも実際に居ますし、求めて貰っている間に頑張っておかなければ、悔いを残すことになるような気がするのです。

 マラソンの途中がどれだけ辛くても、終わった後に頑張ることは一切できないという言葉が耳に残っているのです。

 子供達にも、「お父さんは特別な才能を持っている訳ではないけれど、毎日全力で働くことだけは続けてきた」と言ってきました。

 子供だけには、このことは言い続けるつもりです。

 先月中頃だったか、娘が「卓球の個人レッスンを受けたい」と言いだしました。小学校の時に見てくれていたコーチと話しができたそうです。

 先日も、個人戦3位の結果を出してくれたのですが、目標にしている大会がいくつかあると聞いており「分かったよ」とOKしました。

 久し振りに私も見に行ってきました。

 私も温泉卓球レベルなら、経験者以外にはそう負けないので、それなりに自信を持っています。
 
 しかし1年前、ついに本気の勝負で負けてしまいました。いわゆるガチです。

 その頃からも各段にレベルアップしていました。

 

 とても熱心なコーチで、2人はまるで会話をしているよう。

 こういった景色は何とも清々しく、気持ちのよい景色です。

 全力に悔いなし、という言葉を思い出すのです。
  

   
  自分の娘ですから、身体能力はある程度把握しています。本気でやればかなりのところまで行けるとは思っていました。

 が、想像以上でした。

  第4シードから、県の団体戦で優勝してきたのです。本人はオールストレート勝ちとのこと。

 もう快進撃がとまりません。

 この先はもっと大変だ、などと野暮なことは言いません。「成功を恐れるな」で、是非とも一番高いところまで行って欲しいものです。

 「ガチ」の由来は諸説ありますが、プロレスにおける「セメントマッチ」から来たという説も有力です。
 
 「ブック」と呼ばれる脚本があるエンターテイメント色の強い試合ではなく、本気の潰しあいの試合を指すのですが、そこから「ガチンコ」という隠語ができました。

 それがお茶の間に広がり、「ガチ」となったのです。

 できれば、数学のほうも「ガチ」でお願いできると、お父さんは最高に幸せなのですが。

 そこのとこ宜しく、と永ちゃん風に締めておきます。
 

■■■12月28日発売『suumoリフォーム(関西版)』にインタビュー記事掲載

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