讃岐うどんの名店Ⅶ、そこまでセルフ‐1513‐

 前回、香川での墓参りを終えたところまで書きました。

 昼食のため、快晴の讃岐平野を移動します。

 地元では「讃岐富士」と呼ばれる飯野山(いいのやま)。

 まさにオニギリをポンと置いたようなフォルムです。

 その脇を、申し訳程度に流れるのが土器川。

 香川で唯一の一級河川ですが、年に200日も水の流れない日があると、ブラタモリでも紹介されていました。

 その土手を超えたところに、「釜たま」の名店「なかむら」があります。(「釜たま」は、釜揚げうどん+たまごの意味)

 映画等にも登場するこの店を伝説としたのは、味は勿論として、「そこまでセルフ」というストーリーです。

 自分でダシを入れる、麺を温めるのは勿論、畑にネギを抜きに行き、自分で切っていたそう。

 人手不足でそうせざるを得なかったそうですが、更なる繁盛店になり、そのサービス?は現在なくなってしまったのです。

 この日は11時半頃の到着で、15人待ち程度。

 思ったほど混んでいませんでした。

 私は「釜たま」の特大に、もう1つ卵を追加。

 卵は自分で軽く混ぜ、ゆであがりを待ちます。

 レジで自己申告するのですが、天ぷら2つを加えて700円くらいだったでしょうか。 

 店内は清潔で広め。

 気候がよければ屋外席も気持ちよさそうです。

 この日はとても暑く、子供たちは冷やしうどんやぶっかけうどんを頼んでいました。

 麺は細目で、いわゆる讃岐うどんほど腰はありません。

 「長田」もそうでしたが、釜あげの名店は、麺がモッチリしている傾向にあります。

 熱い麺と卵を混ぜると、半熟のような状態になります。そこにうどん醤油をくるっと掛けて頂きます。

 特大は3玉入っていますが、のど越しが良く、いくらでも入って行く感じ。

 ねぎ、しょうが、ごまで味を変えながら楽しみました。

 子供達もみな大や特大を完食。その事実がこの店の味を雄弁に語っています。

 大変美味しゅうございました。

 昼頃になると、続々と車も増えてきました。

 あっという間に行列が伸びていきます。

 この長さなら1時間半くらいは掛かるでしょうか。

 帰り際、主人か若主人だろうと思い、少し話を聞いてみました。

 最近では良く混んでいるほうだそうです。

 「じゃあ今日は、良い日になったね」と言うと笑っていました。

 飲食、観光という産業は、難しいものだと思います。

 多くの人が常時訪れれば、天狗になるからか疲弊からか、客を雑に扱う店が増えてきます。

 しかしそんな応対を受けたことを人は忘れません。いずれその店、観光地は衰退して行きます。

 そうなってから、過去の栄光を取り戻すのは難しいでしょう。

 美味しいから繁盛する。それは素晴らしいことですが、また違った意味での試練がまっているのです。

 経営の神様、松下幸之助はこんなことを言っていたと思います。

 「失敗は、成功への過程。成功は、失敗の要因が蓄積している状態にすぎない」

 成功もまた試練。仕事とは終わりのない成長ゲームと言えるのです。

 しかし、このサービス過多の時代に、「なかむら」が支持されるのは面白いところです。私は、お客さん扱いで遠ざけられるより、もう少し立ち入ってみたいので「なかむら派」なのかもしれません。

 最後に、讃岐うどんの名店も整理しておきます。あくまで「私の」なので、雰囲気、混み具合等も合せてⅠの「やまうち」を推しておきます。

讃岐うどんの名店Ⅰ ひやあつの「やまうち」
讃岐うどんの名店Ⅱ 元祖ぶっかけの「山下」
讃岐うどんの名店Ⅲ 釜揚げの「長田」
讃岐うどんの名店Ⅳ 元祖しょうゆうどんの「小懸屋」
讃岐うどんの名店Ⅴ 純手打ちうどん「 よしや」
讃岐うどんの名店Ⅵ かまたまの「山越えうどん」
讃岐うどんの名店Ⅶ そこまでセルフの「なかむら」

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身近にあった真備。「ではない探し」ではない人生を‐1512‐

 8月も最終週に入りました。娘は今日から小学校に行っています。

 9月1日世代にはピンときませんが、休みが多すぎるよりは良いでしょうか。

 夏休み最終日の昨日、岡山、香川へ墓参りに帰っていました。

 まずは父方の郷里、倉敷へ。

 倉敷市は比較的大きな市で、倉敷川となまこ壁で知られる美観地区から、海沿いまでを網羅しています。

 その海を臨む墓地に守谷家の墓はあります。

 瀬戸内海式気候の夏は、雨が少なく本当に暑い。

 しかし、ここは眺めがよく目には涼やかです。

 中学生になった長男2人は、共にクラブで欠席。

 曾孫に打ち込みたいことが出来たなら、祖父母も喜んでいるでしょう。

 暑い中、一番下の女の子2人が墓掃除まで頑張ってくれました。

 次は、瀬戸大橋で香川へ移動します。

 母方の墓地は、金比羅山の見える田んぼの真ん中にあります。

 小さい頃から何度も目にしてきたこの景色ですが、日が強く、緑が本当に鮮やかです。

 稲穂も徐々に頭を下げ出していました。

 子供達も、蒸せるような夏草を香りを、いつか思い出す時がくるでしょう。

 父方の郷里が倉敷の海沿いと書きましたが、この辺りの住宅では、焼き杉板が結構使われています。

 倉敷と書いていますが、昔から我が家でも児島(こじま)と呼んでいます。

 昔は学生服の街、また現在では国産ジーンズ発祥の地としても知られる繊維の街なのです。

 近くにタコ漁で知られる下津井等もあり、なかなかに活気のある街だったようです。

 材木商だった祖父は、商いでは成功していたようで、墓地の裏には結構な規模の山を所有していました。

 そういえば、代々の墓も最も見晴らしの良い場所にあります。

 その祖父に続いて、数年前に父の兄も他界してしまったのですが、伯母は健在で少し話をしました。

 先月の豪雨では、倉敷市の真備地区で高梁川が氾濫し、多くの犠牲者がでてしまいました。

 伯母の姉がこの地区に住んでいたことを昨日初めて聞きました。

 親族が暮らしており、ぎりぎりのところで非難していたと聞いて、より豪雨の災禍を身近に感じます。

 先週、広島、愛媛を回った際も、多くの土砂災害跡が残っていました。

 思わずカメラを背けてしまいましたが、山肌にある墓地はかなりの確率で被害を受けていました。

 墓石が流されている景色は、何とも表現しがたい景色だったのです。

 伯母の姉の家も、2階まで完全に水に浸かってしまったのですが、近所の方が強い調子で連れ出して下さったそうで一命をとりとめました。

 しかし、家の中には土砂が流れ込み、乾き、とても住めるような状態ではないと言います。

 昨年、こんなたとえ話を話を聞かせてもらいました。

 もしあなたが「今、ソマリアの難民キャンプで、毛布が不足している」と聞いたらどう答えるでしょうね。

 「それは可哀想だな」で終わるかもしれません。

 この話を、安部首相が聞いたらどう答えるでしょう。

 「それは、日本として何か支援をしなければなりませんね。すぐにどんな援助ができるか検討して貰えませんか」と、しかるべき担当者に指示を与えるかもしれません。

 これが、視野の違いです。

 あくまで例えですが、その通りだと思いました。

 日本人ではない、知合いではない、親族ではない、家族ではない、自分ではない……

 どこまでも、「ではない探し」をしている人と、そうではない人の、どちらが人生において成長するのか。その答えは明らかです。

 大阪北部地震、西日本豪雨と、直接何かの援助ができている訳ではありません。

 まずは、精一杯自分の仕事に打ち込み、喜んで頂き、感謝の対価を頂き、しっかり税金を納めることが一番です。

 しかし、伯母の姉の話しを聞き、ではない探しをしていた自分がいたことを、はっきりと認識します。

 何度か書いた、讃岐うどんの名店めぐり

 今回は初めての店を訪れてたのですが、ちょっと内容がそぐわないので次回にします。

 「ではない探し」ではない人生を送る。

 何度も、何度もそう決意しなければならない程、人はやっぱり弱いのです。

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しまなみ海道をめぐる<大三島で暮らす編>‐1511‐

 尾道をでて、ようやくしまなみ海道をめぐります。

 向島、因島と渡りますが、橋がそれぞれを地続きにしてくれました。

 一昨年、「村上海賊の娘」を読みました。

 その舞台を見て回りたいと思ったのもきっかけにあります。

 村上海賊の資料館、因島水軍城に立ち寄りました。

 その潮流の早さに驚き、島並の美しさに息をのみます。

 この豊かで、温暖な島々を牛耳っていたのが村上海賊でした。

 しまなみ海道の丁度真ん中あたり、大三島(おおみしま)に入りました。

 小さな集落の最奥。

 後輩が暮らす、築50年の民家は小高い丘の上にありました。

 この島で奥さんも迎えたと聞いたので、そのお祝いもしたかったのです。

 ただ、お祝いの品を家内が全て家に忘れてくるという大失態でしたが。

 チワワを飼っていることも聞いていました。

 イヌと暮らしてみたいという娘の希望も叶えることができたのです。

 両親の郷里が岡山と香川で、小さい頃、夏休みは田舎で過ごしました。

 その経験は、私にとって大きな価値があったと思います。

 決して豊かではないけれど、ゆったりした時間の中で、人にとって何が大切なのかを、私なりに体感していました。

 夕食は、瀬戸内海を望むカフェを予約して貰いました。

 新婚夫婦の写真を1枚。

 しかし、ちょっとふざけたこの写真が、彼の本質をよく表しています。

 アコウ、アジ、イカ、タコ。

 魚にはうるさい娘も大満足です。

 大人に一番人気だったのは、ハモシャブ。

 軽く皮を浸し、さっとダシをくぐらせるのがよいそう。

 美味しく、楽しい時間はあっという間に過ぎて行きます。

 遅くまで、久し振りの会話を楽しんだのです。

 翌朝、島豆腐などと一緒に、ミカンジュースが食卓に並びました。

 奥さんが生産したもので、皮は一緒に絞らないタイプで、甘く、とても柔らかい味わいでした。

 様々な職業を経験した移住組の穏やかな奥さん。美味しいミカンを沢山生産されることを楽しみにしています。

 ようやく仲良くなった頃、帰路につかなければならないのが旅の理です。

 最後の昼食は、「ファミリーレストランよし川」へ。

 大阪のファミリーレストランとは、随分趣きが異なります。

 海鮮丼を頼み、もう思い残すことはありません。

 大三島と言えば、伊東豊雄ミュージアムもあります。

 スティールハットの隣に建つのは、氏の自邸を再現したシルバーハット。

 大三島の美しさに惚れこんでこの地を選んだそうですが、今回はほぼ素通り。

 その訳は、私が多くの仕事を持ちこんでいたからです。

 昨年の夏季休暇、仕事が追いつかずで全ての旅行をキャンセルしました。

 しかし今年は「滞在中に仕事をしていても、彼なら許容してくれるだろう」という気持ちもありました。

 食事以外の時間は、奥さんの書斎を借りて仕事をさせて貰いました。

 2人と別れてから、子供たちにはちょっと海に浸かってもらい、海を望む図書館で仕事。

 旅先図書館も、我が家では定番です。

 夕刻になり、大三島を後にしました。

 愛媛の東予港を夜に発ち、月曜日の早朝、大阪南港に帰ってきました。

 船旅の終わりにはいつも思います。

 少し海は汚れているけれど、ここが私の戦う場所だと。

 2学年下の彼は、私が結婚したと知り、お祝いに湯飲み茶わんを持ってきてくれました。

 もう10年以上前のことです。

 私は、手土産はできるだけ食べ物など、無くなるものにしています。

 人の好みは様々だし、押しつけがましいのは嫌だなと思うからです。

 しかし、この湯飲み茶わんは絶妙でした。

 適度な厚み、風合い、品格を備え、そしてそこまで主張が強くない。

 ひとことで言えば「センスがよい」となるのですが、その審美眼を常に磨いていると感じるのです。

 彼は、日本各地、また海外でも、自分の職能で生計を立ててきました。

 この大三島で暮らすにあたって、日本各地をめぐった上で、人の温かいこの地を選んだそうです。

 ひなびた温泉地なども回っていましたが、そんな観光資源に恵まれた地は、総じて斜陽の雰囲気をもっていたそうです。

 聞けば納得できますが、本質を見抜くのは簡単ではありません。この話は妻越しに聞いたのですが、彼らしい選択だと感じました。

 人間は自由なものとして生まれたが、いたるところで鎖につながれている。

 フランスの哲学者ジャン・ジャック・ルソーの言葉ですが、人は自由を求める一方で、アンカーのようなものも求めています。

 そのアンカーとは、家族だったり、仕事だったり、人それぞれです。

 逆説的に言えば、だからこそ自由を求めるのだと思います。

 そういえば、母方のルーツを探っていくと、愛媛県にたどり着きます。私の中のDNAには、この海が含まれているかもしれません。

 祖父母が皆亡くなった今、勝手ながらこの地を第三の故郷とすることにしました。

 私は自由をこよなく愛すると書きましたが、彼ほど自由の風を感じさせる人はいません。

 矢付き、槍折れた時は、自由の風と、潮風に吹かれに行きたいと思います。

 何より、この地なら娘が喜んでついてきてくれるのです。

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しまなみ海道をめぐる<尾道編>‐1510‐

 週末は、後輩を尋ねてしまなみ海道をめぐりました。

 まずはスタート地点の尾道へ。

 この地を訪れたのは7年振り。某脱走犯が泳いで渡ったという尾道水道です。

 狭い所は200mだそうですが、もっと狭く感じます。

 それが、山、海、街のコントラストを強調し、極めて美しい風景を演出しています。

 尾道の背景ともいえるのが千光寺山。

 宿はその頂上付近にあり、尾道水道を見下ろします。

 あたりには、まだまだ豪雨の爪痕も残っています。

 この付近では、10日間の断水があったそう。

 仲居さんも、やはりトイレが一番苦労したとのことでした。

 純旅館という感じの宿で、部屋食でした。

 日が高いうちから食事をするこの贅沢。

 海の幸は、タコ、シマアジ、マダイがとても美味しかったのです。

 子供たちはダイヤル電話を面白がり、フロントへの電話が取り合いになっていました。

 翌朝、尾道商店街へ。

 南の路地をのぞけば海。

 北をのぞけば、山陽本線越しの千光寺山。

 この日は気持ちのよい気候で、坂道も歩きました。

 貿易の拠点として栄えた尾道は、急な斜面に張り付くように家が密集しています。

 敷地に対して無駄がないよう、法面に張り出した住宅。

 石の梁によって支えられていました。

 今風に言えば昆構造です。

 極めて細い路地は、神戸の外国人居留地などにも見られますが、より日本の風土を感じさせます。

 斜面に張り付く生き物が、手足を伸ばすかのよう。

 やや不安感はありますが、素晴らしい景色でしょう。

 急斜面での暮らしの中で、最も困難なのが水の確保。

 二階井戸は文化遺産に登録されています。

 海沿いまで戻ってきました。

 フェリーの往来をみているだけで飽きません。

 水の近い暮らしは、変化に富んでいるのです。

 夜、光を写す尾道水道。

 そして朝の尾道水道。

 「池を望む家」を設計したのが10年前でした。

 水というものは本当に無限の変化を見せてくれると知りました。

 生命の源である水を愛でるのは、ごく自然なことなのかもしれません。

 足掛け10年を掛けて、家族で47都道府県制覇の旅を終えたのが昨年の12月。

 切迫感こそなくなりましたが、折角旅にでるなら、子供たちにも何かを感じて欲しいと思います。

 今回は大三島に移り住んだ後輩を訪ねるのが目的でしたが、尾道だけで長くなってしまいました。

 「大三島で暮らす編」は、木曜日にUPしたいと思います。

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自由の風‐1509‐

 先週の金曜、少し早めに上がって京都へ向かいました。

 四条大橋から北を望むと「京の七夕」と見えます。確か仙台の七夕祭も8月だったはず。

 川に沿ってイルミネーションが連なっていますが、多くの人がカメラを構えていました。私もその1人ですが。

 人は、光、動き、音に集まりたくなるそうです。

 四条大橋を渡り、北に上ります。

 中学・高校の大先輩が、祇園へ行こうと声を掛けてくれました。

 打ち水をした路地の奥にある割烹。

 大先輩と舞妓さんがすでに見えていました。

 祇園白川を眺めながら、淡く、繊細な京懐石を堪能したのです。

 その後、良く知られたインテリアデザイナーがデザインしたお茶屋さんへ。

 1階のバーで少し飲みました。

 この方とは、これまでに何度かご一緒しましたが、一切お代を受け取って貰えないのです。

 年齢がどれだけ違っても、自分のお金で飲むのは当たり前のこと。

 この日も受け取って貰えなかったので、心からお礼申し上げた上で「出させて頂けないなら今後は遠慮させて頂きます」とご連絡しました。

 可愛げのない後輩だということは良く分かっています。

 これまでの人生で、先輩に可愛がって貰ったことは一度もありませんから。

 私は仕事でも、仕事以外でも、常に自由を求めてきたのだと思います。

 自由とは、誰にも頼らないからこそ実現できるもの。飲食代を出して貰うことは、自由の対極にあることです。

 時にはとびきり美味しいものを食べることも、芸妓を上げることも、人生の肥やしになるのだと思います。

 しかし、今の私にそこまでの時間はありません。

 非常に温厚で、スケールの大きな方だったので、ご一緒させて頂いたのですが、失礼なことをしてしまいました。

 しかし、それぞれの場面での選択肢は常に1つです。引き返すことはできても、進む道は1本しかありません。

 友達、先輩、後輩……少ないよりは、多いほうが良いに決まっています。

 しかし、私は自由を求め、仕事に身を捧げました。そのことに、一切の後悔はありません。

 今のところは、ですが。

 憧れた仕事は、小説家、画家、プロレスラー、漫才師等など。

 そこには、自由の風が吹いているように思えたのです。

 自由の風。

 その響きが好きなのは今も昔も全く変わりません。

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晴れの日も、土砂降りの日も‐1508‐

 世はお盆休みです。

 建築業界では、15日(水)あたりまでを休暇とする会社が多いでしょうか。

 週末は長男と休みが合い、池原ダムへ行っていました。

 6月に行った前回から、面白さのステージがひとつ上がったようで、「行こうか?」と聞くと即答でした。

 気温的には30℃を越えていますが、滝からは谷筋の涼風が吹き降ろします。

 おのずとそんなポイントを回るのは、こちらの都合と魚の都合が一致するから。

 木陰に人が集まるように、条件が厳しければ魚の居所は絞りやすいのです。

 長男も今までで一番釣っていました。

 面白いと思えば、自分でしてみたくなります。

 ようやく一通りのことが出来るようになりました。

 暑い暑いと言っているううちに、山上湖では結構な数のトンボが飛んでいます。

 暦の上では立秋を過ぎました。

 長男も満足していたので、この日は昼前に上がりました。

 こうしてスロープでボートを上げ下ろしして貰います。

 セルモーターが回らない場面があり、湖上で少し慌てました。

 ボートもここに駐艇しているのですが、店長がエンジンを見てくれました。

 エンジンをかける時、セルモーターのギア部分がせり上がるのですが、そこがスムーズに動いていなかったようです。

 丁寧にグリスアップしてくれました。

 機械はいつも私の都合に合せてくれますが、メンテナンスをしなければ、言うことを聞いてくれないものです。

 昨年のお盆休みは、トレジャーキッズたかどの保育園の追い込みで、47都道府県制覇の旅を年末に延期しました。

 今年もあるプロジェクトの追い込みです。

 休んだお盆も多々あるのですが、何故か仕事をしている場面ばかり思い出します。人は本当に弱いものです。

 27歳から3年程の間、ひどい鬱に悩まされていました。

 何件かの病院で診察を受けましたが、こんなことを言ってくれた先生がいました。

 「あの人は何故あんなに休みがあるのだろうとか、何故若くしてあんなに給料を貰っているんだろうとか、人はどうしても周りと比べてしまう。

 それがストレスになって、精神をむしばんでいくのだろうね。

 でも、それは当たり前だから、趣味が一番で仕事が二番くらいの考え方が良いだろうね」

 解散してしまったSMAPのヒット曲ではありませんが、人はどうしても人と比べたがるのです。

 それらを認めた上で、自分の生き方、働き方を決めなければなりません。

 仕事があるうちが花。また、今週末も旅行が控えています。また、何としても完結させなければなりません。

 人は比べたがります。でも比べないと決めるしかありません。

 晴れの日も。

 土砂降りの日も全て受け入れて、自分の道を行くしかないのですから。

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女房と○○は古いほうが良い‐1507‐

 10年程前から、カメラはCanonのEOS 5D Mark Ⅱというモデルを使っています。

 竣工写真は写真家に撮って貰うのが理想ですが、時間がない時、また私でなければ獲れないタイミングもあったりします。

 主にはその時に使うため購入したものです。

 また、建築用の広角レンズは画角が広いため既存建物の調査にも欠かせません。

 海外へ行く時も、5D Mark Ⅱを持っていくので、私にとっては「本気モード」の際のパートナーです。

 しかし、今年の5月、トレジャーキッズたかどの保育園へ、写真を撮りに行った頃から少し調子が悪く、気になっていました。

 6月初めの、スタッフの結婚式でも全自動モードしかシャッターが切れなくなってしまいました。

 Canonはwebサイトからの修理申込を勧めているので、そこから依頼すると9万円弱の見積りメールが。

 後継機種の 5D Mark IVが26万円くらいなので、買い替えも視野に入れていましたが、苦楽を共にしてきたカメラなのでひとまず修理を依頼しました。

 それから10日。

 ようやく戻ってきたのですが、伝えていた問題が解決していないのです。

 ここからのやりとりは、メールでは時間が掛かりすぎると判断し、肥後橋にあるサービスセンターへ直接持っていきました。

 この周辺、以前はプロラボに現像をだしに来ていたので、それなりに土地勘があります。

 土佐堀川沿いに建つのはTORAYのロゴが入る中之島三井ビルディング。

 あべのハルカスも設計した、シーザー・ペリの設計です。

 フェスティバルホールの外壁は、なじみがあります。

 それらを残して、高層ビル化されたのが2013年。

 保存をベースにすることは良いことだと思いますが、この継ぎはぎを私は好きになれません。

 しかし、今生の別れになる可能性もあると思い、全自動モードで辺りを撮りまくったのです。

 その向かいのビルにCanonのサービスセンターはありました。

 初めは若い女性が応対してくれましたが、中から主任のような人がでてきて、丁寧に謝ってくれました。

 買い替えという選択をした方が良かったかなと相談すると、

 「スポーツ写真等を撮るプロカメラマン様なら別ですが、このクラスのカメラは、修理しながら使って頂いている方の方が多いです。私もそちらをお勧めします」と。

 責任を持って修理しますので、もう少し時間を頂きたいですとのことでした。

 ついでに、普段分かり難いISOことや絞りのことを尋ねると、親切に教えてくれました。

 自社の製品が好きで、プライドを持っていることが伝わってきます。

 そして、無事修理が済み、健康体になって戻ってきました。

 今日はフルリノベーションの現場調査でしたが、広角レンズをつけて、全部屋を撮影してきました。

 蔵の2階の小屋組みを撮ったものですが、やはり長年の相棒、5D Mark Ⅱに限ります。

 女房と鍋釜は古い程良い

 カメラ、建築もあわせて、ひとまず古いほうが良いとしておきます。

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マーズ アタック‐1506‐

 街にでると、サルスベリやキョウチクトウが目につきます。

 共に濃い桃色ですが、夏に咲く花をつける種はある程度限られます。

 夏の種はやはり派手好きなのでしょう。

 明け方にとったサルスベリの後ろに月が見えていました。

 これは上弦だったか、下弦の月だったか……

 理科は好きでしたが、星関係はあまり覚えられずでした。

 新聞に火星が大接近しているという記事がありました。

 これだけ近付くのは15年振りだそうです。

 夜に南の空を見上げると、鈍く赤い光がひときわ目を引きますが、写真ではなかなか伝わらない迫力でした。

 夏休みに入り、中2になった長男は羽を伸ばしています。一方、小5の娘はどこにも連れて行ってやれずで。

 一緒に会社に居ると、階上に住んでいる従姉妹たちが「近所のお祭りに行こう」と声をかけてくれました。

 少し小遣いを渡し「ちょっと写真も撮ってきて」と頼んだのです。

 地域が主催しているようで、的屋の店はないようです。

 小一時間遊んで帰ってきました。

 戦利品はいつもの通り。

 筆箱は、夜店としては最上レベルでしょう。

 的屋でないからというと、本職に怒られそうです。

 せめてもの罪滅ぼしに、夕食はイタリアン(チェーン店ですが)にでも行こうかと言っていました。

 子供にとってはこちらのほうが魅力的なはず。

 それでも、小3の従姉妹と半分ずつにしたというので、わきまえたものです。

 古代の人は、ひときわ赤い星を見て「火星(Mars)」と名付けました。

 ギリシア神話では軍神アレス、ローマ神話では農業の神マルスに由来するそうです。

 狩猟採集時代には、来年も収穫できるよう適度に自然と付き合っていたはずです。

 しかし、農耕が始まり、余剰分を蓄えることが出来るようになると、それらを狙った盗難、争いが増えていきます。また、富や流通という概念も生まれました。

 そう考えると、農業の神と軍神がかなり近い存在だと言えるかもしれません。

 今日8月6日は、広島に世界で初めて原爆が投下された日です。

 農耕が戦争を生んだというのは短絡過ぎる論理ですが、過分な豊かを目指すと争いが起こるという事実もあります。

 天災でさえこれだけ大変なのに、人同士で争うなど愚の骨頂でしかありません。

 もし火星人が攻めてきたなら、北も南も、東も西も、手に手をとって戦うしかないのですから。

 平和の下で精一杯働けることを、せめて8月15日までは感謝したいと思います。

■■■毎日放送『住人十色』4月14日5:00pm~5:30pm
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StopよりのGoはない‐1505‐ 

 先月初旬の豪雨と、逆走台風のときだけが雨。

 それ以外は一切降らずです。

 朝から30℃に近い気温で、日影を探してジョギングしてもすぐに汗だくです。

 セミもわきまえたもので、4時からは鳴きませんが7時頃になるともう大合唱。

 じっと見ていると、体全身を振るわせて全力で鳴いています。虫も花も常に手抜きは無しです。

 先日、遅くに帰ってきた長男が、インターホンを鳴らさずに玄関扉をドンドンと叩きました。

 扉を開け「どうした?」と聞くと、「セミが近くにいたのでそっとしておいた方がいいかなと思って」と。

 見に行くとインターホンのすぐ上でまさに脱皮中。

 翌朝には空蝉となっていました。

 このくらい過去を気持ちよく脱ぎ捨てられたら、爽快でしょう。

 木々が枯れた葉を惜しげもなく落とすように、自分にとって役立たなくなった様々の考えを捨ててしまえるように願っている時。

 このいらなくなったものが、なんだってこんなに美しいのだろう。

-アンドレ・ジイド-

 アンドレ・ジイドは1947年にノーベル賞を受賞したフランスの小説家です。

 上の言葉は随分昔にメモしたもので、一字一句正しいのか分かりませんが、ずっと心に残っています。

 文学というものは、歯ごたえが無さ過ぎるのも面白くないし、難解過ぎるのも遠慮したいところです。

 ノーベル賞作家が、私に合わせて書いてくれるはずもありませんが、この文章には適度な歯ごたえがあり、自由なイメージを許容してくれる寛容さがあると感じるのです。

 人生もまた同じです。

 適度に歯ごたえがあるのが最高なのですが、歯ごたえを求めるともうありすぎて……

 人の思考は、基本的にはコンピューターの電子回路と同じで、“Go”と“Stop”の2択だそうです。

 微弱な電気信号で意思を伝達すると考えれば、そうなのだろうと納得できます。

 都合よく、“StopよりのGo”などというものはないのです。

 どちらの人生を選ぶかと問われたなら、やはり“Go”を選ぶしかありません。

 心頭滅却すれば火もまた涼しと言います。

 せめて頭の中だけは、涼風が吹きぬける森の小川を思っておきます。

■■■毎日放送『住人十色』4月14日5:00pm~5:30pm
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