深夜0時、食卓で事件は起きる‐1504‐ 

 鬼門は中国から伝わってきたものと言われています。

 表鬼門に対して、南西の裏鬼門も、玄関や水回りを避けたほうが良いとされます。

 最も日差しが強い、モンスーンや台風の強風が吹き込み屋根を吹きとばされる、その風によったカマドの火の粉が入ってくる等がその理由です。

 週末の台風12号は、真東から日本列島を横断しました。裏鬼門も再考の余地がありそうです。

 その雨の中、北浜の「五感」本店へ寄ってきました。

 この界隈は「生きた建築ミュージアム」に選ばれている建物がいくつかあります。

 「五感」の入る新井ビルもそのひとつ。

 1922年(大正11年)に銀行として建てられました。

 少し南に下ると高麗橋野村ビルがあります。

 大阪瓦斯ビルで知られる、 安井武雄の設計で、1927年(昭和2年)の完成です。

 柔らかい曲線は、大阪瓦斯ビルでも見られます。

 更に南に下ると「生駒ビルヂング」。

 時計店らしく、大きな時計が目印。1930年(昭和5年)の完成です。

 大大阪時代の建物がずらりと並んでいるのです。

 新井ビルは何度か訪れていますが、店舗に入るのは初めて。

 看板も建物を尊重したもので、好感がもてます。

 店内は1年前に改装したそうで、真新しい感じでした。

 目的は、米と和三盆で作られたこのバームクーヘン。

 今年の6月にスタッフが結婚したのですが、その引き出物の中にありました。

 当日の式が終わり、家に帰って晩酌をしていると家族は10時頃には、2階へ上がって行きました。

 もう少し1人で飲んでいたのですが、キッチンへ行くとこのバームクーヘンが4つに切られて置いてありました。

 1つ食べて寝るか、と思ったところまでは覚えているのですが、その後の記憶がなく……

 翌朝、下に降りると、娘が「お父さん、また私のデザート全部食べたやろ~」と。

 「また」と言うのは、5年くらい前に娘のお気に入りだったハイチュウ(いちご味)を、私が夜に全て食べてしまったという一件を指しています。

 元々、甘党でもない私が、ハイチュウをそんなに食べるはずもないのです。

 ウィスキーを熟成させる過程で、幾分量が減ってしまうことを「天使の分け前」と言うそうですが、甘い物好きの天使が分け前を求めたのかもしれません。

 そんな言い訳をしていると必ずバチがあたります。

 晩酌は、一日おきと決めているので、それなりに節制しているつもりですが、眠い時に甘いものを食べ出すと、たまにストッパーが壊れてしまう時があるのです。

 午前0時を過ぎたあたりからの甘いものは絶対的に要注意。

 週末に誕生日を迎えました。天命を知る50歳まであと2年。夜中にハイチュウを食べている場合ではありません。

 天使が応援してくれるよう、また、悪魔にとりいられないよう、規則正しい生活をおくれる48歳でいたいと思います。

■■■毎日放送『住人十色』4月14日5:00pm~5:30pm
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太陽に罪はない‐1503‐

 ひとこと目には「暑い暑い」と言ってしまいます。

 この夏の日射は容赦ありません。

 私は夏大好き、晴れ大好きですが、今朝の曇り空にはややほっとしました。

 自転車の反射板がプリズムの役割を果たし、美しい虹色を見せてくれました。

 こうしてみると、夏の日差しも少しは涼やかでしょうか。太陽は生命の源で、何の罪もありませんが。

 京セラ名誉会長の稲盛和夫さんから、経営を学ぶ場が「盛和塾」

 私は2007年に入塾しました。

 人生にとって、経営者にとって、最も大切なのは「考え方」と教えて貰いました。

 稲盛さんの著書、「成功への情熱」の中に、以下のような言葉があります。

 「強さ」の秘訣のひとつは、完全に客観的でいる勇気を持つことです。もうひとつは、個人の感情を上回る強い信念を持って、自分自身の能力を信じることです。

 繰り返し読んでいる本ですが、ハッとします。

 先日世界遺産に指定された、「長崎と天草地方の潜伏キリシタン関連遺産」を思います。

 私の大好きな坂の街、長崎。2015年9月に訪れました。

 この年の7月、明治日本の産業革命遺産が世界遺産に登録されました。

 軍艦島等と共にグラバー邸も登録されています。

 大浦天主堂は今回の登録で、現在は壁が真っ白に塗られているよう。

 この旅では、高倉健の最後の映画となった「あなた」の舞台、平戸もまわることにしていました。

 薄香漁港がその撮影現場です。

 集落内は、ひっそりとしていました。

 初めて訪れたひなびた漁村に、強いノスタルジーを抱くのはなぜなのでしょう。

 そのまま、平戸ザビエル記念教会も訪ねました。

 その色使いは、南欧の雰囲気も感じさせます。

 日本ではないような空気感さえあるのです。

 強い信念という意味においては、信仰ほど強いものはありません。

 キリスト教が禁じられた260年の間、それらを守るために、踏絵で命を落とした人が実際に居たのです。それはごく普通の市井の方々だったはずです。

 それを思うと、どのくらいの信念を持っているのかと、自分に問わざるを得ません。

 1984年、稲盛さんが50歳の時に通信事業が自由化されるという機会がやってきます。これを「100年に一度のチャンス」と捉え、第二電電(現KDDI)創業に乗り出しました。

 当時、セラミックの世界では知られた存在であったものの、通信事業という全く門外漢の仕事で成功するとは誰も考えていませんでした。

 京セラが成功したのは、稲盛さんの技術が優秀だったからとか、時流に乗っただけとか言われるけれどもそうではない。フィロソフィ(哲学)があったからなのだと言います。

 通信について何も知らない私が、哲学ひとつで事業を成功させれば、経営にどれだけ哲学が大切かということを証明できると思うと考えたそうです。

 その後、鉄道網をもつ会社、高速道路をもつ会社も参入してきました。

 自社のもつ全国規模の施設を利用し、通信網を敷けば良い他社と比べて、京セラを中心とした第二電電は何のインフラも持っていません。

 山の頂上にパラボナアンテナをこつこつと建てていくしかありませんでした。どう考ても、初期投資の金額が違いするぎるので、勝ち目などないはずです。
 
 しかし、現在まで残っているのは第二電電(現KDDI)だけです。

 78歳の時には、経営破綻したJALを、政府からの強い要請を受けて率いることになります。そして、2年で世界最高収益を上げる航空会社へと変貌させました。

 よく知るとは言わないまでも、真近で拝見する限り、身長は高いものの、ごく普通の方です。

 それが、奇跡のようなことを成し遂げて行きます。

 稲盛さんは、「人として何が正しいのか」それだけを考えてきたと言います。

 これらの結果は、正しい考え方があったからこそ、成し得たものなのです。

 正義、公平、公正、誠実、勇気、博愛、勤勉、謙虚。それを実践するだけで良いと。

 人は機械ではないので、スイッチひとつで切り替えることはできません。

 繰り返しそう在りたいと願い、行動を繰り返すしかありません。

 この暑い時に何を力んでいるんだと言われそうですが、「個人の感情を上回る強い信念」という言葉に、そんなことを思います。

 人は弱いもので、つい不平、不満を口にしてしまいます。しかし、太陽に罪はないのです。

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日本最強の城で、開高の言葉を思う‐1502‐ 

 埼玉県熊谷で41.1℃を上回り、日本最高記録を更新したとありました。

 クーラーがなければ生命の危険さえあるという時代になってしまいました。

 普段の暮らしで我慢する必要はないと思いますが、今回の天災時のように、電気の供給がままならない事もあります。

 夏の光は最小に、冬の光は遮らない。風が流れやすい開口部を切る。建築に関わらせて貰う以上、これらは常に探求していかなければならないと感じます。

 「日本最強の城」というノボリをみつけ、奈良県の高取城址へいってきました。

 山道に入った途端に道が狭くなり「もしや険道か」と一瞬思いましたが、何とか到着。

 高取山(583.9m)の山頂付近にあり、日本最強をうたう山城が高取城です。

 城内は約10,000㎡、周囲約3km。

 広大な城内は、山頂付近の3,000坪にも及びます。

 壺坂口門から、木漏れ日が落ちる山道を500m程登ります。

 山頂付近の3,000坪が全て城。

 急峻な山肌の至るところに石垣が築かれています。

 ただ登るだけで息がきれてきますが、涼し気な景色に救われます。

 山頂付近に近付くと、急に視界が開けてきました。

 やっと天守閣址かと思うと、これは太鼓櫓。

 裏手に回ると東洋のマチュピチュと言われた、別子銅山を思い出します。

 櫓上に登り、振り返るとようやく本丸。

 手前が二の丸で、家臣たちの屋敷があった場所。

 とても見難いのですが、右下に居る人の身長と中央の大木を比べてみて下さい。

 石垣をみて「うわっ」と声を出してしまったのは初めてです。

 正三角形よりきつい角度で、石垣が10m積み上げられていました。

 その景色は圧巻でした。

 左側面から登りますが、標識を持っているのは熊。

 スーパーKなる人を襲う熊が話題になる時代です。ちょっと冗談きついわ、という感じ。

 ちなみに、8m飛ぶ熊撃退スプレーは持っていませんが、2~3m飛ぶ唐辛子スプレーは持ち歩いています。

 非常時にこれで撃退できるかは、普段のイメージトレーニング次第。

 動線を複雑にするため、曲輪が複雑に配置されています。

 14世紀に築城され、明治期までに自然倒壊したそうです。

 現在は木が生い茂っていますが、是非その姿を見たかったもの。

 標高583.9mにある、天守閣跡に到着しました。

 壺坂口門から20分くらい掛かったでしょうか。

 正面の大木裏を恐る恐るのぞいてみると、足がすくむ程の高さです。

 手摺がないこういった景色を、現代人はなかなか体験することができません。

 北には奈良盆地。

 南には吉野の山並みを望みます。

 この上に3層あったという天守閣からの眺めは、いかばかりのものだったのか。

 真っ二つに割れている木が結構ありました。

 落雷によるものでしょうか。

 この山頂部にある広大な本丸で、多くの人が暮らしていたのでしょう。

 井戸跡には、清いとまでは言えませんが、この日照りが続く中、水がにじんでいました。

 難攻不落というか、甲冑を来た武士がたどり着くだけでも大変なこの高取城。

 どうやら先月、NHKの番組で熊本城や大坂城を押さえて「最強の城」と認定されたようです。

 この山奥で、それなりの人とすれ違った理由と、真新しいノボリがあった訳が理解できました。

 石垣の上に古瓦が置かれています。

 足下を見れば石に交じってあちこちに。

 城郭に使われていたものでしょうが、分別解体した訳でもないのに、石垣以外、すべて自然に帰って行くのです。

 改めて、石の強さと、自然素材で作る意味を考えさせられます。

 永遠である必要など全くありません。

 作家・開高健は「河は眠らない」でこんなことを書いていました。要約してみます。

 木が倒れ、朽ち、苔が生え、微生物が繁殖し、バクテリアが増殖し、土を豊かにする、小虫がやってくる。

 小虫を捕まえるためにネズミなんかがやってくる、そのネズミを食べるためにまたワシなんかの鳥もやってくる。

 森にお湿りを与える、乾かない。そのことが河を豊かにする。全てはつながりあっているんだ。

 風倒木のことを、英語でナースログと言う。森の看護をしているという意味で、自然にとって無駄なものはひとつもない。

 無駄に見えるけど貴重なものは沢山ある。人にとってのナースログとは?

 無駄をおそれてはいけないし、無駄を軽蔑してはいけない。何が無駄で何が無駄でないかはわからないんだ。

 人は分からない中でも、何かしらの決断をしながら生きて行かなければなりません。

 悩んだとき、迷った時は、原理原則に戻る、太古に戻ることにしています。

 自然だけが素晴らしいとか、人こそが素晴らしいというつもりはありません

 無駄をおそれてはいけない。軽蔑してはならない。大阪生まれの作家の言葉に、何か救われる気がするのです。

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流しそうめん、始めました‐1501‐ 

 暑い日が続きますが、夏の現場は壮絶を極めます。

 昨年のこの時期は「R Grey」が最後の追い込みに入り、入居募集を始めたタイミングでした。

 webサイトには、その特徴、長所を書いています。

 その甲斐があってか、なくてかは分かりませんが、ありがたいことに現在満室です。

 サイトには「チャッピー」のたこ焼きも載せています。

 前の道を向かって右に進むと、突き当りにある小さな店舗です。

 ここのたこ焼きはサクッとトロッとで、娘の大好物でした。あまりの美味しさに、お礼の手紙を送ったことも。

 しかし、店主のおじさんは高齢を理由に、そろそろ引退を考えていたようです。

 偶然、店を出したい人と繋がり、40歳くらいの人に代替わりしたのが今年の春頃でした。

 外装は新しくも店名はそのまま。生地のレシピもしっかり伝えたそうです。

 正直、開店当時は「前のほうが……」という気持ちもありました。

 しかし、努力しているのか、日に日に美味しくなってきました。

 たこ焼き以外のメニューは当初から充実しており、なかなかに繁盛しています。

 2代続けてファンとなった娘が「流しそうめん」があるから行ってくると。

 食べ方で、そうめんの味がそう変わることは無いと思いますが、何でも工夫です。

 大繁盛していました。

 味がそう変わることはないと書きましたが、「美味しい」という感情は、環境や雰囲気に大きく左右されます。

 風情、清涼感、エンターテイメントと、あらゆる要素がここに詰め込まれているのです。

 合理的という、一見否定しようのない落とし穴に、現代人は陥りやすいと感じるのは私だけでしょうか。

 合理的とはその文字の通り、理にかなっているということです。理にかなっているので無駄が少ない。

 これは理解できますが、人生なんて無駄で成り立っているような気もします。

 合理的≒楽をしたい

 もしそうだとすると、かなり危険です。

 楽をすると、人の感情は動きません。人の感情が動かなければ感謝されたり、求められることはありません。

 その人の価値が無へ向かってしまいます。

 流しそうめんを大げさに書いていますが、この賑わいは全てを表しているとも言えます。

 そもそも流す必要などないのですから。

 とても気になっている店がありました。

 外壁は剥がれ落ち、窓は動きそうになく、側面はブルーシートで覆われています。

 この建物の1階に焼き鳥店が入っていたのですが、先月末で閉店しました。

 全体写真は載せませんが、衛生上も良くないだろうし、建物もいつ倒壊してもおかしくない程危険です。

 店に入ったことはないので、流行っていたのかは分かりませんが、他人事ながら「もうやめておかれたら」と思っていたので、正直少しほっとしました。

 もし、店を続けたいのなら、こうなる前に何かの手を打たなければならなかったはずです。

 お金がないから、修理ができなかったというのは、自分達にしか通用しないロジックです。

 新「チャッピー」の流しそうめんは、1人200円だったそうです。

 それは安すぎるだろうと思いますが、そのサービス精神が、また新たなお客さんを呼んでくるでしょう。

 名経営者の稲盛和夫さんは「土俵の真ん中で相撲をとれ」と言います。

 急に徳俵に足がかかることはありません。現実をよく見て、普段から全力で働けという意味です。

 流しそうめん、始めました

 ギターの弾き語りで、ネガティブに歌う芸人のネタのようですが、結構色々な場面に応用できる気もするのです。

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明石海峡に、日本一のタコとゴミ問題をみる‐1500‐ 

 土曜日は、父の船で海へ出ていました。

 朝焼けの岸和田から出船し、走ること1時間半。

 明石海峡大橋も超えて、東二見沖までやって来ました。

 この時期、明石ダコがピークを迎えます。

 タコの釣り方は色々ありますが、大きく分けて2つ。

 1つは、エギやタコジグなどの疑似餌での釣り。

 早速タコジグで、父の友人が初めの1杯を上げました。

 続いて父、私にも。

 私はテンヤという針付きの台にイワシをくくり付けたものを使いました。

 タコは本当に好奇心旺盛な生き物で、色々な釣り方があるのです。

 速い潮流に流されないよう踏ん張るため、筋肉質で美味しいと言われる明石ダコ。

 太く短い足が特徴で、立って歩くと言われます。

 しかしこの日は後が続かずで、海峡付近まで移動してきました。

 淡路島の北端あたりは、本当にのどかな風景が続きます。

 西日本豪雨の間、通行止めだった明石海峡大橋も通行が再開され、多くの往来が見てとれます。

 この橋が完成して20年経ちますが、橋の北と南でこれだけ風景が違うことに驚き、またほっともするのです。

 釣りのほうは、淡路島の東岸を流しながら南下して行きます。

 淡路夢舞台の建築群は、安藤忠雄の設計です。

 左はウェスティンホテル、右が百段苑。100の大きな花壇が幾何学的に配置されています。

 コンセプトがシンプルで誰にでも分かりやすい、そして心に残る。それが、安藤が時代に愛された理由でしょう。

 そんなことを考えながら、ガシラを10匹ほど追加。

 そしてアジも数匹。

 本当に暑い一日で、午後2時には納竿して岸和田へ向かいました。

 家に帰ると、妻が熱中症気味だというので、久し振りに獲物をさばきました。

 料理好きの娘も手伝ってくれ、まずはタコを塩揉み。

 アジは刺身にしました。

 明石ダコは、完全な生とさっと湯にくぐらせたもの。

 日本一と言われるだけあり、一瞬で売りきれました。

 私の釣った小さいアジは、写真を撮ったあと跳ねて逃げてしまいました。

 アジに目がない娘のために、父の友人が一番大きいものをプレゼントしてくれたのです。

 夏だけ魚をさばく季節料理人なので、見栄えのほうは勘弁してもらい……

 味のほうは問題なしで、一瞬で娘が平らげてしまったのです。

 この日は豪雨の影響で、多くのゴミが浮いていました。

 明石海峡あたりが、真水を多く含んだ濁った水と、太平洋の海水の境となっているようです。

 潮目には多くのゴミ、流木が集まり、ゴミ袋が針に掛かって上がってきました。

 被災地のゴミ問題は深刻です。

 また、今日の新聞にも載っていましたが、こういったプラスチック系のゴミ問題は、より深刻に受け止めなければなりません。

 マイクロプラスチック(微細なプラスチック片)が、海洋生物の中に取り込まれ、蓄積、濃縮され、最終的には人に害を与えます。

 ゴミのポイ捨て、タバコのポイ捨てを見た時ほど、憂鬱な気分になることはありません。

 自分の家に持ち帰り、ゴミ箱に捨てる。

 たったそれだけの事を出来ない一部の人が、未来の子孫に、いや、たった今も、害を与え続けるのです。

 石油製品という、安価と便利をもたらす発明が、一部の美意識のない人によって害を与える。

 この構図を何とかする方法はないのかと、歯ぎしりしたくなります。

 スターバックス、マクドナルドと、プラスチック製のストローを廃止すると発表しました。

 その判断のように元を絶つしか方法はないのでしょうか。
 
 何れにしても、一刻を争う問題として世界全体で取り組むべき最重要課題です。

 ゴミには、その人の全てがでるのではと思っています。

 ゴミを美しく捨てると、幸せが近付いてくる。

 そんなメルヘンチックな言葉では、何の解決策にもならないでしょうか。

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値上げ1円、値下げ6円 市民の味方をスナックパークという‐1499‐ 

 豪雨が去った後もため池が決壊したりと、余談を許さない状況です。

 熊本地震の際は初めて支援活動に参加しました。

 今回の西日本豪雨に対して、支援要請があるのか、また貢献できることがあるのか分かりませんが、出来る限りのことをしたいと思います。

 話を小市民の日常に戻します。

 阪神スナックパークの閉鎖から3年3ヵ月。

 2018年の6月1日に復活オープンしていました。復活することは当初から決まっていたのでしょうか。

 それを全く知らなかったので「スナックパーク愛」を、閉鎖2週間前につづりました。

 あの空間をもう体験できないと思っていたので、話は少々エスカレートしています。

 位置は地下1階、人通りの最も多い北東角から、南へ100m程移動していました。

 5mおきに場所を示す看板があります。

 「いらち」対策でしょうが、10mおきで良かったのではと思います。いずれにしても50歩100歩ですが。

 何はともあれ、めでたいことです。

 移動のつなぎ目に、さっと寄れるこの気軽さがたまらないのです。

 店舗に関しては悲喜こもごも。

 継続組と、新規組が半分ずつくらいでしょうか。

 姫路発の「えきそば」。

 「御座候」。

 「ちょぼ焼き」あたりが継続組。

 代名詞とも言える「いか焼き」はこの行列でした。

 新規はとり天うどん。

 焼きスパゲティとワインの店などもありました。

 これらの評価はこれからでしょう。

 前スナックパークで安かった2トップは、左の「うまかラーメン」と右の「豆太郎」。

 ラーメン、カレーとも300円くらいでした。

 以前の梅田界隈なら、100円ラーメンの「まるい飯店」等もあり、学生時代から本当にお世話になったものです。

 邪道と言われても「牛すじねぎ焼き丼」411円が私のおすすめでした。

 残念ながら「豆太郎」は選外だったようです。

 しかし、うまかラーメンは今回も出店。

 みそラーメンが390円。

 以前の写真を見に行くと389円だったので、1円の値上げです。

 しょうゆラーメンは346円が340円となっており、反対に6円の値下げです。変わらず「麺の大盛り無料」となっていました。

 3年振りのうまかラーメン。

 若干量が少なくなった気がしなくもありませんが、これからは1トップとして頑張って貰わなけばなりません。

 滅茶苦茶に美味しかったかと聞かれれば、それはそれとして……

 ただ、1円上げて、6円下げるというこのさじ加減に、心意気を感じるのです。

 商売と言うものは、利益をだしてこそ継続できるものです。

 利幅を押さえて数を売るのか、数は少なくても高級な物を売るのか、無段階に選択肢があります。

 売る側からすれば、同じ利益だったとして、多くの人を喜ばせるのは前者です。

 こういった非常時には、さらにその真価を発揮するのがこのタイプの企業です。

 やはりスナックパークは市民の味方だなと、その愛情を確認したのです。

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シンプルの正体‐1498‐ 

 昨日、西日本全体を覆っていた雨雲がようやく去って行きました。

 青空を見たのは1週間振りくらいでしょうか。

 今朝、施工会社から「プレカットを進めている広島の工場で、電気がストップし、社員の出社もままならないようで、工程が読めない状態です」と連絡がありました。

 現在も話題になっていますが、数年前、タイの大雨で大手メーカーの出荷が遅れたということもありました。

 流通が進化し、日本、世界がつながっていることを実感します。

 また、信玄堤、太閤堤の名が残る通り、武力だけでなく、治水がその後の繁栄を左右したこともよく理解できます。

 特に甚大な被害がでた中国地方の方々に、心からお見舞い申し上げます。

 昨日はようやく電車も動くとのことで、伊丹へ行って行ってきました。

 梅田に着くと、宝塚線も動いておりJRで移動します。

 京都、大阪の雨を集める淀川も、茶の濁流となっていました。

 JRの伊丹駅で降りたのは、初めてかもしれません。

 伊丹は、大阪と神戸の間に位置し、酒の町として栄えました。

 江戸時代の酒蔵が残る「みやまえ文化の郷エリア」に伊丹市立美術館はあります。

 近隣に大きな美術館が多くあるので「諷刺とユーモア」という、一味違ったコンセプトで設立されました。

 現在は「ディック・ブルーナのデザイン展」が開催されています。

 ディック・ブルーナは「ミッフィー」の作者として知られ、昨年の2月に亡くなりました。

 ユトレヒトのアトリエで、彼が細い筆で、丁寧にミッフィーを描く姿がビデオで流れていました。

 1927年、オランダのユトレヒトで出版社を経営する父のもとに長男として生まれます。

 親は仕事を継ぐことを望みますが、彼は画家を志しました。父は反対したものの、自社が出版するペーパーバックの表紙をデザインする仕事を彼に任せるのです。

 その際にブルーナ社のキャラクターであるクマをデザインしたのがブラック・ベアーです。

 チケットにも使われていましたが、本を読みすぎて目が真っ赤です。

 ブルーナカラーと言われる、赤・青・黄・緑(後に灰と茶)と黒だけを使い、極めてシンプルなデザインで注目を集めました。

 20世紀初頭、オランダではデ・ステイルという芸術運動が起り、絵画ではピエト・モンドリアン、建築ではリートフェルトが牽引します。

 フェルナン・レジェやアンリ・マティスに大きな影響を受けたとありましたが、これらの運動も彼の進む道を明確にしたようです。

 館内は、ディック・ブルーナからインスピレーションを受けたアーティストの作品エリアがだけが撮影可でした。

 色々なものを見て、体感して、人は自分探しをします。

 私も「シンプルの正体」というコピーに誘われて、この展覧会にやってきました。

 ミッフィーは子供のまっすぐな瞳と向きあうため、常に顔だけは真正面を向いています。

 絵本を15.5cmの正方形としたのは、長方形だと小さな子供の顔に当たってしまうから。

 私もデザインを生業としていますが、シンプルを求める気持ちは、以下のディック・ブルーナの言葉と全く同じです。

 ぼくがシンプルを追い求めるのは、デザイン的な美しさということだけでなく、そこにイマジネーションを残したいからなのです。 
 多くを描きすぎず、ごくわずかな色を使うことで、見る人は、描かれた内容以上のものを自由に見ることができるでしょう。見る人に何かを押しつけるのではなく、自由に感じてもらえる絵を描いていきたいのです。

 先々週、京都国立近代美術館にでモンドリアンやマティスの展示もありました。

 若き日のブルーナは、南仏のヴァンスにマティスが手掛けたロザリオ礼拝堂を訪ねました。

 晩年の3年間を費やし、集大成と言われる礼拝堂のステンドグラスをみたとき「ぼくらしいものをつくりあげてみたい!」と思ったそうです。

 オリジナリティを最も求められるアートさえも、地球規模で繋がっているのです。

 先に書いた、リートフェルトが設計したシュレイダー邸は、世界遺産に登録されていますがユトレヒトにあります。

 また、オランダ中部には、レンブラントの生まれたライデン、フェルメールの愛したデルフトもあります。そしてゴッホの生まれた町も。

 ながらく「オランダへ行ったみたい」と思っていましたが、そろそろという気がしてきました。

 シンプルの正体。それは他者への敬意、期待、自由を望む気持ちだと思うのです。

■■■毎日放送『住人十色』4月14日5:00pm~5:30pm
「回遊できる家」放映

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建築家 守谷昌紀のゲツモク日記
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サッカーとワールドカップの魅力‐1497‐ 

 火曜日は多くの人と同様に、早朝3:00に起きました。

 前日は21:00に寝たので睡眠は6時間。準備万端です。長男は定期考査中にも関わらず、4:00起きで後半から一緒に応援しました。

 結果と内容は私が書くまでもありませんが、本当に惜しい、悔しい試合でした。

 優勝候補の一角で、FIFAランキング3位。フランスとオランダ、ドイツに挟まれた人口1100万人のベルギー。チョコレートとビールで知られ、東京都民より少ない国民の代表は、史上最強の呼び声通り本当に強かった。

 多くの選手がプレミアリーグ等のトップチームで主力を張り、それが控え選手までに及んでいるというチームです。

 日本も、控えに本田圭佑がいるという時代になりましたが、層の厚みは明らかに違いました。

 4年掛けて準備し、成熟してきた、史上最強の代表チームに、2ヵ月前に監督が交代し、戦術が変更された日本が、ここまでやれたことは、奇跡に近いのではと思います。

 もしこのワールドカップを戦った主力メンバーが、より多くの時間を共有し、その関係をより成熟させていたなら……

 「たら」「れば」を積み重ねても仕方がありませんが、和を尊ぶがゆえ、決断が遅くなるという傾向を、日本サッカー協会と私たちは理解しておく必要がありそうです。

 香川、柴崎、吉田、昌子と多くの功労者が居る中でも、乾のインタビューを聞いていると、本当に真面目なんだろうなと感じます。

 そして、やはり努力は報われるんだと思えます。

 本気の本田圭佑の言葉が聞けなくなると思うと、寂しい限りですが、中田英寿が引退した時とはまた違う印象もあるのです。

 それぞれが、4年先を見据えてまた高みを目指して頑張って欲しいし、私たちも日々頑張らなければと思えます。

 サッカーというスポーツが、なぜこれだけ多くの人たちを魅了するのか。またワールドカップに熱狂するのか。

 裸足でもボール1つあれば出来るこのスポーツは、多くの人に平等に機会を与え、また差も与えます。

 極めて単純なルールの中でも、人類の進化にとって最も重要だった手の使用を禁じたことが、最大の要因でしょう。

 元日本代表監督だった、イビチャ・オシムはこう言っていました。

 例えば日本人はバスケットボールでは、アメリカのレベルに達するのは難しいだろう。

 それは現時点で日本人が体格的に劣るからだ。

 しかしサッカーは違う。

  サッカーなら日本人にも不利なく戦える。

 また、日本が目指すべきところについてはこう語っていました。

 いつも自分の家に帰りなさい。

  必ず他の場所へ行けばいいというものではない。

 自分の家に帰って、もっと自分のこと、つまり日本のことをもっと考えるべきなのだ。

  欧米でのテレビやドラマをみて海外に憧れをいだくかもしれないがそれはよくない。

 模倣すれば模倣以上のものは生まれないからだ。

 極めてシンプルであるからこそ、工夫と哲学を必要とするスポーツが、オシムという思想家を育くむのでしょう。

 この哲学は、前回書いた明治、大正の思想家、岡倉天心の言葉とほぼ同じです。

 「4年後も目指す」と宣言した、岡崎のパーソナルトレーナーは、同じ番組内でこう語っていました。

 彼は、オリンピックの400mリレーで、6位入賞の経験がある生粋のアスリートです。

 サッカーでなければ、通用しない。

 それ程、元々の身体能力が高かった訳ではなかったという意味です。

 しかし、地道なトレーニングによって、2年前にプレミアリーグでの優勝に大きく貢献する選手となりました。

 それが起こり得るのがサッカーです。

 人は生きるために闘争本能を持っています。武器を使わない戦争の言葉通り、国と国の威信をかけた真剣勝負に人は魅了されます。

 選手はリスペクトしあえる仲間と、頂点を目指して戦うこと以上に達成感のあることはないでしょう。

・元々の能力より日々のトレーニング。

・個の能力だけでなく、チームとしての総合力。

・同じ目的を共有できたとき、最高のパフォーマンスが発揮される。

 こう並べると、日々の仕事と全く同じです。サッカー=仕事と置き換えても何ら問題ありません。

 更に、その目的を最も高い位置に設定すれば、ワールドカップを目指す、ナショナルチームと同じになります。

 仕事も、サッカーも、プライベートも、どこにも境界などありません。

 それをつくっているのは、いつも自分の小さな都合だと思うのです。

 先日訪れた、京都国立近代美術館にはピカソがありました。

 折角やるなら世界一。

 折角見るなら、本物を見るべきです。

 本当に良いものを見せて貰いました。

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日本の夏、日本の美、頑張れチームニッポン‐1496‐ 

金曜日の午前1頃、サッカーの日本代表はグループリーグを突破しました。

その戦い方には様々な評価がありますが、また4日間楽しみが増えました。

チーム日本の総生産能力が、かなり上がっているのは間違いありません。

昨日は、京都国立近代美術館の「横山大観展」へ行ってきました。

初夏の京都ほど美しいものはそうありません。

一昨年、作品群が世界遺産に指定されたル・コルビュジエ。

その愛弟子、前川國男が設計したのが京都会館です。

現在はロームシアター京都となりましたが、深い軒と木陰に誘われて、多くの人がお茶を楽しんでいました。

「日本の夏」というフレーズが浮かんできます。

ロームシアター京都から少し南。

平安神宮の大鳥居を抜けると、京都国立近代美術館があります。

こちらは、9・11テロの跡地に建つ4WTC(4ワールドトレードセンター)も設計した槙文彦の作品。

建築界のノーベル賞と言われるプリツカー賞も受賞している、私にとっては生きるレジェンドです。

京都市立美術館とで大鳥居を挟むように建っているのです。

明治から昭和にかけて、多くの作品を残している横山大観。

生誕150年を記念しての展覧会ですが、かなり賑わっていました。

会期の前半と後半とでは展示が変わるようで、前半の目玉はこの『 紅葉 』。

1931年(昭和6年)の作品です。

「東の大観、西の栖鳳(せいほう)」と並び称される近代日本画の巨匠、横山大観。

日本の伝統的な技法を継承しながら、新たな境地を開拓しました。

しかしコミカルなタッチもあり、巨匠然としていない所にも好感がもてます。

もうひとつの目玉、『 生々流転 』は全長40mの日本一長い画巻で重要文化財です。

山間に沸く雲から一粒の滴が生まれるところから、川、海、そして雲に戻るまで、水の一生を描いた大作です。

40mは一度に展示できないので、会期を3つに分けて1/3ずつの展示でした。

やはり、全展示の中でも『 紅葉 』は圧巻でした。

画材として、プラチナが使われているそうで、鮮やかさ、コントラストと、まさにエンターテイメントという言葉が相応しいと感じます。

常設展示でさえ、ピカソ、マティス、モンドリアンと、もう見応え十分でした。

展覧会の案内で、横山大観の師が岡倉天心だと知りました。

1896年、東京美術学校初代校長だった岡倉天心はトラブルがもとで同校を去ります。

その後、日本美術院を設立しますが、横山大観も師と行動をともにしています。

後に岡倉天心はアメリカに渡り、1906年に「Book of Tea」を出版しました。

1900年、新渡戸稲造の「武士道」が英文で発表されます。

時代は、日清戦争、日露戦争と日本は軍国主義を色濃くし、欧米からは警戒心をもった目で見られていきます。

日本人の本質は、もっと他にもあるという危機感をもって、天心が英文で発表したのが「Book of Tea」で、後に和訳され「茶の本」として日本でも出版されました。

茶道のみならず、禅、茶室、美術鑑賞、そして千利休、小堀遠州と、日本の芸術を紐解く傑作と言って間違いありません。

少し硬い表現ですが、引用してみます。

 この人生という、愚かな苦労の波の騒がしい海の上の生活を、適当に律してゆく道を知らない人々は、外観は幸福に安んじているようにと努めながらも、そのかいもなく絶えず悲惨な状態にいる。われわれは心の安定を保とうとしてはよろめき。水平線上に浮かぶ雲にことごとく暴風雨の前兆を見る。しかしながら、永遠に向かって押し寄せる波濤のうねりの中に、喜びと美しさが存している。何ゆえその心をくまないのであるか、また列子のごとく風そのものに御しないのであるか。

 美を友として世を送ったひとのみが麗しい往生をすることができる。

巻の最後、利休が秀吉との不和で切腹を強いられ、弟子らとの「最後の茶の湯」の場面へと進みます。

そして切腹の場面までを鮮やかに美しく描いています。

まさに、麗しい往生が精緻に描かれているのです。

「美」とは何か。

これは私にとっても永遠のテーマです。

どこかの区切りでまとめたいと思っていますが、岡倉天心の言葉は深くまで心に入ってくるのです。

日本代表はベスト8をかけてベルギーと戦います。

試合開始は3:00am。深夜と言えば良いのか、早朝と言えば良いのか微妙ですが、早起きして見ようと思います。

FIFAのランキング3位の「赤い悪魔」は2年間無敗だそう。

実力は間違いなく相手が上です。しかし、「十分やれると思っている」という長友の言葉通り、期待せずにはおれません。

もう一度天心の言葉を引いてみます。

 おのれに存する偉大なるものの小を感ずることのできない人は、他人に存する小なるものの偉大を見のがしがちである。

こんな時は、この極東の島国だからこそ、持っているものがあると信じたいのです。

頑張れニッポン。

建築だって、経済だって、斜陽などとは言わせないぞと思っているのです。

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