2019年 暮れは元気にご挨拶‐1654‐

 30年続いた平成から令和へと元号が変わった2019年。残すところ1日となりました。

 今年最後の日記は、勝手ながら私の1年を振り返ってみます。

1月 憧れのウェーデルン‐1549‐

 2019年の初日の出は、霊峰・御嶽山の麓から望みました。

 長男はボード、娘はスキーの腕を随分上げたなと感心したのです。

2月 運命のルーレット‐1562‐

 久し振りに「サロンのある家」に寄せて貰いました。

 竣工して13年が経ちましたが、こちらのクライアントには、本当に色々な事を教えて貰いました。

 この日も子供にお土産を頂いてしまったのです。

3月 サヨナライチロー‐1573‐

 不世出の天才打者、イチローがついに引退しました

 MLBに居るあいだに、観戦に行けなかったことに悔いが残ります。

 磯崎新が日本人として8人目のプリツカー賞を受賞したのも3月でした。

4月 毎日がスペシャルで記念日‐1574‐

 「さかたファミリー歯科クリニック」が、『デンタルクリニックデザイン事典vol.1』に掲載されました。

 物創りが私の仕事です。

 そして、本気のクライアントと出会うため、出来上がった作品を発信し続けるのです。

5月 子供は鏡で未来‐1584‐

 娘が小学6年生になり、中学受験をするので旅行はゴールデンウィークまで。

 時々喧嘩もしますが、とても仲がよい兄妹です。

 子供は社会の鏡で、人類の未来。その基本は家庭にあることを肝に銘じておかなければなりません。

6月 私の年輪‐1597‐

 「Ohana」は2009年の竣工です。

 今年も恒例のBBQに呼んで貰いました。

 年輪は冬の成長が遅い部分が濃く見えるもの。

 労苦を伴わない仕事はありません。作品こそが年輪なのです。

7月 取材大好き‐1602‐

 何度も取材を受けて貰っている「回遊できる家」

 それでも奥さんが「上の2人は取材が大好きですし、守谷さんが居なかったらこの家はできていませんから」とまで言っ下さり……

 創り手冥利につきるのです。

 この日の取材は、9月30日発売 の『suumoリフォーム 実例&会社が見つかる本 関西版』掲載されました。

8月 心の空き地にも水やりを‐1613‐

 20世紀初頭の啓蒙思想家、ジェームス・アレンは言いました。

 心という庭に、美しい花の種を植え、雑草を抜き、水やりをし、手入れをしなければ、花が咲くことも、実がなることもないのだと。

 美しい花の種は、美しい心からしか生まれてこないのです。

9月 ペリ追悼「建築は建築家よりも大切で、都市は建築より大切なもの」‐1625‐

 アルゼンチン生まれの建築家、シーザー・ペリが今年の7月に亡くなりました。享年92歳。

 9月にペリの作品、国立国際美術館で開催された「ウィーン・モダン クリムト、シーレ 世紀末への道」へ行ってきました。

 「都市は建築よりも大切で、建築は建築家よりも大切なのだ」

 当たり前のことを、完全に理解しているからこそ一流なのだと思うのです。

10月 香港・マカオの旅① <摩天楼、スターフェリー編>‐1630‐

 沢木耕太郎の「深夜特急」は、バックパッカーのバイブルと言われます。

 私も沢木ファンで、殆どの作品を読んでいると思います。

 そのスタートの地が、香港。

 若き日の沢木青年が夢中になった街は、期待を裏切りませんでした。

 ② <マカオ、100万ドルの夜景編>③ <美食の都と動乱編>④ <さよなら香港、人と街と建物編>と、4回に分けてUPしました。

 I・M・ペイ設計の「中國銀行ビル」がひときわ美しかった香港。平静が戻ることを心から願います。

11月 地獄からの復活-1640‐

 近年、マツダのデザインが随分良くなったなと思っていました。

 「モノ造り革新」を推進、成功させた金井元会長は、当時どん底だった社内には「どうせ」という負け犬根性が蔓延していたと言います。

 そこで鼓舞するのです。

 弱者でも誇りは高くあれ

 少し手を加えさせて貰い「弱者こそ誇り高くあれ」だと書きました。

12月 お目が高い!‐1645‐

 houzzという建築の専門家紹介サイトで、「中庭のある無垢な珪藻土の家」のキッチンが、日本で5番目に多く保存されたということでした。

 特別なことをした訳ではないですが、地道に綿密にクライアントと創り上げたキッチンが選ばれたことがとても嬉しいのです。

 見る人は、必ず見てくれていると、自信になるのです。

 2019年の2月。10年務めてくれた田辺さんが産休に入りました。

 出産の前日まで仕事を務め上げてくれ、できる限りのことをしてくれ、本当に感謝しかありません。

 新入社員も数名採用しましたが、最も長く勤めてくれた女性で3ヵ月。1ヵ月未満の人も数人居ました。

 多くのオファーを頂き、それに何とかお応えするために、設計・監理に関しては私一人で全ての仕事を担当させて貰いました。

 チームを構成できなかったことは、自分の未熟さ故と反省しています。

 しかし、私が何かを譲歩して迎え入れることもないのだろうなとも思います。

 そんなことがこの時代に成立するのかしないのか、真剣勝負はこれからも続きます。

 ある同業の方が「日記、時々拝見しています。守谷さんの頭の固さがよくでていますよ」と。

 決して悪意ではなく、良い意味でとのことでした(笑)

 今年の状況は、ある程度予想出来ていたので、個人としての標語は以下のように決めていました。

 時間は命、全ての瞬間を全力で

 これを完全にできたということは、勿論ありません。ただ、気持ちとしては1年間持ち続けてきたつもりです。

 来年も、全く同じ気持ちで望むほかありません。「運命は勇者に微笑む」というジェフリー・アーチャーの言葉を信じて……

 今年もこの日記、そして現場日記にお付き合い頂き、誠に有難うございました。

 皆様にとって、2020年も素晴らしい一年となりますことを確信しています。

2019年12月30日 守谷昌紀

■■■ 『Houzzユーザーが選んだ人気写真:キッチン編』2019年12月3日で「「中庭のある無垢な珪藻土の家」」が5位に選出

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【News】

『suumoリフォーム 実例&会社が見つかる本 関西版』2019年9月30日発売に「回遊できる家」掲載
『大改造!!劇的ビフォーアフター』7月21日(日)BS朝日で「住之江の元長屋」再放送
『建築家と家を建てる、という決断』守谷昌紀
ギャラクシーブックスから2017年11月27日出版
amazon <民家・住宅論>で1位になりました
『homify』5月7日「碧の家」掲載
『houzz』4月15日の特集記事
「中庭のある無垢な珪藻土の家」が紹介されました
『デンタルクリニックデザイン事典vol.1』4月1日発売に「さかたファミリー歯科クリニック」掲載
「トレジャーキッズたかどの保育園」
地域情報サイトに掲載されました

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◇一級建築士事務所 アトリエ m◇
建築家 守谷昌紀のゲツモク日記
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「風情」は凄い‐1653‐

 先週木曜日に、「ならまち」を訪れたことを書きました。

 奈良市観光協会のwebサイトにはこうあります。

 ならまちは世界遺産である元興寺の旧境内を中心とする地域を指します。

 奈良の町屋全体をそう呼ぶのかなと思っていましたが、エリアを指すものでした。

 電車で言えば近鉄奈良駅から南の商店街を抜けたあたり。

 コンビニも町屋に入っています。

 三条通り沿いにある南都銀行本店。

 東京駅や奈良ホテルの設計で知られる、辰野金吾の弟子、長野宇平治の設計。多くの銀行を設計しています。

 「南都と呼ばれる社寺のまちから商業のまちへと変化していき、現在に至る」という説明もありました。

 銀行名はここからきているようです。

 広い間口の家が多く、これは京都と反対。

 ゆったりした雰囲気なのは、このあたりが影響しているでしょう。

 風習として残るのが「身代り申(さる)」。

 「庚申(こうしん)さん」のお使いである申をかたどった魔除けが軒に吊るされています。

 家の中に災難が入ってこないよう身代わりになって貰うのですが、背中には願い事も。

 良いも悪いも背負って貰い、申し訳ない感じがしなくもありませんが。

 普通の店舗にも吊るされているのが、何だかホッとします。
 

 中心である元興寺(がんごうじ)まで南に下ってきました。

 現在の何倍もの規模を持っていたようで、ならまちエリアがほぼ境内だったそうです。

 東門の先に見えるのが、国宝・極楽堂です。

 この日は来訪者も少なく、ゆっくり見ることができます。

 南に回ると、寄棟屋根であることが分かりました。

 石仏・石塔群の「浮図田」。

 石は語らずとも何かしらの意思が伝わってくると感じるのは、決して言葉遊びではありません。

 西隣に建つのは禅室。こちらも国宝です。

 極楽堂を見返すと、西面屋根の一部は色が違うのが分かります。

 元興寺は718年に飛鳥の法興寺(飛鳥寺)が平城京に移されたお寺です。

 その法興寺(飛鳥寺)は、日本最初の本格的伽藍を持つ仏教寺院で、聖徳太子と同時代を生きた蘇我馬子が593年に創建しました。

 この部分の屋根瓦は、その頃の物で1300年の時を超えて存在する「日本最古の屋根瓦」なのです。

 現存する世界最古の木造建築は法隆寺ですが、建立が607年で、火災よって再建されたのが8世紀。

 木材としては元興寺の方が古いものだという研究もあるそうです。

 それだけの風格、風合いを感じさせるものでした。

 先日の「M-1グランプリ」でも審査員を務めたダウンタウンの松本人志さん。

 彼のコメントは常にニュースになる程、最も影響力を持つ芸人です。

 その彼に誘われて放送作家になったという高須光聖さん。自身のwebサイトでこんな事を書いていました。

 「風情」は凄い。これは日本独自のもの。同じアジアの国々にも無い。

 この黙して語らぬ凛とした空気。なんとも言えぬ落ち着いた感じは日本という国にしか存在しない。

 これはたった一軒だけでは作れないここに住む多くの人が、店が、個々で感じ取って景観を作っている その一体感が風情を作っている。

 まさに空間が作り出す共同芸術なのかも。

 メモに2007年とあるので、今も掲載されているのか分かりません。また、一字一句合っていないかもしれません。

 「ダウンタウンがいなければ……」などと言う人も居ますが、彼が関わってきた番組のキャリア、そして文章を読んでいると、間違いなく一流の香りがします。

 それは、元々才能があったのか、放送作家という過酷な仕事が彼を鍛え上げたのか、幼少期から知る松本人志の影響なのか……

 おそらくその全てだろうと想像しています。

 建築においてはプロですが、風情をここまで的確に、平易な言葉で表現するのは簡単ではありません。

 街だけでなく、人の能力も感性も、ひとりでに出来上がるものではないと感じます。

 大阪で暮らし、京都で学び、奈良で風情の奥行きを知る。

 社会に対して、周辺に対して、良い影響を与えられる仕事人でありたいと思うのです。

 ただ、あれはどう考えてもコーンフレークですが。

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アンフィールドが欲しい!‐1652‐

 昨日の日曜日は大寒でした。

 寒さはこれからが本番ですが、日が長くなっていく分岐点でもあります。

 その未明、クラブワールドカップの決勝戦があると知り、テレビで観戦していました。

 各大陸のクラブ王者が世界一を争う大会ですが、ヨーロッパ王者のリヴァプール(イングランド)と、南米王者のフラメンゴ(ブラジル)の対戦でした。

 イングランド・プレミアリーグで、2年連続得点王のモハメド・サラーはエジプト出身。

 また同チームのサディオ・マネも昨季の得点王で、セネガル出身。

 見覚えがあるなと思っていたら、2018年のワールドカップで日本と対戦し、ゴールも決めた選手でした。

 試合は延長戦で、ブラジル人のロベルト・フィルミーノが決めたゴールでリヴァプールの勝利。

 見事クラブ世界一に輝きました。

 試合後、香川真司も見出したユルゲン・クロップ監督が選手と抱き合っているシーンが印象的でした。

 解説によると、彼は試合後には全ての選手に対してこういった表現をするそうです。

 プレミアリーグ優勝まで上り詰めたドイツ人監督はとても笑顔がチャーミングな人でした。

 さすがに世界最高峰のリーグに、国籍などという縛りは関係ないのです。

 熱狂的で知られるリヴァプールのサポーターも歓喜の声を上げていました。

 その本拠地がアンフィールドです。

 このワールドクラスの選手が揃う中に、南野拓実選手が移籍する訳ですから、サッカーファンならずともその活躍を期待せずにはおれません。

 あまりサッカーに詳しくない私が、いくらかリヴァプールのことを知っているのは、「千葉の家」のクライアントに教えて貰ったからです。

 写真も計画の初期段階で送って貰ったものでした。

 「千葉の家」のファサードは、レンガの壁、大きな開口、そして金属屋根で構成されています。

 クライアントからの要望は「アンフィールドを作って欲しい!」でした。

 エントランス正面にあるジグソーパズルもアンフィールド。

 階段を上がると、マジックミラーの後ろにあるのがキッチンとダイニングです。

 幸いにも北向きだったので、思い切った大開口がとれました。

 南に向かって天井の高いリビングがありますが、ロフトを備えています。

 ここはご主人の趣味の部屋であり、サッカーミュージアム。

 「リヴァプールは夢、レイソルは生活」とはクライアントの言葉です。

 日本に居る時は、柏レイソルの熱心なサポーター。

 そして数年に一度、アンフィールドまで実際に応援に行くのです。

 その経験の中で「家を建てるならアンフィールドのような外観がいい」と思うようになったそうです。

 実際のスタジアムにも、試合に向かう選手が「バンッ!、バンッ!」とパネルを叩いてからピッチへ出ていく空間があるそうです。

 「○○みたいな家がいい」と聞くと、「何かを模すのではなく、唯一無二のものにしませんか」と思います。

 しかし、こちらのクライアントと話しをしていると、アンフィールドこそが世界一なのだと分かってきました。

 その中で、住宅のスケール感に抑え込み、素材の良さを引き出すことに腐心したのが「千葉の家」です。

 広辞苑で「モチーフ」を引くとこうあります。

 絵画・彫刻・小説などにおいて、表現の中心的な動機となるものごと。

 おそらくこの計画においては、表現の中心ではなく、アンフィールドは家を建てたいという動機まで担っていたと思います。

 昨年、「千葉の家」にテレビ取材のオファーがあり、少しやり取りをして以来お話しはしていませんが、昨日は祝杯を上げられたと思います。

 世界中のリヴァプールファンに心からお祝い申し上げます。

 これが私とリヴァプールを繋ぐ唯一のストーリーですが、人の縁とは不思議なものです。

 千葉からクライアントが訪ねてきてくれなければ、朝方までテレビの前で応援することは無かったと思います。

 今年もついに10日を切りました。

 顔上げて、世界を見てラストスパートです。

 私だけがワールドクラスになれないという法律はありませんから。

 

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静寂の価値‐1651‐

 今日は朝から奈良へ行っていました。

 猿沢池から南へ向かって歩くと「ならまち」エリアです。

 この付近をしっかり歩いたのは初めてですが、江戸、大正の町屋がかなり残っています。

 これだけ密集しているエリアはあまり見たことがありません。

 奈良市も保存に力を入れており、無料で入れる所が沢山あります。

 この「ならまち格子の家」もそのひとつ。

 通り土間にはカマドがありました。

 光庭は、街中でくらす工夫です。

 世界遺産、元興寺についてはまた回を改めて。

 訪問の目的は、ならまちエリアにある写真家の事務所を訪れるためでした。

 DIYだとのことですが、良い感じで仕上がっています。

 近頃何かと話題になるドローン。

 ミニヘリコプターにカメラを取り付けるのだと思っていたら、空飛ぶカメラがドローンだと教えて貰いました。

 このドローンとても賢いそうで、障害物があると近づかないそうです。

 またこれで撮影をお願いすることもあると思います。

 先月末、2016年の11月まで働いてくれたマルコがイタリアから遊びに来てくれました。

 食事にも行ったのですが、話すのに夢中で写真を撮るのを忘れてしまいました。

 初めて会ったのは、「黒壁の家」の3ヵ月点検だったと思います。

 こちらのお家は、西日をさけるために正面は閉じ、F字プランとなっている中庭に開いています。

 中庭に沿うように配置した洗濯室のトップライトが見えています。

 これは竣工時の内部。

 花粉症がひどいという奥さんが、何とか室内で干したいというリクエスから考えたものです。

 5月だったので、中庭には鯉のぼりが飾られていました。

 ミニマルなデザインの建築は、海外には多くないので、マルコにとっても面白いだろうと考え、この作品を選んだのです。

 メールで働きたいというオファーを貰ったのが2014年の春先でした。

 何度かやり取りをし、一度会おうということになりました。彼は28歳くらいだったと思います。

 今はイタリア北部の故郷の町で、建築家として設計事務所で働いており、条件には十分納得できているとのことでした。

 その事務所には数人のスタッフが居るのですが、ある人がラジオのボリュームを結構上げたがるそうです。

 当社のラジオは音が聞こえるか聞こえないか位の大きさに設定しています。

 自然の中で無音はないし、緊急事態の際はラジオの音が大きくなるので気付く事もできる。そんなギリギリを狙って私がセットしているのです。

 マルコは「あの位が、仕事に集中するには丁度良い」と言っていました。

 この年始に、建築士の資格を持ったキャリア10年位の女性が就職希望とのことで、入社試験を実施しました。

 アトリエ出身ではないので、デザインは別としても、実際の図面も描けそうですし、建築確認申請の経験も十分に持っていました。

 試験終了後、私が雇用できる条件を提示しましたが「もう10歳若ければお世話になりたかったのですが」という返事でした。

 それぞれの人生なので、全く問題ないのですが、その後の雑談の中で「ラジオの音がなぜあんな中途半端な大きさなんですか」という質問がありました。

 説明はしましたが、マルコの話しを聞いた時、やはり人は落ち着くべきところに落ち着くんだなと、思ったのです。

 仕事場は創造の場です。心を落ち着けて考える場で、静寂は必須だと考えています。

 それらの意味も込めて「アトリエ」なのです。

 電話、fax、メール、ライン、メッセンジャー等々、ありとあらゆる連絡手段ができました。

 私が「ラインは入っていない」というと、化石みたいに言われるのですが、会社の電話とメールをしっかりケアするほうが断然大事だと考えています。

 静寂に価値があることを理解してくれる人。また、そんな中で、建築や空間のことを考えることが喜びだという人が、日本には必ず居るはずです。

 6千万人のイタリア人の中にも居たのですから。

 何人にせよ、そんな人に届くまで創作を続けるしかありません。

 庭木の中に淡桃の花が咲いており、まさかもう桜?と思って見に行くと十月桜でした。

 建築も写真も自然も、黙して語らないもの。寡黙な彼らを私が好きなだけかもしれません。

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この素晴らしい自由‐1650‐

 大阪平野から東に見える生駒山地。

 紅葉で全体が朱に染まり、さながら西遊記にでてくる火焔山のようです。

 行ったことは無いのですが(笑)

 久し振りに、信貴生駒スカイラインを走りました。

 料金所で「片道ですか」と聞かれたので「真ん中あたりで戻ってきます」と。

 それでも往復料金となり1950円だそうです。

 意外とするんだなと思いながらも、そこはニコッと笑顔で。

 紅葉のピークは過ぎていましたが、落葉してすぐのようです。

 真っ赤な絨毯が敷き詰められているようで、それはそれで美しいものでした。

 山の稜線を走るので、どちらにも景色が開けています。

 大隅半島先端の佐田岬もこんな景色だったかなとか、淡路島の鳴門岬の景色も良かったと思い出していました。

 途中、鐘の鳴る展望台という場所があります。

 プラス12mということは4階建ての建物くらい。

 一番張り出した先端に展望台があるのですが、もう下を見れずで……

 アングルを考える余裕もありませんでした。

 まずは北を向いて、何とかシャッターを切りました。

 続いて西の大阪平野。

 景色は最高ですが、高い所が苦手な私には刺激が強すぎました。

 帰り道の途中に「とっくりダム」と言う名のダム湖を見つけました。

 面白い名前だなと思い立ち寄ってみると、こちらは紅葉を湖面に映して2倍の美しさ。

 晩秋から初冬にかけての景色もまもなく終わりです。

 火焔山は中国新疆ウイグル自治区のトルファンに実在する山です。

 中国はこういった辺境の地の抗議活動を弾圧し、再教育の名のもとに強制収容していると報道されています。

 10月中旬に香港へ行った際に訪れた香港理工大学です。

 この時点でも反抗の張り紙が敷き詰められていました。

 私はザハ・ハディド設計の建物を見るのが目的でした。

 建物、空間共に圧倒されましたが、この建物を実現させた香港の豊かさも、併せて実感させられます。

 それは香港の自由貿易がもたらしたものに間違いありません。

 先だって、警察は構内に立てこもる学生を強制排除するという実力行使にでました。

 新疆ウイグル自治区の事も含めて、世界が中国に目を向けざるを得ない状況となっています。

 京セラ名誉会長の稲盛さんから、先の大戦について、こんな話を聞かせて貰いました。

 戦時中、アメリカは自由主義だといっても男も女もチャラチャラしている。

 勇敢に戦うのは日本人だけだであって、アメリカ人なんてちょっと脅かしたらすぐに逃げていく。だから竹槍でも十分戦えるんだと教えられた。

 しかし実際のアメリカ軍は強く、日本は敗戦、降伏することになります。

 戦後、終盤の激戦の中でもアメリカ兵が体を張って突撃していく実写フィルムを見たそうです。

 実際には満足に英語を話せない者さえいるアメリカ軍を一つに集結させたものは何だったのか。アメリカ人に聞いてみたそうです。

 すると「このアメリカほど自由な国はない。英語が話せなくても、肌の色が違っても住むことができる。この素晴らしい自由を失ってもいいのか、という大義名分があった」と。

 この話を聞いて、初めて日本が負けたことに納得しました。

 香港に人とお金が集まったように、人は自由が大好きです。

 強制や、規制が好きな人など居ません。それが持続することがないのは、歴史を見れば明らかです。

 人は権力を握ると、そんなことまで忘れてしまうのか、自分だけが特別だと思いたいのか……

 しかし、自由と責任は表裏一体です。

 感謝と覚悟をもって「この素晴らしい自由」を謳歌したいと思うのです。

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せめて4対6‐1649‐

 冬が暖かくなったといっても12月中旬です。流石に寒くなってきました。

 ディーラーにスタッドレスへのタイヤ交換を依頼していました。

 預けてあった車を、なにわ筋沿いにある店舗へ引き取りに行って来ました。

 通りのイチョウが色付いており、この時期の楽しみでもあります。

 タイヤ交換だけなら1時間程ですが、先々週、運転席の窓ガラスが突然「ドンッ」という大きな音と共にドアの中に落ちてしまいました。

 窓ガラス無しの状態になっていたのです。

 調べて貰った結果「窓ガラスを固定するナットが緩んでしまったようで……」とのこと。

 誠実なお詫びがあったのと、再固定し緩み止めの薬剤をしっかり塗布するれば問題ないとのことだったので、納得して帰ってきました。

 持って行く時は半分オープンカーで、嬉しいのが本音でしたが。

 今年の年始は、伊豆半島を旅しました。

 沼津で少し遊び、駿河湾沿いを走りました。

 目的地を決める時は、何かしら風景のイメージをつくりますが、富嶽三十六景よろしく、海越しの富士山を思い描いていたのです。

 しかし残念ながら、丁度そのタイミングで山頂に雲。

 そのカットは、またの機会になってしまいました。

 この旅では、行きの高速道路で降り口を通過してしまい「特別回転」という制度を紹介しました。

実はもうひとつ大きな失敗をしていたのですが、恥ずかしくて書いていなかったのです。

 ちょっとした不注意で、縁石にタイヤを当ててしまい、ゴム部分がえぐれてしまったのです。

 この状態で大阪まで帰るのは怖いので、JAFに連絡すると提携会社の人がすぐにやってきてくれました。

 車の腹からスペアタイヤを外し。

 正月休みにも変わらず、とても愛想の良いお兄さんが、てきぱきと入替をしてくれたのです。

 自分で交換も不可能ではありませんが、旅先でもあり本当に有り難かったのです。

 そんな関係で、現在スタッドレスは前輪部のみが新品。

同じ銘柄のスタッドレスタイヤですが、楕円の部分を見れば「34週目、2018年製造」と分かるとディーラーの人に教えて貰いました。
 
 当たり前ですが、サービスする側とサービスして貰う側で言えば、前者の方が経験値が高いものです。

 しかしサービスする側が、自分にウェイトを置くか、相手に尽くそうとするかで、全く違った印象になります。

 この比率は、10対0、5対5、0対10と無段階のバリエーションがあります。せめて4対6でなければ、仕事上での会話は成立しないでしょう。

 職種は伏せますが、ある営業マンが「新しく担当になったので、守谷さんのいい日に行きますよ」くらいの感じで電話をしてきました。

 仕事のキャリアは5年目と言いますから20代でしょう。「まさかあなたに敬意など持っていませんよ」という言葉が後ろから聞こえてきそうで、印象的には2対8。

 あまりにも馴れ馴れしいので「守谷さまの間違いじゃないのか」と言ってしまいました。

 評論家、谷沢永一は著書「人間通」でこんなことを書いていました。

 才能も、智恵も、努力も、業績も、忠誠も「可愛げがある」という奴はかなわない。秀吉にあって家康にないものは「可愛げ」であると。

 しかし「律儀」を磨き上げれば、殆ど「可愛げ」になる。家康はそれで天下を取ったのだと。

 「律儀」も「可愛げ」も無いのに、口のきき方だけは一人前。そんな営業と喋りたいという人など誰もいません。

 翻って自分を見てみると、「可愛げ」はほぼ無いでしょう。

 ということは「律儀」で生きるしかありません。ということくらいは自覚しているのです。

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「中庭のある無垢な珪藻土の家」が紹介されました
『デンタルクリニックデザイン事典vol.1』4月1日発売に「さかたファミリー歯科クリニック」掲載
「トレジャーキッズたかどの保育園」
地域情報サイトに掲載されました

メディア掲載情報

◇一級建築士事務所 アトリエ m◇
建築家 守谷昌紀のゲツモク日記
アトリエmの現場日記

いいねでいいのか‐1648‐ 

 長男が定期考査中で、昨日も夜遅くまで勉強していました。

 大して勉強しなかった私は基本的に一夜漬け。帰りの地下鉄では船を漕ぐ程に熟睡していました。

 それで、何度も谷町線の終点まで行ったものです。

 長男もちょくちょく八尾南駅まで行っているようですが、私と同じ一夜漬けではなければ良いのですが……

 先日、その八尾南駅前を車で通る機会がありました。

 面白い建物があるなと思い、見に行くとミキハウス本社でした。

 子供服のブランドですが、先週、産経新聞の夕刊に、木村皓一社長の記事が連載されていました。

 「スポーツには人を元気にするに力がある」という考えの下、多くのアスリートを援助しています。

 今回の東京オリンピックでも所属選手がすでに内定。

 有名なところでは、卓球の福原愛さんも所属選手でしたし、オリンピック柔道3連覇の野村忠宏さんは現在も所属しているようです。

 建物は、先日の「堺市立のびやか健康館」に続き、見た目の通り黒川紀章の設計でした。

 1991年の完成ですが、いずれは世界の富裕層がここにやってくるという考えのもと、随分背伸びして建てたら銀行さんに怒られたという記事も見つけました。

 しかし思いは現実となった訳です。

 連載の中に、スポーツ選手の支援は宣伝効果ありきではないと書かれていました。

 本業で結果を出しているからこそ出来る社会貢献で、立派な方だなと感じたのです。

 今朝、アフガニスタンで非業の死を遂げた、医師の中村哲さんの遺体が福岡に戻ったというニュースがありました。

 中村さんは、下痢で脱水状態になった子供を抱いて押し寄せる若い母親をみて、治療どころではなく、まずは清潔な飲料水が先だと、取り組んだのが灌漑用水路の建設です。

 日本の伝統的な技術を独学で学び、自らが重機を操ることもあったそうです。医師であるにも関わらずです。

 まるで現代に蘇った行基か空海のような人が、なぜ一切正当性のないテロリストの凶弾に倒れなければならなかったのか。

 この世には、神も仏も居ないのかと嘆きたくなります。

 記事の中に、アフガニスタンとの縁が紹介されているものがありました。

 アフガニスタン北東部には希少な種の蝶がおり、昆虫が大好きだった中村少年にとっては、是非訪れてみたい土地でした。

 医師となり、福岡県の山岳会の遠征でこの地を訪れた中村さんは、親しみをおぼえ、この地に赴任することになります。

 人生を左右する要素は沢山あると思いますが、中村さんにとって、それは子供の頃の昆虫への興味だったのです。

 人生にはいくつもの分かれ道があり、どれを選ぶも自由です。しかし、歩いていなければその分岐点さえやってきません。

 どれだけ高性能な車をもっていたとしても、アクセルを踏まなければ全く価値のない鉄の塊です。

 駅で見かけたある大学の公告が秀逸でした。

 「いいね!」で、いいのか。

 私もまだまだ道半ばですが、人生を楽しむコツは、何にでも興味をもつことと、方向性を決めたらしっかりアクセルを踏むことだと思います。

 自分の人生の行先を決めるのも、運転するのも自分。傍観者では駄目だと、せめて自分の子供には伝えたいのです。

 銃撃を受けたことも、ましてや死んだことも無い私が言うのもおかしいのですが、中村さんは充実した人生を送られたのではないかと思います。

 木村さんにしても同じですが、写真で見るお顔が全てを物語っていると思うのです。

■■■ 『Houzzユーザーが選んだ人気写真:キッチン編』2019年12月3日で「中庭のある無垢な珪藻土の家」が5位に選出

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

【News】

『suumoリフォーム 実例&会社が見つかる本 関西版』2019年9月30日発売に「回遊できる家」掲載
『大改造!!劇的ビフォーアフター』7月21日(日)BS朝日で「住之江の元長屋」再放送
『建築家と家を建てる、という決断』守谷昌紀
ギャラクシーブックスから2017年11月27日出版
amazon <民家・住宅論>で1位になりました
『homify』5月7日「碧の家」掲載
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お目が高い!‐1647‐

 庭木のサザンカが満開です。

 築38年の古家を買ったのが8年前。

 よって、私が選んだ庭木は1本もありません。

 毎朝、この小さな庭に向かって瞑想しますが、花木の変化が、日々に僅かな平静を与えてくれるのです。

 初代阪急梅田駅のホームだったコンコースもクリスマス仕様になっていました。

 14年前に書いた「阪急梅田の歴史」はこの日記で、最も読まれている記事のひとつだと思います。

 私にとっては、中学、高校、予備校の通学路でもあり、原風景のひとつなのかもしれません。

 火曜日に「おめでとうございます! あなたの写真が Houzz の特集記事に取り上げられました」というメールが届きました。

 Houzzは、建築関係の専門家紹介サイトですが、世界規模のサイトでもあり、作品が完成する度にUPしています。

 貼り付けてあったURLをクリックすると、

【2019年】日本のHouzzユーザーが選んだ人気写真:キッチン編 

 とあります。

 2018年1月〜2019年11月15日までにアップロードされた写真のうち、2019年1月〜11月15日までの間に日本のHouzzユーザーがアイデアブックに保存した写真のデータに基づいています。

 ともありました。

 「中庭のある無垢な珪藻土の家」のキッチンが、日本で5番目に多く保存されたということでした。

 こちらの奥様は本当に忙しい方で、相談に見えてからも、動きやすい配置をよく勉強、研究されていました。

 ゴミ箱を置く位置や、ゴミ箱上にある小さな棚にはストック用のゴミ袋を置いて置きたいなど、詳細までイメージが出来上がっていたのです。

 キッチン裏にある家事スペースは、仕事も出来るようにダイニングと距離を取りながらも、顔を上げればお子さんが見えるような開口で繋がっています。

 もの凄く広いLDKなら無条件に賛成したのですが、家事スペースをキッチン後ろにとると、少しリビングが狭くなるかもと懸念していました。

 本当に奥様の希望通りの配置にしても良いものか、随分悩んだのです。

 悩みに悩んだのですが、希望の通りのプランで行くことにしました。

 おそらく人生で最も沢山のお金を掛ける「家」に関わらせて貰っているので、悩んだり逡巡することばかりです。

 しかし、ある時気が付きました。

 自分が答えをどうしても出せない位に迷っている時は、どちらに進んでも大丈夫だと。

 このキッチンは、特別な材料を使っていたり、驚くような配置になっている訳ではありません。

 もっとはっきり言えば、格好のよいキッチンは他にも沢山あったはずです。
 
 その中で、この写真が選ばれたことに、見る人がどれだけ真剣に何かを探しているかを感じるのです。

 「お目が高い!」と言えば、目線が上から過ぎるでしょうか。

 こんなプレゼントが時々届くと、「ああ、間違っていなかったんだ」と勇気が湧いてきます。

 小さな結果の積み重ねが、一所懸命に働けば、必ず誰かが見てくれているという確信へと繋がって行くのです。

 これを、梅田のコンコースを通って通学していた頃に分かっていれば、最終学歴はマサチューセッツ工科大学だったはずですが、それはもう叶いません。

 ただ、エリートではないから分かり得ることもあると思います。負け惜しみかもしれませんが。

■■■ 『Houzzユーザーが選んだ人気写真:キッチン編』2019年12月3日で「中庭のある無垢な珪藻土の家」が5位に選出

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与えよ、さらば与えられん‐1646‐

 12月に入り、忘年会シーズンも佳境というところでしょうか。

 私の仕事には「得意先」というものが無く、かなり少ない方だと思いますが、それでもいくつかの会に声を掛けて貰いました。

 先週末は一番遠くでの開催。奈良県下北山村まで行って来ました。

 ボートを置かせて貰っている「トボトスロープ」の忘年会に声を掛けて貰ったのです。

 スロープとある通り、増減水の激しい池原ダムでボートの昇降をしてもらう、可動港のような施設です。

 池原ダムには20年以上前から訪れていますが、こちらにお世話になるようになったのは5、6年前から。

 長男が小学生になり、一時は辞めていたバス釣りを再開した頃でした。

 会場は、店長さんが近くのバンガローを借りてくれています。

 帰りを気にする必要もなく、尋常ではない釣り好きばかりが集まる、ただただ楽しい会なのです。

 常連のお客さんにプロの料理人が居られ、店長の奥さんと全て準備して下さり、私達は食べて飲むだけ。

 今年のメインはクエ鍋でした。

 おでん保温機?までお店から持って来てくれたとのこと。

 バチがあたるのではと思う程楽しませて貰いました。

 メンバーには、元プロや釣具メーカーのテスターの方まで居られ、聞けば聞く程勉強になります。

 私もここに来たなら、朝から晩までかなり集中して釣りをしているつもりですが、ある方は年に100日は来ていたとのこと。

 また、「毎日池原ダムの水位は見てるので、釣りに来ていなくても、頭では毎日釣りをしてますよ」と。

 なるほど。そこまでは出来ていないなと納得したのです。

 夜中の1時くらいまで盛り上がっていましたが、折角教えた貰ったことを試してみたいもの。

 6時に起きて湖上へ出ました。

 快晴で、ピリッとした寒さも心地よく。

 グングンという当たりがロッドから伝わって来ましたが、1匹目はウグイ。

 いわゆる外道のウグイを更にもう1匹追加。

 本命のバスを求めて大きく移動します。

 先月は、初めて野生の熊を見ました。

 怖くはありましたが、そこまでの大自然の中に居るだけで幸せなのです。

 とは言え何とか魚は手にしたいもの。

 6匹釣って、最大で40cm弱。

 思ったサイズは手に出来ませんでしたが、最後の1投でも釣れ、納得してスロープに戻ったのです。

 上手い人の話を聞くと、自分の未熟さが分かります。

 多少落ち込むのですが、学ぶことがあるということは伸びしろがあるということ。何でも一生勉強です。

 武道をしている友人が、自身の師の言葉だと教えてくれました。

 与えよ、さらば与えられん

 聖書に

 求めよ、さらば与えられん

 という言葉があるようなので、私の聞き違いかもしれません。

 しかし、できれば何かしらのプラスの影響を与えられる人でありたいと思います。

 そういう意味においては、芸能人などは究極の仕事かもしれません。

 自分という存在が商品なのですから。

 そこまでは無理ですが、設計、デザインすることで、誰かを幸せにしたいという一点において、ブレは全くありません。

 今年も残すところ1ヵ月。悔いのない2019年とするため、ラストスパートです。

 残念ながら、釣りに関してはまだまだ人に与えるものはありません。

 しかし、そんな存在があることもまた幸せなのです。

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