
大阪城公園は、いつ行っても多くのランナーが集まっています。

ひとりで黙々と走っている人、仲間で集まって走っている人と様々です。

チームで練習している人達は概ね楽しそう。
マラソンのコースにもなっているので、ランナーが集まるのは当然ですが、やはり信号が無いのが一番のメリットです。

池井戸潤の『陸王』を読んだのは2019年でした。
以下はその時に要約したあらすじです。
足袋を100年作っている老舗メーカーが、先細りする業界を憂い、ランニングシューズ業界に参入する話です。
小さな足袋メーカーの4代目社長の葛藤と、学生時代はトップランナーでしたが、社会人になって故障、そこから復活していく若きランナーを軸に物語は展開していきます。
彼に新しく開発した「陸王」というシューズを履いて貰うところから展開は加速していきます。
大企業に所属するが故、自社のシューズと自分の損得しか考えていない悪役営業マン。ランナーのことだけを考えている職人肌のシューフィッター。新素材を見つけ新たな可能性に掛ける零細企業と、冷たい銀行の実態と、ドラマ化して貰わずとも、画が浮かんでくるような小説です。
この若きランナーは「陸王」を履きマラソンに出場。
ライバルを退け、見事に復活優勝をとげるというハッピーエンドでした。
2017年に役所広司主演でドラマ化されていたようで、つい最近ネットフリックスで観ました。
小説も最高に面白かったのですが、私の要約では「足袋」について少ししか触れていません。
これをドラマで観ると、いやがうえでも「足袋」をベースにしたランニングシューズに目がいきます。
ビジュアルの影響はかくも大きいのだと感じました。
このランニングシューズにはランニング足袋、きねや無敵というモデルがあることも分かりました。

店頭で販売されているのかなと思い、ショップを回ってみました。
ただ、足袋タイプのものは全く見つけることができませんでした。

一般的なランニングシューズは1万円くらいからのよう。
きねや無敵は、Webサイトで見ると6600円なので比較的安価です。
足袋は、和装の際の靴下のような物なので、そう考えると結構な金額なのかもしれません。
和装自体がかなり減っているので、足袋をみる機会はかなり減りました。

と思っていたら、時間調整をしている様子のトラックのフロントガラス越しに……

足袋です。
足袋の需要は、間違いなく減る傾向にあると思いますが、建築現場では未だに必需品です。
特に、高所で働く鳶で足袋を履いていないことのほうが稀。
繊細な足裏感覚が必要な仕事には不可欠なのです。
きねや無敵のWebサイトにはこうありました。
シューズは、進化した。
人の足は、退化した。
薄底のソールで、人本来の走り方に戻し、少しでもランナー人生を延ばして欲しい、というのがメインコンセプトのようです。
それが叶えられるのか、叶えられないのかは、私には分かりませんが、「素足感覚に近づけることによって、地面の表情も楽しんでほしい」というメッセージにはとても共感できます。
ここでは地面となっていますが、建築においては床となります。
リノベーションの相談があった時、建物に入った時に一番情報をくれるのは足裏です。
床下に土間がなく、地面がむき出しの家の床は、踏み感がかなり柔らかく、少し歩いただけで分かります。
また、床の構成を決める際、「ユニットバスの床と、本格的なホテルのしっかりした床を想像頂けますか?」と聞くと、ほぼ誰もが、浮き床とモルタルが床下に詰まった湿式の床の違いを理解してくれます。
浴室は裸足で入るので、誰もが足裏でその硬さを感じ取っているのです。
坂村真民の「尊いのは足の裏である」という詞があります。
頭でなく、手でなく、一生汚い所と接し、黙々と努めを果たしてゆく足の裏こそが尊いというのです。
その足裏を保護し、最大限に能力を発揮させる足袋。
最も足の裏をリスペクトしている物こそが足袋かもしれません。
靴下では薄すぎる、靴では厚すぎる。
きねや無敵だけでなく、もっと足袋の技術が活用される道はないのかなと考えていました。
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