この時期、家を出る前は庭木の梅に目が行きます。
先週末、今年はじめの花が開きました。
咲き始めると、追いかけるようにポツポツと続きます。
今朝はここまで進みました。
ご近所の庭では椿も満開。
冬には冬の楽しみがあります。
食卓にあった娘の教科書をパラパラめくっていると、清少納言の「枕草子」をみつけました。
冒頭のくだりはあまりにも有名です。
数年前、広告にパロディで使われているのを見かけました。
春はあけぼの。
やうやう白くなりゆく山際、
少しあかりて、紫だちたる雲の
細くたなびきたる。
【現代語訳】
春はなんと言っても明け方。だんだんとあたりが白んで、山のすぐ上の空が少し明るくなって、紫がった雲が細くたなびいている様子。
教科書の解説に、「春夏秋冬それぞれの季節について、その良さを最も感じる時間帯を取り上げ、様子を述べている」とありました。
そんな内容だったとは、すっかり忘れていました。
確かに、春の明け方はワクワクするものがあります。
寒かった冬が終わり、日が昇るその瞬間、春のにおいだったり、生命の息吹のようなものを感じます。
そして、「夏は夜」「秋は夕暮れ」と続きます。
暑い昼間をやりすごした後、海辺で波音など聞きながらの一杯などは最高です。
また、風が冷たくなりはじめる秋の夕暮れは、誰もが感傷的になるもの。
いずれも異論はありません。
そして冬です。
冬はつとめて。
雪の降りたるは、言ふべきにもあらず、
霜のいと白きも、またさらでも いと寒きに、
火など急ぎおこして、炭持てわたるも、
いとつきづきし。
昼になりて、ぬるくゆるびもていけば、
火桶の火も、白き灰がちになりぬるは わろし。
【現代語訳】
雪が降り積もっているのはもちろん、霜が真っ白におりているのも、早朝に炭を運んでいるのも冬の早朝に似合っている。昼になって、だんだん寒さが緩むと、火鉢の炭火も白く灰をかぶってしまってみっともない。
「つとめて」は「務めて」なのか「勤めて」なのか、それが早朝を指すのは面白いところです。
朝の読経を「おつとめ」というのも、似たようなニュアンスでしょうか。
他の季節は、良い時間帯をピックアップしているのですが、冬の昼はみっともないとまで書いています。
清少納言の生きた平安時代、寒さは現代の比ではなかったでしょう。しかし、寒さが緩むとみっともないとまで書いているのは痛快です。
「行く夏を惜しむ」と言いますが「行く冬を惜しむ」とは言いません。
日が短く、寒い冬を、心のどこかで、過ぎ行くことを望んでいる部分があるからでしょう。
冬において一番良い時間帯は早朝でした。また、午前を制するものは一日を制します。
冬でも努めて、早起きしたいと思うのです。
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