新年度を迎えて2日目。事務所も新体制になり、二回目の新年を迎えたような気分です。
前回は、引越し、初めての来客でしたが、今回は賃貸マンションの話しです。結婚して5年と5ヶ月暮らしたマンションを、先週末に返しました。
初めはどんな所でも良いと思っていたのですが、小さめで家賃が安いこの部屋に決めました。
主要な開口部は東側のみでしたが、4階から生駒山を望む景色がとても気に入ったのです。
建築設計が仕事ですが、自分の家は、最低限で良いと思っていました。しかし今のマンションに問題など全く無く、小さなぶん暖かく、比較的安全で、すぐご近所が居るという安心感もあります。
特に新婚の家庭が多いマンションで家族構成も近く、気楽に暮らしていました。
形は変われど、マンションは現在の長屋。仕事中心の生活には、ぴったりだったのです。今は感謝の気持ちしかありません。
ここからは少し実務的な話しです。
賃貸マンションを出る際、よくあるトラブルは、現状回復についての解釈です。
これは国交省がwebサイトでガイドラインを示しています。
民間住宅関係の中に、『原状回復をめぐるトラブルとガイドライン』について の概要と全文があります。
その中で、
①原状回復とは
原状回復を「賃借人の居住、使用により発生した建物価値の減少のうち、賃借人の故意・過失、善管注意義務違反、その他通常の使用を超えるような使用による損耗・毀損を復旧すること」と定義し、その費用は賃借人負担としました。そして、いわゆる経年変化、通常の使用による損耗等の修繕費用は、賃料に含まれるものとしました。
⇒ 原状回復は、賃借人が借りた当時の状態に戻すことではないことを明確化
②「通常の使用」とは
「通常の使用」の一般的定義は困難であるため、具体的な事例を次のように区分して、賃貸人と賃借人の負担の考え方を明確にしました。
ところが、借主がこの事を理解していないと、色々な問題が発生します。例えば妻が独身時代に住んだマンションを出る時に「清掃料として敷金から2万円引かせてもらいます」と言われました。もちろんこれは間違いです。
ゴミや廃棄物を残しては駄目ですが、借主に過失がある場合を除いて、何かを負担する必要はありません。正確に原状回復の解釈を伝えたところ、頭を掻きながら「あ~あ、そうでしたナ」みたいな感じで、敷金は全額返って来たのです。
全てこんな管理会社とは言いませんが、起こりうるケースです。
先のガイドラインの全文には、過去の判例も多く載っています。貸主の要求が過大すぎるケースが目立つのです。
弁護士を雇える程には戻ってこないし……と泣き寝入りが多いので、こんな事になっているのですが、現在は一日で結審する「小額訴訟」という精度もあります。
知人の司法書士に聞いたところ、自分の事であれば弁護士、司法書士に依頼しなくても、通常の裁判ができるそうです。
私が住んだマンションでは「敷金に対して、退出時にいくら引きます」という敷引きの特約事項がありませんでした。ところが出て行く知人の多くが40~60万円のうち全額、もしくは多くを棒引きされたというのです。
それで、立会いの日を楽しみにしていました。どこをどう譲っても過失などありません。ここに住む間、誰よりも愛情を持って暮らしましたし、感謝の気持ちも込めて、借りたその日のままのように美しく清掃しておきました。
立会いの結果、40万円の敷金が全て返ってきました。それはそうです。預けておいた我が家のお金ですから。立会人も、柔和な感じの人でクレームはありませんでした。最後に「住み良い部屋でした」と伝えるとニコッとしていました。
ただ、「国交省の示すガイドライン、過去の訴訟の判例と照らし合わせても、私達が住む間に、過失があったとは考えていない」という旨は先に伝えました。
間違っても、お願いしたり、勘弁して貰うという類のものではありません。納得できなければ、互いに法の裁きを受ければ良いだけですから。1円も払うなというのでなく、間違った事は許されるべきではないはずなのです。