一生に一度、大阪ガス『住まう』‐1539‐

 10月の中旬、取材に立ち会ったことを書きました。

 大阪ガスの機関紙『住まう』のものでしたが、「中庭のある無垢な珪藻土の家」掲載の67号が届きました。

 読み物としても面白いですし、大阪ガス関係の施設で無料で配布しているので、良ければ手に取ってみて下さい。

 会社にも何冊か残っているので、ご希望の方にはお送りします。

 今回は、巻頭特集の8ページ。

 表紙をめくると大きく写真が2枚。やはり一番前は嬉しいものです。

 『住まう』にはこれまでに「池を望む家」「イタウバハウス」が掲載されたと書きました。

 大阪ガスのwebサイトには、44号以降の作品が掲載されています。

 この号から誌面のスタイルが変わったそうで、その巻頭特集の第1号が「池を望む家」だったのです。

 2010年の秋のことでした。

 webサイトでは最下に『CASE 1』として紹介されています。

 ちなみに「イタウバハウス」『CASE 33』。こちらは見開き1ページの中ほどのコーナーでした。

 『住まう』のスタイルが変わったのは、製作会社が変わったからでした。

 その1回目ということで、担当者も気合が入っており、非常に熱心だったことを覚えています。

 テレビの取材でロケハンは普通ですが、雑誌取材でロケハンをしたのはこの時以外に経験がありません。

 この方はカメラマンだったと思います。熱心に内部を見て回っていました。

 実は「池を望む家」は、撮影の天気に恵まれず、外観だけは晴れの日に撮りなおしています。

 しかし、このロケハンの日は素晴らしい天気でした。

 写真を見ていると外部の景色がよく分かり、この家の空間がよく伝わってきます。

 それで、10年振りに当社のサイトも何枚か写真を差し替えてみました。

 現在なら、天気が少しでも悪ければ、クライアントにも写真家にも延期をお願いします。

 負担が大きいのは分かっていますが、これらの機会は私達にとってはおそらく一生に一度。

 当時撮って貰っていた写真家は、「天気が少々悪くても、いい建築はいいから」と言っていました。

 現在撮って貰っている写真家も「曇りや雨の方が映える建築もありますよね」と言います。

 いずれも真理ですが、私が絶対晴れでないと駄目だと思った建物は、譲らないことにしました。

 もし「このくらいの天気なら撮ってしまいましょうよ」と言われたら、写真家を替える覚悟で延期をお願いします。

 当社にオファーをしてくれるクライアントも、おそらく一生に一度だという気持ちの方が殆どのはず。

 それを一番理解していないのは、概ねプロ側です。

 写真家にとって撮影は日常です。建築家にとって建築設計もまた然りですから。

 「いつもクライアントの気持ちだけを考えています」と言いたいのですが、そんな甘っちょろい言葉の何百倍も、お客さんは求めているはずなのです。

 もし、他の人よりクライアントに寄り添える方法があるとしたら、どれだけ後悔したかや、苦い経験をしたことがあるかに尽きる気がします。

 「十分にやったんだ」と言い聞かせることもできますが、それでは駄目なのです。

 「中庭のある無垢な珪藻土の家」も2度延期し、3度目の撮影でした。

 クライアントは、「もう一度あの撮影を、という気持ちには……」と。今回の誌面もその時の写真です。

 本当に正直な、愛すべき方でしたが、やはり一生に一度だったのです。

 多くのことは一生に一度の経験です。

 利休の言う「一期一会」は決して特別な場面を指すのではない気がするのです。

■■■毎日放送『住人十色』4月14日5:00pm~5:30pm「回遊できる家」放映

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建築家 守谷昌紀のゲツモク日記
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奈良監獄で自由と罰について考える‐1538‐

 金曜日は勤労感謝の日。

 11月も終盤に入りました。

 晩秋の夕暮れ。

 日本の里山には柿がよく似合います。

 「旧奈良監獄」が、23日から25日まで最後の一般公開をするという記事をみつけ、急いで申し込みました。

 設計者のお孫さん、ジャズピアニストの山下洋輔さんが、保存運動をしているという話しも記憶にありました。

 奈良監獄は、近代化を目指す明治政府がつくった五大監獄のひとつ。

 1908年の完成で、2021年にはホテル等の複合施設に生まれ変わります。

 1946年には「奈良少年刑務所」となり、昨年老朽化のため閉鎖されました。

 入場チケットに空きがあったのは、昨日16:00の最終回のみ。

 五大監獄で現存するのはここだけなので、最後の最後に滑りこみセーフという感じ。

 申し込んだ後、すぐに家族も誘ったのですが、その日の夜には全て売り切れていたのです。

 その理由が分かります。凄い人出でした。

 ロマネスク様式の表門を見返しても長蛇の列。

 中央看守所までそれが続いています。

 中央看守所から舎房が放射状に伸びる形態は「ハビランド・システムと呼ばれます。

 側面からみるとその配置が分かりやすいでしょうか。

 各舎房の交点、中央看守所からの景色は圧巻です。

 人も殺到する訳です。

 2階と1階の中央は光と空気が行き来します。

 ところどころにあるトップライトの光も、1階まで落ちてくるのです。

 内部空間も繊細につくられていました。

 しかしここは監獄。

 罪を犯した人たちが入るところです。

 勿論のこと自由はありません。

 2階からは南東に若草山を望む風光明美なところです。

 近隣との境にある塀は、6m位あったでしょうか。

 煉瓦積みの極めて美しい建物ですが、歩くと床がしなる感じもありました。

 安全のため、近隣のことを考えると閉鎖もやむなしでしょう。

 刑務所内に入ったのは初めてですが、敷地の広さ、開放感、快適性など、想像を遥かに上回るものでした。

 最近は、熱中症対策のエアコンがついているといいます。

 麦入りご飯などは昨今の健康ブームで言えば、むしろ望ましいもの。

 収監されることを「臭い飯を食う」と言いますが、おそらくほど遠いものでしょう。

 自由の有る無しという一点を除けば、非常に理想的な生活にも思えます。

 人は誰も間違いを起こす可能性を持っています。

 しかし、収監されるまでの罪を犯した人が、本当の意味で更生するのは、相当に大変だろうと思います。

 信用を築き上げるには膨大な時間が掛かります。しかし失うのは一瞬です。

 例えが微妙ですが、不良少年が気持ちを入れ替えて、普通の暮らしに戻ったとします。

 本人は「大変なことをやり遂げた」と思っていますが、普通に暮らしている人からすれば当たり前のこと。

 過去に悪さをしていたなら、そのマイナスも背負ってのスタート。ハンディはあると言わざるを得ません。

 このギャップを越え、周囲の人の気持ちを変えるのはかなりの苦難を伴うはずです。

 子を持つ親として、ここで少年少女が服役していたと考えると、晴れ晴れとした気分にはなれません。

 国として、それをサポートするのは凄いことだと思いますし、応援できることがあるとするなら、税金を納めることくらいでしょうか。

 今月末、予定納税の支払いがあります。

 納税の考え方は、現金主義でなく発生主義。入金が済んでいなくても納税の対象になります。

 それだけでも理屈に合わないと思うのに、予定で先に納税するなどというのは、もう懲罰に近い気さえするのです。

 そんなことは、微塵の問題もないくらいの盤石の経営をしなければなりません。

 普通に生きることは、おそらく刑務所に入るより何十倍も、何百倍も大変なことです。

 娑婆には自由があります。しかしその自由を満喫しようと思えば、びっくりするくらいの荒波の中を進んでいかなければならないのです。

 罰がどうとかいう世界から、早くこの自由社会の荒波に本気で立ち向かって欲しいと思います。

 自由とは、怠惰とか無責任とは程遠いものなのです。

 多くの人は頷いてくれると思うのですが。

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日本のはじまり‐1537‐

 日曜日は長男の卓球の試合を観に行っていました。

 会場のある橿原公苑は橿原神宮のすぐそば。

 近くに神武天皇陵もあり、この辺りはなかなかに雰囲気がある場所です。

 試合開始まで少し時間があり、橿原神宮を参ってきました。

webサイトにはこうあります。

 日本最古の正史ともされる『日本書紀』において、日本建国の地と記された橿原。

 天照大神(あまてらすおおかみ)の血を引く神倭伊波禮毘古命(かむやまといわれびこのみこと 後の神武天皇)が、豊かで平和な国づくりをめざして、九州高千穂の宮から東に向かい、想像を絶する苦難を乗り越え、畝傍山うねびやまの東南の麓に橿原宮を創建されました。

 第一代天皇として即位されたのが紀元元年、今からおよそ2,600余年前のことです。

 恥ずかしながら、橿原が日本建国の地だったとは全く知りませんでした。

 橿原神宮の参道は広く、朝早くにも関わらず多くの人達が訪れています。

 秋は七五三の時期でもありました。

 大和三山のひとつ、畝傍山を従えた拝殿が見えてきます。

 こちらも七五三でしょう。

 日本発祥の地。境内はハレという非日常が溢れています。

 拝殿から、更に奥の本殿を望みます。

 日本の様式美が具現化されてるのです。

 西暦はキリストの誕生を紀元としていますが、「日本」という国を基準に考えれば現在は2678年。

 何度か危機があったにせよ、2600年以上も滅びずに続いている国は他に有りません。

 「謙遜」という美意識は素晴らしいものですが、正確に自分達のこと、また自分の国を知ることも大切です。

 どことなく、自国に誇りを持つ人が少ないと感じるのは思い過ごしでしょうか。

 四季があり、自然が美しく、食べ物は滋味深く、世界一安全で、最も歴史が古い国。

 それが日本です。

 大陸から多くのことを学び、西洋への憧れが日本を成長させてきました。

 また、敗戦後は皆が我武者羅に働き、経済大国となりました。

 しかし現在は、高齢化、少子化、労働力の不足と良い話を聞くことはあまりありません。

 それでも、日本が世界に誇れるものは「美意識」だと思います。

 ゴミをポイ捨てしたら罰があるから捨てないのではなく、そういうことは恰好悪い、恥ずかしいと思う気持ち。

 それを皆とまでは言わないまでも、多くの人が持っています。

 無用に高い報酬を貰うことには、罪悪感のようなものさえ持っています。

 これは、ある国のカリスマ経営者にはなかなか分からないかもしれません。

 突出することに臆病と言われるかもしれませんが、それが日本人なのです。

 日本を感じたいなら、橿原に勝るところはそうないかもしれません。

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相手がいなければ、勝利も敗北もない‐1536‐

 日曜日は雨予報だったのが一転して快晴に。

 長男が卓球の試合で、奈良の橿原公苑まで行ってきました。

 橿原神宮は大和三山のひとつ、畝傍山の麓にあります。

 こちらは同じく橿原市にある耳成山。

 大和三山は、耳成山を北の頂点として、南西の畝傍山、南東の天香久山と正三角形のような配置で並んでいます。

 橿原神宮のすぐそばにあるジェイテクトアリーナは立派な建物でした。

 誰の作品かまではたどり着けませんでしたが、よくデザインされています。

 外壁とも屋根ともいえるファサードは、プレキャストコンクリートでしょうか。

 洗出しの表情になっており、オリジナリティを感じるのです。

 観客席は生徒、その保護者で一杯。

 アリーナには所狭しと卓球台が並びます。

 プロリーグが開幕し、男女とも世界のトップレベルで戦う選手の存在が、このスポーツを盛り上げるのでしょう。

 会場からは熱気が溢れています。

 長男は中学に入って卓球を始めたのですが、試合を観に来たのは初めて。

 「観てるほうが緊張するわ!」と言い出したら大阪のオッチャン、オバチャンの仲間入り。

 なので言いません。ですが、多少緊張するのは事実です。

 つい最近、ラケットのラバーを変えたばかりで、「まだ慣れてないから自信がない」と言っていました。

 「裏ソフト」とか「ツブ高」とかいう言葉で表現されるのですが、攻撃型、守備型、カットマンなど、それぞれの特徴で組み合わせるそうです。

 試合が始まりました。

 サーブで何ポイントか取っていたので、これは武器になりそうです。親の目ですが、かなり回転がかかっている感じ。

 サーブは2本ずつ交代。11点とれば勝ちで、3セット取れば勝利です。

 出だしはバタバタしたものの、3セット連取で勝利を納めてくれました。

 卓球はセット毎に、ベンチコーチからアドバイスを貰えます。

 彼のチームメイトにトップレベルの選手が居り、アドバイスを貰うと、勝率がぐっと上がるそうです。

 この日も、2セット目からは危なげない試合展開でした。

 後で彼に聞いてみたのですが、相手選手の弱点が見えたのでそれをアドバイスしたとのこと。

 トップに居るだけあって、流石にその観察眼は確かです。

 昼から用事があったので、1試合だけのつもりでしたが、彼の試合まで残って観てみました。

 無用にスマッシュで勝負するのでなく、粘り強く的確に台の奥深い、打ちにくいところへ返していきます。

 これは安定して強いだろうなと、納得したのです。

 先日、入社試験に参加していた学生から、「辞退させて頂きます」とメールが送られてきました。

 3日目が終わったあと、続けるかどうかを尋ねるからと言っていたのですが、1日目が終了し、2日目が始まる前でした。

 「目が泳ぐ」という表現がありますが、これは自分のことを最優先している状態です。

 何かに興味があれば、そちらを見ますから。

 よく見る。そして相手のことを知ろうとする。

 これは仕事でもスポーツでも全く同じです。相手をやっつけることと、興味を持つことはそう違わないかもしれません。

 スポーツに打ち込み、勝つ。これは最高の成功体験です。

 しかし上を目指すなら、全身全霊をかけて練習に打ち込んでも負けます。そして、上には上が居ると知るのです。

 自分が選んだスポーツなので、あまり口出しするつもりはありません。

 しかし、長男に「試合が終わったあとの礼や握手は、もうちょっと丁寧にした方がいいな」とアドバイスしました。

 勝利の喜びも、敗北の悔しさも、相手がいなければ味わうことはありません。これは、スポーツというくくりを外しても全く同じです。

 あまりにも、自分にしか興味のない人が増えていると感じるのは私の思い過ごしでしょうか。

 チームメイトの彼は、帰ろうとする選手を追いかけて行き、握手をしていました。

 そんな小さなことの積み重ねが、人生を好転させるのだと思っているのです。

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男類、女類、あわせて人類‐1535‐

 先週末は我が家の女子チームと出掛けたと書きました。

 リフレッシュが目的なので、普段は素通りの池原ダム自体も観光します。

 学生時代は学年で1、2を争うくらい足が速かったという妻も、小5の娘に負けてしまったそう。

 何といっても育ち盛りですから。

 ダムサイトを反対からみるとこんな景色。

 高さは110m。アーチダムとしては国内最大の貯水量を誇ります。

 今回は、水位の関係で池原ダムにボートを下すことができず。南隣にある七色ダムへ移動しました。

 これは七色名物、旧発電所跡。

 久し振りにやってきた七色ダムですが、その名の通り色彩がとても豊かな湖です。

 ボートを車で引っ張ってきて、湖に浮かべるのですがこれが一苦労。

 スロープのおじさんに教えて貰いながら何とか完了。何でもそうですが見るとやるとでは大違いです。

 娘が流れで削られたガラスの破片をみつけました。

 海辺でみつければシーグラスですが、リバーグラスとでもいえばよいのか。

 娘はこれが好きで、飽きずに延々と集めているのです。

 また、宿泊施設でもレストランでも、アンケートがあれば必ずと言って良いほど丁寧に書いています。

 これは私には全くないもの。女の子だからでしょうか。

 ベストセラー「話を聞かない男、地図が読めない女」は2000年4月の発売となっていました。

 もう20年近く経ったことになりますが、狩りにでて、家族に獲物を届けなければならない男に、会話など一切不要。むしろ獲物に気付かれるだけです。

 また、巣を守ること、巣で待つ女性陣の調和を保つことが重要だったので女性に地図は必要ありません。

 ビートたけしは、こんなことを言っていたと思います。

 男と女は、サルとチンパンジーくらいは違う。だから、男類、女類あわせて人類と言うんだ。

 男と女はこうも違うんだということを理解するのに、私も40年は掛かった気がします。(今でも勿論完全に分かった訳ではありませんが)

 付き合っていても、結婚しても、なかなか上手く行かないものだなと思っていたのは「人は分かりあえる」と考えていたからだと思います。

 しかし、分かりあえるかの前に「違う」のです。

 それでも、美味しい魚を食べた時、それ程違った味には感じていない気もするので、そうは違わないとも思っています。

 「違う」ところをフォーカスすれば違う、「違わない」ところをフォーカスすれば違わない。禅問答の世界です。

 こんな小話がありました。

 家に帰ってきたら妻が不機嫌そうな顔で「食卓の電球が切れたの」と言いました。

 夫は疲れて帰ってきたのですが「それなら新しいのと交換しよう」と言って、新しい電球を探しに行こうとします。

 妻は更に不機嫌そうな声で「そういうことじゃなくって!」と怒り出した、という話です。

 「じゃあどうゆうこと?」となりますが、そういうことなのです。

 問題を解決するのが要望でなく、話をすることが目的なのですから。

 先週の夜、「今日何時に帰ってくる?」と娘からメールがありました。

 「ちょっと分からないなあ。なんで?」と返すと、こんな写真が送られてきました。

 あっという間に、何とかかんとか15年が経ちました。

 男と女は違います。それでも求めあいます。

 神様は物事を複雑にするのが、大変お好きなようです。

 それでも、私たちの世代にとって、これからが収穫の秋であって欲しいと思うのです。

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最高のソース‐1534‐

 週末は我が家の女子チーム、妻と娘と出掛けました。

 男子チームの片割れ、長男は試験があるそうで大阪に居残りです。

 しかし、友人宅へ泊めて貰うことになり、多分一番幸せなはず。友人と居るのが最も楽しいのですから。

 妻も娘も、そこまでの外出好きではないので、一緒に出掛けて貰うには何らかの理由が要ります。

 秋の吉野路を走るだけで私は気分爽快。

 「この季節の快晴を逃して、いつ屋外へ出掛けるんだ」というのはこちらのロジックです。

 「温泉にはいって、自然の中で食事したら気持ちがいいんじゃない」とあくまでお願いベースなのです。

 宿はいつも私が泊まっているバンガロー。

 標高が高いので、ちょうど紅葉がさかりでした。

 快晴の下で見る紅葉ほど美しいものはそうありません。

 温泉に付随するレストランに多くを期待する人はあまり居ないと思います。

 しかし、下北山村にあるきなりの郷は結構いけるのです。

 メニューには、ジビエ、スモークの文字が並びます。

 アユスモーク盛り合わせ900円。

 右上は鹿、左下は猪のスモークですが、猪のスモークは、娘も美味しいと言って食べていました。

 アマゴスモークのトマトソースパスタは1300円。

 下北山村産のアマゴのスモークがのっています。

 鹿のスモークと季節野菜のピッツァは900円。

 野性味あふれる食材とスモークの香りがとても合っていました。

 娘はいつものから揚げ定食850円ですが、2人とも喜んでいました。

 少しは普段の罪滅ぼしになったでしょうか。

 翌日、少し湖に出ましたがほんの申し訳程度。

 目的は野外での昼食です。

 メニューはカップラーメン、サラダ、出来あいのトンカツですが、外で食べれば格別なはず。

 ちなみに、このお湯を沸かすバーナーはジェットボイルといいます。0.5Lなら2分でお湯が沸く優れものなのです。

 静かで景色のよい最上流までやってきました。

 こんな時ならインスタントラーメンも許されるでしょう。

 娘はチキンラーメンしか食べられないので、「安藤百福さんに感謝やね」と言いながら、喜んで食べてくれました。

 私の世代ならグルメと言えばコミック「美味しんぼ」を思い出す人が結構いるのではと思います。

 その中で、美味しいご飯を炊く方法の回がありました。

 それには美味しいお米、美味しい水、また適度な漬け置き、そして炊き方が大事でしょう。

 紹介されていた方法は、お盆にお米を広げ、割れているものや、欠けているものを、ピンセットでより分けるというものでした。

 粒の大きさにむらがあれば味が変わってしまうからです。

 あくまでコミックの中の話しですが、初老の夫妻がその作業をしていた場面が記憶に残っています。

 仕事であれ、家事であれ、そこまで時間を掛けられる人はなかなかいないと思います。

 しかし、美味しいものをつくるということは、こういうことだと思いますし、そうあって欲しいとも思います。

 英語のことわざで、このようなものがありました。

 Hunger is the best sauce. (空腹こそが最高のソース)

 しかし勿論最高のソースは愛情です。

 チキンラーメンに込めた私の愛情は、娘へ届いたのでしょうか。

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孤高たれ‐1533‐

 「今日はイイハ(118)の日」だと、ラジオから聞こえてきました。

 クリニックは何件か設計させて貰いましたが、一番多いのは歯科医院です。

 現在は「住吉区歯科医師会館」の仕事もさせて貰っているので、虫歯は勿論ご法度。

 虫歯だらけの設計者に依頼など来ない気がするので。

 三度の歯磨きは欠かしませんし、外出時の携帯歯ブラシは欠かせません。

 ただ残念なことに、それを始めたのが歯科医院の設計後で……

 いくら磨いても、これまでの治療痕が直るはずはありません。虫歯だけは取り返しがつかないのです。

 子供には「歯磨きは貯金だと思って!5千万円くらいの価値がある」と繰り返し言っているのですが、どこまで理解しているのか。

 一昨日に立冬を過ぎましたが、今日も暖かい一日でした。

 通勤中に公園をのぞくと、紅葉が始まった木もちらほら。

 近付いてみていると、砂場で0歳と1歳くらいの子供さんが遊んでいました。

 お母さん同士は、子育ての話しで盛り上がっています。

 レンタルDVDショップのセルフレジの前。台に乗っている男の子は3歳くらいでしょうか。

 何とかお母さんの手伝いをしようと、横から一生懸命手を伸ばしています。

 そして、集団登校をする小学生。

 母子そして家族だけの生活から、保育園、小学校と集団生活に入り、友達、仲間ができて行きます。

 子供は母親や家庭と少しずつ距離をおき、やがて社会へ出て行くのですが、それは間違いなく喜ばしいことです。

 友達の延長線上に、仲間や集団があるのかは微妙なところです。

 また、人が集まれば必ず悪くなるとは思いませんが、先月末の渋谷でのハロウィン騒動を知り、こんな言葉を引いてみたくなります。

 狂気は個人にあっては稀有なことである。しかし、集団・党派・民族・時代にあっては通例である。

 -ニーチェ-『善悪の彼岸』より

 「集団」と言う言葉と「群れる」という言葉は区分けした方が良いかもしれませんが、いずれにしてもマスとなった時、人は間違いやすいという事実はあるのです。

 個人など本当に弱いものです。私の力など、ほんの微々たるものでしかありません。

 しかし、それを認めているか否かという点においては、顔を隠し乱痴気騒ぎをする人達とは違う気持ちでいるのです。

 孤高のルポライター、竹中労の言葉も何度か引かせてもらいました。

 人は、無力だから群れるの ではない。群れるから無力なのだ。

 「孤高たれ」は「渾身」とともに私の座右の銘でもあります。

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野生を磨け‐1532‐

昨日の早朝、父の船で岸和田から出船しました。

狙いは太刀魚。

 太刀魚は紀伊水道沖で越冬したあと、春から夏にかけて北上してきます。

 中央に見えるのは、加太の国民休暇村です。

 太刀魚は、この友ヶ島水道から大阪湾に入る群れと、鳴門海峡から播磨灘に入る群れに分かれるようです。

 夏頃まで、大阪湾の最奥、また播磨灘の北部まで北上を続けるのですが、冬になるとまた紀伊水道沖に戻って行きます。

 その紀伊水道に落ちる一歩手前。

 紀淡海峡に群れが回ってきたようで、これだけの船が集まっていました。

 到着してすぐ。

 1匹目は父にきました。

 そして私にも。

 エサのイワシはその鋭い歯にやられて見るも無残。

 太刀魚はその大きさを、胴の幅が指何本分あるかで示します。

 私は指3本分まででした。

 最大は父が釣った指4本。 1mくらいはあったでしょうか。

 昼過ぎまで飽きることなく、適度に釣れ続けたのです。

 友ヶ島沖に移動して根魚も追加。

 ガシラが7匹ほど。

 そしてベラが20匹ほど。

 父の友人分も合せて、太刀魚は全部で25匹ほどと、十分に満足できる釣果でした。

 釣りは私の趣味なので、海であれ湖であれ、まず飽きることはありません。

 釣れなくても、どうすれば釣れるのかを考え、試します。

 想像し、打ち手を考え、実行。その結果をみてまた想像。その繰り返しです。

 それでも、漁師には遠く及ばないでしょうし、紀淡海峡のあの船団の中で、おそらく真ん中くらいの成績だったのではと想像します。

 それは趣味だからです。

 現代人は、生きるか死ぬかの生活を続けていた石器時代より、能力的には劣っていると言います。

 それはそうだろうと納得できます。

 しかし私は船上の人となった瞬間、何故かDNAの一部が覚醒してくるようです。

 狩猟本能がむくむくと頭をもたげ、飽きるなどという感情はどこかに吹き飛んでしまいます。

 今まで一緒に釣りをした人は、本当に大変だったと思います。一日中休むことなく、そのテンションで釣り続けるのですから。

 いつ頃からか、皆そこまで釣りたい訳ではない、一緒じゃないんだと気づき、1人で行くようになったのです。

 唯一の例外が、父の船での海釣りです。

 出港の時間、納竿の時間は父が決めることに従うだけですから。

 バブルの頃だったか、釣具メーカーのCMでこんなコピーがありました。

 「野生を磨け」
 
 そうする必要があるのかないのか分かりません。

 ただ、本能のおもむくままに過ごす時間は、感性の錆びを落としてくれるような気はするのです。

■■■毎日放送『住人十色』4月14日5:00pm~5:30pm「回遊できる家」放映

■■■『建築家と家を建てる、という決断』守谷昌紀
ギャラクシーブックスから11月27日出版
amazon <民家・住宅論>で1位になりました

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

【Events】
■4月1日「トレジャーキッズたかどの保育園」開園

【News】
『住まいの設計05・06月号』3月20日発売「回遊できる家」掲載
『関西の建築家とつくる家 Vol.2』2月1日発売「阿倍野の長家」掲載
『homify』6月29日「回遊できる家」掲載
『homify』6月2日「イタウバハウス」掲載
『houzz』5月28日の特集記事「あちこちでお茶できる家」掲載

メディア掲載情報

◇一級建築士事務所 アトリエ m◇
建築家 守谷昌紀のゲツモク日記
アトリエmの現場日記<&lt;/a&lta</

士(さむらい)の頂点を目指せ‐1531‐

 先日、ある弁護士事務所を訪問させてもらいました。

 娘が弁護士という仕事のことを知りたいというので、無理を言って仕事場までお邪魔してきたのです。

 広い打合せテーブルの上には六法全書が。

 実物を見る機会はなかなかありません。

 これらも使って、直々に弁護士の仕事を娘に解説してくれたのです。

 迷惑を掛けてはいけないので、詳しい話は控えますが、新聞で大きな記事になるような勝訴を勝ち取っておられる方でした。

 訪問するまで知らなかったのですが、その判例をホワイトボードを使って、実に分かりやすく説明して頂きました。

 電話相談するだけでも、請求書が届くのは弁護士だけとはよく聞く逸話です。

 そんな方を1時間以上も拘束してしまいました。

 映画やドラマでは、裁判所でのスピーチが大きな影響を与えるように描かれています。

 しかし実際の裁判では、まずは書面で裁判官を納得させることが最も重要とのことでした。

 それで、娘に「作文が好きなら、向いているかもしれないね」と声を掛けてくれたのです。

 その後、実際の裁判を見るのもいいだろうと、大阪高等裁判所へ傍聴に行ってきました。

 たまたま入った裁判が、悪質な交通違反を繰り返している被告だったようで、かなり目つきが悪かったのです。

 また、傍聴席は私達だけ。

 ジロリとみられるだけでぞっとして、娘に何か危険があってはと早々に退室しました。

 何より、手錠を掛けられ、腰ひもを付けられた被告人をみるのは、あまり気分のよいものでなく……

 そんな事も含めて、大変な仕事だなあと感じたのです。

 10月は台風の影響で、延期になっていた運動会がありました。

 平日になったので私は行けなかったのですが、綱引きも勝利、リレーも1番で喜んでいました。

 中でも、学年で踊ったソーラン節は、何度もビデオを見ていました。

 練習はかなり辛かったようですが、チームの皆で頑張ったことが、とても楽しく、思い出に残ったようです。

「常に狭き門を」

 聖書にある言葉だそうですが、当社の12条あるフィロソフィーにも使わせて貰っています。

 大変の先には必ず充実があるのです。

 士が付く仕事を士業(さむらいぎょう)と言ったりします。建築士もそのひとつですが、その頂点にあるのが弁護士でしょう。

 もし本気で弁護士を目指すなら、全力で応援します。そうでなくても、大変でもいいからやってみたい仕事を見つけてくれたら、これ程嬉しいことはありません。

 こんな職業が残る、残らない、のような記事を見かけます。士(さむらい)業は損得で選ぶものではありません。士(さむらい)のように強く生きて欲しいし、生き様と合致する職業を見つけて欲しいと思うのです。

 今日から始まる十一月は「二四六九士」で表される短い月。

 しかし年に1度しかない士月(さむらいつき)が始まりました。

 明日死ぬかのように生き、永遠に生きるかのように学びたいと思うのです。


 

■■■毎日放送『住人十色』4月14日5:00pm~5:30pm「回遊できる家」放映

■■■『建築家と家を建てる、という決断』守谷昌紀
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