この日も快晴でした。
2日目は、唯一1日中ニューヨークにいる日。朝から気合を入れてゲストハウスを出ました。
チェルシーというエリアを出て4ブロック北に上がり34th Stへ。
ここを東に歩くとエンパイヤー・ステート・ビルが見えて来ます。
キングコングに愛されたビルは、1931年完成で高さ381m。
クライスラー・ビルを抜いて、ワールド・トレード・センターに抜かれるまで、40年の間、世界で最も高いビルだったのです。
ニューヨーク・シティーパスは79$で、多くの美術館、観光地のチケットが綴られています。
86階から、北東方向にあるクライスラー・ビルを見ます。
南の摩天楼群までは5kmほど。
最も高いのが建設中のフリーダムタワー。以前のWTCの410mを超え、541mになる予定です。
2ブロック南東へ移動するとモーガン・ライブラリー・ミュージアム。2006年。イタリア人建築家、レンゾ・ピアノの設計です。
こちらは時間の都合で、外観を見ただけ。
北へ7ブロックほど移動します。
クライスラー・ビルは42th St沿いに建っています。
42nd Stとパーク・アベニューの交点にグランド・セントラル・ターミナルがあり、クライスラー・ビルはそのすぐ東。ここがマンハッタンの中心と言って良いようです。
中心街を歩いていると、常にクライスラー・ビルの尖塔部が見えるので、迷う事はありません。まさにランドマークと言えます。
1930年に完成したこのビルは、ニューヨーク・アール・デコの最高峰で、頭部のアールと三角窓を組み合わせた部分は、ステンレスで作られています。
42nd Stを西に6ブロック程行くと、タイムズ・スクエア。
馬に乗った警官が、旅情を盛り上げてくれます。
「世界の交差点」とはよく言ったもの。
最高のキャッチフレーズです。
ただ、規模は思いのほか小さく、渋谷109をワンサイズ小さくした感といえば、ちょっと怒られるでしょうか。
本日のメインと考えているのが、シーグラム。今度は地下鉄で北に移動します。
ミッドタウン・イーストというエリアの5番街と53rd Stでおりて、まずはセント・パトリック教会へ。
ドイツのケルン大聖堂を模した、美しいゴシック建築で1888年の完成。
そしていよいよシーグラム・ビルへ。
ミース・ファン・デル・ローエのニューヨークにおける唯一の作品で、内装はフィリップ・ジョンソンが担当。1958年の完成です。
今回のニューヨーク行を決めたとき、初めに浮かんだのがこの建築でした。
I型のマリオンと言われる、外壁を構成する部材はブロンズ製。ガラスも特注のブロンズ色。
写真で見ると、もしかするとその差異は伝わらないかもしれませんが、私にとっては最も感激した瞬間でした。「愛しの人にやっと会えた」という感じなのです。
“ Less is more ”の美学を持つミースは、装飾的なものを一切排除し、金属やガラス、コンクリートといった無機質な素材で、限りなくストイックで、しかし自由な空間の創造を目指していました。
その一つの到達点と言える、記念碑的な建築なのです。
中に入ろうとすると、エントランスホールに居たセキュリティーに止められました。
旅行者が簡単に入れる訳もありませんが、僅かに内部空間を体感できたことに、単純喜びを感じていました。
交差点の対角に建つのが、レバー・ハウス。SOM(スキッドモア、オーウィングス&メリル)の1952年の作品です。
ブルーブリーンのガラスに覆われたこのビルは、まるで宝石のようです。
高層棟の下に低層棟がロの
字方にめぐらされており、中庭があります。
ハイ&ローの美しさです。例えば、大阪駅前の第1ビルから第4ビルがこの建物のコピーだったことが分かります。
非難からは何も生まれないが、オリジナリティーというのはこういったものを指すというのが良くわかるのです。
昼を過ぎたので、シーグラムの前にある屋台で、ハンバーガーを買い、前庭で食べました。
このお姉さんがとっても陽気な人で、待ってる間にやたらと話しかけてきます。なので「写真をとってもよいか」と聞くと、もちろんと。
「でもお化粧するから待ってネ(多分)」みたいなことを言ってふざけていました。
ベーコン・レタス・バーガーとミネラルウォーターで5$くらい。美味しかったです。
まだまだ移動です。
ミッドタウンエリアから、アッパー・イースト・サイドまで北へ向かって4km程地下鉄で移動。
グッゲンハイム美術館へ着きました。1959年フランク・ロイド・ライトの設計。彼の遺作でもあります。
スパイラル状のフロアはプランがそのまま形態となっているとても有機的でシンボリックな建築です。
ここから3つ美術館を回りますが、本来ならどれも半日、もしくは1日は掛けて観たいようなところばかり。
今回は街と建築を見るのが主の目的ですが、気になっている主要な作品だけは見て回りました。
グッゲンハイムでは、モディリアーニとカンディンスキーが充実していました。ミロ、シャガール、ピカソも揃っています。モンドリアンも見逃せないところ。
アメリカではどこでもそうなのか、撮影禁止は一切無視して皆写真を撮っていました。
後ろ髪を引かれる思いで、今度はセントラル・パークを横断します。
ニューヨーカーの憩いの場所セントラル・パーク。
先週は雪が降るほど寒かったそうですが、私の滞在中は意外に温かかったです。
アメリカは華氏48度のような表現なので、実際に何度あったかはよくわかりせんが。
中央には大きな池。
これは自然のものなのか、人口のものなのか。ジャクリーン・ケネディ・オナシスがこの周りを良く走っていたという事で、その名前がついています。
海沿いでは釣りをする人もいましたが、ここでは見かけませんでした。
セントラル・パークを横断した理由は、ハーレムへ行く地下鉄に乗るため。
ハーレムは黒人が多く住む街です。前市長のジュリアーノは強硬な姿勢で、ニューヨークの治安改善に努めました。
その手法には賛否があったものの、治安が良くなったのは事実です。実際に、ハーレムの目貫通り、125th Stにある、ブラックミュージックの殿堂アポロシアターあたりは、全く平穏な感じでした。
廃墟も僅かに残るだけ。
ハーレムには、大小の教会が多くあります。
このようなところで歌われるゴズベルは、ソウルミュージックに大きな影響を与えています。
少し散策し、東へ移動します。
125th Stと5th Aveの交差点より東の地区はスパニッシュ・ハーレムと呼ばれます。
メキシコ、ドミニカなど中南米の人が多く住むようです。
一本裏通りまで歩いてみましたが、少し廃墟が増えて来たので、ここで引き返しました。
どれ程の治安状態か分かりませんが、貧しいということはより原始的な生活が営まれていることになります。
そこに暮らす人の目は、ギラギラしているか、無気力になっているか、概ね2つに分かれます。
そのにはむき出しの生があります。友人のアドバイス通り、危険かどうかは自分で感じれる、は本来人には備わっている感覚だと思うのです。
自分の歩いた場所がどんなところだったのか分かりませんが、本来私は、とても慎重な人間なので、おそらく全く問題のないエリアだったと思いますが。
夕暮れが迫るなか、アッパー・イースト・サイドに戻り、メガ美術館、メトロポリタンへ。
ここも残念ながら、絞った作品のみ。フェルメール、レンブラント、ラ・トゥールといった光りと影を描く作家と、ドガ、ロートレック、ピカソ、ゴッホまで。
ここをしっかりみようと思えば、1日半は欲しいところです。
ニューヨーカーはMET(メット)と呼んでいるようです。メットを後に南へ下ると、ホイットニー美術館。
ここは残念ながら外観を見るだけ。設計はバウハウス出身のマルセル・ブロイヤーの設計。1966年の作品です。
ブロイヤーは家具のデザインでも知られ、ワシリーチェアは傑作と言って良いでしょう。
ほぼ日の暮れた6時頃、ようやく最終目的地、ニューヨーク近代美術館へつきました。別名MoMA。
設計は谷口吉生。2004年の作品です。谷口は日本における美術館でもその力量をいかんなく発揮しています。
丸亀市現代美術館、豊田市美術館は傑作と言え、その先にあるのがこのMoMAです。
中央に設けられた吹抜けには自然光が注ぐはずなのですが、夜になってしまいそれは体験できず。
ウォーホール、リキテンシュタイイン、ジョーンズ、ピカソ、マティスそしてゴッホ。もう十分に堪能したのです。
その後この日ニューヨークに到着した、友人と合流。朝方まで飲むことになるのです。
翌日はもう大変で……