今年の2月末に解体がスタートした「ときめく紺色の家〈リノベーション〉」。
竣工は6月末で、まさにコロナ下の社会に突入して行くなかでの工事でした。

片付けや植栽もあるので、撮影は秋にしましょうとなっていました。
女心と秋の空と言いますが、今回ほど寸前まで予報コロコロと変わったのは初めて。
しかも、4社あれば予想が晴れ、曇り、雨とバラバラ。
中止するか前日まで迷いましたが、昨日は昼前まで晴れてくれ、何とか成立させることができました。

前面道路が抜け道になっていて、兎に角人通りが多い。
洗濯を干しながら、通りがかる知人との会話も楽しいと聞いていましたが、洗濯干しは背面に移動しました。

少し腰壁を高くし、ある程度プライバシーを確保しています。

1階にあったLDKから西にある道路方向を見た写真です。

この位置には寝室を配置し、奥さんのコーディネイトエリアにしました。
ガラス棚の上に、バッグなどの小物を置いて相性をチェックする為のもの。

ご主人は、このチェッカーガラス越しの景色も気に入っているとのことでした。

メインカットは、2階のLDKです。
まずは人物無しで撮りますが、ご家族の興味の持ち方が凄いのです。
撮影にこれだけ興味を持って貰ったなら、写真家も力が入るはずです。

今度は人物あり。

ご主人には趣味の自転車を触って貰いました。

この位置は元寝室でした。
初めて下見に来た時、ここからの眺めは抜群でした。

開口部を寄せ、かつFIXと組み合わせました。
東向きで「御陵から日が昇る景色は凄いですよ!」とのこと。
日々の暮らしに、ドラマティックな風景を織り込めたのならとても嬉しいのです。

午前の部が終わり、歓談する奥さんと娘さん。
南のハイサイドがとっても良いと言って貰いました。

空と瓦屋根しか見えない贅沢な景色で、ここから見える月も素晴らしいとのこと。
誰にも気遣いなく開ける窓は、3倍の価値があると思っています。
LDKを2階に上げ、中央部にハイサイドで採光を取るというプランは、初めて下見に来た時から決めていたと思います。

今度は夕景の部の撮影ですが、今回は娘さんの活躍が凄かったのです。
「ソファのクッション、違う色のほうがいいですか?」
「あの鏡に写りこんでいるの大丈夫ですか?」
写真は撮り直しが効かないので、かなり助けて貰いました。

写真家が準備してくれたモニターを、ずっと食い入るように見ています。
思わず「お仕事変えてみます」と言ってしまったくらいですから。

撮影の日は朝早めに行くのですが、以前と違う車が止まっていました。
新たに購入した車は、外壁に色を合せてくれたのです。
車ありも考えましたが、そこは建物優先の構図にさせて貰いました。ただ、その気持ちが嬉しいのです。

計画名に「ときめく」と入れました。
この玄関タイルはサンワカンパニーのレノスというタイルです。コーディネイトエリアやLDKのパウダーコーナーと共に、全て奥さんからの発信です。
とてもセンスの良い直感タイプの方で、できるだけ押しつけはしないよう心掛けたつもりです。
竣工写真の納品は3週間先ですが、コンタクトシートを見る限り、かなり良い出来栄えでした。

2019年の3月に現地調査に伺った際、一日仕事になりました。

「もしカレーで良ければ」と夕食を出して下さったのです。

カレーもサラダもとても美味しかったのですが、スプーンとお箸の敷物に、心遣いとセンスを感じました。
人柄も含めて、この時点で計画の成功を私は確信していました。
私の仕事の場合、どこまでを同業者と呼んでよいか難しいところですが、建築業界全てなら、かなりの同業者が居ることになります。
いつも思うのですが、自分の思う立ち位置と建築関係者の評価はかけ離れています。
特に、アワードだったり、建築家同志だったり、アカデミックな評価は無に等しいと言っても良いほどです。
しかし、クライアントの方々はどこかで私達の仕事を見掛け、オファーしてくれます。
最も求められる建築家を目指してきたつもりですが、その差は驚く程大きいのです。
人の評価は常に1/10
そう教えて貰ってから、それならイメージの10倍の結果を出すまでと、躍起になって働いてきました。
アワード等で落選するとがっくりきますが、こちらのクライアントのような人達と仕事ができると、「やはり間違っていない」とまたギアを入れ直すのです。
誰かに届け、この幸せの景色。
そう願い、勤労感謝の日も働きます。
■■■9月11日発売『リフォームデザイン2020』に「回遊できる家」掲載
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【News】
■10月23日『homify』の特集記事に「阿倍野の長屋」掲載
■5月16日『homify』(英語)の特集記事に「下町のコンクリートCUBE」掲載
■5月10日『Houzz』の特集記事に「阿倍野の長屋」掲載
■4月8日『Sumikata』東急リバブル発行に巻頭インタビュー掲載
■2月13日 『Best of Houzz』を「中庭のある無垢な珪藻土の家」が受賞
■2017年11月27日ギャラクシーブックスから出版『建築家と家を建てる、という決断』守谷昌紀がamazon <民家・住宅論>で1位になりました
◆メディア掲載情報
◇一級建築士事務所 アトリエ m◇
建築家 守谷昌紀のゲツモク日記
アトリエmの現場日記