「どこにもない箱」の家‐3‐階段を愛することから始めよう

 暑かった8月も今日で終わり。

 帰宅時に聞く虫の音は、秋の気配も感じさせます。

 まだまだ暑いのが現場ですが、階段の下地がほぼ出来上がりました。

 初期相談に来られる際、自らが描いたプランを持参される方も多々おられます。

 勿論ウェルカムですが、私が描いたプランと大きさが最も違うのが階段です。

 階段は通路なので、出来るかぎり省スペースとしたいという心理が働くからでしょう。

 実際は重要な縦動線なので省くことはできませんし、人間工学上、昇り降りしやすい蹴上と踏み面の寸法は範囲があります。

 ある程度のセオリーがあるのです。

 人も同じですが、嫌ってしまうとその良さは見えてきません。

 まずは、階段を愛することから始めましょうという感じなのです。

 高い位置から光を落とせることは、階段をポジティブに捉える可能性を広げてくれると思います。

 こちらの階段は、8から12段目でぐるっと回り、更に2段ので2階へ昇りきります。

 11段目の蹴込板が、玄関扉を開いたすぐ上にあるのが見てとれるでしょうか。

 もし、10段しか昇れていなかったなら、扉の上部があたってしまうので、平面的、断面的にまさにこの階段しかなかったのです。

 この階段、実は初めての試みで5段で180度を回り切っています。

 45度の4段で回り切れれば良いのですがそれでは段数が足りず。

 また30度の6段にすると、せせこましくなってしまいます。

 30度、45度の複合案もありますが、36度の5段で回り切ることにしました。

 職人不足の建築業界でも、部材はどんどんユニットされる傾向にあります。

 階段も同じで、滅多に使われない36度の5分割ユニットはありません。

 熟練の大工がいなければ実現できない形状なのです。

 5つ割りを使わなければいけない場面かならずあるだろうと思い、10年程前からイメージをつくっていました。

 何度も歩いて確認しましたが、とてもリズムよく昇り降りしやすい階段でした。設計者の私が言うのも何ですが。

 2階建て以上の建物なら、どこにでもあるのが階段ですが、それをより機能的に、より美しく仕上げるのが建築の醍醐味なのです。

 日本は奇数を尊ぶ文化です。

 半分を繰り返す偶数より、割り切れない奇数の方が私も好きです。

 そこには何かしらの意思があるからだと思っているのです。

文責:守谷 昌紀

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建築家 守谷昌紀のゲツモク日記
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「どこにもない箱」の家‐2‐どこにもない経験を

 先週はじめ、梨が届きました。

 「千葉の家」のクライアントからでした。

 猫の手も借りたいというところで、夏休み中は娘の手を借りています。

 オープンデスクに参加している学生と並んで仕事中。

 スイッチ、コンセントの型紙を切ったり、CAD上で色を塗ったりと、出来ることが色々あります。

 コーヒーブレイクの際に、皆で頂き物の梨を食べました。

 日本一美味しいので、日本一のご褒美です。

 学生は北陸の大学に通っており、研修期間中はホテルを借りて大阪に滞在しています。

 よって、やる気は十分。

 「どこにもない箱」の大空間に感激していました。

 電気等の配線は壁を張る前の施工です。よって、この状態で位置を決めなければなりません。

 娘が切っている型紙は、壁に貼っての位置確認をするためのもの。

 CG、3Dの時代ですが、実物に勝るものはないのです。

 オープンデスク、インターンシップの申込がこの夏も何件かありました。

 一通、友達に送るようなメールだったので、即刻不合格にしました。

 無報酬でも不合格になった意味を、よく考えて貰いたいと思います。

 大人を、仕事を、どんな理由でこれだけ軽視できるのか。

 はっきり言っておきます。

 「仕事をなめるな」と。

 しかし、同じ学生でも本当に様々です。

 本気で取り組んでくれるなら、どこにもない体験をさせてあげることができます。

 そして、忘れられない夏となるはずです。

文責:守谷 昌紀

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室内の縁に人が集う「平野西の家」‐1‐人は食べるし、住むし、着る

 現在進行中の現場はいくつかありますが、クライアントが「現場日記はちょっと……」とのことで。

 現場日記が全くないのも寂しいので、当社の入る「平野西の家」のことを書いてみます。

 2004年の完成なので14年が経ちました。

 前の駐車場は、道路から閉じれるようになっていますが、これは弟からのリクエストでした。

 ただ閉じるだけなら、シャッターが手っ取り早いのですが、一部に門扉を設けたなら、その間に柱が必要になってきます。

 敷地の間口は5.4mで、門扉をつければ有効開口は4mが精一杯だと思います。

 それで散々考えたのが、この形状です。

 12枚建ての折戸は、右にある門扉の後ろにスライドして、収納できるようになっているのです。

 12枚の折戸を右端に移動し、パタンパタント折り畳んで行きます。

 全てをパネル後ろに移動し、さらに門扉を開ききったのがこの状態。

 開口部は4.8mで、何とか2台の車が駐車できるのです。

 背の高い車にジェットバックを装着しても問題ない高さ、2.6mも確保しています。

 収納された折戸前のパネル部には、電気メーター、ガスメーターが納められ、それをのぞく窓も3つ見えています。

 下に2つ並んだポストまであり、多くの機能が集中しており、最も繊細に考えた部分なのです。

 この大きな門扉が、昨年の夏あたりから折戸に少し干渉するようになってきました。

 アルミなので、この暑さで、想定以上に膨張しているようなのです。その証拠に、朝夕は当たりません。

 職人が調整しにきてくれました。

 独特の金物を使って、ギュッギュッと少しずつ力を加えていきます。

 こんな仕事に教科書など当然ないので、全ては感覚と経験です。

 見事に当たらないよう調整され、さらに2mm程の余裕もできました。

 一緒に見ていると、したたるように汗が出てきます。しかし、終日現場に建つ職人のことを考えると、間違っても暑いなどとは言えません。

 先日、建築会社の社長と話しをしていました。

 「人手不足で大きな会社に人は行ってしまって、うちみたいな小さな会社まで人は来てくれません」というようなことを言っていました。

 更に、この先もどんどん厳しくなって行くと思いますとも。

 「流通やシステムを構築した人が偉いという世の中だけど、実際に食べるトマトが無ければ流通に意味はないものね」

 「どんなに時代が変わっても、人は食べるし、住むし、着るので、物を扱う、物とつくる仕事をもっとリスペクトして貰える時代が必ずやってくると思うよ」と伝えました。

 これは本心です。情報や手段は大切ですが、人は生身の体をもっています。

 汗を流し、「モノ」を扱う仕事にもっと注目せざるを得ない時代が必ずやってくると思っているのです。

文責:守谷 昌紀

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■3月31日「R Grey」満室となりました
 大阪市平野区平野西5-6-24
「さかたファミリー歯科クリニック」7月26日 OPEN
枚方市津田西町1-24-8

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緑を囲む京都のオフィス「山本合同事務所」‐7‐エピローグ 建築の責任

 webサイトの完成は、プロジェクトの一区切りでもあります。

 「山本合同事務所」の東隣はマンションを建設中。

 その事故対策で、電線に黄色いカバーがついています。

 電柱、電線は美しくないので地中埋設になればよいのですが、新築時の引き込み工事は高額になると言われています。

 実仕事の中で、金額調整に当たる立場としては、何とも難しいところです。

 電線だけは思う所がありますが、他はこの建物がよく表現できていると思います。

 1階は、階段以外全て駐車場。

 何とか5台停めることを目標にしました。

 右手に見えるのはサインです。

 その階段を上がると、2階ワークスペースの中央にでてきます。

 手前のバームクーヘン型のデスクと、奥にある馬蹄型のデスクが、このオフィスの最大の特徴。

 人の流れに沿うようにデザインしました。

 特に馬蹄型のデスクは、中央に緑をもってくるためにこの形状を考えました。

 南側の一番奥から見返すと、3階のミーティングルームとの関係がよく分かります。

 鉢植えとは言え、大きな木が入ることを想定していたので、トップライトからの光も取り込みました。

 北面の道路側にある階段を上って3階へ。

 北側は光が入りすぎないので、カーテンウォールとし、街に大きく開いています。

 3階はミィーティングルームとしていますが、リビングのような使い方をイメージしています。

 家具などは、全てクライアントのセレクト。

 京都は景観条例があり、法律上このような切妻屋根にする必要があります。

 3階はロフトっぽい空間にしたいという要望だったので、屋根形状を上手く活かすことを考えました。

 ガラス手摺から見下ろした景色が、「緑を囲む」というコンセプトをよく表しています。

 コンパクトなキッチンも備え、さらにロフトの中のロフトのようなスペースがあります。

 ここは仮眠などに使われるのです。

 その下にあるのはトイレスペースですが、シャワーも備えました。

 ムービングキャビネットは既製品でサイズを検討し、木で制作しました。

 工場で大量生産されるものを、木で家具として作るのは、なかなかにハードルが高いもので、施工会社もかなり苦戦していました。


 
 ステンレス板をくり抜いた看板も、オリジナルのデザインです。

 物創りを生業とするなら、過去をなぞるだけでは意味がありません。しかし、無謀な挑戦をすることに価値がある訳でもありません。

 その間にある、最も総合点の高い一点を見つけ射抜かなければなりません。

 この建物は個のものです。

 しかし街は建築の集合体でもあります。観光都市京都において、その責任を感じながら仕事をしたつもりではあります。

文責:守谷 昌紀

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築80年の長屋を「碧の家 」に〈リノベーション〉‐12‐人は思い出にも、過去にも生きる

 本日、「碧の家」をwebサイトにUPしました。

 大阪の下町にある四軒長屋の一住戸を、フルリノベーションした計画です。

 サブタイトルは「 100年を紡ぐ物語」としました。

 これは、現場日記の第2回目のタイトルでもあります。

 昭和10年代に建てられたこの長屋に、ご家族は越してこられました。

 お父様は残念ながら早世されてしまい、皆さんでこの家を守ってこられたのです。

 解体の途中、床下からでてきた火鉢は、掘り炬燵の底にあったものだろうということでした。

 昭和初期の暮らしが、目の前に活き活きと蘇ってきます。

 100年前、人は家の中でも火で暖を取っていたのです。

 リノベーションブームと言って良いほど、この言葉を頻繁に聞くようになりました。

 「価値を高める」という意味ですが、古いものの価値が低いなどということは全くありません。

 人は思い出に中にも、過去にも生きます。

 創り手は、そこをよく理解していないと、ただ封をするような仕事をしてしまうのだと思うのです。

 特定の何かを非難したい訳ではありませんが、リノベーションは新築を目指すものではありません。

 オーダーが古建築の改修ならその仕事を全うしますし、新たな価値を求めたいと言われればそれを目指します。

 私たちの仕事は、クラアイアントの幸せを実現する為にあるのですから。

 その要望にどこまで応えられたのかは、分かりませんが、真っすぐに取り組んで来たつもりではあります。

 1階の階段は反対向きに付け替えました。

 奥にある、お母様の寝室に少しでも光を届けるためです。

 階段上にあるトップライトが、その価値を高めてくれます。

 奥にあった外部通路を、通り庭と解釈しました。

 横にあるトイレは、思い切った色使いになっています。

 トランプと不思議の国のアリスの物語がここに織り込まれているのです。

 通り庭をはさんである洗面・脱衣室。

 トップライトの光が落ちてきますが、お母様の寝室にも漏れ落ちるようになっています。

 長屋の北側を、どうすれば心地よい空間にできるか。

 「住之江の長屋」、「阿倍野の長屋」と、そして「碧の家」と、様々なトライをしてきました。

 2階寝室の写真を、この計画のメインカットとしました。

 ロフトに続くこの部屋は客間。

 親族が見えた時に泊まって頂く空間です。

 そこには、100年に渡ってこの家を支えてきた梁があります。

 色を塗るのではなく、汚れを丁寧に落として貰いました。

 これは監督からの提案でした。

 「折角なら、色を付けるのでなく垢を落としてあげましょう」という考えです。

 色を付けるより余程手間のかかる仕事で、物に対する敬意がなければ出てこない考えです。

 一も二もなく賛成しました。

 「作品」という言葉は、良い意味でも、悪い意味でも使われます。

 創り手のエゴを含んだ言葉として使われる場合が校後者でしょうか。

 「商品に魂を込めれば作品となる」

 私はこの言葉を支持したいし、信じています。

文責:守谷 昌紀

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「中庭のある無垢な珪藻土の家」‐12‐ エピローグ 有るべきものが有るべき所に

 月曜日に「中庭のある無垢な珪藻土の家」をUPしました。

 私も建築専用のレンズで撮りますが、やはりプロの仕事はプロの仕事です。

 右手の中庭をあわせた構図になっていました。

 何カットもこの方向から撮りましたが、やはり平井さんに撮って貰ったものが一番美しい。

 建物の形状は、敷地から検討して行きました。

 ワールドカップ寸前で、日本代表に返り咲いたサッカーの本田圭佑選手。

 「ゴールはケチャップみたいなもの。出るときはドバドバ出る」言っていましたが、設計も同じかもしれません。

 いくら悩んでも、出てこない時は出てきません。

 この敷地を見せて貰ったあと、すぐにプランのイメージは浮かんできました。

 そこからクライアントと修正を重ね、ここに至ったのですが、くびれの部分が真っすぐだと建ぺい率がオーバーします。

 このくびれの部分に、納戸やトイレの開口部を切り、その形状を強調しています。

 ピンチはいつもチャンスです。

 床は全て無垢の檜で、壁は全て珪藻土です。

 リビングは比較的コンパクトにまとめました。

 軒のある中庭に面しているので、暑すぎず、寒すぎない空間となっているはずです。

 一方、ダイニング、キッチン、家事スペースはゆったりと繋がります。

 特に、キッチンと家事スペースは、何を置くか、どのような視線の抜け方が適切で心地よいか。

 奥さんと入念に打合せしました。

 キッチン南にある、2畳程の和室は現代サッカー用語で言えば、ポリバレントな空間。

 (ポリバレント=複数のポジションをこなせる)

 お子さんのお昼寝、洗濯物を畳む、雨の日の物干しと、最低でも3役はこなしてくれます。

 畳んだ衣類を横の収納に。

 裏側は洗面脱衣室に開いています。

 これらは全て奥さんの勉強のたまものです。

 フルタイムで働く奥さんの仕事部屋にもなるのが家事スペース。

 モザイクタイルに拘った、洗面脱衣と隣り合います。

 エントランスからも檜の階段が続きます。

 2階の寝室とつながるクローゼットは、舳先形状の部分を利用しています。

 写真は引越し前ですが、舳先でご主人と奥さんが半分半分となりました。

 こちらはご主人の書斎。

 そして子供部屋。

 1階にもあった茶色の壁は、マグネットの付く黒板(茶番?)なのです。

 中庭にあるのはLDKのエアコンの室外機です。

 玄関上の庇の下をそのエアコンの配管が走っているのですが、ファサードにこれらの配管を通したことは、過去に一度もありませんでした。

 どうするのが一番美しいだろうかと考えに考え、このような手法をとりました。

 結果として、私たちの引き出しを増やすことになったと思います。

 ゴミ箱のサイズも詳細を聞き、蓋が開いたその上に、ストックのゴミ袋を置くスペースを設けています。

 奥さんからはスケッチまで頂きました。

 有るべきものが、有るべきところにあって欲しい。

 仕事、家事、子育てと、忙しい日々の中で、家族との時間を少しでも捻出するために、あらゆることを効率よくしたい。

 そんな純粋な本気に、いつも応えたいと思うのです。

 夜景は、その建物のシンボリックに見せてくれます。

 夕刻、そのフォルムが浮かび上がり、開口から光が漏れはじめたとき。

 いくつになってもときめくものがあります。

 これにて、「中庭のある無垢な珪藻土の家」の物語はひとまず完結。

 楽しんで頂けたでしょうか。

文責:守谷 昌紀

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トレジャーキッズたかどの保育園‐11‐感極まる

 「トレジャーキッズたかどの保育園」の開園は、2018年4月1日。

 計画がスタートしたのは2017年の2月でした。どの計画もそうですが、様々な課題を乗り越えようやく竣工に至ったのが3月27日。

 ようやく、当社のwebサイトも公開できました。

 竣工写真の撮影に行ったのは、開園して3週間後。

 良い写真が撮れたのですが、やはり園児さんが実際にいる写真も撮ってみたい。

 写真家に相談すると、「そういう写真は守谷さんが撮った方がいいのでは」と。

 人物ありの撮り方を即席レクチャーしてもらい、現地へ向かったのが5月下旬でした。

 園に近付くと鯉のぼりが見えます。

 園長先生はいつも歓迎してくれるのですが、挨拶もそこそこに早速撮影を開始します。

 広い園庭の半分が芝生。

 小さい園児さんは直接芝の上を這ったり歩いたり。

 ここが大阪市内であることを忘れさせてくれます。

 砂場の広さは12畳ほどありませす。

 現場から担当してくれた、運営会社の担当者さんが「広い砂場で、思いっきり遊ばせてあげたいんですよ」の一言で、着工前に大きくなりました。

 エントランス前にある通称「ソロバン」。

 こちらもこの方のアイデアで、「お迎えにきた親御さんが話し込んだりしている時、退屈しないじゃないですか」と。

 そろそろ室内へとなり、懸命に靴を脱ごうとする姿に、思わずシャッターを切り続けました。

 一所懸命より、愛おしいものはありません。

 この鯉のぼりは、皆で製作したもので、ヒレの部分は、カラーごみ袋でつくるそうです。

 先生方の引き出しに感激するのです。

 2階奥の広い園児室で、体操教室がはじまると聞き、撮影の準備に。

 体操の先生が来る前から、園児くんたちのテンションはマックスです。

 しかし先生も勿論負けていません。

 平均台、マット、鉄棒を使った教室が始まりました。

 流石はプロ。こうやってやる気にさせるのかと納得します。

 この園は、くの字の平面を持っていますが、折れ点にあるのが0歳児室です。

 園庭に面する距離が短いので、この部屋はトップライトを設けました。

 2層吹抜けの天井から、さながら教会のような光が落ちてきます。

 その下で遊ぶ園児くんと先生。

 素晴らしい景色を見せてもらった気がます。

 園庭にある古タイヤは、明るい園長先生の明るいご主人が、休日に運んでくれたものです。

 ご主人は、保育とは関係のない仕事をされていますが、「ここは、大・中・小がいいんじゃない」と。100%正解です。

 実は、開園して2週間後、運営会社の方々が謝恩会を開いて下さいました。

 同時に4園が開園し、その施工会社、設計事務所が招かれ、労をねぎらって頂いたのです。

 私も挨拶をさせて頂いたのですが、トリは「砂場」「ソロバン」のアドバイスを貰った、事業部のリーダーでした。

 この日も、広島への出張中だったのですが、閉会間際に何とか大阪に戻ったこられたのです。

 急遽の指名でしたが、感極まり、運営会社の社員さんの多くがもらい泣きをしていたのです。

 しかし、その涙の意味は皆が知っています。

 この方が、どれだけ園児を思い、保育士の先生方を思っているかを。

 一所懸命の大人が沢山いる現場は、本当に働いていて楽しいし、必ず事態は好転して行くのです。

 勿論改善点はあると思います。

 しかし、本気の大人が、本気で創った保育園です。長く愛して貰えたらこレ程嬉しいことはありません。

 そして一所懸命より尊いものはないと確信するのです。

文責:守谷 昌紀

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築80年の長屋を「碧の家 」に〈リノベーション〉‐11‐リノベーションに失敗なし

 「碧の家」3月の点検で、現場日記は一区切りとしました。

 しかし、4月中旬の撮影で気付いたことが色々ありました。

 今回も2回延期でやっとの晴れ空。

 クライアントには無理なお願いばかりで……

 実は、3月に伺ったあと正面の花が枯れてしまったそうです。

 しかし、この日に合わせて再度植えていただきました。今回は根付いてくれると良いのですが。

 長屋の場合、必然的に1階の開口が少なくなり、光の取り方に工夫が必要となります。

 一番南にあるキッチンは何度か紹介しました。

 機能が集中し、1階で一番明るいところです。

 最奥の家電置場も何度か紹介しましたが、なかなかの力作です。

 トースター台がスライドするだけならともかく、買い替えた時に合わせて、スライド台が上下に位置を動かせます。

 監督と各担当者のアイデアに救われることが多々あるのです。

 洗面はトップライトから光をとっています。

 腰上は、日の光に映える水色のクロスになりました。

 壁にあるランプは施主支給。

 スイッチも同じくそうですが、焼き物には量産品にない味わいがあります。

 そして苦心に苦心を重ねたトイレの窓。

 中が透けすぎないガラスを探し、トランプのマークを四隅に張りました。

 中からみてもおかしくないよう、接着面も黒、赤となっています。

 ここがトランプである理由は、中に入れば分かるしかけです。

 不思議の国のアリスにでてくるウサギと、トランプの兵隊をイメージしたものなのです。

 2階は更に撮りどころが満載。

 写真の仕上がりが楽しみですが、ロフトは自分で撮影してきました。

 ヤコブセンデザインのドロップに座れば、南に開けた景色が楽しめます。

 その背面には本専用のニッチ。

 サン=テグジュペリの「星の王子さま」が立てかけられているのです。

 2階バルコニーで干している洗濯物を、急な雨の際に持って入れる室内干しエリア。

 この家の特徴のひとつです。

 ここは洗面と逆で、腰下を水色としました。

 収納スペースの中は可動棚を組み合わせ、PCスペースもあります。

 これは、家具レベルの細やかな大工仕事。

 もっとはっきり言えば、大工仕事の中で、家具を作って貰ったものなので、金額もかなり抑えられているのです。

 ビフォーの写真があまりなく、クライアントのタブレットのバックアップファイルをコピーさせて貰いました。

 「リノベーションに失敗なし」は私の信念です。

 今あるものに、設計料と1千万円以上の工事費をかけさせてもらって、失敗などありえません。

 しかし、それは綿密な調査と、れそれの担当者が、自身の責任を果たすことが絶対条件です。

 クライアントに信頼して貰えるまで考え、描き、仕事好きな監督、職人さえいれば、他は何も必要ないのです。

 少し力が入ってしまいました。

 この当たり前が、だんだん困難な時代になりつつあると思うのは私の思い過ごしでしょうか……

 懸命に働くこと以上に尊い行いはありません。この言葉が通じる国であって欲しいと心から願うのです。

文責:守谷 昌紀

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「どこにもない箱」の家‐1‐プロローグ

 クライアントは、ピアニストとバレエダンサーとそのご両親だ。

 よって、ピアノ練習室とバレエのトレーニングルームがある。それらを中心に、プランは練られた。

 姉妹は、ともに留学も含めて、その才能、技術を磨いてこられた。

 ピアニストのお姉さんはパリで3年間、バレエダンサーの妹さんは、ロシア、イギリス、フランスで。

 本場での勉強、暮らしは、何にも代えがたい経験だろうと思う。

 要望は色々あったが、建物に直喩として取り入れたのが、タイトルとした「どこにもない箱」だった。

 3つのボックスを組み合わせた形状と共に、特徴あるのがその色彩だ。

 白、エメラルドグリーン、グレーを採用したのだが、エメラルドグリーンはパリのオペラ・ガルニエをモチーフとしている。

 屋根は緑青がふいているのが、エメラルドグリーンと映るのだ。

 私が始めて訪れた海外もパリだった。

 1995年、24歳の時のことだが、1番初めに行くなら、やはり芸術の都パリだと思っていたのだ。

 残念ながら、24歳の私は1人でオペラ・ガルニエでオペラを観る勇気がなく、今となっては口惜しい限りである。

 このエメラルドグリーンを、手仕事の塗り壁でどこまで再現できるのか。

 この計画にとって重要なポイントだ。

 「家は家族の未来の幸せの形」だと考えている。

 何を幸せと感じるかは、誰もが違うので、ひとつとして同じ家はない。

 新たに生まれるこの家は、ご家族にとっての原風景となる。

 「どこにもない箱」を実現したいと思うのだ。

文責:守谷 昌紀

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建築家 守谷昌紀のゲツモク日記
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(仮称)トレジャーキッズたかどの保育園‐10‐いよいよ開園、その全容をお伝えします

 明日からは、2018年度が始まります。

 「トレジャーキッズたかどの保育園」もいよいよ開園です。

 4月8日(日)10:00am~11:00amには内覧会が開催されます。

 住所:大阪市旭区高殿7丁目16-29

 ハクモクレンも道路沿いに植わりました。

 もう書いてよいと思いますが、本当にタイトなスケジュールでした。

 1ヵ月で法的申請関係を全てクリアし、実施図面を描き上げました。今までで最も厳しいスケジュールだったと思います。

 しかし、のど元過ぎれば熱さ忘れるで、今は懐かしい思い出です。

 アプローチ横にあるのは、通称「ソロバン」。

 親御さんがお迎えに来たとき、先生方、ママ友と話をしたい場面があります。

 その時間を、子供達が退屈しないよう考えたものです。

 着想は、運営会社の担当者さんから。現場を知り、いつも子供のことを見ている人でなければ出てこない要望です。

 広い園庭には、芝生と砂場があります。

 古タイヤは、園長先生が自ら持ち込んだもの。

 泥んこになったらすぐに足が洗え、シャワーも浴びれるのです。

 ホール正面には500色の色えんぴつが飾られる予定。

『人はひといろじゃない。白木の園で自分色をみつけてください。

たっぷりの太陽を浴びて、立派なげん木に育ってほしい』

というメッセージを込めました。

 中に進むと事務室と調理室。

 各部屋には、木製の室名札が掛ります。

 エントランスホールから、調理室が見えるような窓を設けました。

 業務用の機器は、見るからにタフそう。

 機能美と言ってよいでしょう。

 1階は、園庭に沿う形で廊下が伸び、それを介して南からの光が差し込んできます。

 丁度「くの字」の折れ点にあるのが「ほしぐみ」0歳児室。

 この部屋は、廊下からの採光が厳しい為、トップライトを設けました。

 お昼寝には、丁度良い自然光になるはずです。

 見上げた景色は、さながら教会のよう。

 家具や建具は最も淡い白木としました。

 最奥にある隣の部屋は「つきぐみ」1歳児室です。

 少し淡いナチュラルな木の色としています。

 0歳児室のと間にあるのは児用トイレ。

 5歳児室で使う、最も濃い木の色としました。

 ここではお兄ちゃんお姉ちゃんを目指そう、という意味です。

 事務室に最も近い「にじぐみ」は2歳児室。

 この日は、仮の打合せ室になっていました。

 さらに少し濃い色に。

 エントランス前の階段を上がって2階へ。

 奥には調理室、左手にはエレベーターが見えます。

 2階は、園庭とは反対側に廊下があります。

 ホール周りにあるのは、まず「あおぞらえほんしつ」。

 この部屋もトップライトから光をとりました。

 向かいにあるのが「もりのひみつきち」。

 大きな園の中にある小さな空間は、色々な場面で役だってくれるはず。

 一番手前にあるのが「だいちぐみ」5歳児室です。

 トイレでも使った、最も濃い色にしました。

 しっかりした木へと成長して欲しいのです。

 隣にあるトイレは、3歳から5歳児仕様です。

 小さな便器がかわいらしいもの。

 2階の折れ点にあるのは「こもれびひろば」。

 0歳児室のトップライトの光を、木漏れ日に見立てました。

 左手にある可動間仕切を開くと、最奥にある3、4歳児室と繋がります。

 「かぜぐみ」と「そらぐみ」です。

 広さおよそ50畳。

 「こもれびひろば」と合わせると、約75畳あります。

 カーテンは仮のもので、最終的にはレース+緑になります。こちらからも木漏れ日が。

 4月2日の入園式はここで行われます。

 2階は園庭に向いて屋外廊下があり、まさに縁側として使って貰えれるはず。

 開園に向けて、続々と荷物が運ばれてきました。

 手前に写っているのは、運営会社の担当者の方です。

 毎週現場では、3時間から5時間掛けて定例会議が行われました。

 他園の担当、採用という仕事があるにも関わらず、最終回以外全て同席して頂きました。

 そして、全ての相談、質問に対して、ほぼ即断、即決で返答してくれたのです。

 通称「ソロバン」も、この方から提案を受け、考えデザインしました。

 勿論のこと、現場監督をはじめ、現場に関わった全ての職人の頑張りがあってこそ工期内に完成しました。

 しかし、即断、即決がなければ、また、良い園にしたいという愛情がなければ、このスケジュールで完成しなかったと思います。

 先日、住宅誌で付けて貰った作品のタイトルは「光と風と笑いで満たす」でした。

 6年間の間に、泣いたり、べそをかくこともあるでしょう。そんな時は「もりのひみつきち」へ。45年前の私が一番欲しかった空間でした。

 しかし、それらも含めて笑いで満ちた園となることを確信しています。

 多くの大人が、沢山の愛情と情熱を注いだんだよと、胸を張って伝えてみたいのです。

文責:守谷 昌紀

■■■毎日放送『住人十色』4月14日5:00pm~5:30pm
「回遊できる家」放映

■■■『住まいの設計05・06月号』3月20日発売に「回遊できる家」掲載

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現場の様子をお届けします。