最高のソース‐1534‐

 週末は我が家の女子チーム、妻と娘と出掛けました。

 男子チームの片割れ、長男は試験があるそうで大阪に居残りです。

 しかし、友人宅へ泊めて貰うことになり、多分一番幸せなはず。友人と居るのが最も楽しいのですから。

 妻も娘も、そこまでの外出好きではないので、一緒に出掛けて貰うには何らかの理由が要ります。

 秋の吉野路を走るだけで私は気分爽快。

 「この季節の快晴を逃して、いつ屋外へ出掛けるんだ」というのはこちらのロジックです。

 「温泉にはいって、自然の中で食事したら気持ちがいいんじゃない」とあくまでお願いベースなのです。

 宿はいつも私が泊まっているバンガロー。

 標高が高いので、ちょうど紅葉がさかりでした。

 快晴の下で見る紅葉ほど美しいものはそうありません。

 温泉に付随するレストランに多くを期待する人はあまり居ないと思います。

 しかし、下北山村にあるきなりの郷は結構いけるのです。

 メニューには、ジビエ、スモークの文字が並びます。

 アユスモーク盛り合わせ900円。

 右上は鹿、左下は猪のスモークですが、猪のスモークは、娘も美味しいと言って食べていました。

 アマゴスモークのトマトソースパスタは1300円。

 下北山村産のアマゴのスモークがのっています。

 鹿のスモークと季節野菜のピッツァは900円。

 野性味あふれる食材とスモークの香りがとても合っていました。

 娘はいつものから揚げ定食850円ですが、2人とも喜んでいました。

 少しは普段の罪滅ぼしになったでしょうか。

 翌日、少し湖に出ましたがほんの申し訳程度。

 目的は野外での昼食です。

 メニューはカップラーメン、サラダ、出来あいのトンカツですが、外で食べれば格別なはず。

 ちなみに、このお湯を沸かすバーナーはジェットボイルといいます。0.5Lなら2分でお湯が沸く優れものなのです。

 静かで景色のよい最上流までやってきました。

 こんな時ならインスタントラーメンも許されるでしょう。

 娘はチキンラーメンしか食べられないので、「安藤百福さんに感謝やね」と言いながら、喜んで食べてくれました。

 私の世代ならグルメと言えばコミック「美味しんぼう」を思い出す人が結構いるのではと思います。

 その中で、美味しいご飯を炊く方法の回がありました。

 それには美味しいお米、美味しい水、また適度な漬け置き、そして炊き方が大事でしょう。

 紹介されていた方法は、お盆にお米を広げ、割れているものや、欠けているものを、ピンセットでより分けるというものでした。

 粒の大きさにむらがあれば味が変わってしまうからです。

 あくまでコミックの中の話しですが、初老の夫妻がその作業をしていた場面が記憶に残っています。

 仕事であれ、家事であれ、そこまで時間を掛けられる人はなかなかいないと思います。

 しかし、美味しいものをつくるということは、こういうことだと思いますし、そうあって欲しいとも思います。

 英語のことわざで、このようなものがありました。

 Hunger is the best sauce. (空腹こそが最高のソース)

 しかし勿論最高のソースは愛情です。

 チキンラーメンに込めた私の愛情は、娘へ届いたのでしょうか。

■■■毎日放送『住人十色』4月14日5:00pm~5:30pm「回遊できる家」放映

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建築家 守谷昌紀のゲツモク日記
アトリエmの現場日記<&lt;/a&lta</

孤高たれ‐1533‐

 「今日はイイハ(118)の日」だと、ラジオから聞こえてきました。

 クリニックは何件か設計させて貰いましたが、一番多いのは歯科医院です。

 現在は「住吉区歯科医師会館」の仕事もさせて貰っているので、虫歯は勿論ご法度。

 虫歯だらけの設計者に依頼など来ない気がするので。

 三度の歯磨きは欠かしませんし、外出時の携帯歯ブラシは欠かせません。

 ただ残念なことに、それを始めたのが歯科医院の設計後で……

 いくら磨いても、これまでの治療痕が直るはずはありません。虫歯だけは取り返しがつかないのです。

 子供には「歯磨きは貯金だと思って!5千万円くらいの価値がある」と繰り返し言っているのですが、どこまで理解しているのか。

 一昨日に立冬を過ぎましたが、今日も暖かい一日でした。

 通勤中に公園をのぞくと、紅葉が始まった木もちらほら。

 近付いてみていると、砂場で0歳と1歳くらいの子供さんが遊んでいました。

 お母さん同士は、子育ての話しで盛り上がっています。

 レンタルDVDショップのセルフレジの前。台に乗っている男の子は3歳くらいでしょうか。

 何とかお母さんの手伝いをしようと、横から一生懸命手を伸ばしています。

 そして、集団登校をする小学生。

 母子そして家族だけの生活から、保育園、小学校と集団生活に入り、友達、仲間ができて行きます。

 子供は母親や家庭と少しずつ距離をおき、やがて社会へ出て行くのですが、それは間違いなく喜ばしいことです。

 友達の延長線上に、仲間や集団があるのかは微妙なところです。

 また、人が集まれば必ず悪くなるとは思いませんが、先月末の渋谷でのハロウィン騒動を知り、こんな言葉を引いてみたくなります。

 狂気は個人にあっては稀有なことである。しかし、集団・党派・民族・時代にあっては通例である。

 -ニーチェ-『善悪の彼岸』より

 「集団」と言う言葉と「群れる」という言葉は区分けした方が良いかもしれませんが、いずれにしてもマスとなった時、人は間違いやすいという事実はあるのです。

 個人など本当に弱いものです。私の力など、ほんの微々たるものでしかありません。

 しかし、それを認めているか否かという点においては、顔を隠し乱痴気騒ぎをする人達とは違う気持ちでいるのです。

 孤高のルポライター、竹中労の言葉も何度か引かせてもらいました。

 人は、無力だから群れるの ではない。群れるから無力なのだ。

 「孤高たれ」は「渾身」とともに私の座右の銘でもあります。

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野生を磨け‐1532‐

昨日の早朝、父の船で岸和田から出船しました。

狙いは太刀魚。

 太刀魚は紀伊水道沖で越冬したあと、春から夏にかけて北上してきます。

 中央に見えるのは、加太の国民休暇村です。

 太刀魚は、この友ヶ島水道から大阪湾に入る群れと、鳴門海峡から播磨灘に入る群れに分かれるようです。

 夏頃まで、大阪湾の最奥、また播磨灘の北部まで北上を続けるのですが、冬になるとまた紀伊水道沖に戻って行きます。

 その紀伊水道に落ちる一歩手前。

 紀淡海峡に群れが回ってきたようで、これだけの船が集まっていました。

 到着してすぐ。

 1匹目は父にきました。

 そして私にも。

 エサのイワシはその鋭い歯にやられて見るも無残。

 太刀魚はその大きさを、胴の幅が指何本分あるかで示します。

 私は指3本分まででした。

 最大は父が釣った指4本。 1mくらいはあったでしょうか。

 昼過ぎまで飽きることなく、適度に釣れ続けたのです。

 友ヶ島沖に移動して根魚も追加。

 ガシラが7匹ほど。

 そしてベラが20匹ほど。

 父の友人分も合せて、太刀魚は全部で25匹ほどと、十分に満足できる釣果でした。

 釣りは私の趣味なので、海であれ湖であれ、まず飽きることはありません。

 釣れなくても、どうすれば釣れるのかを考え、試します。

 想像し、打ち手を考え、実行。その結果をみてまた想像。その繰り返しです。

 それでも、漁師には遠く及ばないでしょうし、紀淡海峡のあの船団の中で、おそらく真ん中くらいの成績だったのではと想像します。

 それは趣味だからです。

 現代人は、生きるか死ぬかの生活を続けていた石器時代より、能力的には劣っていると言います。

 それはそうだろうと納得できます。

 しかし私は船上の人となった瞬間、何故かDNAの一部が覚醒してくるようです。

 狩猟本能がむくむくと頭をもたげ、飽きるなどという感情はどこかに吹き飛んでしまいます。

 今まで一緒に釣りをした人は、本当に大変だったと思います。一日中休むことなく、そのテンションで釣り続けるのですから。

 いつ頃からか、皆そこまで釣りたい訳ではない、一緒じゃないんだと気づき、1人で行くようになったのです。

 唯一の例外が、父の船での海釣りです。

 出港の時間、納竿の時間は父が決めることに従うだけですから。

 バブルの頃だったか、釣具メーカーのCMでこんなコピーがありました。

 「野生を磨け」
 
 そうする必要があるのかないのか分かりません。

 ただ、本能のおもむくままに過ごす時間は、感性の錆びを落としてくれるような気はするのです。

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士(さむらい)の頂点を目指せ‐1531‐

 先日、ある弁護士事務所を訪問させてもらいました。

 娘が弁護士という仕事のことを知りたいというので、無理を言って仕事場までお邪魔してきたのです。

 広い打合せテーブルの上には六法全書が。

 実物を見る機会はなかなかありません。

 これらも使って、直々に弁護士の仕事を娘に解説してくれたのです。

 迷惑を掛けてはいけないので、詳しい話は控えますが、新聞で大きな記事になるような勝訴を勝ち取っておられる方でした。

 訪問するまで知らなかったのですが、その判例をホワイトボードを使って、実に分かりやすく説明して頂きました。

 電話相談するだけでも、請求書が届くのは弁護士だけとはよく聞く逸話です。

 そんな方を1時間以上も拘束してしまいました。

 映画やドラマでは、裁判所でのスピーチが大きな影響を与えるように描かれています。

 しかし実際の裁判では、まずは書面で裁判官を納得させることが最も重要とのことでした。

 それで、娘に「作文が好きなら、向いているかもしれないね」と声を掛けてくれたのです。

 その後、実際の裁判を見るのもいいだろうと、大阪高等裁判所へ傍聴に行ってきました。

 たまたま入った裁判が、悪質な交通違反を繰り返している被告だったようで、かなり目つきが悪かったのです。

 また、傍聴席は私達だけ。

 ジロリとみられるだけでぞっとして、娘に何か危険があってはと早々に退室しました。

 何より、手錠を掛けられ、腰ひもを付けられた被告人をみるのは、あまり気分のよいものでなく……

 そんな事も含めて、大変な仕事だなあと感じたのです。

 10月は台風の影響で、延期になっていた運動会がありました。

 平日になったので私は行けなかったのですが、綱引きも勝利、リレーも1番で喜んでいました。

 中でも、学年で踊ったソーラン節は、何度もビデオを見ていました。

 練習はかなり辛かったようですが、チームの皆で頑張ったことが、とても楽しく、思い出に残ったようです。

「常に狭き門を」

 聖書にある言葉だそうですが、当社の12条あるフィロソフィーにも使わせて貰っています。

 大変の先には必ず充実があるのです。

 士が付く仕事を士業(さむらいぎょう)と言ったりします。建築士もそのひとつですが、その頂点にあるのが弁護士でしょう。

 もし本気で弁護士を目指すなら、全力で応援します。そうでなくても、大変でもいいからやってみたい仕事を見つけてくれたら、これ程嬉しいことはありません。

 こんな職業が残る、残らない、のような記事を見かけます。士(さむらい)業は損得で選ぶものではありません。士(さむらい)のように強く生きて欲しいし、生き様と合致する職業を見つけて欲しいと思うのです。

 今日から始まる十一月は「二四六九士」で表される短い月。

 しかし年に1度しかない士月(さむらいつき)が始まりました。

 明日死ぬかのように生き、永遠に生きるかのように学びたいと思うのです。


 

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日本最古の「道」‐1530‐

 日曜日は、気温が20℃前後で快晴。いわゆる絶好の行楽日和でした。

 「色んなところに行き過ぎて飽きた」と、娘は近頃あまり外出したがりません。

 「遊園地、かつ丼、本を買ってあげる」で誘えば来てくれるのですが、いつもそれでは芸がない。

 この日はにゅう麺+参拝で誘ってみたのですが不発でした。

 よって、最高の行楽日和にひとりで大神神社(おおみわじんじゃ)へ。

 奈良の桜井にある大鳥居は知っていましたが、おそらく初めての参拝です。

 「古事記」「日本書紀」にも記され、日本最古の神社とも言われます。

 大物主大神(おおものぬしのおおかみ)が、三輪山に鎮まることを望まれたため、左に見える三輪山自体がご神体となっているのです。

 その読み名の通り、三輪素麺で知られる三輪にあります。

 素麺発祥の地とも言われるだけあり、二の鳥居のすぐ横に店がありました。

 鳥居をくぐり参道を進みます。

 神殿はないので、こちらが拝殿。

 檜皮葺きの屋根の下に、光る菊の御紋。

 陰と陽、自然と建築の見事なコントラストを見せてくれます。

 神社も最古なら、最古の道と言われるのが「山の辺の道」。

 三輪から奈良へ至るものでしたが、現在は天理あたりまでが遊歩道として整理されているようです。

 途中に多くの神社や古墳があり、飽きることがありません。

 10年以上前、あるクライアントが「春先にこの道を歩くのが一番好きなんです」と言っていました。

 大阪や京都にない、古都・奈良らしい風情を感じます。

 古の人々の息遣いが聞こえてくるような気さえしてくるのです。

 オレンジのコスモスが道に張り出していました。

 花は自らの花粉を運んで貰うため、これほどまでに美しく咲き誇るのです。

 今度は家族で天理まで走破したいのですが、娘は歩くのを一番嫌がり……

 何かプラスアルファの魅力を探さなければなりません。

 三輪素麺の老舗、「池利」が直営する千寿亭がすぐそばにあります。

 ここのにゅう麺で誘ってみたのです。

 社長の息子2人がスキーの古い仲間で、ずっと前に一度内装だったかの相談に乗ったことがあります。

 おそらくそれ以来なので、久し振りに食べてみたかったのですが、またの楽しみです。

 大阪へ戻るために桜井から169号線を北に走ります。

 何とものどかな夕景ですが、この山裾に日本最古の道は生まれました。

 20世紀初頭、仙台に留学してきた魯迅は、中国に戻り「阿Q正伝」などを発表します。

 短編小説「故郷」にはこのような言葉があります。

 もともと地上に道はない。歩く人が多くなれば、それが道となるのだ。

 道は先人が作ってくれたものです。

 その道を有り難く利用させて貰うのですが、実業の世界では、優秀な人がその道を最も上手く使います。

 舗装された道を、高性能の車で走るイメージですが、こういった人達がエリートと呼ばれる人々です。

 自分がエリートでないなら、道なき道なのか、獣道なのか、人が通りたがらない道を行くしかありません。

 舗装道路を行くのでは、高性能の車には敵わないからです。

 格好をつけるつもりはありませんが、自分がエリートであるかないかは、分かっているつもりです。

 一休和尚の言葉ではありませんが、踏み出せばその一足が道となります。勇気をもって踏み出すしかないのです。

 帰路の際、屋根が印象的な天理市役所を通りすぎました。

 この近くに、昔「彩華ラーメン」の屋台があったよなあ、と思いながら走っていると、西名阪の天理IC近くにその屋台が見えました。

 懐かしいなあと思いながら、渋滞の車窓から見ていたのです。

 出掛けるということは、道を行くことです。そうすれば色んなことが起ることを、何とか娘に伝えたいのですが。

『道』一休和尚

この道を行けばどうなるものか

危ぶむなかれ、危ぶめば道はなし

踏み出せばその一歩が道となる

迷わずゆけよ、ゆけばわかる

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一流は柔らかい‐1529‐

 「女心と秋の空」とはよく言ったものです。

 雲の形も目まぐるしく変化していきます。

 一瞬とて、同じ形にはとどまりません。見ていて飽きることがないのです。

 「リベンジ」という言葉が、一般的に知られたのは松坂大輔投手がインタビューで使ってからだと思います。

 現在は中日ドラゴンズに所属しますが、当時は西武ライオンズで、文字通り日本の頂点に君臨する投手でした。

 「リベンジ」は復讐すること、報復、仇討ち等を意味しますが、スポーツ等では、一度負けた相手に借りを返すという使い書い方が主流です。

 私の記憶が正しければ、この使い方を初めにしたのは、格闘技業界だったと思います。

 若い頃はプロレス、K-1、総合格闘技が大好きで、専門誌を毎週買う程だったので、おそらく間違いないと思います。

 更に「アベンジ」という言葉も見つけ、調べてみると以下のような説明がありました。

 リベンジが個人的な理由による復讐であるのに対し、アベンジは正義感による悪への報復という意味合いをもつ。

 なるほど、だから「アベンジャーズ」だったのです。

 「アベンジャーズ」は、アメリカの『MARVEL』(マーベルコミックス)から出版されたコミックです。

 長男が大好きで、最新作も映画館へ観に行っていました。

 これは長男が部屋に貼っているポスターです。

 それで、筆箱も『MARVEL』。

 それに影響を受けた娘も『MARVEL』。

 この重石のようなものも『MARVEL』。

 用途が何かは知らないのですが、確かに格好いいのです。

 「マーベル」も調べてみるとは驚く、驚嘆するという意味でした。だから「マーベラス」は驚く程素晴らしいという意味だったのかと納得しました。

 知っているようで知らないことばかりです。

 松坂投手が「リベンジ」をインタビューで使った時、メディアは一斉に取り上げましたが、私は多少違和感を持っていました。

 力と技がぶつかり合うスポーツの世界で、何となく私闘を連想させる「リベンジ」は合っていない気がしました。

 例えば、当社が設計コンペで負けたとして、「次はリベンジだ」は、合っていない気がします。力不足で負けたので、復讐する必要などありませんから。

 また、相手が「悪」な訳でもないので「アベンジ」もマッチしませんが、どちらかと言えば仕事は「アベンジ」よりでやりたいと思うのです。

 リベンジよりアベンジよりで、マーベラスな仕事を、という感じでしょうか。

 1980年生まれの松坂投手は現在38歳。

 今シーズンの終盤、日本球界では「松坂世代」の引退が話題になっていました。

 今年の活躍までは、何度も引退の声を耳にしました。それでもスタイルを変えながら、ここまで現役を続け、また、ファンから支持されてきたのです。

 松坂投手の魅力は、この春にも一度書きました

 加えて言うなら、一流で居続ける人は「柔らかい」気がします。

 上り詰めるまでは、死にもの狂いで頑張るしかないのだと思いますが、「居続ける」ということは変化し続けるということです。

 雲が変化を望んでいる訳でなく、風や大気の状態が、そうさせるのです。

 人は雲と違って意思があるので、全てが風任せとはならないでしょう。

 しかし、抗うだけでなく変化することを意識しなければ、ただ疲弊するだけで、人生が終わってしまうかもしれません。
 
 およそ私が不得手だった「柔らかい」。しかし、それは確実に、極めて大切なことのような気がしています。

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成功を恐れない‐1528‐

 日曜日に中2の長男が居るのは珍しいのですが、聞けば定期考査中とのこと。

 どうせ大して勉強しないので、昼食がてら河南町へドライブに出掛けました。

 街路樹の中には、色づき始めた樹々もちらほら。

 このあたりまで来ると、かなり緑が濃くなってきます。

 20年振りに、近つ飛鳥博物館にやってきました。

 河南町、太子町にまたがり、古墳時代・飛鳥時代を専門に扱った博物館です。

 1994年の完成で、設計は安藤忠雄。

 彼が乗りに乗っていた時代の作品と言ってよいでしょう。

 何と言っても特徴は、この連続する階段と極めてシンプルな搭状のキューブです。

 階段向かって右からアプローチするとエントランスが見えてきます。

 コンクリート打ち放しの柱と梁に、大きなガラス開口。

 多くの建築をみてきましたが、これほど作風を変えない建築家は稀だと思います。

 最も大きな展示空間には、仁徳天皇陵の模型がありました。

 その奥にある少し暗い空間は、あのキューブの真下にあたります。

 そこには巨大な修羅が展示されているのですが、この部分が「地震により立ち入り禁止」となっていました。

 見上げると内部は空洞。巨大な吹抜けなのです。

 普段は明るいのか、このままなのか分かりませんが、コンクリートの一部に剥がれでもあったのかもしれません。

 博物館、美術館へ行こうというと、子供達は「え~、また~」と嫌がるので、あくまで目的は昼食。

 来たら来たで、楽しんで帰るのですが、子供心は難しいものです。

 立ち入り禁止となっていたのはこのキューブの下。

 これだけ巨大な吹抜け空間が、必要なのかと聞かれれば、おそらく答えは無いと思います。

 しかし、ドラマティックなのは確かです。

 建築家・安藤忠雄は、70年代から現在に至るまでトップランナーであり続けています。

 77歳となった今でも、建築家と言えば安藤を上げる人は多いでしょう。

 建築家だけに関わらず、多くの成功者を見て思うのですが、「成功を恐れていない」と感じます。

 「失敗を恐れるな」とよく言いますが、本当に難しいのは前者のような気がします。

 失敗しないこと=成功、とはなりません。ここには大きな違いがあると思うのです。

 もっと言えば、「恐れ」という概念が無いのかもしれません。

 コンクリート打ち放しは安藤建築の代名詞です。その手法を学ばせて貰い、表現として使わせて貰いました。

 しかし、真似レベルでは終わっていないつもりです。

 日本のコンクリート打ち放しの文化は、私が守りますので、安心して最後まで走り切って下さい。

 同業なので、「凄い」とばかりは言っていられません。絶対超えて見せると決意するしかないのです。

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いえをつくるのじょうずだね‐1527‐

 先週日曜日は、「中庭のある無垢な珪藻土の家」の取材でした。

 ある機関紙の巻頭8ページの予定です。

 以前には「池を望む家」「イタウバハウス」を取材して貰いました。

 なかなか葉がつかなかったヤマボウシも、元気を取り戻しています。

 木々の変化は、折々の表情を家に与えてくれるのです。

 制作会社の担当者2人と伺い、2時間程の取材でした。

 「取材時は是非サポート下さい」と言っていたご夫妻でしたが、全くの杞憂でした。

 インタビューが始まると、家づくりの物語りが次から次へとでてきます。

 おそらくそうなるだろうと私は想像していました。

 打合せの際も、疑問、質問などがいつも非常に分かりやすく、明快でした。

 ご夫妻と話しをしていて、話が途切れることはまずないし、ご主人と四方山話しをしていたら2時間くらいはあっという間なのです。

 写真は以前のものを使うことにしました。

 実際の暮らしが始まったあとに撮影するのは、本当に大変です。

 この春に撮影したカットですが、お姉ちゃんはお絵かき、弟くんはパワーショベルで遊んでいる間に撮ってもらいました。

 こういったカットを写真家は「奇跡の一枚」と言います。

 大げさに聞こえるかもしれませんが、全てがかみ合うカットは、なかなか撮れないものなのです。

 5歳になったお姉ちゃんは、担当者と私を色々と案内してくれます。

 将来の子供部屋にはダンボールの家が。

 中には新聞紙で作った箒と塵取りまでありました。

 ものづくりがとても好きなのはお母さん譲りでしょう。

 インタビューは土地購入の経緯から始まり、おのずとキッチン周りのこだわりの部分へ移っていきます。

 ゴミ箱上にある、ゴミ袋のストック置場。

 何でもないものに見えるかもしれませんが、通路側を向いているので来訪者からは見えません。

 また、ゴミ箱の蓋の軌道をかわした位置にあるのです。

 キッチンからつながる、2.5畳の和室は様々な機能を併せ持ちます。

 洗濯物を畳む、雨の日の物干し、お子さんの昼寝等など。機能面での見せ場です。

 更に、その和室と洗面脱衣が繋がるのがこの収納。

 和室で畳んだものが、洗面脱衣室側からとることができるのです。

 インタビューの冒頭に、お姉ちゃんがこんな可愛いものを私に手渡してくれました。

 シールをはがすと私への手紙がでてきました。

 まだ逆さ文字が混じっていますが、本人が読んでくれました。

 「もりたにさん いえ つくるの じょうずだね」

 前の晩に、自ら書いてくれたとのことです。

 建築をつくるのが仕事ですが、「じょうずだね」と言って貰ったのは初めてです。

 多くの創り手がいる中で、もし誇れることがあるとしたら「一緒に物語をつくる」ということに尽きる気がします。

 取材に行く前に、8年前の「池を望む家」の巻頭特集に少し目を通しました。

 こちらの計画も、池の横にある土地と出会うところから、家づくりの物語が動き出します。

 その物語の舞台監督を私に任して貰えるなら、ドラマティックにダイナミックに、そして必ず楽しいものにしてみせます。

 それが私の生きる道なのです。

 この機関紙は無料で貰えるので、発刊の日時が決まればまたお知らせしたいと思います。

■■■毎日放送『住人十色』4月14日5:00pm~5:30pm「回遊できる家」放映

■■■『建築家と家を建てる、という決断』守谷昌紀
ギャラクシーブックスから11月27日出版
amazon <民家・住宅論>で1位になりました

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■4月1日「トレジャーキッズたかどの保育園」開園

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『住まいの設計05・06月号』3月20日発売「回遊できる家」掲載
『関西の建築家とつくる家 Vol.2』2月1日発売「阿倍野の長家」掲載
『homify』6月29日「回遊できる家」掲載
『homify』6月2日「イタウバハウス」掲載
『houzz』5月28日の特集記事「あちこちでお茶できる家」掲載

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◇一級建築士事務所 アトリエ m◇
建築家 守谷昌紀のゲツモク日記
アトリエmの現場日記<&lt;/a&lta</

春はあげもの、秋はまきもの‐1526‐

 昨年だったか、電車の中吊りで「春はあげもの」という広告を見かけました。

 ハイボールの宣伝だったと思いますが、もちろん枕草子の冒頭「春はあけぼの」に掛けてのコピーです。

 思わずくすりとした人が沢山いたのでは。秀逸でした。

 先週は国道169号線で崩土があり、目的地にたどり着けず。

 今週は、無事復旧工事が終わっていました。

 2ヵ月振りに訪れる奈良県下北山村の池原ダム。

 ボートであちこちと移動しながら釣るのですが、秋の湖上は素晴らしく気持ちが良いのです。

 バスフィッシングで聞く言葉に「秋はまきもの」があります。

 ルアーは大きく分けると、ソフトルアーとハードルアーがあります。

 ソフトルアーはポリ塩化ビニルで出来ているものが多く、消しゴムの柔らかいものを想像下さい。

 ハードルアーは、文字通りプラスチック、木、金属等でできています。

 人の方で動きを付けなければ、魚がエサと勘違いすることはありません。これらの一部を「巻き物」と言ったりするのです。

 水温が下がり、魚が動きやすい季節になると、バスはエサを求めて広範囲を回遊するようになります。

 今年は台風が続いたので濁りが残っており、こういう状況も巻き物が効くケースです。

 水通しのよい、岬まわりでいきなり来ました。

 クランクベイトの中でも5m潜るタイプを選択。

 急な冷え込みで、かなり深いレンジに居るようです。

 その後、上流部、中流域もチェック。

 とにかく釣るだけなら、ソフトルアーに軍配が上がりますが大きさは35cmまで。

 昼食休憩のあと、少し曇ってきたこともあって再びクランクベイトを巻きます。

 3本程続けてきました。くれば40cm以上で、今日はこちらが正解のようです。

 午前中にみつけたような条件を探して釣っていると、この日最大の魚が。

 45cmのコンディションのよい魚でした。

 すっかり日暮れも早くなり、16:30にはボートを上げたのです。

 「秋は巻き物」はいわゆるセオリーです。「春はあげもの」に続けたので、食べ物を想像させた人には失礼しました。

 セオリーはいつも効く訳ではありませんが、先人の経験則でもあります。

 ただ信じるだけでは駄目だし、否定的な見方をしても価値は生まれないと、この日も痛感したのです。

 何より、軸がなければ比べるという行為が発生しません。この部分がセオリーの最大の価値なのだと思います。

 スティーブ・ジョブズは数学を例にとって、こんな表現をしています。

 クリエイティブな人というのは、先人たちが残してくれたものに感謝したいと思っているはずだ。

 僕が使っている言葉も数学も僕が発明したわけではない。同じ人類の先人たちが作ってくれたものなんだ。

 勝者のメンタリティには、常にどこかに謙虚が隠れています。

 そう在りたいと、心から願うのです。

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岩をもうがつ強い意思、そして心に花を‐1525‐

 10月8日(祝・月)は快晴でした。

 台風通過の影響で、気温は30℃近くまで上昇。

 汗ばむ程の陽気になりました。

 久し振りに奈良の湖へ行くつもりが、169号線が崩土によって通行止めに。

 何とも言えない気分ですが、直接出くわさなかっただけでも、幸運だったと思わなければなりません。

 Uターンして奥吉野の川上村、柏木というエリアまで戻ってきました。

 以前観たテレビ番組で、紀伊半島には神奈川県と同じくらいの巨岩が埋まっていると紹介されていました。

 巨岩が多い理由は忘れてしまったのですが、確かに大きな岩が多いと思います。

 この山頂部に見えているのも一枚岩のよう。

 こちらは下北山村の景色ですが、これもおそらく一枚岩だと思います。

 紀伊半島南端にある「古座川の一枚岩」も日本最大級とされています。

 専門家ではないので絶対とは言えませんが、これもそうなら古座川の一枚岩と遜色のない程の大きさです。

 また柏木には、「不動窟」と言われる鍾乳洞があります。

 急に時間ができたので、のぞいてきました。

 受付を済ませ、レストハウス横の長い階段を降りていきます。

 山腹にぽっかりと口が開いていました。

 天井の低い所もありますが、かなり広い空間が広がっています。

 修験道(しゅげんどう)の行場としても知られているそう。

 最奥には、轟々と音を立てて流れる滝がありますが、ちょっと怖いほどの迫力でした。

 この滝の水源がどこにあるのか、またどこへ流れていくのかは、まだ分かっていないそうです。

 その脇に祭られた不動明王。

 恐ろしげな表情でにらみをきかせています。

 硬い石を水が延々と削り、このような空間が生まれました。

 20世紀を代表する彫刻家、イサム・ノグチは「石は地球の骨である」と言いました。

 彼は石にノミを入れる時、飛び散った破片が目に刺さろうとも、更に顔を近づけ、ノミと人間が一体となって石に挑む瞬間に目をこらすことをやめなかったと言います。

 その写真を見たことがありますが、まさに鬼神の表情でした。

 ヨーロッパなら石積みの城に、日本においても城郭の石垣にと、石は最も硬く、強い材として建築にも使われてきました。

 また、磨けば極めて平滑になるので拭き取りやすく、清潔を求められる場所でも重宝されます。

 いわば究極の材なのです。

 鉄筋コンクリートは、石に対する憧憬から生まれたと言っても過言ではないでしょうし、私は人が作る石だと考えています。

 里山風景の中にコスモスを見つけました。

 現実というものは、なかなかに厳しいものです。

 困難を克服し、更に前進するには、岩をもうがつ強い意志を持っていなければなりません。

 ただ、心には花を持っていたいと思っています。

 ささくれだった心では、やはり真実を見抜くことはできません。ただ一輪でも花を持っていたいと思うのです。

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