タグ別アーカイブ: 下町のコンクリートCUBE

まことに日に新たに、日々に新たに、又日新たなり‐1743‐

 11月3日は文化の日で祝日。

 この日は一日掛けてショールームを回っていました。

 御堂筋と中央大通りが交差するのが「久太郎3」の交差点。

 その南西角にトーヨーキッチンがあります。

 御堂筋が通行止めになっていたので、スタッフの人に聞くと、この日から「OSAKA光のルネサンス」が始まるとのこと。

 トーヨーキッチンは、岐阜が創業の地で、元はスプーンやナイフを作っていた会社です。

 それらの加工技術を生かしてキッチンを作り始めたのですが、かなり前衛的な試みをしてきたメーカーだと思います。

 キッチンをリビングダイニングの中央に押しだしてきた功績は大きいと思うのです。

 飾り気の少ない、質実剛健といって良いデザインが、ミニマルな建築に良く合います。

 私も「下町のコンクリートCUBE」をはじめ、2000年代の作品にはかなり採用しました。

 しかし、最近縁がなくショールームも5年振りだったようです。

 最近は、流氷をイメージした「アイス仕上げ」と呼ばれる天板の人気が高いそうです。

 さらにインテリアにも力を入れており、こちらは馬の照明。

 このあたりにも「我が道を行く」感が出ています。

 当社もそうですが、選ばれるためには何かしらの理由が必要です。

 マジョリティでないなら何かを仕掛けて行くしかないのです。

 まずデザインの方に目が行くのですが、大きなシンクを立体的に使えるよう考えられた「3Dシンク」は、キッチン業界に一石を投じたと思います。

 まだSNSなどがない時代ですが、それを教えてくれたのは、目の肥えたクライアントでした。

 この日案内してくれたのは、社会人2年目の溌剌とした女性で、非常に好感が持てました。

 「仕事、好きそうだね」と聞くと「ハイッ!」と答えてくれたのですが、私が仕事を始めた頃に生まれたのか……などと思っていました。

 15時から17時まで案内して貰い、プランがまとまりました。

 ただ、この日は3メーカー回ったので、どこになるかは金額も含めてクライアントと相談の上です。

 ショールームを出ると、イルミネーションが点灯されていました。

 消費が冷え込む中、どのメーカーも決して楽ではないはずです。

 四半世紀にわたり建築の世界で生きたので、様々な隆盛を見てきました。

 例えばトーヨーキッチンを例にとれば、「デザイン」、「機能」、そして「新しい」が認知の後押しをしたと思います。

 それを自分に置き換えた時、若い時なら別ですが、私が「新しい」ということはありません。

 殷の名君湯王は、たらいの底にこのような言葉を刻み、毎朝顔を洗う度に戒めたそうです。

 まことに日に新たに、日々に新たに、又日新たなり

 24、5歳の彼女に、気持ちの「新しさ」だけは負けないつもりなのです。

■■■9月11日発売『リフォームデザイン2020』「回遊できる家」掲載
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【News】
■10月23日『homify』の特集記事に「阿倍野の長屋」掲載
■5月16日『homify』(英語)の特集記事に「下町のコンクリートCUBE」掲載
■5月10日『Houzz』の特集記事に「阿倍野の長屋」掲載
■4月8日『Sumikata』東急リバブル発行に巻頭インタビュー掲載
■2月13日 『Best of Houzz』「中庭のある無垢な珪藻土の家」が受賞

■2017年11月27日ギャラクシーブックスから出版『建築家と家を建てる、という決断』守谷昌紀がamazon <民家・住宅論>で1位になりました

メディア掲載情報

◇一級建築士事務所 アトリエ m◇
建築家 守谷昌紀のゲツモク日記
アトリエmの現場日記

プロとアマの違い‐1703‐

 今日、明日はしっかりした雨が降るようです。

 近頃の雨はまとまって降るので、できれば梅雨らしいシトシト雨が希望なのですが。

 天の気分が私の思うようになるはずもなく、今朝もパラパラと降ってきました。

 少し遠回りしてツバメの巣の前を通りました。

 昨日、巣立ったようです。

 寂しい気持ちもありますが、もう3匹が過ごすには狭すぎる感もありました。

 自然界には、一切無駄が無いのだと改めて教えられます。来年も見れると良いのですが。

 近くの保育園の植込みでは、ビヨウヤナギが花を付けていました。

 この時期に咲く黄色い花は少なく、自然と目に入ってきます。

 初めて植栽に採用したのは「下町のコンクリートCUBE」でした。

 大阪で住宅を設計する場合、1、2本の庭木を選ぶことはあっても、庭をデザインする機会はそれ程ありません。

 「下町のコンクリートCUBE」は敷地の半分が庭だったので、植栽の本を買ってきて、また実際に庭樹園まで足を運び、私なりに勉強しました。

 正面にある中木はアオダモで、塀越しに見えているのはヤマモミジです。

 キッチンに立つと目線の先には、左からシロヤマブキ、ヒメシャラ、ビヨウヤナギ、キソケイ、シロヤマブキ。

 右手にヤマモミジが少し見えています。

 2006年、植栽工事の時の写真です。

 一緒に仕事をした造園会社の社長は自らクワを持つのですが、色々と熱心に教えてくれたのです。

 同じく2006年完成の「サロンのある家」の奥さんも、庭木にとても詳しい方でした。

 植栽工事は金額が合わずだったのですが、正面、裏庭とも、ほぼご自身で完成させた程。

 正面右端に、ひょろっと伸びているのはジューンベリーです。

 花、実、紅葉と三拍子そろった庭木で、2010年の「イタウバハウス」でも採用しました。

 何と言っても、ご主人お手製のルーバーがポイントですが、遊び道具でもあり、正面のマンションからの目隠しでもあります。

 ジューンベリーというくらいですから、この時期に実をつけます。

 収穫し。

 ジャムになった写真を送ってくれたのです。

 3~4mの擁壁の上に建つ「高台の家」

 こちらのご主人も、建物と同様、庭木にもこだわりのある方でした。

 シンボルツリーは中央のヤマボウシ。

 「サロンのある家」と同じく、減額で植栽工事がなくなったのですが、近所の庭木屋さんに通い、こつこつと植樹されたのです。

 多様な木々を上手く組み合わせ、配置されています。

 何本かあるスラッとして、葉がカールしたような木はハイノキ。

 常緑樹にも関わらず葉が細やかという点ではソヨゴと合せて貴重な存在です。

 こちらのクライアントに教えて貰いました。

 初めは砂場だったところはミニ農園となりました。

 「高台の家」の植栽図面の一部です。

 植栽計画を私がした訳ではありませんが、伺った時にメモをとり、図面化しておきました。

 樹木名の後に、落葉か常緑か、広葉樹か針葉樹か、花の時期と花の色が書いてあります。この図面では外していますが、内部資料には100点満点での評価付けもしています。

 プロとアマの違いは、それに掛けられる時間の量、すなわち仕事として選ぶのか選ばないのか、その一点だけのような気がします。

 これだけ自在に情報が手に入る時代なので、こだわりの家を建てようかというクライアントは、私以上に知識を持っていることは普通にあります。

 インテリアに詳しい奥さんなら「今の流行は○○ですよね」と尋ねられ、その言葉を知らないこともありました。

 しかし、最終目標はクライアントにとって幸せな建築を創造することですから、私が知っていても、奥さんが知っていても、どちらでも構いません。

 重要なのは全てを踏まえ、何を選択するかです。建築は多くの部位があるので、その選択は組み合わせによって無限に変化もするのです。

 初めは不安ばかりだった植栽計画ですが、今はむしろ楽しみにしています。最後の仕上げといった感じでしょうか。

 そもそも悪い庭木などないので、余程うがった見方をしなければ、失敗などあり得ないのですが。 

 お代を頂いて設計、デザインをさせて貰っているクライアントから、学ばせて貰ったことがどれだけ沢山あったことか……

 ビヨウヤナギを見かけてはYさんを思いだし、ジューンベリーを見てはTさんを思い出し、ハイノキをみてはHさんを思い出します。

 プロとアマの違いは、仕事として選ぶかどうかだけと書きました。もう一点だけ付け加えるなら、悪い木などないと知ることでしょうか。

 結果を出す為に皆が全力を尽くし、結果が出ないということの方が矛盾するのです。 

■■■4月8日『Sumikata』東急リバブル発行
巻頭インタビューが掲載されました

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【News】
■5月16日『homify』(英語)の特集記事に「下町のコンクリートCUBE」掲載
■5月10日『Houzz』の特集記事に「阿倍野の長屋」掲載
■2月13日 『Best of Houzz』「中庭のある無垢な珪藻土の家」が受賞
■2月3日『Houzz』の特集記事に「阿倍野の長屋」掲載 続きを読む プロとアマの違い‐1703‐

タンポポをわたしの魂とする‐1694‐

 土曜日は現場打合せがありました。

 現場に、打合せシートを忘れてしまったので、日曜日の朝一番で取りに行ってきました。

 途中、だんじりを積んだトレーラーを見かけました。

 多くのイベントが中止になっていますが、夏祭の時期までにどこまで平静を取り戻せるでしょうか。

 現場はクライアントの「家」になる前の段階です。

 この時点なら、私は自由に出入りができます。

 図面を元に創り上げられて行くものですから、自分の頭の中に入っていくような感覚です。

 休日の現場ほど、好きな場所はそうないかもしれません。

 1階には、昨日の打合せの成果が。

 とても面白い打合せだったので、また現場日記にUPしたいと思います。

 そういえば、『homify』から「下町のコンクリートCUBE」が、『homify』(英語版)に取り上げられたとメールが来ていました。

 もう14年前の作品ですが、本当に色々なところで取り上げて貰いました。

 50代のクライアントから突然お電話頂いたのですが、間違いなく、私の人生に大きな影響を与えた仕事でした。

 外に出たついでに写真も少し。

 確か、背が低いのはニホンタンポポ。

 背が高いのがセイヨウタンポポだったと思います。

 すでにワタボウシになっているものも沢山ありました。

「タンポポ」

 踏みにじられても

 食いちぎられても

 死にもしない

 枯れもしない

 その根強さ

 そしてつねに

 太陽に向かって咲く

 その明るさ

 わたしはそれを

 わたしの魂とする

 真民・詩

 自然派と言われた詩人、坂村真民の「タンポポの本」の中にある一編です。

 自宅を「たんぽぽ堂」と名付けた程ですから、人並みならぬ愛着があったことがよく分かります。

 柔らかく、温かい作風とは一転して、このような言葉も残しています。

 すべては出会いの 一瞬できまる

 だから その時のために 心を磨いておくのだ

 名刀のように

 タンポポを私の魂とし、心を磨きます。

 オファーは突然届きますし、全ては一瞬で決まると思うからです。

A photograph is wonderful.
2015年5月 北海道/札幌

■■■4月8日『Sumikata』東急リバブル発行
巻頭インタビューが掲載されました

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【News】
■5月16日『homify』(英語)の特集記事に「下町のコンクリートCUBE」掲載
■5月10日『Houzz』の特集記事に「阿倍野の長屋」掲載
■2月13日 『Best of Houzz』「中庭のある無垢な珪藻土の家」が受賞
■2月3日『Houzz』の特集記事に「阿倍野の長屋」掲載
■12月3日 『Houzzユーザーが選んだ人気写真:キッチン編』「中庭のある無垢な珪藻土の家」が5位に選出
■9月30日発売『suumoリフォーム 実例&会社が見つかる本 関西版』「回遊できる家」掲載
■7月21日BS朝日『大改造!!劇的ビフォーアフター』「住之江の元長屋」再放送
「トレジャーキッズたかどの保育園」
地域情報サイトに掲載

■2017年11月27日ギャラクシーブックスから出版『建築家と家を建てる、という決断』守谷昌紀がamazon <民家・住宅論>で1位になりました

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