タグ別アーカイブ: ショールーム

川のほとりに咲いた花園‐1796‐

 アトリエmは8連休明けの月曜日です。4月末に告知した際は建築会社の監督からは「いいですねえ」と言われました。

 会社を休みにするのは事実なので、「長い休みで申し訳ないね」と詫びておきましたが、私達がずっと休みと言う訳でもありません。

 スタッフも何日か出てくれていますし、私も敷地調査へ行ったり大阪に戻ってきたり。今回トライしたワーケーションは、それなりに手応えはありましたが。 

 ゴールデンウィーク期間直前に緊急事態宣言がでたこともあり、予約を入れていたショールームから「グランフロントが休業になり……」と連絡がありました。

 それでバタバタとクライアントに連絡をし、予定の付け替えをしました。

 なのですが、大手住設機器メーカーからは連絡がなく、確認を入れると「オフィスタワーなので大丈夫です」と。

 そちらだけは回りましょうかと、再度クライアントに連絡を入れたのです。

 これだけ気候の良い時に、商業施設の休業は本当に堪えると思います。

 全店休業なのですが、道路として機能しているのか僅かながら人通りはありました。

 報道では、人通りがあまり減っていないという類のものが多いですが、JR大阪駅中央改札はこの通り。

 地下街では日本一の通行量と言われる阪神百貨店前も閑散としていました。

 大阪人としては、いささか寂しき気持ちになってしまうのが正直なところ。

 コロナ下の社会になり、新聞のコラム等で最も引用された話は、カミュの「ペスト」と、寺田寅彦の以下の言葉かなと思います。
 
 ものを怖がらなさ過ぎたり、怖がり過ぎたりするのは優しいが、正当に怖がることはなかなか難しい。
 
 ただこの感染症を封じ込めるのなら、医療関係の専門家の意見に従えば良いでしょうし、経済を優先するならそれらに全く耳を貸さないという選択肢になるのでしょう。

 その間にある「正当に怖がる」には人の気持ちが入っており、明確な答えがありません。

 スマホなりAIなりが答えを出してくれるものではないということを、何とか子供に伝えたいのですが、そこはいつも物別れに終わるのです。

 昨日は母の日で、子供達が学校帰りに待ち合わせをしてカーネーションを買ってきました。

 勿論のことですが、妻はかなり喜んでいたのです。

 この時期は庭先の紫蘭も花をつけ、我が家は何とも華やかです。

 物理学者であり、随筆家、俳人でもある寺田寅彦の言葉で、更に惹かれるものがありました。

 ケガを怖れる人は大工にはなれない。失敗を怖がる人は科学者にはなれない。科学もやはり頭の悪い命知らずの死骸の山の上に築かれた殿堂であり、血の川のほとりに咲いた花園である。

 この言葉の通り、作品も当然なががら血と汗の川の横にしか咲かない花です。

 しかし、血の川のほとりとは……

 ここ数年で聞いた言葉の中で、最も刺激的で、真理を射抜いた至言だと思ったのです。
 

■■■1月27日 『Best of Houzz 2021』「中庭のある無垢な珪藻土の家」が受賞 

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【News】
■12月28日発売『suumoリフォーム(関西版)』にインタビュー記事掲載
■10月23日『homify』の特集記事に「阿倍野の長屋」掲載
■9月11日発売『リフォームデザイン2020』「回遊できる家」掲載

■2017年11月27日ギャラクシーブックスから出版『建築家と家を建てる、という決断』守谷昌紀がamazon <民家・住宅論>で1位になりました

メディア掲載情報

◇一級建築士事務所 アトリエ m◇
建築家 守谷昌紀のゲツモク日記
アトリエmの現場日記

まことに日に新たに、日々に新たに、又日新たなり‐1743‐

 11月3日は文化の日で祝日。

 この日は一日掛けてショールームを回っていました。

 御堂筋と中央大通りが交差するのが「久太郎3」の交差点。

 その南西角にトーヨーキッチンがあります。

 御堂筋が通行止めになっていたので、スタッフの人に聞くと、この日から「OSAKA光のルネサンス」が始まるとのこと。

 トーヨーキッチンは、岐阜が創業の地で、元はスプーンやナイフを作っていた会社です。

 それらの加工技術を生かしてキッチンを作り始めたのですが、かなり前衛的な試みをしてきたメーカーだと思います。

 キッチンをリビングダイニングの中央に押しだしてきた功績は大きいと思うのです。

 飾り気の少ない、質実剛健といって良いデザインが、ミニマルな建築に良く合います。

 私も「下町のコンクリートCUBE」をはじめ、2000年代の作品にはかなり採用しました。

 しかし、最近縁がなくショールームも5年振りだったようです。

 最近は、流氷をイメージした「アイス仕上げ」と呼ばれる天板の人気が高いそうです。

 さらにインテリアにも力を入れており、こちらは馬の照明。

 このあたりにも「我が道を行く」感が出ています。

 当社もそうですが、選ばれるためには何かしらの理由が必要です。

 マジョリティでないなら何かを仕掛けて行くしかないのです。

 まずデザインの方に目が行くのですが、大きなシンクを立体的に使えるよう考えられた「3Dシンク」は、キッチン業界に一石を投じたと思います。

 まだSNSなどがない時代ですが、それを教えてくれたのは、目の肥えたクライアントでした。

 この日案内してくれたのは、社会人2年目の溌剌とした女性で、非常に好感が持てました。

 「仕事、好きそうだね」と聞くと「ハイッ!」と答えてくれたのですが、私が仕事を始めた頃に生まれたのか……などと思っていました。

 15時から17時まで案内して貰い、プランがまとまりました。

 ただ、この日は3メーカー回ったので、どこになるかは金額も含めてクライアントと相談の上です。

 ショールームを出ると、イルミネーションが点灯されていました。

 消費が冷え込む中、どのメーカーも決して楽ではないはずです。

 四半世紀にわたり建築の世界で生きたので、様々な隆盛を見てきました。

 例えばトーヨーキッチンを例にとれば、「デザイン」、「機能」、そして「新しい」が認知の後押しをしたと思います。

 それを自分に置き換えた時、若い時なら別ですが、私が「新しい」ということはありません。

 殷の名君湯王は、たらいの底にこのような言葉を刻み、毎朝顔を洗う度に戒めたそうです。

 まことに日に新たに、日々に新たに、又日新たなり

 24、5歳の彼女に、気持ちの「新しさ」だけは負けないつもりなのです。

■■■9月11日発売『リフォームデザイン2020』「回遊できる家」掲載
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【News】
■10月23日『homify』の特集記事に「阿倍野の長屋」掲載
■5月16日『homify』(英語)の特集記事に「下町のコンクリートCUBE」掲載
■5月10日『Houzz』の特集記事に「阿倍野の長屋」掲載
■4月8日『Sumikata』東急リバブル発行に巻頭インタビュー掲載
■2月13日 『Best of Houzz』「中庭のある無垢な珪藻土の家」が受賞

■2017年11月27日ギャラクシーブックスから出版『建築家と家を建てる、という決断』守谷昌紀がamazon <民家・住宅論>で1位になりました

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真理か、老害か‐1616‐

 朝夕がめっきり涼しくなりました。

 僅かながらですが秋の気配も感じます。

 お盆あたりから、ショールームを続けて訪れています。

 最近はJR大阪駅の北側、グランフロントに多くのメーカーがショールームを構えるようになりました。

 ショールームのメリットは、当然ながら実物が見れること。

 アクセスを考え、一等地に広い面積を借りるのですが、反対に言えばその家賃を払っても、十分価値がある訳です。

 左手にスカイビルを見ながらグランフロント大阪南館に入って行きます。

 スカイビルはすっかりキタのランドマークとなりました。

 大阪駅とは2階レベルで繋がりますが、エントランス横に「BEAMS」の店舗がありました。

 先の全英女子オープンで優勝した、渋野日向子選手が着ていたことで話題になっていました。

 凄いことをやってのけるものですが、笑う、前向きである価値を確認させてくれました。

 20歳だというのが尚凄いのですが、写真でしか見たことがなく、実際に話している姿を拝見したいと思っているのです。

 このあたりには、ショールームが沢山あると書きましたが、撮影OKのメーカーは限られています。

 北館の一番奥、5階にある「サンワカンパニー」は撮影、SNSともにOKです。

 最奥とは言え、かなりの面積を占有しています。

 ですが、基本的には空いているので、私達にとっては非常に快適な空間です。

 実際には通販の売上が秀でているのだと思いますが、女性人気が高いメーカーでもあります。

 確かに画になるものも多い。

 電車で行くことが多いので、大阪駅の中央口を横切るのですが、夏休みシーズンにつき常に大混雑。

 インバウンド客も沢山大阪を訪れますが、梅田の地下街で「チョットイイデスカア?」と呼び止められました。

 シカゴから来たというアメリカ人でしたが、京都に行きたいと言います。

 私も大阪駅を通るのでと、一緒に歩きました。

 「京都のどこに行くの?」と聞くと「バンブー・フォレスト」と。

 嵯峨野あたりに行くんだろうと思い、「バスで行くの?」と聞くと、行ってから考えると。

 「ホテルは京都?」と聞くと「道頓堀」だと。

 限られた時間で、私の英語力では、それ以上の内容は聞けず「それは大変そうだね」と言うと、iPhoneのGoogleマップを指して「これがあるから大丈夫」と。

 まあ、それはそうだなと思い別れたのです。

 長男がアメリカから戻った際に私が怒ったのは、スマホは持っていかないと約束していたのに、実は持って行っていたからでした。

 妻からそう聞いていたのですが、本人に確認してからと思い、聞くと「持っていった」と。

 私との約束を破ったので、かなり叱りました。

 後発組の先生に「海外で接続すると、高額な費用が発生するから、絶対に使わないように」と伝言して貰ったので、実際には使っていなかったようですが。

 インターネット、携帯、スマホと、海外を旅するのも便利な世の中になりました。

 しかし、折角不便を味わえる時間を、また海外の空気を味わえる時間を、スマホには使って欲しくないと思っていました。

 スマホNGと聞いていたので、是非行ったらと言ったようなところもあります。

 問題やピンチを自分の力で解決する価値とは一体何なのだろうと思います。

 「使えるものは使ったらいいやん」と言う子供にも上手く説明できません。

 しかし、人が成長するのはそんな場面以外にありません。

 そつなく、問題のない人生を送るのが一番大切なら、私の意見は「古い」のだと思います。

 ただ「自分らしい」とか「私の価値」はあの小さな機械の中には入っていないはずです。

 その意見が「真理」か「老害」か、人生を掛けて証明するしかないのですが。

■■■『大改造!!劇的ビフォーアフター』7月21日(日)BS朝日で「住之江の元長屋」再放送

■■■『デンタルクリニックデザイン事典vol.1』4月1日発売に「さかたファミリー歯科クリニック」掲載

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【News】
『建築家と家を建てる、という決断』守谷昌紀
ギャラクシーブックスから2017年11月27日出版
amazon <民家・住宅論>で1位になりました
■『homify』5月7日「碧の家」掲載
『houzz』4月15日の特集記事
「中庭のある無垢な珪藻土の家」が紹介されました
「トレジャーキッズたかどの保育園」
地域情報サイトに掲載されました
大阪ガス『住まう』11月22日発行に「中庭のある無垢な珪藻土の家」掲載
『住まいの設計05・06月号』3月20日発売「回遊できる家」掲載
『homify』6月29日「回遊できる家」掲載

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