タグ別アーカイブ: 幸福論

続・幸福論「笑うからしあわせ」‐1772‐

 通りがかった庭先から、ナンテンが顔を出していました。

 これだけ立派なものはなかなかお目に掛かりません。


 「難を転じるからナンテン」

 鬼門封じが駄洒落ですから、日本人も逞しいものです。

 二十四節気は中国の暦のようなもので、1年を24等分して季節を表す名前が付けられています。

 等分だとは分かっていませんでした。

 2月の初めには「節分」があったので、次は15日後の「雨水」です。 

 「雨水」は雪から雨に変わる頃という意味で、春を表す季語としても使われます。

 娘の誕生日もこの時期で、ささやかながら家族でお祝いしたのです。 

 最近はめっきり減ったのですが、「コメントがあった」とブログのシステムが知らせてくれました。

 久し振りだなと思い見に行くと中條先生からでした。

 中條先生は高槻中学・高校で国語を教えて下さった恩師で、昨年6月に『蒼穹』(そうきゅう)という句集を出版されました。

 ご連絡頂いたお礼に、私も著書を送らせて頂きましたが再読して下さったとのこと。

 ここまで褒めて貰ったことは、これまでの人生でもちょっと思いつきません。

中学二年生で初めて会った当時野球部の
生徒さんは今… 「ゲツモク日記」という
とても上質(上から目線でごめんなさい)
なブログを毎週月曜日と木曜日に更新し
続けています… 上記最新記事は花の画像
から始まっています… 仕事のプロは仕事
以外を語るプロでもある… いい文章です。


 私は人を褒めるのが得意ではありません。

 それは、中学生以降の人生でほぼ褒めて貰ったことが無かったからだということは自覚しています。

 親からすれば「褒めるようなことがひとつも無かった」と言われれば全くその通りで、返す言葉もありません。

 また、スタッフにしても子供にしても、素晴らしいと思えば最大限の賛辞を贈りますが、褒めて育てるという気持ちもあまり持っていません。

 嘘っぽい言葉を発するのも嫌ですし、それで本当の成長があるとも思えないからです。

 ただ、言葉の専門家に褒めて頂くのがこれ程嬉しいことなら、考え方を少し改めなければなりません(笑)
 

 先生もアランの『幸福論』を取り上げて下さったので、よく知られた行ですが引用してみたいと思います。

 幼な子がはじめて笑うとき、その笑いは何ひとつ表現していないのだ。しあわせだから笑っているのではない。むしろぼくは、笑うからしあわせなのだと言いたい。幼な子は笑って楽しんでいるのである。ちょうど食べて楽しむのと同じように。

-アラン- 哲学者

 アランは特に難しいことは記していません。かつ押しつけがましいところもないのが素晴らしいのです。

 しかし規則をつくりたいと書いています。

 「ほんとうの生き方」の中に、ぼくは「楽しませるべし」という規則を入れたい。

 アランのよく知る男の言葉として紹介されていますが、彼はこの規則によって、自分の性格までもつくり変えてしまったそうです。

 嘘を言わないで卑劣にもならないで、機会が訪れる度いつも楽しませる。

 「仕事というのは、サービス精神を忘れたらおしまい」という、松本人志の言葉とも重なるのです。

 教え子の教え子になる雨水かな
 
 今回、先生がピックアップして下さったのは、以前も触れようか、触れまいか迷った句でした。

 雪が雨になるという季語から、教え子からも教えられることがあると、心が融解していく様を詠んだものでしょうか。

 時期なのか年齢なのか、もしくはその両方なのか。要らない拘りが融けて行く。そんな実感は私にもあるのです。

 
■■■1月27日 『Best of Houzz 2021』「中庭のある無垢な珪藻土の家」が受賞

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

【News】
■12月28日発売『suumoリフォーム(関西版)』にインタビュー記事掲載
■10月23日『homify』の特集記事に「阿倍野の長屋」掲載
■9月11日発売『リフォームデザイン2020』「回遊できる家」掲載
■5月16日『homify』(英語)の特集記事に「下町のコンクリートCUBE」掲載
■5月10日『Houzz』の特集記事に「阿倍野の長屋」掲載
■4月8日『Sumikata』東急リバブル発行に巻頭インタビュー掲載

■2017年11月27日ギャラクシーブックスから出版『建築家と家を建てる、という決断』守谷昌紀がamazon <民家・住宅論>で1位になりました

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アランの幸福論‐1770‐

 今年の冬は寒いのかなと思っていたら、暖かい日が続きます。

 土曜、日曜は10℃を大きく上回り、日差しも春を感じさせるものでした。 

 近鉄奈良線から見る生駒山の緑も、若干鮮やかさが戻ってきた感があります。

 と思っていたら、庭木の梅もポツポツと花が開き始めました。

 しかし現場打合せはほぼ外部なので、クライアントには「寒さ対策だけは万全でお願いします」と伝えています。

 打合せ前に現場を見て回っていると、ちょうど休憩時間に入ったようで、棟梁がコーヒーを煎れてくれました。

 私が写真を撮ると「前にも一度コーヒーの写真が上がってましたよね」と。

 この現場もいずれ公開する予定ですが、現場の活気や面白さを伝えるのも私の仕事かなと思い、勝手に使命感に燃えているのです。 

 「コンクリート打放し H型プランの平屋」からの移動でしたが、こちらの現場は左官職人が下地調整をしているところでした。

 年末にコンクリートを打設しました。

 すぐに硬化が始まるので、その前に形を整えなければなりません。

 左官職人はその際も、八面六臂の活躍です。

 面積が広い部分ならトンボを使うのです。

 コンクリートの半生感は、現場に居る人間だけが目にするものだと思います。

 YouTuberになりたい訳ではありませんが、この動画は是非観て欲しいと思いUPしました。

 左官仕事は、生ものを扱うという意味において、極めて料理に似ています。

 

 ミキサーでコンクリートを練る様子は、お菓子の生地を作っているのとほぼ同じ。

 仕上げている様は、まさにパティシエのそれ。

 硬化した後の硬さだけは全く違いますが。

 玄関ドアの原寸模型があったり。

 モルタルの色サンプルがあったりと、現場はエンターテイメント空間なのです。

 産経新聞に日本画の大家、平山郁夫さんを紹介している記事がありました。そのタイトル部に、以下の言葉がありました。

 人間は意欲すること、そして創造することによってのみ幸福である。
-アラン- 哲学者

 もし粗相があってはと、クライアントへは冗談半分に以下のようなことを伝えます。

 「まさか勉強大好きという人達ばかりが現場に集まる訳ではないので、多少は荒っぽい人も……」

 体を動かす方が得意という人達が多いのは間違いありませんし、稼ぎが良いからという人達も居るでしょう。

 しかしアランの言葉の通り、何かを創り上げていくことは根源的な歓びなのです。

 こちらの左官職人チームは、いつ見ても穏やかに、よどみなく仕事をしてくれています。

 物創りに歓びを感じられる人と仕事をしたいですし、そういう人達と本気で取り組めば、良い仕事にならないはずがありません。

 「お金は好きだけど仕事は嫌い」

 こういう輩は、間違っても私の現場に入って貰っては困りますし、実際追い出したこともあります。

 むしろ、荒っぽいのは私だったかもしれません(笑)

 平山郁夫さんは広島で被爆していたと初めて知りました。

 実際、その後遺症が徐々に体をむしばんでいったともありましたが、自身が愛したシルクロードを守る活動を続けながら、あの穏やかな画を描き続けたのです。

 人はどこまで強くなれるのだろうかと思います。

 「幸福論」で知られるフランスの哲学者アランの言葉は、これまでにも紹介したことがあります。
 

 悲観主義は気分によるもの、楽観主義は意思によるもの。

 気分に左右されず、強い意思をもって、真っすぐな物創りをしなさいと、先人達は行動を持って導いてくれるのです。

■■■1月27日 『Best of Houzz 2021』「中庭のある無垢な珪藻土の家」が受賞

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【News】
■12月28日発売『suumoリフォーム(関西版)』にインタビュー記事掲載
■10月23日『homify』の特集記事に「阿倍野の長屋」掲載
■9月11日発売『リフォームデザイン2020』「回遊できる家」掲載
■5月16日『homify』(英語)の特集記事に「下町のコンクリートCUBE」掲載
■5月10日『Houzz』の特集記事に「阿倍野の長屋」掲載
■4月8日『Sumikata』東急リバブル発行に巻頭インタビュー掲載

■2017年11月27日ギャラクシーブックスから出版『建築家と家を建てる、という決断』守谷昌紀がamazon <民家・住宅論>で1位になりました

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