
4月29日は昭和の日。
二条城で開催中の アンゼルム・キーファーの展覧会へ行ってきました。
東大手門にの前にも案内がでていました。
正確には「アンゼルム・キーファー:ソラリス」展。

「ラー」 940×950cm 2019年
受付を過ぎると、いきなり巨大なオブジェ「ラー」が現れます。
パレットから羽が生えている!
9.4m×9.5mとサイズ感も圧倒的でした。

アンゼルム・キーファーは1945年、ドイツ生まれの80歳。
現代で最も重要な重要なアーティストの1人と紹介されていました。
ナチス、戦争、神話と作品のモチーフは変化しますが、ヘビも色々な所に登場しています。

二条城、二の丸御殿台所・御清所に入っていきます。

「オクタビオ・パスのために」380×950cm 2024年

キャンパスに岩石などを貼りつけ、立体的な作品です。

この作品は、この展示会のために製作した作品で、原爆投下が題材です。
詩人、オクタビオ・パスの詩が引用されています。
またゴッホにも影響を受けているという点も納得できます。

「ボソン開放弦」 280×380cm 2023年
キーファーは、この展示会で会場となる二条城にある狩野派による障壁画にもインスパイアされ、金を多用したようです。
谷崎潤一郎は「陰翳礼讃(いんえいらいさん)」の中で、軒の深い日本家屋の奥深くで、金襖や金屏風がほのかに光るさまに、美を見出しました。
その精神性は、かなり日本人に近いのかもしれません。

「ダナエ」 242×120×91cm 2018-24年

今回の展示は、本格的な照明設備が設置できないので、基本は自然光です。

それが、より金色の輝きを際立たせています。
ダナエはギリシャ神話に登場する、美貌の女王。
クリムトも同じタイトルの傑作があります。
その淫靡な空気感や、金色の使い方はクリムトの影響も受けているのかもしれません。

「ウルズ、ヴェルザンディ、スクルド−ノルンたち」 210×121×50cm 2014年
「ウルズ、ヴェルザンディ、スクルド−ノルン」は、北欧神話の最も有名な女神の3姉妹でした。
電線に使われる碍子(がいし)をワイヤーで縛ったもので、なぜ女神たちを表現したかったか分かりませんが、そんなことを、スマホでいちいち調べながら見て回りました。

アートに浸る時、そういった機器は邪魔になると考えていましたが、今回は全く逆でした。
会場に入ると、QRコードで作品リストがダウンロードできるのです。
それを見ながら、かつ調べながら観て回るのは極めて楽しかったのです。

「マアト=アニ」 188×150×124cm 2018‐24年
極めつけはこの作品。
「マアト」は古代エジプトの「法」「真理」「正義」を司る女神のようでした。
「アニ」はテーベの書記官とありました。
石膏のドレスの上で、分銅と羽が釣り合っているというこの構図。
土間での展示だったので、風が吹きこみ、羽が舞い上がった時にその意図がある程度理解できたのです。
作品であり、もうエンターテイメントです。

「モーゲンソー計画」 部屋いっぱい 2025年
戦後、アメリカの主導により、荒廃したドイツを農業国化するという「モーゲンソー計画」。
部屋いっぱいに砂が敷き詰められ、麦畑があらわれました。

そして、一番奥まで行くと、国宝、二の丸御殿との間の中庭にも、数多くの作品がありました。
これだけ面白かった展示会はなかなか経験がありません。

会場は、二条城とだけ書きましたが、正確に書くと、重要文化財「台所/御清所(おきよどころ)」です。

要するに、台所なのです。

天井はこの小屋組みです。
また、クリムトに同題があるといった「ダナエ」の奥に見える台は、見張り台のようです。
そこで、毒が混入されないように見張っていたとのこと。
アンゼルム・キーファーの極上のアートと、徳川の威光にもうお腹一杯でした。
この後、京都を散策したのですが、それはまた機会があれば書いてみたいと思います。
「アンゼルム・キーファー:ソラリス」展、控えめに言って最高でした。
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