前回、堺の三国ヶ丘にある、方違神社を訪れたと書きました。
TOTO堺ショールームのリサーチをしていた時に見つけたのですが、すぐ近くにシマノ自転車博物館もありました。

以前は仁徳天皇陵近くにあったのですが、今年の3月に移転、リニューアルオープンしていたようです。
場所は南海電鉄の堺東駅から北に200mほど。
以前から一度行ってみたいと思っていたのです。

方違神社からは車で1分ほどでした。

設計は、本社と同じく芦原太郎建築事務所。
外観は極めてシンプルですが、外壁については中に入ってから驚きました。

はじめに見る動画だけでも、かなり見応えがあります。
自転車の進化の歴史と共に、今すぐに自転車で出掛けたくなる映像が満載です。

2階には曲面壁にそって、時系列に自転車の歴史が分かるよう展示があります。

自転車の始祖となったのがこの「ドライジーネ」。
ドイツ人発明家が1817年に考案しました。

まだペダルはなく、地面を蹴って進むものです。
当時の乗り物と言えば、馬車か馬くらいしかなく、貴族以外は歩くしか移動の手段がありませんでした。
このドライジーネは、歩く3倍の距離を移動できるという触れ込みもあり、若者を中心にかなり流行ったそうです。
2輪の乗り物はここから進化を始めます。

1861年に発売された「ミショー」はペダルを備え、足が地面から離れます。
より早く走れるようになり、人々は旅や競争を楽しむようになりました。

よりスピードを求め、前輪が大きくった「アリエル」の進化型の「オーディナリー」。

「アリエル」 の金属製のリムとスポークがより大きな車輪を製作可能とし、現在にも受け継がれています。

しかし転倒の危険も大きく、1885年にギアとチェーンで後輪を駆動する構造が発明されます。
現在の自転車の原型が出来上がったのです。

ほぼ同じ頃、空気入りのゴムタイヤが実用化されます。
これによって劇的に乗り心地が改善されたのです。
あまり大きく取り上げられていませんでしたが、その名が現在まで残っていることがその偉業を物語っています。

この曲面壁の展示室の外周は、ギャラリーになっています。

白いパネル状の外壁は光を透過する素材でした。
壁面全体からの拡散光が、室内と展示物を優しく照らします。
非常に良い空間でした。

面白いところでは、1959年の皇太子御成婚時に献上された菊の御紋つき自転車。

1980年、人力で走る乗り物最速、時速91.19kmを記録した「ヒューマン・パワード・ビークル」などがありました。
世界最速のウサイン・ボルトが約時速45kmですからその倍。
テクノロジーの力を感じざるを得ません。

館名に「シマノ」と入っていますが、自社のPRなどは最小限で、あくまで「自転車」にスポットを当てています。

それらも含めて、非常に気持ちのよい博物館でした。

緑化スペース越しに仁徳天皇陵が見えています。
本当に市街地の中心にあるのです。
中世から包丁や鉄砲鍛冶が集まる堺は、明治に入ってから自転車部品の一大生産地となりました。
中でもシマノはスポーツ自転車部品の世界最大手です。

私にとっては、釣具メーカーとしての方がなじみがあります。
ベイトリール「アンタレス」は本当に使いやすいリールで、名器と言ってよいでしょう。

私の通勤用自転車は、アメリカのschwinn(シュウイン)メーカーのものです。
カゴ付き自転車の中で、一番美しいものをとサイクルショップで探してもらいました。
購入したのは9年前で、ほぼ毎日乗るのであちこち傷だらけですがとても気に入っています。

ブレーキを見てみると「SHIMANO」とありました。
縁の下の力持ちとは、こういった企業を指すのでしょう。
ディスクブレーキを修理してくれるショップがなかなか無いのだけが玉に瑕ですが。
自らが転がす車と書いて「自転車」と呼びます。つまり自転車を動かす主人公は「人」であり、その楽しみ方は人の数だけあるということです。
館のはじめに掲げられていた言葉です。
車やボートと、どちらかといえば動力派でした。
環境負荷が少なく、健康にも良いのですから、もう言う事無しの乗り物です。
限りなく自由で、素敵な自転車。
その歴史がわずか200年足らずということにも驚きました。
今週末にでも少し手入れをしてあげなくてはと思っています。
■■5月13日『住まいの設計6月号』に「おいでよ House」掲載
■6月16日 『ESSE-online』に「おいでよ House」掲載
■ 『ESSE-online』にコラム連載
10月11日「テレワーク時代の間取り」
9月18日「冷蔵庫の位置」
6月18日「シンボルツリー」
6月5日「擁壁のある土地」
4月11日「リビング学習」
2月27日「照明計画」
2月14日「屋根裏部屋」
2月1日「アウトドアリビング」
1月4日「土間収納」
12月6日「キッチン・パントリー」
■■1月6日『Best of Houzz 2022』を「中庭のある無垢な珪藻土の家」が受賞
■6月11日『homify』の特集記事に「R Grey」掲載
■1月8日『homify』の特集記事に「光庭の家」掲載
■1月7日『homify』の特集記事に「白馬の山小屋」掲載