先週木曜日に、「ならまち」を訪れたことを書きました。
奈良市観光協会のwebサイトにはこうあります。
ならまちは世界遺産である元興寺の旧境内を中心とする地域を指します。
奈良の町屋全体をそう呼ぶのかなと思っていましたが、エリアを指すものでした。
電車で言えば近鉄奈良駅から南の商店街を抜けたあたり。
コンビニも町屋に入っています。
三条通り沿いにある南都銀行本店。
東京駅や奈良ホテルの設計で知られる、辰野金吾の弟子、長野宇平治の設計。多くの銀行を設計しています。
「南都と呼ばれる社寺のまちから商業のまちへと変化していき、現在に至る」という説明もありました。
銀行名はここからきているようです。
広い間口の家が多く、これは京都と反対。
ゆったりした雰囲気なのは、このあたりが影響しているでしょう。
風習として残るのが「身代り申(さる)」。
「庚申(こうしん)さん」のお使いである申をかたどった魔除けが軒に吊るされています。
家の中に災難が入ってこないよう身代わりになって貰うのですが、背中には願い事も。
良いも悪いも背負って貰い、申し訳ない感じがしなくもありませんが。
普通の店舗にも吊るされているのが、何だかホッとします。
中心である元興寺(がんごうじ)まで南に下ってきました。
現在の何倍もの規模を持っていたようで、ならまちエリアがほぼ境内だったそうです。
東門の先に見えるのが、国宝・極楽堂です。
この日は来訪者も少なく、ゆっくり見ることができます。
南に回ると、寄棟屋根であることが分かりました。
石仏・石塔群の「浮図田」。
石は語らずとも何かしらの意思が伝わってくると感じるのは、決して言葉遊びではありません。
西隣に建つのは禅室。こちらも国宝です。
極楽堂を見返すと、西面屋根の一部は色が違うのが分かります。
元興寺は718年に飛鳥の法興寺(飛鳥寺)が平城京に移されたお寺です。
その法興寺(飛鳥寺)は、日本最初の本格的伽藍を持つ仏教寺院で、聖徳太子と同時代を生きた蘇我馬子が593年に創建しました。
この部分の屋根瓦は、その頃の物で1300年の時を超えて存在する「日本最古の屋根瓦」なのです。
現存する世界最古の木造建築は法隆寺ですが、建立が607年で、火災よって再建されたのが8世紀。
木材としては元興寺の方が古いものだという研究もあるそうです。
それだけの風格、風合いを感じさせるものでした。
先日の「M-1グランプリ」でも審査員を務めたダウンタウンの松本人志さん。
彼のコメントは常にニュースになる程、最も影響力を持つ芸人です。
その彼に誘われて放送作家になったという高須光聖さん。自身のwebサイトでこんな事を書いていました。
「風情」は凄い。これは日本独自のもの。同じアジアの国々にも無い。
この黙して語らぬ凛とした空気。なんとも言えぬ落ち着いた感じは日本という国にしか存在しない。
これはたった一軒だけでは作れないここに住む多くの人が、店が、個々で感じ取って景観を作っている その一体感が風情を作っている。
まさに空間が作り出す共同芸術なのかも。
メモに2007年とあるので、今も掲載されているのか分かりません。また、一字一句合っていないかもしれません。
「ダウンタウンがいなければ……」などと言う人も居ますが、彼が関わってきた番組のキャリア、そして文章を読んでいると、間違いなく一流の香りがします。
それは、元々才能があったのか、放送作家という過酷な仕事が彼を鍛え上げたのか、幼少期から知る松本人志の影響なのか……
おそらくその全てだろうと想像しています。
建築においてはプロですが、風情をここまで的確に、平易な言葉で表現するのは簡単ではありません。
街だけでなく、人の能力も感性も、ひとりでに出来上がるものではないと感じます。
大阪で暮らし、京都で学び、奈良で風情の奥行きを知る。
社会に対して、周辺に対して、良い影響を与えられる仕事人でありたいと思うのです。
ただ、あれはどう考えてもコーンフレークですが。
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