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暗さと不完全さを恐れないことを、北欧から学ぶ‐2204‐

昨日は、晴れたり曇ったりの一日でした。

アトリエから、歩いて難波まで行ってみました。

妻のペースで25分くらいだったので、ひとりなら20分くらいでしょうか。

目的は、難波の高島屋で開催中の「北欧のあかり展」です。

チケットは1200円とそこそこしますが、沢山の人が訪れていました。

近代照明の父と呼ばれる、ポール・ヘニングセンがPHランプを考案してから100年を記念しての開催とあります。

入ってすぐの空間で、彼がデザインした、ペンダント、スタンド、フロアスタンドが出迎えてくれます。

この展示会は、一部を除いて、写真も動画もOKなのも嬉しいところ。

海外と比べて、日本はNGが多かったのですが、SNS時代に入り、そこは無視できないのだと思います。

ひと際美しいのは、やはりPH5です。

我が家でも愛用しているペンダントライトですが、いつまで見ていても飽きません。

アルネ・ヤコブセンのコーナーもありました。

冬が長く、日の出ている時間が極端に短くなる北欧。優れた照明や家具が数多く生まれました。

PH5、アリンコチェア、AJフロアランプ……

必要は発明の母と言ってしまえばそれまでですが、理にかなった上で、極めて美しい名作が、これ程生まれた地域は稀だと思います。

当社の打ち合わせのチェアは白のセブンチェアですが、こちらもアルネ・ヤコブセンのデザインです。

セブンチェアは色や素材のバリエーションも楽しいのです。

そしてフィンランドの国民的建築家、アルヴァ・アアルトのコーナーも。

私が最も好きな建築家のひとりです。


彼は照明デザイナーとしても、家具デザイナーとしても極めて優れているのです。

自邸の写真が飾られていました。

好きすぎて、フィンランドへも行ってきました。

2016年の8月にヘルシンキの自邸を訪れた際の写真です。

自分も含めてそうなのかもしれませんが、現在の建築家にはない、暖かさや遊びにあふれています。

もしかすると、不完全さと言ってもよいのかもしれません。世界の巨匠に恐れ多いのですが。

会場の冒頭にあったパネルにはこう記されていました。

「暗さを良しとして受け入れる」

暗さの中でこそ、その美しさは際立ちます。

それは分かっているのですが、住まい手に「暗い」と言われたくないという気持ちも、大きいのは事実なのです。

高島屋前の桜はほぼ満開でした。

谷崎 潤一郎の名著『陰翳礼讃』で、谷崎は日本人の感性を称えています。

軒の深い日本家屋の奥深くで、金襖や金屏風がほのかに光るさまに、日本の美を見出だしたのです。

光と陰。

そのドラマティックな要素を、いかに扱うかが、空間の質に大きく影響を与えるのです。

ふらっと出かけたのですが、とても刺激になりました。

照明は空間の最後の仕上げだと思っています。暗さと不完全さを恐れず、最上の空間を目指したいと思うのです。

■■■2月12日(水)大阪市中央区上町1-24-6に移転しました
「上町のアトリエ付き住宅〈リノベーション〉」
電話、faxは変更ありません■■■

■9月17日(火)「尼崎園田えぐち内科・内視鏡クリニック」開業■

■8月30日『homify』の特集記事に「阿倍野の長屋<リノベーション>」掲載■

ガラスは時間を封じ込める‐1798‐

 まだ5月中旬ですが、近畿地方も梅雨入りしました。

 統計史上最も早いそうで、外構を残す現場が3つもあるのに……と嘆いても仕方ありません。

 反対に5月の前半は晴れが多かった気がします。

 「おいでよhouse」は4月の竣工ですが、正面の塀は引っ越し後にと要望があったようです。

 ようやくハシゴが完成したと聞き、先週末見に行ってきました。

 ハシゴを製作すると結構な金額になるので、既製品へと減額になるケースが多いのです。

 ただ今回は完全に主役で、何とか残して貰えました。

 子供さんたちは、理由もないのにここを登りたがると言って貰いました。

 ご主人も、ここにテレビを置こうか思案中と。

 子供も大人も、ロフトはワクワクするのです。

 壁面収納やダイニングテーブルの材と合わせて、スチールの黒フレームにナラの集成材で仕上げています。

 セブンチェアのカラードアシュブラックもピタリと決まり、写真撮影が楽しみです。

 知らない車が止まっているなと思っていたら、丁度ピアノの調律をしているところでした。
 

 なかなかに熱心な調律師さんで、ピアノの構造から、調律の仕方まで、丁寧に教えて貰いました。

 私が質問責めにしたとも言えますが。

 アップライトピアノの中を見たのは初めてで、この狭いエリアにびっしり機能が詰まっています。ハープの弦を鍵盤が叩いて音を出しているというような構造でした。

 弦楽器であり、打楽器であるという表現をしていたのですが、面白いものを見せて貰いました。

 このピアノは背板がスピーカーの役割を果たしているそうで、オーディオ機器につなぐとかなり良い音がでるそうです。

 次男君がピアノを習っているのですが「基本は私が好きなんです」という奥さんの言葉を聞き、凄く納得できました。

 「楽しんで貰いたい」より「自分が楽しむ」のほうが、強いのは間違いありません。

 そんな姿を見れば、子供は自然と好きになっていくのでしょう。

 スタディコーナーにも、机と椅子が入り、雰囲気がでてきました。

 長男君の部屋は黄緑。

 次男君の部屋は紫のロールスクリーンが付いていました。

 今日が引越しなので、いよいよ新しい暮らしが始まるという高揚感が充満していました。

 帰り際、奥さんからプレゼントを頂きました。

 右が私のもので、左は奥さんのもの。

 大津市の吹きガラス工房「glass imeca」の作家さんに、この家のイメージを伝え、製作して頂いた一点物のペーパーウェイトです。

 吹きガラスという工法で製作するのですが、その工程上、四角いものを内包するのは難しいそうです。

 「そこは何とか」とお願いし、ガラスの中にこの「おいでよhouse」が封じ込められ、周囲を気泡や金粉が彩りを添えているのです。

 プレゼントして下さる気持ちも嬉しいですが、そこまでこのお家を思ってくれることが、創り手としては一番嬉しいのです。

 大津市のwebサイトで作家さんが紹介されていました。

 初めて勤めた会社が、観光地にあるガラス専門の販売店とあったのでプロフィールを見ると小樽の北一硝子でした。  

 打合せエリアにおいてあるペン立てですが、学生時代に北一硝子で買ったもので、もう30年越しの戦友です。

 スキー部の合宿は、北海道で3ヵ月程過ごすので、フェリーが発着する小樽は何度も訪れました。

 中でも、先輩に教えて貰った北一硝子は特にのお気に入りでした。

 合宿が終わった安堵感と、いよいよ信州での試合が始まるという高揚感とが、昨日のことのように蘇ってきます。

 夕暮れ時、運河は灯りを映し、何ともセンチメンタルな気分になるのです。

 「砂上の楼閣」は、実現できそうもないものだったり、脆いものを指す言葉です。

 「ガラスの中のおいでよhouse」は全くの正反対の意味。

 ガラスは幸せの瞬間を、永遠に封じ込めるものだと今よく理解できたのです。


■■■1月27日 『Best of Houzz 2021』「中庭のある無垢な珪藻土の家」が受賞 

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【News】
■12月28日発売『suumoリフォーム(関西版)』にインタビュー記事掲載
■10月23日『homify』の特集記事に「阿倍野の長屋」掲載
■9月11日発売『リフォームデザイン2020』「回遊できる家」掲載

■2017年11月27日ギャラクシーブックスから出版『建築家と家を建てる、という決断』守谷昌紀がamazon <民家・住宅論>で1位になりました

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