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逢坂へ逢いに行く‐1722‐

 週末、天王寺へ行く用事がありました。

 谷町筋から少し東に入った、悲田院にあるマンション。

 1996年にアトリエmを設立した際、初めに借りたワンルームマンションです。

 ハルカスの北側に位置します。

 1999年まで、このマンションをアトリエとしていたのですが、5畳弱のワンルームでとにかく狭かった。

 結局ここで寝泊りして働くことになるのですが、いったい何処で寝ていたのか……

 懐かしいなと思い、エントランスまでのぞいてきました。

 天王寺界隈も、谷町筋を一本入れば静かな街です。

 当時からあった立ち飲み屋さん。

 この日も昼から満員のよう。時期的にどうかと思いますが、そこは天王寺ですので。

 すぐそばにある、老舗料亭はマンションの谷間に沈んでいるかのよう。

 何だか寂しい気もするのです。

 25号線を西に歩くと道は下りだします。

 上町台地の西端にあたり、通天閣を見下ろすここは「逢坂(おうさか)」。

 大津の逢阪の関になぞらえたとも、聖徳太子と物部守屋の二人が信じる方法を比べ合わせた「合法四会」に近いことにより合坂と名付けられたとも言われているとありました。

 最も南にある、天王寺七坂のひとつです。

 逢阪に面して建つ安居神社は、日本一の兵と呼ばれた真田幸村終焉の地でもあります。

 家康をあと一歩のところまで追い詰めましたが、愛馬・月影とともにこの地で果てました。

 最も精神的に辛かった時期に読んだ、池波正太郎の「真田太平記」はどうにも忘れられない作品なのです。

 安居神社も、上町台地に西端に位置し北側は崖と言ってよい高低差です。

 階段を下りきったところにあるのが天神坂。

 安居神社が、菅原道真公を祭ることからこう呼ばれています。

 この坂を上らず、反対に西に下ると、バイクや人形で知られる松屋町筋に出ます。

 天王寺七坂の殆どは、上町台地の頂部を走る谷町筋と、西に下り切った位置にある松屋町筋を結ぶ東西の坂なのです。

 一本北にあるのは清水坂。

 上りきると、清水寺の門がありました。

 京都に似た名前のお寺がありますが。

 清水寺舞台があるところまでそっくりなのです。

 境内の中にある「玉出の滝」は大阪市内唯一の滝だそう。

 パワースポットという言葉を簡単に使いたくはありませんが、なにやら良い空気感なのは間違いありません。

 あたりには井戸も多く、上町台地に降った雨がここから噴出してくるのでしょうか。

 暑い日だったので、しばらく水音を聞いていました。

 北隣には大阪星光学園、さらに北には大江神社。

 その脇にある愛染坂を上ると縁結び、商売繁盛の神様で知られる愛染さんです。

 正確には、勝鬘院(しょうまんいん)で、聖徳太子の建立とありました。

 境内にある多宝塔は、1597年に秀吉によって再建された市内最古の木造建築です。

 正直、一番驚いたのはこの一等地に建つ大阪星光学園の大きさです。

 流石に、市内トップ私学の名は伊達ではありませんでした。

 アトリエmにとって、天王寺は創業の地と言えるのですが、当時は生きるのに精一杯で、ろくに周辺を歩いたこともありませんでした。

 天王寺の路地を歩いていると、25、6歳の頃の記憶が一気に蘇ってきます。

 能力もないので、移動のつなぎはいつも走っていました。

 暑い暑いと言っていても、朝夕はすでに秋の気配です。

 夏季休暇も終わり、現場も一気に4計画程進みだします。企画の提案、実施設計もまだまだ続きます。

 四半世紀前は頑張りたくても、知識も技術もありませんでした。

 今は自分の頑張り次第で、多くのことは解決しますし、質も上がります。

 25年前と考えると夢のようだと言っても間違いないのです。

■■■4月8日『Sumikata』東急リバブル発行
巻頭インタビューが掲載されました

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【News】
■5月16日『homify』(英語)の特集記事に「下町のコンクリートCUBE」掲載
■5月10日『Houzz』の特集記事に「阿倍野の長屋」掲載
■2月13日 『Best of Houzz』「中庭のある無垢な珪藻土の家」が受賞
■2月3日『Houzz』の特集記事に「阿倍野の長屋」掲載
■12月3日 『Houzzユーザーが選んだ人気写真:キッチン編』「中庭のある無垢な珪藻土の家」が5位に選出
■9月30日発売『suumoリフォーム 実例&会社が見つかる本 関西版』「回遊できる家」掲載
「トレジャーキッズたかどの保育園」
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