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パクス・トクガワーナ‐1687‐

 外出自粛を求める大阪府は、出前サービスに対して補助をするとアナウンスしました。

 このあいだ、初めて「Uber」と書いたリュックを背負っている若者を見ました。

 昔で言えばホンダ・カブで岡持ちをぶら下げていたのが、現代だとこうなる訳です。

 何でも格好良く変化させ、ビジネスにしてしまうそのアイデアと商魂に感心するのです。

 トイレの壁に、子供の付録に付いてきた地図を貼っています。

 その中に、「むかしの境界」があります。

 文字が小さくて見えにくいのですが、北から「蝦夷」「東山道」「北陸道」「東海道」「山陰道」「山陽道」「畿内」「南海道」「西海道」と分かれています。

 黄色の「東山道」は、畿内と陸奥国を結ぶ最短ルートで、これをひとつの行政区にしてしているのが興味深いところです。

 江戸時代の5街道である中山道と、奈良時代に制定された東山道は重なる部分もありますが、江戸へ繋がるか、奈良へ繋がるかで、これだけ違いがでる訳です。

 どこで撮った写真か忘れましたが、なかなか洒落た舗装です。

 道というものがいかに大切か分かるのです。

 日本の高速道路代が高いのは良く知られたことですが、志賀高原までスキーに行くと、4時間乗って1万円くらいでしょうか。

 2011年、フランク・ロイド・ライト設計の落水荘を見るために、N.Y.からペンシルバニアまで車で8時間程走りました。

 高速代は2千円くらいだったと思います。

 山間部が多い、トンネルが必要など、他の国より多少高いのは理解できますが、流石に10倍は高い。

 これらのことは、関所の発想から来ているのではと書いたことがあります。

 「入鉄砲に出女」で表される通り、江戸幕府は人、物の動きを制限するため関所を設けました。

 大名の妻子を人質として江戸に住ませたので、特に女性の出国には厳しかったようです。

 全国に53の関所を置きましたが、日本4大関所は箱根(神奈川)、木曽福島(長野)、碓氷(長野)、新居(静岡)。

 しかし、信仰を建前とした旅には、通行手形が出易かったようで、「お伊勢参り」は庶民の憧れとなりました。

 更に「熊野詣」「金毘羅参り」と足を伸ばしたのは、信心よりも京都や大阪へ行くのが目的だったようです。

 十返舎一九の「東海道中膝栗毛」が大ヒットしたのは、そのような時代背景があったのです。

 このゴールデンウィークは、高速代の休日割引は中止という記事が出ていました。

 ただでさえ高い高速代ですが、この状況ならやむを得ないかもしれません。むしろプラスに働くのかもしれません。(本当は嫌ですが)

 150年遡れば、江戸は常時ロックダウンされていました。更に鎖国までしていたのですから、得たものと失ったものがあったでしょう。

 パクス・ロマーナはローマ帝国における200年の平和を指すものですが、270年に及ぶこの時代をパクス・トクガワーナ言ったりもします。

 歴史に名を残す平和は、得たものの代表格でしょう。

 「お伊勢参り」が一生に一回だったとすれば、私はすでに7人分くらい参っていると思います。

 熊野も金毘羅宮も訪れました。

 江戸時代は、鎖国されていた上に、都市往来の自由はありませんでした。

 それに比べれば大した我慢ではありません。

 こういった話になると「今は時代が違うから」という話もでてきます。

 その通りです。今は現代人が当たり前に享受してきた安全が脅かされているのです。

 時代は常に変化して行きますが、孔子の言う温故知新の通り、過去には常にヒントがあるはずです。

 弥次さん喜多さんが待ち望んだくらい、次の旅を楽しみにできるなんて、一生にそうは無い事かもしれません。

 勿論江戸っ子だけでなく、全国民がです。

A photograph is wonderful.
2011年8月 ローマ/コロッセオ

■■■4月8日『Sumikata』東急リバブル発行
巻頭インタビューが掲載されました

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【News】
■5月10日『Houzz』の特集記事に「阿倍野の長屋」掲載
■2月13日 『Best of Houzz』「中庭のある無垢な珪藻土の家」が受賞
■2月3日『Houzz』の特集記事に「阿倍野の長屋」掲載
■12月3日 『Houzzユーザーが選んだ人気写真:キッチン編』「中庭のある無垢な珪藻土の家」が5位に選出
■9月30日発売『suumoリフォーム 実例&会社が見つかる本 関西版』「回遊できる家」掲載
■7月21日BS朝日『大改造!!劇的ビフォーアフター』「住之江の元長屋」再放送
「トレジャーキッズたかどの保育園」
地域情報サイトに掲載

■2017年11月27日ギャラクシーブックスから出版『建築家と家を建てる、という決断』守谷昌紀がamazon <民家・住宅論>で1位になりました

メディア掲載情報

◇一級建築士事務所 アトリエ m◇
建築家 守谷昌紀のゲツモク日記
アトリエmの現場日記

箱根

 6月に入って初めての週末。梅雨入りする前に遠出してきました。

 富士山でも見に行こうかと、宿を探したがとれず、次の候補が箱根。私には未体験の観光地です。

 土曜日の5:30amに大阪を出発。名神、新名神、伊勢湾道を乗り継いで東名高速へ。

 最寄の御殿場ICまでは450kmほど。2度休憩して11:00am頃に着きました。

 そこから国道138号線を20km程走り、30分で到着です。トータルで6時間みておけば大丈夫そうです。

 まずは彫刻の森美術館へ。

 子供が触れて、遊べる作品が多いのは助かります。

 小さいうちにアートに触れるのは、とても良い事。

 展示室以外は撮影OKとの事でした。 

 中でも「ネットの森」は、素晴らしいの一言でした。

 堀内紀子〔1940-〕、2009年の作品です。

 何層にも重なったネットは宙に浮き、下に45cmの穴がいくつも開いています。

 そこから立体的なネットの隙間に入いり込み、登って行くのです。

 所々には、行き止まりの隙間もあります。

 上手く順に登って行くと、一番上はネットの平原。

 どの子供も大はしゃぎで、汗だくでした。

 芸術が人に貢献する方法は様々です。用途が明確なアートは、とても難しいのかもしれません。

 そうだとすると「ネットの森」は遊び心と、構造的美しさを兼ね揃えた、最高のアートと言えます。分かり易いことは全てにおいて素晴らしい事なのです。

 残念なのは小学生まで限定という事。入ってみたいと思うのは、絶対私だけではないはず。

 アントニー・ゴームリー(英)1993年の「密着」。

 作品名を聞かなければ、色々な解釈ができそうです。

 ピカソ、ミロからロダン、ヘンリー・ムーアー、ブランクーシ。加えて足湯までありました。

 今度は一日掛けて遊びたい所です。

 日曜日は、朝から旧東海道を尋ねました。

 江戸時代に整備された石畳が所々残っています。むせかえるような新緑の中、苔むした石畳にノミ跡を見て、350年前に思いを馳せます。

 ♪箱根の山は天下の険♪の通り、ここは難所中の難所。

 行って良く分かりました。日曜日だけで、2台のバイクが転倒したのを見たのです。一台はすぐ目の前で。

 幸い2人とも怪我はなさそうでしたが、もう少し命を大切に、とは思います。

 その難所を超えたら、眼下には芦ノ湖が広がります。湖畔の最も平地が狭い所には関所跡が。

 江戸時代、幕府は全国に53の関所を置きました。日本4大関所は他に、木曽福島(長野)、碓氷(長野)、新居(静岡)です。

 中でも江戸に一番近い箱根は、最も厳しい管理体制が敷かれていました。

 幕府は、大名の妻子を人質として江戸に住ませた為、特に女性の出国には厳しかったようです。

 武器の流入阻止と合わせて 「入り鉄砲に出女」を厳しく取り締まりました。

 近くにある「お玉ヶ池」は関所破りをして捕まった「お玉」という女性が、付近で処刑された事から付いた名前です。

 当初の目的は富士山。最後まで裾野しか見せてくれませんでした。 

 その目的も達していませんが、多くの美術館、温泉、歴史情緒……もう一度箱根に行きたいと思っています。