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いえをつくるのじょうずだね‐1527‐

 先週日曜日は、「中庭のある無垢な珪藻土の家」の取材でした。

 ある機関紙の巻頭8ページの予定です。

 以前には「池を望む家」「イタウバハウス」を取材して貰いました。

 なかなか葉がつかなかったヤマボウシも、元気を取り戻しています。

 木々の変化は、折々の表情を家に与えてくれるのです。

 制作会社の担当者2人と伺い、2時間程の取材でした。

 「取材時は是非サポート下さい」と言っていたご夫妻でしたが、全くの杞憂でした。

 インタビューが始まると、家づくりの物語りが次から次へとでてきます。

 おそらくそうなるだろうと私は想像していました。

 打合せの際も、疑問、質問などがいつも非常に分かりやすく、明快でした。

 ご夫妻と話しをしていて、話が途切れることはまずないし、ご主人と四方山話しをしていたら2時間くらいはあっという間なのです。

 写真は以前のものを使うことにしました。

 実際の暮らしが始まったあとに撮影するのは、本当に大変です。

 この春に撮影したカットですが、お姉ちゃんはお絵かき、弟くんはパワーショベルで遊んでいる間に撮ってもらいました。

 こういったカットを写真家は「奇跡の一枚」と言います。

 大げさに聞こえるかもしれませんが、全てがかみ合うカットは、なかなか撮れないものなのです。

 5歳になったお姉ちゃんは、担当者と私を色々と案内してくれます。

 将来の子供部屋にはダンボールの家が。

 中には新聞紙で作った箒と塵取りまでありました。

 ものづくりがとても好きなのはお母さん譲りでしょう。

 インタビューは土地購入の経緯から始まり、おのずとキッチン周りのこだわりの部分へ移っていきます。

 ゴミ箱上にある、ゴミ袋のストック置場。

 何でもないものに見えるかもしれませんが、通路側を向いているので来訪者からは見えません。

 また、ゴミ箱の蓋の軌道をかわした位置にあるのです。

 キッチンからつながる、2.5畳の和室は様々な機能を併せ持ちます。

 洗濯物を畳む、雨の日の物干し、お子さんの昼寝等など。機能面での見せ場です。

 更に、その和室と洗面脱衣が繋がるのがこの収納。

 和室で畳んだものが、洗面脱衣室側からとることができるのです。

 インタビューの冒頭に、お姉ちゃんがこんな可愛いものを私に手渡してくれました。

 シールをはがすと私への手紙がでてきました。

 まだ逆さ文字が混じっていますが、本人が読んでくれました。

 「もりたにさん いえ つくるの じょうずだね」

 前の晩に、自ら書いてくれたとのことです。

 建築をつくるのが仕事ですが、「じょうずだね」と言って貰ったのは初めてです。

 多くの創り手がいる中で、もし誇れることがあるとしたら「一緒に物語をつくる」ということに尽きる気がします。

 取材に行く前に、8年前の「池を望む家」の巻頭特集に少し目を通しました。

 こちらの計画も、池の横にある土地と出会うところから、家づくりの物語が動き出します。

 その物語の舞台監督を私に任して貰えるなら、ドラマティックにダイナミックに、そして必ず楽しいものにしてみせます。

 それが私の生きる道なのです。

 この機関紙は無料で貰えるので、発刊の日時が決まればまたお知らせしたいと思います。

■■■毎日放送『住人十色』4月14日5:00pm~5:30pm「回遊できる家」放映

■■■『建築家と家を建てる、という決断』守谷昌紀
ギャラクシーブックスから11月27日出版
amazon <民家・住宅論>で1位になりました

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【Events】
■4月1日「トレジャーキッズたかどの保育園」開園

【News】
『住まいの設計05・06月号』3月20日発売「回遊できる家」掲載
『関西の建築家とつくる家 Vol.2』2月1日発売「阿倍野の長家」掲載
『homify』6月29日「回遊できる家」掲載
『homify』6月2日「イタウバハウス」掲載
『houzz』5月28日の特集記事「あちこちでお茶できる家」掲載

メディア掲載情報

◇一級建築士事務所 アトリエ m◇
建築家 守谷昌紀のゲツモク日記
アトリエmの現場日記<&lt;/a&lta</

「いま、ここ」だけを生きる‐1380‐

 先週末、「中庭のある無垢な珪藻土の家」の2ヵ月点検に行ってきました。

 3月末の引っ越しを実現するため、ギリギリの工事が続いていたのは2ヵ月前。

 もとより閑静な住宅街です。

 それらが嘘のように静かな週末の風景でした。

 正面のヤマボウシ。

 あまり道路にはみ出すのも良くないだろうと、少し低めのものを選びました。

 後ろに見えるのは、リビングにつながる中庭です。

 中庭のヤマモミジはなかなか立派な枝振り。

 ご夫妻とも「中庭はとってもいい」とのことでした。

 親族が集まっての、BBQもすでに開催されたと。

 写真がとてもよかったので送ってもらいました。

 炭火を起こすのはたいそうだけど、カセットコンロやホットプレートなら気楽だという方はとても多いのです。

 45cmほどの縁側に腰掛けての昼食はとても楽しそう。

 ちょっと木陰があるだけで、中庭が全く違うものになるはずです。

 こちらのご家族は、お子さんが4歳と2歳で最も親との時間が必要な時期です。

 点検のあと四方山話をしていたのですが、ご夫妻ともフルタイムの共働きということもあり本当に大変そうです。

 私ができることと言えば、一緒に創り上げたこの家が、少しでも日々の暮らしに貢献してくれればと願うだけです。

 ここで書く家創りのストーリーは、「大変だったけどやっぱりよかった」が中心です。

 時には少し叱られることもありますが、最終的には何が何でも、「よかった」まで行くしかありません。

 そう考えると、やはり全てよかったとも言えるのです。

 「うちのお客さんは皆喜んでくれている」というような言葉を聞く場面は結構あります。

 もちろん、不満な状態のまま仕事を終えるなど論外ですが、クライアントは心の底から「喜びたい」と思っています。

 何千万、何億円ものお金をかけて、「まあまあで十分」という人はたったの1人もいません。建築において、喜んでいただくは最低条件だと思っています。

 「特別に喜んで貰っている」と思いたいですが、それは私が決めれることではありません。

 ニューヨーク在住の友人が、「嫌われる勇気」が、すごく面白かったと教えてくれました。

 2014年から2015年にかけてのベストセラーで、タイトルくらいは聞いたことがありました。

 哲学者と現実を嘆いている若者との、対話型式で話は展開していきます。

 結論で言うと、凄い本だと思います。

 人生における最大の嘘、それは「いま、ここ」を生きないことです。

 (中略)

 ありもしない過去と未来ばかりに光を当ててこられた。自分の人生に、かけがえのない刹那に、大いなる嘘をついてこられた。

 (中略)

 さあ、人生の嘘を振り切って、恐れることなく「いま、ここ」に強烈なスポットライトを当てなさい。

 「いま」という一瞬を精一杯生きる。それ以外にできることは何もありません。

 それらを積み重ね、感激、感動してもらえるところを目指すしかないのです。

 自由、幸せ、孤独、そして勇気。これらの言葉は、常に意識してきました。

 「嫌われる勇気」。この本については、また一度しっかり書いてみたいと思います。