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職人の道具と、本当の天才・長嶋茂雄‐2223‐

6月3日、長嶋茂雄さんがお亡くなりになりました。

王さんの現役時代は、はっきり覚えていますが、ミスタープロ野球の現役は記憶にありません。

1974年の引退なので私は4歳。残念ながらすれ違い世代なのです。

そんな世代でも、その多大なる影響力はヒシヒシと感じていました。

多くのメディアが特集をするなか、一番心に残ったのがこの言葉です。

「自分の持っているもの、そのすべてを出し切ったら、悔いのない一生になるはずです」

母校、立教大学の後輩へ送った言葉ですが、何と奥深い、愛情のある言葉なのかと感じ入ってしまいました。

造作建具も、造作家具も、大量生産品があまりにも安価なので、採用する機会が減っています。

しかし、現在キッチンを造作しており、その制作現場へ潜入してきました。

大阪市内、かつ地下鉄の駅がすぐそばで「こんなに駅チカなの」と驚いてしまいました。

1階の作業場ではそのキッチンの組み立てをしている最中でした。

一番奥にはプレス機があります。

2階には、ホームセンターにあるような巨大な切断機も。

機械を見るだけでワクワクしてきます。

3階でも、2人の職人が作業中でした。

奥にはベテランが1人。

手前の若い職人は、カンナ掛けをしていました。

思ったような削れ方をしないのか、金づちで刃の加減を調整し、再度細やかな仕事をしていました。

それを見ているだけで、来た甲斐があるというものです。

金額調整で既製品を選択しなければならない場面は多々ありますが、もう少し粘り強く減額案を考えようと思ったのです。

ノコの刃、カンナ、砥石と、整理整頓された道具に職人魂が見えるというものです。

長嶋さんの言葉で、2番目に心に残ったのは次の言葉です。

「僕はバットは何でもいいんですよ~!」

王さんが、ずっと同じバットにこだわっていると言ったすぐ後の発言です。思わず頬が緩んでしまいました。

イチローも落合も、そして今年バットを1インチ長くした大谷も、皆バットにはかなり繊細なこだわりを持っているはずです。

その中で「何でもいい」とは、全く別次元で、聞いたことがありません。

本当の天才が、そこ抜けの明るさで、誰もを魅了し続けた一旦を垣間見ました。

誰もが長嶋さんになりたい、でもなれない……

心からご冥福をお祈りいたします。

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苦渋はなめつくす‐1437‐

 12月に入って、よい天気が続いています。

 昨日は、大阪ビジネスパーク(OBP)へ行っていました。

 ビジネスパークなのでビル建築ばかりですが、それを背景にした紅葉も美しいもの。

 奥にのぞいている濃いグレーの建物は「大阪東京海上日動ビルディング」。

 OBP側からはちらとしか見えませんが、1990年完成の名建築といってよいと思います。

 構造のフレームを外部に追いやり、自由な平面を実現しています。

 鹿島建設の設計施工。

 振り返って西をみると、左に1990年完成の松下IMPビル。

 そして中央も同じく1990年完成のクリスタルタワー。

 竹中工務店の設計施工ですが、高層ビルのひとつの到達点ではないかと思っています。

 2011年1月、『住まいの設計3・4月号』に「地元建築家がガイドする名建築 大阪編」というコラムを寄稿しました。

 その際も、このビルを取り上げました。

 OBP行きの目的は、ニューオータニで開催された盛和塾の勉強会でした。

 盛和塾は、京セラの名誉会長であり、KDDIの創設者、経営破綻したJALを、2年で世界最高収益航空会社へと回復させた稲盛和夫さんから経営を学ぶ場です。

 昨日も1400名以上の参加者があり、ロビーは熱気であふれていました。

 「経営を学ぶ」と書きましたが、この日の講和は西郷隆盛(南洲)の遺訓から学ぶという内容でした。

  命もいらず、名もいらず、官位も金もいらぬ人は、仕末に困るもの也。この仕末に困る人ならでは、艱難(かんなん)を共にして国家の大業は成し得られぬなり。

 そういう人しか、リーダーはつとまらないし、リーダーになってはならない、というものでした。

 命も、名も、名誉も、お金も全く要らないとまではいえませんが、気持ちとしてはそのつもりです。

 幾たびか辛酸を歴(へ)て志始めて堅し

 これは多くの人がうなずいていたと思います。

 仕事をしていると、本当に色々なことが起ります。

 幾度も辛酸をなめ、それを越えていかなければ、志は固まらないのです。

 ミスタープロ野球、長嶋茂雄はこういっていました。

 「日々を丁寧に生きる。そして苦渋はなめつくす」

 華やかに見える成功者は、これらの過程を経てその立場にいます。

 成長したい、成功したい。しかしその覚悟があるのかという問いに、改めて身を引き締めざるをえないのです。

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