あれからあっという間に一週間が経ちました。

オーガスタの最終組で、死力を尽くした戦いを終えた二人には、どんな感情が去来するのでしょうか。
放送では4ヵ国の国籍を持つとあったとザンダー・シャウフェレは27歳。終盤の追い上げは凄かった。

私が目覚めたのが6時頃で、すぐにテレビのスイッチを入れると11番ホールでした。

ドライバーもフェアウェイを捉えますが、この時点で2位とは5打差。

このホールをパーで回り、6打差と突き放します。

しかし12番のショートホールでボギー。ここからはハラハラドキドキでした。
シャウフェレは4連続バーディと、激しいチャージで2打差まで迫ります。
勝負を掛けてきた16番。僅かに風にのまれ、グリーン手前の池に落としてしまったのです。この瞬間、彼との勝負は終わりました。

しかし2位のザラトリスはすでにホールアウトしており2打差。

最終ホールのセカンドショットは右のバンカーへ。

寄せきれずで微妙な距離のパーパット。
僅かに外してしまいます。

しかし折り返しのボギーパットを沈め、マスターズチャンピオンとなったのです。
僅か1打差ですが、4日間278打は世界最小のスコアです。

次々とチームのメンバーと抱き合い、喜びを分かちあう姿を見て、中島常幸プロをはじめ、放送席も皆男泣きに泣いていました。

前王者、ダスティン・ジョンソンからグリーンジャケットが。

夕日を浴びた松山選手は、最高に格好良かったのです。

優勝が決まった瞬間、ニュース速報が流れました。
感激に浸っている中で、やや無粋な感もありましたが、それくらいの出来事ということです。
わずか2時間半、私のにわかマスターズ観戦記でした。
松山選手へのインタビューの際、更に涙が込み上げてきた中島プロは、以前「ゴルフは芸術になりえるんですよ」と強く語っていました。
芸術の定義を「誰かを感動させることが出来るもの」とするなら、ゴルフは間違いなく芸術です。
また、最高の技を「芸術品」と例える通り、これはあらゆるジャンルに言えることかもしれません。

コース自体も芸術品でした。
世界最高のライバル。世界最高の舞台。世界最高の技。これらが揃うのが、マスターズの舞台なのでしょう。
ただ、トップレベルの相手がいなければ、自らがトップであることを証明することは出来ません。
アテネ、北京五輪の水泳で金メダルを取った北島康介選手。北京五輪の試合後、彼は「勝負脳を鍛えたおかげ」と語っています。
彼に脳のしくみを教え、アドバイスをした脳科学者、林成之氏の著書が「勝負脳の鍛え方」ですが、ライバルについての行を要約してみます。
根源的な脳の3つの本能に「生きたい」「知りたい」「仲間になりたい」がある。
アドバイスで難しかったのは、ブレンダン・ハンセン選手について。ハンセンは当時の世界記録保持者で、最大のライバル。人間は結果を求めると、持てる能力を十分に発揮出来ない。スポーツで言えば、「敵に勝とう」と思った瞬間、能力にブレーキがかかる。
根源的な本能に逆らうと、脳のパフォーマンスは落ちる。「敵に勝つ」は、「仲間になりたい」という本能に真っ向から逆らう考え方。地球の歴史の中で絶滅した生物の共通点は、周囲にいる仲間とうまくやっていけなかったことである。
「ハンセンをライバルだと思うな。自分を高めるためのツールだと思へ。そして、最後の10mをKゾーン(北島ゾーン)と名づけ、水と仲間になり、ぶっちぎりの、感動的な泳ぎを見せる舞台だと思いなさい」ハンセンとも水とも「仲間になれ」とアドバイスした。結果は北島は金メダル、ハンセンは4位だった。
結果を求めるあまり能力を発揮できない愚を避けるには、目標達成の「仕方」にこだわるのがいい。勝負でなく、達成の仕方に勝負を懸ける。そして、損得抜きの全力投球をする。そんな時、人間は信じられない集中力を発揮する。損得勘定とは、結果を求める気持ちにほかならないからである。
超一流選手が競う姿には、この話しを納得させるものがあります。
「敵に勝つ」ではなく「仲間になる」。自分の目標を一緒に達成してくれる仲間と考えなくてはならないのです。
新聞記事でも「シャウフェレ選手のあの時点での追い上げは、松山選手へのよい刺激になったと思う」というコメントもありました。
まさに感動的なゴルフを見せる舞台の仲間としてしまったのです。
「勝負脳の鍛え方」は10年前に読みました。知識としては知っていますが、結果としては松山選手に遠く及びません。
いつも思います。どこで何を学んだとしても、真理はそれ程変わらない。実行し続けられるかに尽きるのだと。
29歳の松山選手に偉業を見せて貰いました。
勝ち負けでなく、達成の仕方に勝負を懸けたいと思うのです。
■■■1月27日 『Best of Houzz 2021』を「中庭のある無垢な珪藻土の家」が受賞
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【News】
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■10月23日『homify』の特集記事に「阿倍野の長屋」掲載
■9月11日発売『リフォームデザイン2020』に「回遊できる家」掲載
■2017年11月27日ギャラクシーブックスから出版『建築家と家を建てる、という決断』守谷昌紀がamazon <民家・住宅論>で1位になりました