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美人の東と西‐1673‐

 日曜日に北野天満宮を参った帰りに、嵐山へ寄ってきました。

 渡月橋を渡る人影は若干少な目でしょうか。

 桂川のせせらぎが、春の日差しにキラキラと輝きます。

 普段よりは少ないのでしょうが、思ったよりは人出がありました。

 屋形船は営業しているのか、移動しているだけなのか。

 こういったサービスは打撃が大きいでしょう。

 新聞で「美人のすべて」という展覧会が、福田美術館であると知り、のぞいてみたかったのです。

 福田美術館は昨年の10月に竣工したばかりで、桂川のほとりに建っています。

 和の外観とは異なり、内部はクールでシャープな印象です。

 新型肺炎の影響で、展覧会はこの日までに短縮されることになりました。

 ポスターにもある、松園の「雪女」の実物を見てみたいと思い滑り込みでやって来ました。

 案内にはこうあります。

 京都を代表する日本画家・上村松園(1875-1949)は、女性が画家を職業として生きることが困難だった時代に、独自の美人画で道を切り開いた功績により、女性初の文化勲章を受章しました。本展では理想的な「美」を追求した松園作品を中心に展示いたします。

 この「雪女」の原画が発見され、公開されるのは初めてともありました。

 なら余計に観たくなるものです。

 松園の作品の中でも異彩を放つというこの作品。

 正直言えば新聞で初めてみたインパクトの方が大きかったかなという感じ。

 これも実物を見たから持てる感想ですが。

 娘に『雪女』の事を話すと、観るのをやめておくと。

 アートを楽しんで貰うのは、なかなかにハードルが高いものです。

 しかし原田マハの『楽園のカンヴァス』は最高に面白い、芸術エンターテイメント作品でした。

 ニューヨーク近代美術館のキュレーターと、現在は岡山の大原美術館で監視員をする、元アンリ・ルソーの研究者、早川織絵が、ルソーの名作『夢』に酷似した作品の真贋判定を依頼されます。

 その手掛かりとなる古書を、2人が読み進めながら物語は展開して行くのですが、同時代を生きたピカソも登場し、絵の秘密が明かされて行きます。

 ピカソにも影響を与えたと言わるアンリ・ルソー。

 彼はパリの入市税関の役人として働いていたのですが、49歳の時退職して絵に専念することになります。

 生前、アカデミックなところからの評価は全く得られず。

 しかし、ピカソやゴーギャン、詩人アポリネールといった、当時の前衛芸術家からは一目置かれる存在となっいました。

 またお金には苦労していたようですが、天真爛漫な性格で、画家仲間には愛されていたようです。

 このあたりがゴッホと大きく違う点でしょう。

 幼稚ともとれるその作風が、なかなか世間には評価されなかったのですが、『蛇使いの女』は1907年の作品。

 ほぼ緑で描かれたこの作品は、当時の評論家が理解できない程、新しい絵画だったのです。

 『楽園のカンヴァス』の表紙にある『夢』は1910年、ルソー最晩年の傑作と言われます。

 そこ描かれる裸婦はヤドヴィガ。

 ルソーが添えた詩によって語られているのですが、このポーランド人女性は小説にも登場してきます。

 『雪女』は大正末期の作品と考えられているそうなので、これらはほぼ同じ時代の作品です。

 松園の描く美、そしてルソーが描く美が、これ程までに違うことがとても面白いのです。

 消えてしまいそうな幽霊にも美を求め、東欧の女性の肉感溢れる裸体にも美を求め、人の美への探求心は枯れることがないでしょう。

 これで東と西の美人が分かったとはなりませんが、ジェンダーフリーの時代であっても、男女の区別をなくして美を語ることは難しいと思うのです。

■■■2月13日 『Best of Houzz』「中庭のある無垢な珪藻土の家」が受賞

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【News】

■2月3日 『Houzzの特集記事』「阿倍野の長屋」が取り上げられました
■12月3日 『Houzzユーザーが選んだ人気写真:キッチン編』「中庭のある無垢な珪藻土の家」が5位に選出
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「トレジャーキッズたかどの保育園」
地域情報サイトに掲載されました

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