先週、10日間にわたる阪神高速環状線の工事が終わりました。
阪神高速環状線は、大阪のビル群を縫うように走りますが、都市計画的にはかなり珍しいと書いたことがあります。
ニューヨークやパリをはじめ、世界的な都市では中心部まで高速道路は入っていかないのです。
2週間前の打合せの帰りは丁度工事中で、2時間掛けて会社に戻りました。
混んでいなければ30分なので、その有難味が身に沁みます。
「狭い日本、そんなに急いでどこへ行く」ですが、やはり高速は圧倒的に早いのです。
土佐堀川に沿って走るこの区間は、まず大阪市役所が見えてきます。
ここが政治の中心地。
隣には中之島図書館と中央公会堂。
民の寄付によって作られた中央公会堂は、大阪の経済の象徴と言えるでしょう。
並木が色付いてきたなと眺めながら、そういえば安藤忠雄が寄贈した図書館「子供本の森」は……
すでに通り過ぎていました。
当面、土日は子供連れだけのようで、中に入れるのは少し先になりそうです。
「自分を育ててくれた大阪の街に恩返しがしたい」と、これだけの図書館を寄贈するのですから、本当に凄いと感服します。
彼こそ、芸術と実業を両立させてた建築家だとも思うのです。
2024年度から新紙幣が流通しますが、新一万円札は渋沢栄一。
聖徳太子、福沢諭吉の後を引き継ぎ、最高額紙幣を担当です。
立派な人に決まっていますが、時代が身近になり凄みも現実味が増してきます。
少し前ですが、経済小説の第一人者、城山三郎の「雄気堂々」を読みました。
渋沢栄一が、近代日本最大の経済人として何をどう成して行ったかが丁寧に描かれています。
尊王攘夷の志士から、一橋(徳川)慶喜に宮仕え、フランスへ渡航した後は大蔵省に勤め、そして実業界に身を投じます。
上巻の写真と下巻の写真は年齢が違うとはいえ、同じ人物には見えません。
それほどまでに時代が変わったと言えるでしょう。
最近読んだ口述記「論語と算盤」は凄い上にとても面白かったのです。
初版は1916年で、論語、経済がキーワードと聞けば、読んでいて眠たくならない方が不思議です。
この本はその不思議を簡単に吹き飛ばしてくれました。
論語のなかにこんな一節がある「人間であるからには、だれでも富や地位のある生活を手に入れたいと思う。だが、まっとうな生き方をして手に入れたものでないなら、しがみつくべきではない」
この文章に、そのエッセンスが詰まっていると感じます。
孔子は富や地位を否定していない、まっとうな生き方をしているかが大事なのだと。
「一個人の利益になる仕事よりも、多くの人や社会全体の利益になる仕事をすべきだ」という考え方を、事業を行う上での見識としてきたのだ。
設立にかかわった企業、団体は約470。
東京証券取引所、みずほ銀行、東京海上火災、東京瓦斯、王子製紙、サッポロビール、キリンビール、東洋紡、京阪電気鉄道……と、とても人間技とは思えません。
人はその務めを果たす上で、ぜひ「趣味」を持って欲しいと思う。「理解することは、愛好することの深さには及ばない。愛好することは、楽しむ境地の深さには及ばない」とある。「趣味」の極致といってよいだろう。
簡単に言えば仕事を趣味レベルにせよということですが、もう納得する他ないのです。
見上げると、ANAの青い機体が見えました。
旅行者の減少を受けて、ANAもJALも厳しい状況です。それでも何とか飛行機を飛ばしているのです。
どんな世界でもそうですが、全ては青天井。上限などありません。
しかも学ぶべき手本も無限。なのに結果は……
そういえば、安藤忠雄はお酒も飲まないという聞いたことがあります。
全く飲まないところまでは真似できませんが、仕事を趣味にすることは出来ると思います。
■■■9月11日発売『リフォームデザイン2020』に「回遊できる家」掲載
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
【News】
■10月23日『homify』の特集記事に「阿倍野の長屋」掲載
■5月16日『homify』(英語)の特集記事に「下町のコンクリートCUBE」掲載
■5月10日『Houzz』の特集記事に「阿倍野の長屋」掲載
■4月8日『Sumikata』東急リバブル発行に巻頭インタビュー掲載
■2月13日 『Best of Houzz』を「中庭のある無垢な珪藻土の家」が受賞
■2017年11月27日ギャラクシーブックスから出版『建築家と家を建てる、という決断』守谷昌紀がamazon <民家・住宅論>で1位になりました