タグ別アーカイブ: 台風

心の空き地にも水やりを‐1613‐

 昨日までは肌を刺すような日差しが続いていました。

 35度を超えると、暑さが命を脅かすということを身をもって感じます。

 一転、台風10号が西日本を通過中です。

 昨日の夕方あたりから少し風が強くなってきました。

 現在は大阪も雨脚が強まってきました。

 台風は、亜熱帯、温暖に位置する日本で暮らす以上、避けることのできない宿命です。

 「バカの壁」の著者、養老猛が書いたように、夏のこの時期、「日本の自然の強さ」を特に感じます。

 建物を覆うのは夏蔦でしょうか。

 「土のままでいい」といっても何かが生えてくるのです。

 アスファルトの僅かな隙間からでも、手入れをしなければ雑草が覆い尽くす勢いです。

 その抵抗手段として、人は完全に地面を覆い、自然をコントロールしにかかります。

 植物も鉢植えなら、雑草が生えるスペースもありません。

 20世紀初頭の啓蒙思想家、ジェームス・アレンは、心という庭にも必ず何か生えてくると言いました。

 手入れをしなければ雑草で覆い尽くされてしまう。

 美しい花の種を植え、雑草を抜き、水やりをし、手入れをしなければ、花が咲くことも、実がなることもないのだと。

 雑草は放っておいても生えてくるのに、自らが望むものは勝手に生えてこない。

 自然も、心の中も全く同じところに、人が自然の一部だということを、認識せざるを得ないのです。

 雑草が生えるのが嫌だからと言って、心の庭をアスファルト敷きにすることはできません。

 となると、やはり土、地面が全ての元となっていることが分かります。

 花を咲かせるには、日々自分の心の庭を見に行き、手入れが必要なようで、近道はどうやらなさそうです。

 私が小学生の頃は、こんな空き地が沢山ありました。

 もれなく雑草だらけで、格好の虫取り場となっていたものです。あのすぐに手を切ってしまう雑草は何というのでしょう。

 蒸せるよな、夏草の匂いが懐かしいのです。

 東京の銀座が空き地だらけということはないので、下町の風景と言えるでしょう。

 建物だけでもなく、自然だけでもない環境で育ったことは、私の人格形成に大きく影響していると思います。

 多くの日本人がアマゾンの密林より、里山や棚田のある景色に心癒されるように、何処に生まれ、どんな地面で暮らすかは、想像以上に多くの影響を与えているのかもしれません。
 
 心に美しい庭だけがある人を聖人とすれば、生身の私達には、多少雑草の生えた空き地もあって当たり前かもしれません。

 美しい庭園づくりを仕事とするなら、空き地は趣味のようなものでしょうか。

 それで、週末は空き地にも水やりをしに行くのでしょう。ただ、その雑草の種を庭園にまで持ち込むのはNGです。


台風が通過する8月15日となりましたが、今日は終戦記念日。

 今生きていること、そして数えきれない程の先祖によって紡がれた命が自分であるということに感謝します。

 全ての先祖が聖人だった訳ではないでしょう。

 没すれば全てが仏という思想は、日本独特のものだそうです。

 そこに何の違和感もないことが、私がここに生まれ育った証しなのだと思うのです。

■■■『大改造!!劇的ビフォーアフター』7月21日(日)BS朝日で「住之江の元長屋」再放送

■■■『デンタルクリニックデザイン事典vol.1』4月1日発売に「さかたファミリー歯科クリニック」掲載

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【News】
『建築家と家を建てる、という決断』守谷昌紀
ギャラクシーブックスから2017年11月27日出版
amazon <民家・住宅論>で1位になりました
■『homify』5月7日「碧の家」掲載
『houzz』4月15日の特集記事
「中庭のある無垢な珪藻土の家」が紹介されました
「トレジャーキッズたかどの保育園」
地域情報サイトに掲載されました
大阪ガス『住まう』11月22日発行に「中庭のある無垢な珪藻土の家」掲載
『住まいの設計05・06月号』3月20日発売「回遊できる家」掲載
『homify』6月29日「回遊できる家」掲載

メディア掲載情報

◇一級建築士事務所 アトリエ m◇
建築家 守谷昌紀のゲツモク日記
アトリエmの現場日記

台風から瓦を守るのは誰‐1522‐

 台風21号の爪あとがいまだに残るなか、昨晩の24号は和歌山に上陸しました。

 関西、東海、関東を縦断しましたが、今回は関東での影響が大きかったようです。

 今日の大阪は台風一過の晴れ空。

 生駒山がくっきりみえていました。

 唐突ですが、日曜日の産経新聞に、私の名前がでていたと、何人かの方から連絡を頂きました。

 『広がる「喫煙者不採用」の動き 導入企業は好評価 「差別」の懸念も…』という記事で、先週中ごろに取材を受けました。

 約15年前から喫煙者を採用していない大阪の一級建築士事務所「アトリエm」の守(もり)谷(たに)昌紀代表(48)は、現場の防火も理由のひとつとした上で、「役に立つための仕事で、人に迷惑をかける可能性があることはしてはならない。顧客に引き渡す商品の場ではなおさら」と話す。

 たったこれだけの部分ですが、それでも15分から20分くらいは記者の方と話をしました。

 このあたりが新聞の凄さだと思いますし、時々彼らの目に留まるのは嬉しいことだと思っています。

 スタッフ不足の真っ最中で、微妙な気持ちもありますが、嘘はつけないので仕方ありません。

 今日から10月で、すでに稲穂も頭を垂れはじめています。

 関西の農家の方は、24号の風害が少なかったことは何よりだったでしょう。

 我が家も停電に備えて、手動発電ライトを試験点灯。

 すべて取り越し苦労に終わりましたが、嬉しい誤算でした。

 とはいえ、屋根、外壁、板金、電気工事などは、未だ追いついていないのが現状です。

 瓦屋根が減小する中での天災で、需要が供給を大きく上回ります。

 私の仕事においても、瓦屋根の作品はこれまでに1軒だけです。

 「境内の中の家」は、2008年にフジテレビのスーパーニュースから、200日に及ぶ密着取材を受けました。

 文字通り、神社の中にある神官のお家で、軒先は一文字瓦ですっきりと仕上げました。

 もしかすると、私たちが瓦最後世代になるかもしれません。

 最近の瓦は、下地に桟をうち、そこに引っ掛けてクギで固定します。

 従来の瓦は土で固定しているだけ。

 最上部にある「のし瓦」は銅線もしくはステンレス線で固定されますが、それでも21号の時は、多くの瓦が吹き飛ばされました。

 こちらの建物は、築50~60年だと思うので、おそらく土での固定です。

 密集して建っている場合、古い工法だったとしても、そこまで被害を受けていないことが多いのです。

 反対に、ポツンと立っている建物は風の影響をダイレクトに受けます。

 こちらの住宅は、屋根上のアンテナがかなりの風圧を受けたでしょう。

 根元の屋根部分がかなりのダメージを受けており、早々に手を入れてあげたいところです。

 周辺環境は変わるので、どうすることもできませんが、街並みを意識するということは、景観以外の恩恵があると言えるのです。

 先程の被害が見えなかった住宅ですが、屋根の上に面白い飾りが載っていました。

 調べてみると「鍾馗様(しょうきさま)」と言うようです。

 道教の神様で、中国では鬼を退治したという逸話から、厄除けに飾るよう。

 向かいの家が「鍾馗様」を飾ると、同じようにお向かいが飾る習慣があるらしく、微笑み返しとして「おたふく」を飾ることもあるそうです。

 よくみると、凛々しく、また可愛らしい顔をしています。

 厄の中には、もちろん台風も入っていたでしょうが、最後は神頼みなのです。

 オリジナリティ、個性が尊重される時代です。

 過去の慣習を踏襲することが全て良い訳ではありませんが、自身の経験外のことが起こることは多々あります。

 そんな時、街並みという歴史に学ぶことは沢山あると思うのです。

 頭を重くした細い稲穂が、一本で植わっていたなら。

 台風がくればひとたまりもないでしょう。

 それぞれが自分で立とうという意識は大切ですが、人にしろ、植物にしろ、よりそって生きなければならない場面は、意外に多いのかもしれません。

 愚者は経験に学び、賢者は歴史に学ぶ

 鉄血宰相、ビスマルクの言葉を、警句として聞きたいと思うのです。

■■■毎日放送『住人十色』4月14日5:00pm~5:30pm

「回遊できる家」放映

■■■『建築家と家を建てる、という決断』守谷昌紀
ギャラクシーブックスから11月27日出版
amazon <民家・住宅論>で1位になりました

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■4月1日「トレジャーキッズたかどの保育園」開園

【News】
『住まいの設計05・06月号』3月20日発売「回遊できる家」掲載
『関西の建築家とつくる家 Vol.2』2月1日発売「阿倍野の長家」掲載
『homify』6月29日「回遊できる家」掲載
『homify』6月2日「イタウバハウス」掲載
『houzz』5月28日の特集記事「あちこちでお茶できる家」掲載

メディア掲載情報

◇一級建築士事務所 アトリエ m◇
建築家 守谷昌紀のゲツモク日記
アトリエmの現場日記<&lt;/a&lta</

それでもやまない雨はない‐1426‐

 先週の台風21号に続いて、22号が発生。

 2週続けて、大雨の週末になりました。

 土曜日は「中庭のある無垢な珪藻土の家」の撮影の予定でしたが、延期せざるをえず。

 緑を囲む京都のオフィス「(仮称)山本合同事務所」

 家事動線がコンパクトな「白のコートハウス」

 築80年、住吉の長屋を「碧の家 」に〈リノベーション〉

 木、金、土の現場回りはずっと快晴で、1日ずれていればと、歯噛みしたくなります。

 昨日はJRでの移動でしたが、昼頃はかなり強い雨脚でした。

 淀川も増水していましたが、直撃ではなく先週ほどの被害はなかったようです。

 昼には大阪に戻り、ショールームでの打合せに。

 グランフロントにあるリクシルで2時間半みっちり打合せをしました。

 夕方頃には雨もあがり、神戸方向から夕日も差してきたのです。

 梅田にも人足がもどり、どことなくホッとした気分になります。

 例えに出して申し訳ないのですが、「やまない雨はないというけど、本当だろうかと思っていた」と元プロ野球選手・清原和博が話していた場面をみたことがあります。

 FAで、西武から念願の巨人に移籍したが、思うような成績をなかなか出せず。

 また、松井秀喜との主砲争いに敗れ、夜遊びばかりとメディアからバッシングを受けていた頃を指してのコメントでした。

 やまない雨がないのは間違いありません。しかし、晴れがやってきたとしても、またいつか台風はやってきます。

 数限りない栄光を手にしてきた彼が、本当に超えられなかったのだろうかとも思いますし、早熟の天才だったからこそ超えられなかったのかもしれません。

 先週、ある計画のプレゼンテーションをした後、断りの連絡を貰いました。

 私も設計したいと思っていたにも関わらず、断りがはいったのは久し振りです。

 負け惜しみもありここで書いているのかもしれませんが、この経験を少しでもプラスにしなければ、同じところを行ったり来たりするだけです。

 今回は良かったですが、またいつか大型の台風が直撃する機会はあります。

 ならばそれを想定し、準備し、危険も含めて、生きることを楽しむしかありません。

 それでもやまない雨はないのですから。