明日香村役場とSDGs‐1847‐

10月半ばに、明日香村を訪れたと書きました。

棚田、石舞台古墳、岡寺と見て回ったのですが、もう一つ目的がありました。

明日香村役場です。

若い頃、この付近で仕事をした時に、近鉄吉野線の岡寺駅から岡寺まで歩きました。

結構な距離だったのですが、途中でこの明日香村役場を見掛けたのです。

2階部を持ち上げたピロティから、ル・コルビュジエが牽引した、モダニズムの影響を色濃く受けているのが分かります。

前川國男や坂倉準三など、コルビュジエ に師事した建築家の作品かなと思い、色々調べたのですが結局誰の設計か分からずじまいでした。

東には穏やかに広がる稜線が見えています。

奈良盆地の南東端に位置しますが、杉板型枠のコンクリート打ち放しがかなりの存在感です。

更に、何といってもこの西端にある高層棟。

今もまだ使われているのかなと、極たまにですが思っていたのです。

まだ使われていました。

エントランスホール。

雑然とはしていますが、北側の大開口に面して吹き抜けとなっており、開放的な空間になっています。

建物西側にはびっしりと木が生い茂り、かなり西日を防いでくれるでしょう。

近年はエネルギー消費を抑えるために屋上緑化をした建物もありますが、そのような考え方の先駆けと言って良いと思います。

ただ、明日香村のwebサイトには、こうあります。

新庁舎建設推進事業
建築後、約50年を経過した現庁舎は、老朽化や耐震性を著しく欠くことで震災発生時に防災拠点としての役割を果たせないことや、明日香村にふさわしくない意匠形態といった課題を抱えています。
こうした課題を解決するために、役場庁舎の建て替えが必要となっており、新庁舎建設を進めています。

実際にプロポーザルが開催され、建替え計画は決定しているようです。

意匠形態には人の好みがあるので、ひとつの答えはありませんが私は「面白い建物だな」と思っていました。

南側に対しても、深い庇と屋根が延長された袖壁で、夏の直射はかなり抑え込まれていると思います。

どこまで意図されていたのか分かりませんが、木々によっての省エネ効果もかなりありそうです。

実際に約50年の年月が経っているので、機能的なことは分からず書いていますが、意欲と情熱をもって建てられた建築であることは間違いありません。

それが、パブリックなコメントで否定的な言葉しか出てこないことに軽く衝撃を受けたのです。

SDGs(Sustainable Development Goals)に表されるように、 サスティナブル(Sustainable)=持続可能であるということは、人類の大きな課題であるのは間違いありません。

変わって行くこと、変化していくことを恐れてはならないですが、敬意も持つこと、物を大事にする精神も、同じくらい大切なことだと思うのです。

それは誰が、どんな基準で判断するのか。

一元的な答えはありませんが、創り手として24年振りにみた現・明日香村役場を見て、ちょっと考えさせられました。

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■10月23日『homify』の特集記事に「阿倍野の長屋」掲載

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