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奈良監獄で自由と罰について考える‐1538‐

 金曜日は勤労感謝の日。

 11月も終盤に入りました。

 晩秋の夕暮れ。

 日本の里山には柿がよく似合います。

 「旧奈良監獄」が、23日から25日まで最後の一般公開をするという記事をみつけ、急いで申し込みました。

 設計者のお孫さん、ジャズピアニストの山下洋輔さんが、保存運動をしているという話しも記憶にありました。

 奈良監獄は、近代化を目指す明治政府がつくった五大監獄のひとつ。

 1908年の完成で、2021年にはホテル等の複合施設に生まれ変わります。

 1946年には「奈良少年刑務所」となり、昨年老朽化のため閉鎖されました。

 入場チケットに空きがあったのは、昨日16:00の最終回のみ。

 五大監獄で現存するのはここだけなので、最後の最後に滑りこみセーフという感じ。

 申し込んだ後、すぐに家族も誘ったのですが、その日の夜には全て売り切れていたのです。

 その理由が分かります。凄い人出でした。

 ロマネスク様式の表門を見返しても長蛇の列。

 中央看守所までそれが続いています。

 中央看守所から舎房が放射状に伸びる形態は「ハビランド・システムと呼ばれます。

 側面からみるとその配置が分かりやすいでしょうか。

 各舎房の交点、中央看守所からの景色は圧巻です。

 人も殺到する訳です。

 2階と1階の中央は光と空気が行き来します。

 ところどころにあるトップライトの光も、1階まで落ちてくるのです。

 内部空間も繊細につくられていました。

 しかしここは監獄。

 罪を犯した人たちが入るところです。

 勿論のこと自由はありません。

 2階からは南東に若草山を望む風光明美なところです。

 近隣との境にある塀は、6m位あったでしょうか。

 煉瓦積みの極めて美しい建物ですが、歩くと床がしなる感じもありました。

 安全のため、近隣のことを考えると閉鎖もやむなしでしょう。

 刑務所内に入ったのは初めてですが、敷地の広さ、開放感、快適性など、想像を遥かに上回るものでした。

 最近は、熱中症対策のエアコンがついているといいます。

 麦入りご飯などは昨今の健康ブームで言えば、むしろ望ましいもの。

 収監されることを「臭い飯を食う」と言いますが、おそらくほど遠いものでしょう。

 自由の有る無しという一点を除けば、非常に理想的な生活にも思えます。

 人は誰も間違いを起こす可能性を持っています。

 しかし、収監されるまでの罪を犯した人が、本当の意味で更生するのは、相当に大変だろうと思います。

 信用を築き上げるには膨大な時間が掛かります。しかし失うのは一瞬です。

 例えが微妙ですが、不良少年が気持ちを入れ替えて、普通の暮らしに戻ったとします。

 本人は「大変なことをやり遂げた」と思っていますが、普通に暮らしている人からすれば当たり前のこと。

 過去に悪さをしていたなら、そのマイナスも背負ってのスタート。ハンディはあると言わざるを得ません。

 このギャップを越え、周囲の人の気持ちを変えるのはかなりの苦難を伴うはずです。

 子を持つ親として、ここで少年少女が服役していたと考えると、晴れ晴れとした気分にはなれません。

 国として、それをサポートするのは凄いことだと思いますし、応援できることがあるとするなら、税金を納めることくらいでしょうか。

 今月末、予定納税の支払いがあります。

 納税の考え方は、現金主義でなく発生主義。入金が済んでいなくても納税の対象になります。

 それだけでも理屈に合わないと思うのに、予定で先に納税するなどというのは、もう懲罰に近い気さえするのです。

 そんなことは、微塵の問題もないくらいの盤石の経営をしなければなりません。

 普通に生きることは、おそらく刑務所に入るより何十倍も、何百倍も大変なことです。

 娑婆には自由があります。しかしその自由を満喫しようと思えば、びっくりするくらいの荒波の中を進んでいかなければならないのです。

 罰がどうとかいう世界から、早くこの自由社会の荒波に本気で立ち向かって欲しいと思います。

 自由とは、怠惰とか無責任とは程遠いものなのです。

 多くの人は頷いてくれると思うのですが。

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『homify』6月29日「回遊できる家」掲載
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