前回書いた、ちょっと秋の京都旅。
出掛けようと思った動機は「アンディ・ウォーホル・キョウト」です。
京都の岡崎周辺には、2つ美術館があります。平安神宮の鳥居を挟んで西にあるのは 京都 国立近代美術館。
その向かいにあるのが京都市京セラ美術館です。
いずれも疎水沿いに建つ絶好の立地条件です。
京セラ美術館は、現存する日本最古の美術館を、建築家・青木淳+西澤徹夫がリノベーションしました。
2020年の3月のリニューアルオープン以来、はじめてやって来たのです。
天井の高いホールを抜け。
東山キューブというエリアが会場です。
目の前に庭園が広がる空間にでてきました。
東山を望む景色が圧巻でした。
開場してすぐに入りましたが、もうかなりの人出。
熱気が伝わってきます。
アンディ・ウォーホルと言えばやはりこのキャンベル・スープでしょう。
ポップアートの旗手、ポップアートの神髄などと呼ばれるウォーホルは、1928年から1987年という経済成長期の真っ只中を生きました。
50年代半ばのイギリスではじまったポップ・アートですが、ポップ・アーティストは広告や報道写真をそのまま自分の作品にとりこみます。
「ポップ・アートとはモノを好きになることだ」
そう語ったウォーホルは、20年ものあいだランチにキャンベル・スープを毎日飲んだそうです。
1962年、最初の個展となった会場の壁にも、このキャンベル・スープの絵が並べられました。
大量生産、大量消費時代。加工品を機械的に消費せざるを得ない現代社会を、批判も肯定ももせず、ただそこに並べたことが新しかったのです。
彼の出身地は、ニューヨーク州の西隣にあるペンシルベニヤ州のピッツバーグ。
今回は、 ピッツバーグ にあるアンディ・ウォーホル美術館から多くの作品が出展されています。
門外不出と言われる「3つのマリリン」は広告にもでている通り目玉作品です。
ハリウッドスターに憧れていたウォーホルは、1962年のマリリン・モンローの悲劇的な死に衝撃を受けます。
写真製版のシルクスクリーン印刷という技法で彼女の作品を次々に制作していくのです。
そしてこんな言葉を残しました。
「ポップ・アーティストたちは、ブロードウェイで目にするような、誰もが一瞬にしてわかるイメージを描いたのさ。(中略)こうした現代のあらゆる偉大なものを、抽象表現主義の画家たちは決して見ようとしなかったんだ」
ウォーホルは生涯2度に渡って京都を訪れています。
ポップ・アートに乗り出す前の1956年の際のスケッチの展示がありました。
「わかりやすい」という感覚は、この頃から強く持っていたようです。
セレブリティから、彼へ自画像を発注するはオファーがひっきり無しだったそうです。
シルヴェスター・スタローン、アレサ・フランクリン、坂本龍一。
どちら発信かは分かりませんが、描いてもらうこと自体がステータスとなったのです。
晩年は特に死をテーマにする作品が増えました。
ダビンチの「最後の晩餐」を題材とした、ウォーホルの「最後の晩餐」です。
1986年の作品で、ハイ・アートとロウ・アートの区別を曖昧にするという取組みです。
かなり大きな作品ですが、私としては「一瞬にして」が彼の魅力だとするなら、そのインパクトは逆に小さくなっていると感じました。
カーネギーメロン大学で美術を学んだウォーホルは、商業イラストレーターとしてキャリアをスタートさせます。
そしてポップ・アートに出会い、時代の寵児となりました。しかし1987年、心臓発作で58歳という短い生涯を終えるのです。
アンディ・ウォーホルのことは大学時代に知りました。
その時にはすでに亡くなっていたので、その少し前まで生きていたという認識がありませんでした。
それで、マッキントッシュの作品があるのを見て少し驚きました。
ジョブスとウォーホル、このような人物が生まれてくるのがアメリカという国の、パワーの源なのでしょう。
学生時代から好きだったと書きましたが、彼がLGBTだとも分かっていませんでした。
もしかすると、当時の書籍にはあまり書かれていなかったのかも分かりません。
私は作品だけでなく、作者の人生を知りたいと思っています。
どうやってその作品が生まれてきたのか。それを知ることで、何かを得れるのではと考えているからだと思います。
向かいにある、京都国立近代美術館では「ルートヴィヒ美術館展」が開催されていました。
こちらもウォーホルの作品が看板作品のようですが、大好きなマレーヴィチも来ているようです。
マレーヴィチこそ、ウォーホルが苦言を呈した抽象表現主義の画家ですが、芸術には色々な表現があって勿論構いません。
会期は来年の1月22日まで。もう一度京都に行く理由ができました。
日常の中で、偉大なものを何か見落としていないか……
毎日スープを飲みながら考えようかなと思います。
■■5月13日『住まいの設計6月号』に「おいでよ House」掲載
■6月16日 『ESSE-online』に「おいでよ House」掲載
■ 『ESSE-online』にコラム連載
10月11日「テレワーク時代の間取り」
9月18日「冷蔵庫の位置」
6月18日「シンボルツリー」
6月5日「擁壁のある土地」
4月11日「リビング学習」
2月27日「照明計画」
2月14日「屋根裏部屋」
2月1日「アウトドアリビング」
1月4日「土間収納」
12月6日「キッチン・パントリー」
■■1月6日『Best of Houzz 2022』を「中庭のある無垢な珪藻土の家」が受賞
■6月11日『homify』の特集記事に「R Grey」掲載
■1月8日『homify』の特集記事に「光庭の家」掲載
■1月7日『homify』の特集記事に「白馬の山小屋」掲載