
日曜日の朝、目を覚ますと真っ青な晴れ空でした。
梅雨入りするのかなと思っていたので、これ幸いとジョギングへ出掛けました。

コース途中にあるヤマボウシが、小振りな白い花を咲かせていました。

同じ日曜日、「Shabby House」のクライアントがヤマボウシの写真をSNSにUPされていました。
思わず「庭木の写真を送って頂けませんか」とお願いしてしまったのです。

実はこちらの庭には、竣工当時はドイツトウヒ、またはヨーロッパトウヒと呼ばれるモミノキの仲間が植わっていました。
コンセプトが「パリのアパルトメント」で、本物のパリを目指したのです。

法律的に防火扉が必要だったので、外にはスチールの扉があります。
そして内側に、アンティークショップで購入した、南仏で100年程前に使われていたこの扉をつけました。

この鍵穴と塗装の厚みが年月を感じさせてくれます。

照明、家具、フローリングもこだわりましたが、特に家具はジーンズでいうところのダメージ加工をほどこしているのです。
これらは基本奥さんの好みです。

ご主人のこだわりは、キッチン横にある「酒部屋」のみ。
冷蔵庫の横に躙り口があるのが見えるでしょうか。
この役割分担がはっきりしているところも、このお家の特徴だと思います。

ブンデンストウヒは、聖夜にクリスマスツリーの役割を存分に果たしてくれました。

ところが2013年。酷暑の夏に耐え切れず枯れてしまったのです。

再びご夫妻と庭木屋さんへ足を運びました。
パリの北緯は48度50分なので稚内より北にあることになります。ドイツトウヒには厳しい環境だったのです。
それらも踏まえ、常緑のヤマボウシを選びました。

2代目シンボルツリーとしてやってきたのですが、その現在が3枚目の写真です。

花の写真も一緒に届きました。

竣工して11年になりますが、変わって行く姿をみれるのは嬉しいものです。

ただ、あれだけこだわって選んだ庭木を枯らしてしまった後悔はあります。
何本かで植えたり、足下に灌木を配置すれば防げたかもしれません。
この物語も含めて、『ESSE-online』 に5軒の庭木の物語を寄稿しました。また公開が決まれば案内したいと思います。
建築に大切なのはストーリーだと思っています。
そこにある物はひとつでも、そこに至るまでの時間、試行錯誤、そしていくつかの失敗の上に存在しているのです。
劇作家の寺山修司はこう言っています。
物語は半分作って、後の半分は観客が補完して一つの世界を作っていく。余白が無いといけない。それが演劇の可能性だ。
建築家として作り込み過ぎないことは大切なことだと思っています。
実際に住むクライアントに補完してもらう。また、余白があれば、解釈は1つではありません。
これもずっとその家を好きでいられる理由になるはずです。
それで半分物語くらいが丁度いいと思うのです。
■■■6月9日 『住まいの設計チャンネル』 で「おいでよ House」公開
■■5月13日『住まいの設計6月号』に「おいでよ House」掲載
■ 『ESSE-online』にコラム連載
6月5日「擁壁のある土地」
4月11日「リビング学習」
2月27日「照明計画」
2月14日「屋根裏部屋」
2月1日「アウトドアリビング」
1月4日「土間収納」
12月6日「キッチン・パントリー」
■■1月6日『Best of Houzz 2022』を「中庭のある無垢な珪藻土の家」が受賞
■6月11日『homify』の特集記事に「R Grey」掲載
■1月8日『homify』の特集記事に「光庭の家」掲載
■1月7日『homify』の特集記事に「白馬の山小屋」掲載◆メディア掲載情報