沈まぬ太陽

 昨日、メジャーリーグのオールスターでイチローがMVPに選出。3打数3安打1ランニングホームランとは、彼にしかできない芸当です。

 アメリカに敵意などありませんが、痛快ではあります。

 さて、文系な話。

 春先から読み始めた『沈まぬ太陽』山崎豊子著(新潮文庫)

 全5巻をやっと読み終えました。

 国民航空社員(モデルは日本航空)で同社の労働組合委員長を務めた主人公、恩地元(実在の日本航空元社員・小倉寛太郎がモデル)が受けた不条理な内情を描き、人間の真実を描いた作品。

 ナショナルフラッグキャリアの腐敗と、単独機の事故として史上最悪の死者を出した日航機墜落事故を主題に、人の生命に直結する航空会社の社会倫理を鋭く抉り出した作品である。『ウィキペディア(Wikipedia)』より

 山崎豊子作品では、『華麗なる一族』や『白い巨塔』はドラマ化もされ有名なところです。

 この作品もベストセラーになりましたが、映像化されないのは、スケール感があまりにも大きいが故のようです。

 日航機墜落事故の10年後に発表されますが、モデルとなった会社や個人を容易に特定できる事や、実際の取材が対立する労働組合の一方しかされていない等と、批判もかなり大きかったようです。

 しかしこの大作に注がれたであろう、筆者の膨大なエネルギーと熱気は、真実に迫っているのではと思わせるものがあります。

 労働組合の対立によって、中東、アフリカを10年に渡ってたらい回しにされた主人公への報復人事。腐敗した体制が影響したであろう航空機墜落事故。凄惨を極める事故現場。

 それによって人生の歯車が狂った被害者とその家族。航空会社再建の為、首相の意により民間企業から送り込まれた、清廉な会長の葛藤と喪失感。(この会長を良く描きすぎていると言う批判もあるようです)

 大阪へ向う飛行機はダッチロールを繰り返し、誰もが墜落を覚悟します。その時書かれたビジネスマンの遺書を読んだ時、涙がでてしまいました。

 事故当時私は中学3年生。ここまでの”事件”とは認識していませんでした。

 ずっと前から母から”この本は凄いヨ”と言われていました。

 それを最近のドラマブームで思い出し、読んだ次第です。遅くなりましたが読んで良かったです。

 面白いとか感動するとかよりも”読んでよかった”と言うのが正直な感想です。