天王寺

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 現在、大阪の天王寺に設計中の現場があります。帰り道を歩いていると、美しい夕焼けでした。

 25歳の時に、成り行きで、勢いあまって、建築設計事務所「アトリエm」を立ち上げました。親などの「まずは、自分の部屋で始めたら?」という声に反発して、JR天王寺駅のすぐ北に4畳一室の部屋を借りました。

 天王寺だった理由は「梅田や本町では家賃が高いから」と言っていましたが、正直に言えば実家から近いというのが何よりの理由でした。

 天王寺には、5年ほど事務所を構えていたので、街には愛着があります。聖徳太子によって建立された四天王寺などの、お寺が有るかと思えば、終戦直後、ドヤ街が増殖していった際の、薄暗い路地が残っていたり、動物園、美術館、百貨店があったり、チンチン電車が走っていたりと「ごった煮」のような街です。

 その路地をウロウロしていると、突如として2000円で「羊の脳みそ」を食べさせる、洋食屋が現れたり、350円で刺身を食べさせる居酒屋があったりと、なんとも楽しいのです。

 当時、仕事を始めたばかりの私は、当然仕事のスピードも遅く、毎日深夜までドロドロになった頭で、必死に図面を描き、あがいていました。兎に角、部屋が狭かったので、行き詰まると深夜の天王寺を徘徊したものでした。

 夕焼けを見ていると、少しセンチメンタルな気分になって、生ぬるい夜風を思い出しました。