カテゴリー別アーカイブ: 01 旅・街

密から生まれる、熱‐1838‐

久し振りの道を通ったら、広い空き地に変わっていました。

建物が無くなると、元は何があったか思い出せなくなるものです。

これだけの敷地ですから、かなり大きな建物だったと思うのですが……

人の記憶ほど曖昧なものはありません。

ネコジャラシが秋の日を受けて、金色に輝いています。

金色に輝くと言えば麦の代名詞ですが、確かこのネコジャラシも稗などの仲間だったはず。

負けず劣らず美しいのです。

乗り継ぎができる駅は沢山ありますが、街が面白いのはやはり鶴橋。

私は好んで使います。

JR、近鉄、地下鉄と3つの路線が交わるので人通りも多く、活気があるのが好きな理由。

また、戦後から残る周辺の商店街は、唯一無二の雰囲気です。

阿倍野、天王寺の再開発が進む中、最後の砦といってよいでしょう。

12月に除いた時は閑散としてましたが、今月末、緊急事態宣言が解除されるという報道もありました。

鶴橋商店街だけでなく、「もうそろそろ人出が戻ってくれなければ……」というのが、偽らざる本音なのです。

梅田の地下街を「ラビリンス」と紹介していた記事を見掛けましたが、ラビリンス度では 鶴橋商店街が1枚上手だと思います。

商店街をのぞいたのは久しぶりですが、私の心配は不要でした。



十分に人出は戻っているようです。

まだ解除前なので戻りすぎなのかもしれません。

私も人のことは言えないのですが。

今から138億年前。

超高温、超高密度に圧縮された素粒子が突如爆発しました。

その爆発によって、「無」だった宇宙が「有」に変わり、現在も膨張を続けています。

これが私の理解する「ビッグバンセオリー」です。

「無」とは何?

まさに禅問答で、考え出すと夜も眠れなくなります。

それは置いておくとしても、大きな変化には「熱」が必須で、それは「密」と深く関係しているようです。

中高の同窓会 の世話役をしているので、先日有志でリモート会議を開きました。

2020年末に予定していた中高の同窓会は、昨年夏に2021年末に延期しました。

今月、更に2022年末へと延期を決定しました。

その案内をすると、何人かの同窓生からレスポンスがあったのですが、「さすがにそろそろ納まってくれないと……」いうメールがありました。

約2年、「密」は徹底的に排除されてきました。

それは必要なことだったはずですが、永遠にという訳には行きません。

今年度の後半戦は、そろそろ「熱」で行きたいと思うのです。



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■■■ 『建築家・守谷昌紀TV』を開設しました ■■■

■1月27日 『Best of Houzz 2021』「中庭のある無垢な珪藻土の家」が受賞

■12月28日発売『suumoリフォーム(関西版)』にインタビュー記事掲載
■10月23日『homify』の特集記事に「阿倍野の長屋」掲載

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建築家 守谷昌紀のゲツモク日記
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幸せの「月と寅と金だらい」‐1837‐

先週日曜日は「おいでよhouse」のオープンハウスでした。

今週月曜日の敬老の日は「コンクリート打放し H型プランの平屋」のオープンハウスでした。

今回は、6組15名の参加がありました。

密にはならない程度に、活気があってとても楽しかったです。

ご主人も案内してくれたのですが「皆さん褒めてくれるのでとても楽しかった」と。

知りたいことと、伝えたいことは一致していないことが良くあります。

むしろその確率の方が高いかもしれません。

私が話すより、住んでいる方の話しの方が価値があるのは間違いないのです。

ホール横にあるクロークなども、質問が多かった場所だと思います。

同じく、水廻りも皆さん興味がある場所。

つい主要な空間の案内に力が入るのですが、こういった空間をしっかり見て貰えるのもオープンハウスのよいところだと思います。

奥さんが、この日も花を活けてくれました。

この花器、ちょっと特徴的です。

仕事先で、上司が「誰かこれいらない?」と皆に声を掛けたそうです。

誰の手も上がらなかったので、それならと頂いた金だらいなのです。

床とはもてなす心を伝える場所で、名器を飾る場所ではないという、利休の心がまさに体現されています。

ステンレスの床板と黒皮鉄板の背景にとても映えていました。

更に、追加の内部の動画撮影までお願いしていました。

概ね天気が良かったのですが、アトリエに帰って観てみると、空は比較的雲が多く外観はもうひとつ。

無理を言って、今日の昼から外部だけ再撮影させて貰いました。

今日は秋分の日。

1年で最も平均的に光が当たる日という言い方もできます。

雲一つない快晴。

庭木のヤマボウシが鮮やかな実をつけていました。

もう思い残すことはありません。

実は午前中に 「おいでよhouse」 の外観も再撮影させて貰っていました。

日曜日であれ、祝日であれ、快晴の空を見ると、いてもたってもいられなくなります。

それで、ご家族にはご迷惑ばかりお掛けしているのですが。

撮影の相談メールを送った際、この写真が届きました。

東向きのハイサイドから月が見えることを発見しましたと。

「夫婦で寅年なので、新築したら信貴山の福寅をお迎えする!」と決めておられたそうです。

「月と寅。カッコいいです(笑)」で結ばれていました。

ただ働くしか能の無い人間ですが、 月と寅と金だらいが私を幸せにしてくれるのです。

「おいでよhouse」 のほうも、また欲がでてきて内部動画のみ再撮影を……

本当にしつこい人間で済みません。

被害にあっているクライアントの皆さん、どうかお許し下さいませ。

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近鉄で行く、奈良公園‐1832‐

昨日の朝、天気予報をみると朝と夕方が晴れマーク。

それならと現場を回って、動画を撮ってきました。

写真はずっと撮って来ましたが、やはり動画も晴れていると画が美しいのです。

動画を撮影する機材を持って出たので、そのまま奈良公園まで行くことに。

近鉄奈良線の景色は、動画なら画になるだろうなと前から思っていたのです。

石切で乗り換え。

平城宮跡あたりで、一気に視界が広がるあたりも見どころです。

奈良公園は外国人が多かったでしょうか。

奈良といえば鹿ですが、角が危ないので切っているのでしょう。

それでもオスはオス。


鹿せんべえ屋さんの前で、本気で縄張り争いを始めました。

ガツガツとツノの根元が当たる音が聞こえてきます。

怖いくらいの迫力。

1匹が道路まで押しやって、バスは急ブレーキでした。

トボトボと去っていく哀愁が……

彼らは普通に道路を渡っていくので、奈良公園周辺ではご注意を。

建築現場や旅先で、一眼レフとビデオカメラと三脚を持っている人がいたらそれが私です。

分かったことと言えば、ビデオとカメラは同時に撮れないということ。当たり前ですが。

未だ手探り運転が続きます。

■■■ 軒が深いから「おいでよhouse」 ■■■
9月12日(日) 11:00~15:00 オープンハウス開催

■■■「コンクリート打放し H型プランの平屋」 ■■■
9月20日(祝・月) 11:00~15:00 オープンハウス開催

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■12月28日発売『suumoリフォーム(関西版)』にインタビュー記事掲載
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■2017年11月27日ギャラクシーブックスから出版『建築家と家を建てる、という決断』守谷昌紀(著)

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必ず駿馬をつれてくる‐1830‐

8月初めから本格的にスタートした、アトリエmのwebサイトリニューアル計画。

web製作会社ドアズのある三宮詣でが続きます。

中学・高校と高槻市駅まで通っていた私は阪急っ子です。

駅名こそ「梅田」から「大阪梅田」に変わりましたが、JRでなく、阪神でなく、できれば阪急でいきたいのです。

電車自体の乗り心地も良いですが、緑のシートは他を圧倒する座り心地です。

しかし何と言っても景色でしょう。

南を見れば、遠くには六甲アイランドとポートアイランド。

岸壁沿いに建つ、巨大な赤白のキリンが見えています。

北を見れば、王子公園や六甲山の緑豊かな風景。

子供が小さい頃はよくパンダを見に来たものです。

新しくなった阪急の三宮駅。

こちらの駅名も「神戸三宮」に変わりましたが、びっくりするくらいの高層ビルにも生まれ変わりました。

それでも北側の商店街は、学生時代の印象のまま。

この雑多な景色が、私にとっての三宮です。

ドアズのある東へ向かって歩き始めると、妻が「あっ、忘れた!」と。

妻がwebを担当しているので2人で訪れるのですが、車内に日傘を忘れたのです。

急いで駅に戻り、その旨を駅員さんに伝えました。

すると大きな運行表を持ってきて「その電車なら、今はここですね」と。


ダイヤグラムと言われる、あれです。

鉄道おたくという訳ではありませんが、何ともプロ感がでていてワクワクします。

テキパキと処理をしてくれ、出てくるかなと思いながら「帰りにまた寄ります」と言って、打合せに向かいました。

3時間後、駅に戻ると「出てきてないですね」と。

何ともったいないことを……と思っていたら、翌日は娘がiPhoneのイアホンを電車に忘れてきたと。

備品のイヤホンでなくAirPodsです。


全くウチの女性陣は、と思っていたら翌日問い合わせると「出てきました」とのこと。

無くさなければ良いのですが、無くして出てきた時の有り難さといったら……

日本に生まれたことを感謝するのです。

前漢の時代、北方の砦(塞)に住む翁が飼っていた馬が逃げてしまいました。すると塞翁は「これは幸となるだろう」と言います。

数カ月後、この馬は立派な駿馬をつれて戻ってきました。塞翁は「これは禍になるだろう」と言います。

息子がこの駿馬に乗っていた時、落馬して足を骨折してしまいます。塞翁は「幸となるだろう」と言います。

1年後に戦争が始まりますが、この怪我のため徴兵を免れたのです。

人間万事塞翁が馬。幸せも禍も間違いなく起こります。

禍があった時は未来を信じで希望を持つ。幸せな時は、調子に乗り過ぎず、禍を最小とするよう努力する。

人生の原理原則です。

これまで、この日記では拘って「コロナ下」と書いてきました。

今日はあえて「コロナ禍」と書きます。必ず駿馬をつれて来てくれるはずですから。


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名残と痕跡‐1827‐

朝のジョギングコースには、沢山の地蔵尊が祀られています。

堺に次ぐ規模の環濠都市だった平野郷の名残です。

本来なら地蔵盆の時期ですが、中止の貼り紙がありました。

平野郷の中にある昔ながらの商店街。

なんかいモールです。

「なんかい」は「南海」。

ここに1980年に廃線となった南海平野線の終着駅があったのです。

今は藤棚となった始発駅、「平野停留所」から出発進行です。

すぐにすれ違いエリアが見えてきました。

踏切の名残も。

信号機は付け替えられられたのか、当時のままなのか。

雰囲気は十分堪能できます。

住宅街を縫うように線路は続きます。

100m程で現在の道に突き当たりました。

南海平野線平野駅跡地プロムナードとして現在は利用されているのです。

国道25号線と近畿道が交わる少し手前。

廃線となった阪和貨物線跡があります。

ここを通った時、妻が「これ何に使えるんやろ」と言っていました。

線路という形状だけに、再利用が最も難しい形状と言えるかもしれません。

確かに、南海平野線もプロムナードとして利用している部分はよいものの、その先はどうなっているんだろうと考えました。

右の緑の線が平野駅跡地プロムナードで、その先はほぼ阪神高速松原線に沿って走っていたようです。

チンチン電車時代から、車時代へと切り替えが上手くいった成功例かもしれません。

あたりを見回すと、天王寺まで繋がるルートは阪神高速しかないのかなと思っていましたが、想像通りで、若干悦に入っていました。

波が引いた後に残る様子を「波残(なみのこり)」といい、それが略され「なごり(余波)」となったそうです。

「自然は飛躍せず」と植物学者のリンネは言いましたが、街も飛躍はしません。

どこかに名残が残っているものです。

駅をでてすぐのすれ違いエリアには、線路をコントロールする何かしらの施設があたはずです。

そこを示すように、サルスベリが濃桃色の花を咲かせていました。

墓石もある人が生きた名残、痕跡と言えます。

2年続けて墓参りにも帰れていません。

不要不急のものにどれだけ価値があったのか、よくよく考える機会でもあります。

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30分で味わう旅情、神戸‐1820‐

8月に入り、オリンピックも折り返しを過ぎました。

暑さが収まる気配は全くありませんが、今日は神戸三宮へ。

山の近い景色は、神戸独特のもの。

若干風が爽やかなのは、海が近いせいかもしれません。

東へ向かって歩いて行くと、ひとつ減って二宮。

次は一宮でしょうか。

阪急の高架沿いを更に東へ。

電車からもDAgDARTの看板がよく見えます。

神戸発のシルバーアクセサリーのオリジナルブランドです。

まだお店の方と面識がないのでまた今度紹介したいと思います。

と思っていたら、池原ダムで私の隣に駐艇しているボートオーナーと偶然鉢合わせ。

「どんな確率なんですか!」と一言だけ交わし、母体となる会社ドアズに潜入したのです。

ドアズのインターネット事業部サイトにはこうあります。

「Webサイト・ソーシャルメディア・印刷物を活用した企業・団体等のブランディング・プロモーション支援を総合的にプロデュースしています」

実は、当社サイトのリニューアルの相談に来たのです。

社長の戸田さんは、随分前ですが若手経営者の交流会で、面識を持たせて貰いました。

アトリエmのWebサイトは、ほぼ自社で製作、リニューアルしてきたのですが、そろそろ限界を感じていました。

その時、誰に相談するかを悩んだのですが、インターネット関係では老舗と言える、ドアズの戸田さんに相談すると決めたのが、今年の春。

5月下旬に、初めての面談をお願いしました。

その後、無理を承知で色々な要望をお伝えし、相談に乗って貰ったのですが、6月下旬にようやく「やりましょう!」と返事を貰いました。

歓び勇んで神戸まで伺った次第なのです。

Web製作に関しては素人ですが、それなりにやってきた部分もあり、プロからするとやり難い仕事だと思います。

戸田さんが「増改築を繰り返してきたサイト」と表現したのですが、十分納得できます。

何せ普段は、そういった建物を劇的にリノベーションするのが私の仕事でもあるのですから。

プロの返答は常に明確で、Webを担当している妻の疑問に対して、殆どが即答でした。

コンテンツを充実させるのは私の仕事ですが、初めてプロに入って貰い、構造から設計して貰えるのは楽しみでしかないのです。

戸田さんは多才な人で、神戸・芦屋・明石を紹介するフリーマガジン『fd』の編集長でもあります。

編集長と書きましたが、写真撮影からイラストを描くことまで自身でされているとのこと。

滅茶苦茶に大変だそうですが、色々なところに置いてあるので是非ご覧ください。

今回は淡路島特集。私もまた淡路牛を食べに行きたいなあと思い出していました。

三宮へ向かう電車は、JR、阪急、阪神とそれぞれの景色があります。

また、ビル群の隙間からこの迫力で山が見える街を私は知りません。

大阪からわずか30分で旅情を味わえる街が神戸です。

秋までの神戸通い。楽しみになってきました。

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ガード下の郷愁、ここが踏ん張りどころ‐1805‐

 昨日は京阪電車で萱島まで移動しました。

 いよいよ「Ohana」移転計画の工事が始まります。

 寂しい気持ち半分、ワクワクする気持ち半分。

 新店舗は 「あの森のOhana」。現場日記もスタートしたので、良ければまたのぞいて下さい。
 

 工事請負契約締結に同席してきたのですが、サインだけなのですぐ終わるかと言えばさにあらず。

 カメラマンの石井さんと建築会社の社長を交えて話を始めると、あっという間に2時間半が経っていました。

 帰りも天満橋駅で乗り換えますが、少し夕涼みでもして行こうかと。 

 八軒家浜に出て、西側の中之島を望む景色が素晴らしい。

 昨日の天気なら、夕日も素晴らしかったことでしょう。

 川沿いにマクドナルドがあるのですが、その前にテラス席があります。

 マクドナルドの席なのか、そうでないのか分かりませんが、この時期の特等席であることは間違いありません。

 実際には、アルコールの並んでいるテーブルも結構ありました。

 近くの店舗はすでに閉店時刻。

 咎めたい気持ちもありますが、仕方ないのかなという気持ちも少しあります。

 こんな貼り紙を見る度に、何とも心が重たくなりました。
 
 同級生のあの店は大丈夫なんだろうか……と。

 飲みに行く習慣がないので、普段から売り上げに貢献していませんが、世の中は勿論のこと繋がっています。

 「現代における禁酒法だ」というコメントもありました。飲食関係の人達にとって、本当にレベル5の緊急事態だったでしょう。  

 ガード下に息づく郷愁。

 昭和生まれは、行く行かないに関わらず、こんな景色が好きなのです。

 変異株の話があったり、ワクチン接種の遅さが未だに話題をさらいますが、ようやく、おぼろげながら、出口が見えてきたという場面でしょうか。

 日常に、こんな景色を取り戻すためには、このあたりが本当に踏ん張りどころなのだと思います。

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むずかしいことをやさしく やさしいことをふかく ふかいことをたのしく‐1804‐

 昨日、6月6日は「ロックンロールの日」だったそうです。

 ロックンロールと言えば内田裕也さんですが、ラジオからはハワード・ジョーンズの曲が流れてきました。
 
 中学生の頃のヒット曲で本当に懐かしかったのですが、音が新鮮だったことにも驚いたのです。 

 阪神高速池田線は、伊丹空港あたりを過ぎると景色が随分変わります。

 終点付近で、亀岡に抜ける423号線と、京丹後へ抜ける173号線に枝分かれするのも特徴的。

 たまにしか乗らないので、やや緊張するのですが。

 昨日は173号線側に降りました。

 初期調査の為ですが、このあたりはあまり走った記憶がありません。

 自然豊かな景色も多いのですが、想像以上に住宅地が広がっていました。

 新築、フルリノベーションの両方を視野に入れているご夫妻と、5件の建物、敷地を見て回ったのです。

 もう6年程前のことですが「守谷さん、この中古物件買っていいですか?」と尋ねられました。

 コンマ数秒迷いましたが「新築を視野に入れないなら、いいと思います」と答えました。

 こうして「神戸の高台の家」は計画がスタートしました。

 裏手に擁壁があり、現行法規の下で建替えをするなら、その部分を全てやり替える必要があります。

 数百万は掛かると考えたので、「リノベーション一択なら」と答えたのです。 

 何千万もの買物を左右する可能性があるアドバイスで、多少の重圧を感じなくはありません。

 しかし、それを実務で経験させて貰ったからこそ私も鍛えられるのです。

 むずかしいことをやさしく

 やさしいことをふかく

 ふかいことをたのしく

 今年の2月、日経新聞の「私の履歴書」でホリプロ創業者、堀威夫さんが紹介された言葉です。 

 1960年にホリプロを創業した堀さんは、1980年代の半ば、ある月刊誌で作家・井上ひさしさんの書斎に張りだされているのを見掛けました。

 連絡を取るとご自身の言葉とのことで、ホリプロ本社の玄関には、直筆が掲げられているそうです。

 ある整形外科医のクライアントが、「僕は『腰椎』という言葉は使わないようにします。『腰骨』のほうが分かり易いですものね」と。

 次は、腰骨の大切さを説明します。

 そして、長く健康でいられる方法を、一緒に考えるのだそうです。

 ここまで相手のことを考えて、患者さんが殺到しないはずはありません。
 
 仕事の根源にある原則は、職種には寄らないのでしょう。

 「大変を楽しく」は私のモットーでしたが、井上ひさしさんの言葉には完全に一本負けです。

 吉川英治文学賞をはじめ多くの受賞歴があり文化功労者ですから当たり前と言えば当たり前ですが。
  
 ただ、求めれば、人はいくらでも成長できると信じます。

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芭蕉とシュルツ‐1802‐

 明日から6月に入ります。

 下旬には夏至を迎える訳で、日の出もどんどん早くなってきました。

 朝の7時頃にはそれなりの日差しとなり、街の景色はすでに昼色です。

 近所には多くの旧家が残っており、区画が大きい家も沢山あります。

 お寺が多いのは、この街が豊かだった証拠でしょう。

 この祠の横にある石をよく見ると、「弘法大使腰掛石」と掘られています。50歳になって初めて気づきました。

 よく見れば なずな花咲く 垣根かな

 芭蕉の中でも特に好きな一句です。

 全てはこちらの姿勢次第なのだと、いつも教えてくれるのです。

 旧家には蔵があるとことも多く、塀の上には忍び返しがあります。

 先端は細く、更に返しがあり、かなりの抑止効果がありそうです。 

 ちょっと注目してみると、形状も様々。

 こちらはやや太いストレート型。

 こちらはダブル返しのやや太め。

 この細さは、見ているだけでも恐ろしい感じがします。

 あくまで賊の視点に立った場合ですが、もし私が忍び返しを設計するなら、その気持ちにも多少なれなければなりません。

 先日、あるクライアントが「守谷さんところのwebサイト、ちょっと見難いですね」と教えてくれました。

 webサイトがPCで見るものから、スマホで見るものへと移行しているのは理解していましたが、改善を後回しにしていたことは否めません。

 こういったことをはっきり言ってくれる人は、本当に大切です。

 早速リニューアルに向けて動きだしました。

 耳痛い言葉にヒントがある

 スターバックスをここまで育て上げたハワード・シュルツの言葉です。

 彼はコーヒーの品質に拘っており、「コーヒー豆をプラスチックの容器に入れない」、「科学的な風味付けをしない」など、徹底していたと言います。

 カフェラテにシロップを入れることにも否定的なくらいでしたが、あるスタッフからコーヒーにミルクを合せて冷たい飲み物を作るべきだという案がでます。
 
 断固反対したのですが、共同経営者から「顧客の望むことは何でもするべきだ」という意見を受け入れ「フラペチーノ」が発売されます。

 そして、その年だけで5200万ドルを売り上げる大ヒット商品になりました。

 耳痛い意見を言ってくれる人に感謝するだけでなく、言って貰おうと思えば、その許容量があると思って貰わなければなりません。

  零細企業のトップはついそれを見失ってしまうのです。

 ハワード・シュルツの言葉は『人生はワンチャンス』から引きました。

 芭蕉の句も、シュルツの言葉も、大切なのは姿勢なのだと教えてくれるのです。

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歯ごたえ十分、魅力十分、古民家リノベーション計画‐1797‐

 池原の古民家リノベーション計画。

 ゴールデンウィーク中だったので、気持ち的にもゆっくり見ることができました。

 接道は東側。

 こちらから見ると、中庭があることは全く分かりません。

 右手には廃屋が見えていますが、こちらは取り壊して貰えるようです。

 元の持ち主も時々使っていたそうで、空気がよどんでいる感じはありませんでした。

 家というものは、2ヵ月くらい空気が動かないと、痛むスピードが加速するものです。 

 建物の背面、西側裏手に伸びる道路があり、廃屋側から登ってみます。

 北から見返しているので、左が東棟、右が西棟です。

 更に登ると、配置がよく分かります。

 北側はなだらかな石積みで、こちらからもアプローチできました。

 建物をぐるりと回って、南側に出てきました。

 入口は道路寄りの東棟に。

 元はカマドがあったのでしょう。

 土間レベルにキッチンが据えられていました。

 そこから北を覗くと、6畳と4畳半の2間が続きます。

 東に隣合うように、また6畳間が2つ。

 東棟はいわゆる田の字プランです。

 キッチンのある土間の隣には板の間。

 現在は絨毯が敷かれていますが、もとは作業場だったのかなと思います。

 東、北へと廊下が巡っているのです。

 クライアントに聞くと、この地域ではオーソドックスな間取りだそうです。

 ただ、オーソドックスでないのはここからです。

 土間キッチンの横に、廊下が見えています。

 この蛇行した廊下で、西棟と繋がれていたようですが、現在は浴室、トイレにのみアプローチできます。

 形状としては繋がっているのですが、現在行き来はできないのです。

  それで、一旦中庭にでてから西棟に入ってみます。

 西棟には2部屋。

  手前は納屋だったよう。

 築50年程と聞いていたのですが、もう少し古い建物のような気もします。

 何となくですが、昭和一桁あたりといった感じでしょうか。

 西棟、北端の部屋が最も環境は良いでしょう。

 中庭に向かって、コーナーフィックスのように開かれています。

 ただ、こちらの棟は近年は使われていなかったようです。

 この薄いスリガラスはおそらく2mm。

 ほぼ外部といってよいくらい、光も空気感も透過します。

 奈良県下北山村は、日本でも有数の降雨量を誇る大台ケ原や尾鷲とも隣合い、非常に雨が多い地域です。

 軒が深いのが印象的でしたが、妻面をトタンで覆っているのも同じ理由だと思います。

 物置的な使い方をしている箇所もありました。
 

 お隣りの廃屋はラピュタ状態です。

 古い建物をつぶさに見て回ると、地域に根差した建て方や、工夫がみてとれたり、当時の暮らしが想像できて非常に面白いもの。

 紀伊半島の南部に位置し、温暖な気候は大変過ごしやすいのですが、お隣りを見ると、多雨多湿の環境は侮れません。

 大阪から車で2時間半。いつも仕事をしている建築会社の監督に相談すると、「大和高田に住む大工を行かせても1時間半ですものね。泊まりになるでしょうね」と。

 やはり難しいという感じ。

 新宮でも仕事をしていると聞いた建築会社に相談すると、「一度行ってみましたが、新宮からでも1時間半ですね。次の春頃からなら」と、微妙な感じ。

 27歳の時、「白馬の山小屋」のオファーを貰いました。

 こちらもフルリノベーション計画だったのですが、長野県に知っている建築会社など勿論なく、村役場に「どこか良い建築会社を紹介して貰えませんか?」電話しました。

 今考えると、役場がそんな質問に答えられるはずもありませんが、「一覧表があるので送ってあげますよ」と、faxしてくれたのです。

 それで何とか完成し、当時のクライアントの子供さんが現在も愛情を掛けてくれています。

 課題が多ければ多いほど、完成した時の物語りは深みが増すものです。

 歯ごたえ十分、魅力十分。

 初心に戻って、この古民家を別次元のレベルに生まれ変わらせてみたいと思います。 

■■■1月27日 『Best of Houzz 2021』「中庭のある無垢な珪藻土の家」が受賞 

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【News】
■12月28日発売『suumoリフォーム(関西版)』にインタビュー記事掲載
■10月23日『homify』の特集記事に「阿倍野の長屋」掲載
■9月11日発売『リフォームデザイン2020』「回遊できる家」掲載

■2017年11月27日ギャラクシーブックスから出版『建築家と家を建てる、という決断』守谷昌紀がamazon <民家・住宅論>で1位になりました

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