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イタリアとスペインの旅⑤ <ヴェローナ編>

ヴェネティアで2泊し、8月14日(火)は朝からヴェローナへ移動です。

 ヴェネツィアから電車で1時間程。

 バラ色の屋根瓦が美しく、シェイクスピアの「ロミオとジュリエット」の舞台となった街なのです。

 しかも「ジュリエッタの家」という館があり、観光スポットになっています。

 行列ができ、順に女性がそこに立ち、皆がシャッターを切るという構図。

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 その前にある中庭はごった返しています。

 しかし、シェイクスピアは実際にヴェローナを訪れた事はないそうで、あくまでもイメージのようです。

 しかし映画の撮影はここであったので、全くのフェイクという訳でもなく……

 微妙な感じもします。

 この街を訪れたのも、スカルパの作品に触れる為。

 街の中心にあるブラ広場から、少し歩くと川沿いの古城が見えてきます。

 カステルヴェッキオという名の城ですが、現在は美術館になっているのです。

 その設計をしたのがカルロ・スカルパ。1956年の仕事です。

 スカルパは生涯の仕事の多くが改修です。

 この城の改修も、出来る限り既存のものを活かし、試行錯誤した後が見えます。

 鉄製の格子戸も多様され、ここには日本文化の影響がみて取れるのです。

 この城は14世紀に移築されたものなので、型枠コンクリートが見えている部分は、スカルパの設計によって、加えられたものです。

 50年以上経っているとはいえ、全く違和感なく繋がり、かつ城のもっている空間を活かした動線となっていました。

 改修こそ、最も技術と知識と感性が必要とされる仕事だと、実感するのです。

 館には、美術品の他に、中世の鎧や槍など、武器の類も多く展示されていました。

 横顔がハッとするほど美しいのです。

 日本の多くのロボット漫画は、こんなところに着想を得ているのかもしれません。

 先輩建築家が以前「ヨーロッパの街は血の歴史」と言っていました。

 陸続きなので、芳醇な土地、平坦な土地、交通の要所などは、常に戦争の脅威にさらされていたと言えます。

 それを守るため、街を守る城壁ができた訳です。

 その話は先祖代々必ず語り継がれて来たはず。

 それによって、自分たちの街という認識と、街への愛着が生まれるのでしょう。

 この旅最後のスカルパは、ヴェローナ銀行です。

 こちらは1973年の作品。

 街の中心にある広場の前に面して建っていますが、現在は入る事が出来ませんでした。

 ファサードにある、段々形状の掘り込みのある大理石。

 彼、特有のデザインです。

 固い石にあえて、細やかな加工をすることによって、石はないような規則正しい陰影が生まれます。

 その固い石を自在に加工できるという、職人技を誇っているようにも見えるのです。

 これもミラノの友人に聞いた話です。

 ミラノの中心部は、今も御影石のピンコロが敷き詰められています。

 よって、街中に車で入ってくると急にガタガタしだします。

 しかし、それをミラネーゼ(ミラノっ子)は誇りに思っていると。車道の矢印も石でした。

 日本人の街に対する愛着が、ひとえに少ないとは思いませんが、勝っているとは言えません。

 日本は島国なので、内乱こそあったものの、非常に平和に国だったと言えます。

 私が回っているのは、概ね観光都市ですが、自分の主張より、この街にすむ事の方が優先順位が高い。それが私の感じた、市民の感覚です。

 建築家、吉村順三は「向こう三軒両隣に、恥ずかしくない設計をしないといけない」と言いました。

 自分ではないところに、どれだけ価値を置けるかが、ポイントになる思います。

 夕方ヴェローナを出て、ミラノへ向かったのです。

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■■■『大改造!!劇的ビフォーアフター』■■■ 7月8日(日)「匠」として出演しました

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