鳥羽、神島で三島文学に触れる<後編>‐2245‐

先週末、夏季休暇の最後に鳥羽の神島を訪れたことを書きました。その後編です。

ここは、かつて島で唯一、時間を知らせていたという時計台跡。

時計だけは新しいですが、昭和の風情が色濃く残る島でした。

神島は、ノーベル文学賞の候補にもなった、三島由紀夫の代表作「潮騒」の舞台となった島です。

前回は、神島港から30分程歩いた、神島灯台までを書きました。

港は島の北側にあり、時計回りに東へ歩くと神島灯台があります。

ここまでは延々と続く登りですが、ここからは下って上ってに変わります。

15分程歩き「監的哨(かんてきしょう)」までやってきました。

「監的哨」は、昭和4年に旧陸軍が建てた軍事施設です。

2階建ての陸屋根で、屋上にも上がれます。

対岸に見える愛知県の伊良湖から撃った大砲の試射弾の着弾点を確認するために建てられました。

「潮騒」は5回映画化されています。

「クライマックスシーンの舞台であり、嵐の日に主人公・新治と初江がお互いの愛を確かめ合うシーンに登場します」と案内板がありました。

この日は本当に天気がよく、汗だくになりながら更に時計回りに歩きながら、小説の舞台を巡ります。

白い石灰岩が浸食されたカルスト地形が見えているのは「ニワの浜」。

子供たちが石灰岩に隠れて西部劇ごっこをしたとあります。

その西にある「古里(ごり)の浜」。

中央には「八畳岩」と呼ばれる巨岩があります。

小説の中では、確か子供がこの岩の上に登っていたと思いますが、かなり危険そう。

三島がそれを見たのか、聞いたのか、想像なのか……そんなことを考えるのが楽しいのですが。

外周4kmを、ゆっくり2時間半くらいかけて回り、神島港へ戻ります。

岩を掘削したであろう細い道路は、風洞のように風が抜け、とても涼しかったのです。

南国の雰囲気でカラフルな建物が多かった印象です。

お釜がありましたが、現役のようにも見えました。

街並み、自然は素晴らしかったですが、暮らしの上では大変なことも多々あるのではと思います。

尾道が沖縄にあったらこんな感じになるのかもしれません。

港まで戻り、鳥羽へと戻りました。

11時20分の定期船でやってきて、15時40分の便で島を後にしました。

三島は、作品を発表する1年前、昭和28年に神島を2度訪れています。

父、祖父とも東大卒の官僚で、本人も東大法学部卒で財務省に勤めたエリート中のエリート。もっと言えば、 財務省に勤め ながら小説を発表し、20代ですでに小説家として円熟期に入っていきました。

三島文学で言えば「金閣寺」と「潮騒」を読みました。

特に「潮騒」は、とてもよかったという印象だけが残っていました。

中学か高校学時代に読んだはずなので、40年ぶりに再読しました。

冒頭に書いた通り、ノーベル文学賞の候補になった三島の筆は確かです。

表現を除けば、引き込まれるようにページをめくり、あっという間に読み終わりました。

中編小説と言ってよいヴォリュームでしたが、4時間掛からなかったと思います。

調べてみると、古代ギリシアの散文作品『ダフニスとクロエ』に着想を得て書かれた作品とありました。

芥川龍之介もそうですが、元の枠組みがあったほうが、良い文章を書けるタイプの作家なのかもしれません。

本当に長い時間が掛かったアトリエm移転計画「上町のアトリエ付き住宅 〈リノベーション〉」ですが、ようやくアトリエの本棚が完成しました。

建築の専門書もそうですが、これまでに読んだ本に囲まれて、仕事をしたり、書き物をしたりするのが夢だったのです。

まだ一部しか搬入できていませんが、「潮騒」は一番左のオレンジの背表紙です。

昭和元年生まれの三島は、まさに昭和の作家です。

耽美派の代表的な作家とされるように、三島は美に最高の価値を置きました。

30代には、その美は自分の肉体へも向き、ボディビルをはじめます。

そして、自衛隊に体験入隊し、国粋主義へと傾いていくのです。

そして昭和45年11月、自衛隊の市ヶ谷駐屯地に籠城し、自衛隊員にクーデターを促す演説をした後、割腹自殺しました。

「昭和とともに生きた小説家」三島由紀夫。

同じ本を読むよりは「また素晴らしい本に出合うかもしれない」という期待が上回り、再読しない主義でした。

しかしこの機会に「潮騒」を読んだ感想は「良いものは、やっぱり良い」でした。

今度は、倉庫の奥に置いてある本の山から「金閣寺」を救出してこなければなりません。

盛夏の神島で三島文学に触れた今年の夏。何か一歩踏み出そうと思えたのです。

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