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ペリ追悼「建築は建築家よりも大切で、都市は建築より大切なもの」‐1625‐

 前回は、秋分の日に国立国際美術館を訪れたことを書きました。


クリムトが目的でしたが、ペリ逝去の記事をみて、建物を撮りたいという気持ちもあったのです。

 しかし月曜日は小雨まじりの曇天。

 本日、梅田へ出るついでに再撮影してきました。

 人様の作品に、どれだけ時間を使うんだという話もありますが、ペリ追悼の意を示したつもりです。

 この金属細工は、日本の竹林をイメージしたものと語っていたと思います。

 この館は元々万博記念公園にありました。

 1970年の大阪万博で集まった美術品等を保管するのが目的だったそうです。

 移転した現在の館は2004年の完成で、大部分が地下となっている珍しい美術館です。

 トップライトのすぐ下、地下1階のホールには、大きな陶板らしき抽象画が展示されています。

 係員の人に「レプリカですよね?」と聞くと、「いえ、万博の開催時には大阪ガス館に飾られていた、ジョアン・ミロの作品なんですよ」と。

 これだけ大きな陶板壁画はなかなかありませんし、まさか本物とは。

 ここは誰でも入れるゾーンなので、とても得をした気分になるのです。

 地下鉄肥後橋駅に行くために、土佐堀川に掛かる「ちくぜんはし」を南に向かって渡ります。

 そこから東側を見ると、フェスティバルホールの並びに建つのが、2002年竣工の中之島三井ビルディング。

 土佐堀川と堂島川に挟まれた一等地です。

 阪神高速から見える「TORAY」のロゴが入った、格好の良いビルと言えば分かる人も居るでしょうか。

 こちらもペリの作品ですが、これ程美しい高層ビルはそうありません。

 旧中之島三井ビルディングの縦ラインが強調されてデザインを踏襲したといいます。

 ガラスのカーテンウォール、閉じた壁面、曲面、直線と、贅沢過ぎる程の材料を使っています。

 それらを、上品にまとめ上げるところに、ペリの類まれなる能力を見ることができるのです。

 OBPにあるクリスタルタワーと共に、高層ビルの傑作だと思っています。

 アルゼンチン生まれの建築家、シーザー・ペリは今年の7月に亡くなりました。享年92歳。

 イリノイ大学建築学部大学院修了し、エーロ・サーリネン事務所へ。

 サーリネンと言えば造形の美しいJFK国際空港のTWAフライトセンターが有名ですが、現在はホテルにコンバージョンされているようです。

 その後、いくつかの設計事務所を経験して、1977年シーザー・ペリ アンド アソシエイツを設立(後にペリ クラーク ペリ アーキテクツに変更)。

 同時にイエール大学の建築学部長も務めます。そして1995年AIAゴールドメダルを受賞。

 プリツカー賞こそ受賞していませんが、エリート中のエリートなのです。

 2001年に会館したNHK大阪放送会館も日本設計との共同設計者という役割です。

 しかしこのダイナミックなガラスドームは、ペリが主導したものではと想像しています。
 
 ペリはデザイン・アーキテクトという仕事を、自らの手でつくり上げたのです。

 また2014年に開業したあべのハルカスでは外装デザインに携わりました。

 「都市は建築よりも大切で、建築は建築家よりも大切なのだ」

 これは、ペリの日本法人代表を務める、光井純さんがペリから学んだ言葉として語っています。

 またイエール大学の教え子で、後に2人で事務所を開くことになるフレッド・クラークに、ペリはよくこんな話をしたそうです。

 「まだ名声が確立していないエーロは、デザインがプロジェクトごとに異なっていることへ対して非難を受けた。

 当時の建築家はスタイルを持つべきだと考えられており、敷地ごとに特化したデザインは認められていなかった。

 敷地の形状特性や歴史文化があるので、その個性をしっかりと読み取って、その場所にふさわしい形を作り上げるのが建築家の仕事である」

 初めに勤めたエーロ・サーリネン事務所での経験です。

 我が町と言ってよい、天王寺に日本一高い高層建築ができると聞き、何度か否定的な意見を書きました。
 
 あの密集した土地柄に、いまでも高層建築が必要だったとは思っていません。

 しかし建築は常にそこに存在しますし、時間と共に風景となります。

 そう考えた時、あべのハルカスが美しいことは間違いのないことであり、高層建築の外観にここまで拘り、一生をささげた建築家はそういないはずです。

 敷地の長所を探し出し、それぞれのクライアントの未来の幸せを形にするという私のポリシーは、僭越ながらペリと全く同じです。

 長年、実仕事に揉まれるなかで私もここにたどり着きました。また、そうであるから創造性が枯れることもありません。

 建築家が建築の上にくることなど勿論あり得ません。いつも思うことですが、一流の人は常に柔らかく謙虚です。

 ペリに追悼の意と、これらのことを再認識させて貰ったことに心から感謝を捧げたいと思います。

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【News】
『大改造!!劇的ビフォーアフター』7月21日(日)BS朝日で「住之江の元長屋」再放送
『建築家と家を建てる、という決断』守谷昌紀
ギャラクシーブックスから2017年11月27日出版
amazon <民家・住宅論>で1位になりました
『homify』5月7日「碧の家」掲載
『houzz』4月15日の特集記事
「中庭のある無垢な珪藻土の家」が紹介されました
『デンタルクリニックデザイン事典vol.1』4月1日発売に「さかたファミリー歯科クリニック」掲載
「トレジャーキッズたかどの保育園」
地域情報サイトに掲載されました

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カリオストロの城にみる作家性と究極の恋愛観‐1580‐

 現在、一緒に仕事をしている監督が、「お客さんと一緒に、再放送を観ましたよ」と。

 4月7日(日)に、BS朝日で『大改造!!劇的ビフォーアフター』の再放送があったようです。

「住之江の元長屋」は番組では「天井から雨が降る家」

 webサイトへのアクセスが、500くらいあったので、沢山きてくれているなと思っていたのですが、理由が分かりました。

 移動の途中、玄関への立派な藤棚のあるお家をみつけました。

 藤はこの時期から梅雨にかけてですが、淡い紫と淡い香りが大人向けの花と言えそうです。

 前回、パリの思い出を少し書きましたが、『アルセーヌ・ルパン』を書いた、モーリス・ルブランもフランスが生んだ偉大な作家です。

 その孫(という設定)の『ルパン三世』を描いた、モンキーパンチさんが4月11日に亡くなりました。

 金曜日には追悼番組として『ルパンVS複製人間』がテレビ放映されました。

 昨日もプレゼンテーションだったのですが、昨年末からこの春にかけて、我ながらよく働いたと思います。

 そんな日曜日の夜は少し特別感が欲しいもの。

 で、久し振りに家族全員で『カリオストロの城』を観ようと声を掛けていました。

 カジノで盗んだ紙幣が偽札でした。

 そこから怒涛のような展開が始まります。

 カリオストロ公国の姫、クラリスと初めて出会うシーンは、あの滅茶苦茶なカーチェイスから。

 アニメの歴史に残る名シーンです。

 カリオストロ公国で偽札を作っていると知るルパンは、お姫様を救い出すため、城へ向かいます。

 クラリスが幽閉される尖塔へ向かう際の、尖塔3段跳びも、コミカルでリズミカルな名シーン。

 そして、泥棒さんは若きお姫様を救い出します。

 そして結末です。

 わる~い伯爵の最後は、長針と短針に挟みつぶされるという、残酷なものでした。

 すっかり忘れていましたが、思わず目を背けてしまいました。

 銭形平次の子孫(という設定)の名脇役は銭型警部。

 何も盗らなかったと言ったクラリスとのエンディングの会話です。

 「いや、奴はとんでもないものを盗んでいきました。」

 「あなたの心です」

 もう全てが名シーンといってもよいかもしれません。

 日曜日の夜「守谷家映画劇場」は、ドラえもん、名探偵コナン、ルパン三世の映画と引き継がれてきました。

 豊かな時間を提供してもらい、ただただ感謝しかありません。心からご冥福をお祈りするのです。

 ずっと前に付き合っていた女性が「理想のタイプをはルパン三世」と言っていました。

 ユーモアのセンスがあり、腕がたつ。そしてもてる。

 私にとってもやはり理想です。

 初めて長編映画を監督する宮崎駿の情熱と、モンキーパンチが描いた魅力的なキャラクターが、がっちりとかみあい、最高傑作を生み出すことなりました。

 宮崎は究極の恋愛観を、絶対に交わらない子供に見ているからだと私は思っています。

 類まれなる作家性と、究極の恋愛観が織り込まれた名作。それが「カリオストロの城」だと思うのです。

 その証拠に、普段は大人の香り漂わせる峰不二子も、この回のお色気は抑え気味。

 控えめな藤のような名脇役に徹しているのです。

■■■『大改造!!劇的ビフォーアフター』4月7日(日)BS朝日で「住之江の元長屋」再放送
■■■『デンタルクリニックデザイン事典vol.1』4月1日発売に「さかたファミリー歯科クリニック」掲載

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【News】
『建築家と家を建てる、という決断』守谷昌紀
ギャラクシーブックスから2017年11月27日出版
amazon <民家・住宅論>で1位になりました
『houzz』4月15日の特集記事
「中庭のある無垢な珪藻土の家」が紹介されました
「トレジャーキッズたかどの保育園」
地域情報サイトに掲載されました
大阪ガス『住まう』11月22日発行に「中庭のある無垢な珪藻土の家」掲載
『住まいの設計05・06月号』3月20日発売「回遊できる家」掲載
『homify』6月29日「回遊できる家」掲載

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