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自由、不自由、しろくまツアー‐1777‐

 昨日はひな祭りでしたが、とくに催し事は無し。

 子供達は今日から学末試験で、兄妹共にひなチョコを食べただけで勉強していました。

 2人とも数学が大の苦手ですが、何とが授業が分かるくらいまでで踏みとどまって欲しいと伝えています。自分の反省を踏まえてですが。

 桃ではありませんが、ハナミズキが満開でした。

 現場へ向かう途中、突然緑青の吹いた民家が見えてきました。

 昭和初期頃の建物でしょうか。

 何かのお店なのか、レトロ感を上手く演出しています。

 少し目を奪われていると、今度は「スキー&スノボ」というのぼりが目に入りました。

 こんな住宅街の中でスキーショップ?と思っていたら、スキーツアーを売っているようです。

 旅行代理店のと言えば大手しか知りませんでしたが、地域に根差した会社のようです。

 昨年、「しろくまツアー」という名前で旅行ツアーの企画販売をしていた(株)ホワイト・ベアーファミリーが倒産したというニュースがありました。

 飲食業と共に、この時期の旅行業は本当に大変だと思います。

 2月にホワイトピアたかすへ行った時も、ツアーバスが駐車場の一角に止まっていました。懐かしなと思い眺めていたのです。

 中学3年生くらいから、友達を誘ってスキーツアーに申し込むようになりました。

 「しろくまツアー」「サンシャインツアー」とカタログを沢山集め、それこそ100円単位で安いツアーを探すのも楽しみでした。

 今考えても、びっくりするくらい安かった気がします。

 コロナ倒産とありましたが、それも原因かもしれません。 

   

 多くのツアーバスは、深夜に大阪駅か新大阪駅近くから出発。

 明け方、現地に近づくにつれて風景が変化して行きます。

 トンネルを抜ける度。

 より雪国の雰囲気が強くなっていく様が、もしかするとスキーツアーのクライマックスかもしれません。

 狭い座席の窓は結露で曇り、それを拭いてから見上げるオリオン座を思い出します。


 高速道路も今ほど伸びておらずで、最後の休憩は19号線沿いにある松本のドライブインが殆どでした。

 世はバブル前夜で、スキー場も現在とは比にならないくらいの賑わい。
 
 松本のドライブインに止まっているバスも凄い数で、自分のバスが分からなくなるほどでした。

 排気ガスの臭いは大嫌いでしたが、いまでも鮮明に、懐かしさを含んでその臭いを思い出すから不思議です。

 大学生になると車を与えて貰い、スキーにしても旅にしても自由を謳歌するようになります。

 仕事も自由なものが良いなと思って建築家を志したので、私にとって「自由」は大変重要です。

 しかしツアー旅行はその反対で、時間、行程、宿と全て決まっており、言うならば不自由。

 最後にツアー旅行に行ったのは予備校に入る前だったので、利用していたのは僅かに4年。なのに何故これ程懐かしく、記憶に残っているのかと考えます。

 一度自由を手に入れたなら、わざわざ不自由に戻ることはおそらくしません。今後の人生で、私がツアー旅行に申し込むこともないと思います。

 だとするなら、それぞれの年齢、タイミング、お金も含めた環境の中でしか体験できないことがあるということだと思います。

 自由になりたくて働いて来たのに、不自由を懐かしく思うというこのパラドクス……

 当時のバスはエンジン掛けっぱなしで、ひどい排気ガスの臭いでした。そんな中で、明け方にも関わらず山菜そばを食べたものです。

 その味と、濃い色の関東風の出汁の匂いが、風景が鮮明によみがえってくるのです。

 倒産したしろくまツアーは星野リゾートがスポンサートとなり、事業を継続し、再建をすすめているよう。

 春は別れと出会いの季節でもあります。安価で、不自由で、若者の心に残るツアー旅行を是非提供し続けて欲しいと思います。

 これはいちOBとして、本当に思っているのです。

■■■1月27日 『Best of Houzz 2021』「中庭のある無垢な珪藻土の家」が受賞

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【News】
■12月28日発売『suumoリフォーム(関西版)』にインタビュー記事掲載
■10月23日『homify』の特集記事に「阿倍野の長屋」掲載
■9月11日発売『リフォームデザイン2020』「回遊できる家」掲載
■5月16日『homify』(英語)の特集記事に「下町のコンクリートCUBE」掲載
■5月10日『Houzz』の特集記事に「阿倍野の長屋」掲載
■4月8日『Sumikata』東急リバブル発行に巻頭インタビュー掲載

■2017年11月27日ギャラクシーブックスから出版『建築家と家を建てる、という決断』守谷昌紀がamazon <民家・住宅論>で1位になりました

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