昨日は「災害級の大雨」という記事をみて、遠出はやめることにしました。
九州南部では、残念ながらその通りとなってしまい……
熊本は2016年の震災のあと、建物の危険度判定活動に参加しました。「水の国」を実感したのですが、今回の大雨もそろそろ終息に向かってくれれば良いのですが。
阪神電車に乗って、芦屋までやってきました。
阪急電車と共に、芦屋川の上に駅があります。
南東へ歩いて10分程のところに「谷崎潤一郎記念館」はあります。
絵でも観に行こうかなと探していると、あまりにもセンセーショナルなキャッチコピーに目を奪われたのです。
1886年(明治19年)、東京の日本橋に生まれた谷崎潤一郎は、東京帝国大学に在学中の24歳のときに「刺青(しせい)」を発表。
あまりに過激な描写で、なかなか注目されなかった作品でしたが、当時の流行作家・永井荷風に激賞され、一気にスターダムの階段を上って行きます。
1923年(大正12)、37歳のとき箱根で関東大震災にあい、そのまま関西へ移住。
その風土を気に入り、その後の21年の間に阪神間で13回も引越しを繰り返しました。
京都にも別荘を持ち、この館の庭もそれをイメージしたものだとありました。
『スキャンダル~噂の文豪~』のポップに全く恥じず、その私生活は凄いの一言でした。
3度の結婚、人妻、妻の妹、息子の嫁と、女性への欲望を隠そうとしませんでした。むしろ、それらが執筆の原動力だったという切り口です。
大谷崎とまで言われた、何度もノーベル賞候補になった文豪に失礼ですが、それよりもその私生活に興味深々でした。
谷崎により興味が湧き、実際に暮らした家が近くにあると分かり、更に10分程東へ歩きました。
ひとつ大阪よりの打出駅との間に、富田砕花旧居はあります。
現在は芦屋市が管理しているとのこと。
静かな住宅街に突然小振りな瓦屋根の家が見えてきました。
詩人・富田砕花は岩手県の出身ですが、縁あって1984年に亡くなるまでこの家で暮らしたそうです。
自然派の作家らしく、庭もあまり手を加えていません。
母屋は戦争で焼失し、建てなおしたものとのことでした。
それでも、昭和の雰囲気が色濃く残っています。
もとは社会の先生だった方が、色々と教えてくれました。
門の右にあった棟を角屋と呼んでいるそうですが、1階は砕花の資料展示室となっています。
この角屋だけが戦火を免れたそうです。
谷崎は、1934年(昭和9年)から1936年(昭和11年)までこの地に暮らし、この2階で「潤一郎訳源氏物語」を執筆したそうです。
私が建築設計をしていると言うと、普段はみれないんだけどと、2階も案内してくれました。
天井に引戸があります。
それをスライド。
のぞかせて貰いました。
「窓がここしかないので、あの下で執筆していたのでしょう」と。
好意に感謝し、ここを後にしたのです。
谷崎の初めの妻、千代は従順な女性でした。しかし妹せい子は対照的に、奔放で小悪魔的な性格。せい子にのめりこんで行きます。
谷崎の親友で詩人の佐藤春夫は千代に同情を寄せ、それが愛情へと変わって行きます。
谷崎はそんな佐藤に、千代を譲るといいます。しかし結局せい子とは破局。佐藤との約束は反故にされ、絶交します。
これが世に言う「小田原事件」ですが、形ばかりの夫婦に戻った谷崎は、自分たち仮面夫婦を題材とした「蓼食う虫」を執筆します。
作品の完成後、千代は佐藤春夫と結ばれるという結末を迎えますが、「妻譲渡事件」と世間を騒がせたのでした。
佐藤春夫の代表作「さんま、さんま、さんま苦いか塩つぱいか」は千代への思いから生まれたものだと知りました。
谷崎の「陰影礼賛」は建築の世界でも名著として知られています。
軒の深い日本家屋の奥深くで、金襖や金屏風がほのかに光るさまに、谷崎は日本の美を見出だしたのです。
陰があってこその光。人の人生も、光だけでは立体的に捉えることは難しい気がします。
それでも昭和の文豪たちは、全くレベルの違う危ない関係だったのです。
この日はここまでと思っていたのですが、「細雪」の舞台も訪れることにしました。
続きは次回に。
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