菊竹の狂気‐1011‐

 週末は出雲市で、 建築家展に参加していました。

 出雲大社は60年に一度の遷宮の年にあたります。日本で唯一「神在月」を許されるこの地に、全国の神様が集まります。

 まさに「神迎祭(かみむかえさい)」の真っ最中。多くの参拝者で賑わっていました。

 国宝の本殿は、今年屋根が葺き替えられました。檜皮にも、新しさを感じます。

 門をくぐると、まわりには荒々しくゴロタ石が敷き詰められてします。

 神様と人の結界を表し、非常に歩きにくくなっています。簡単には寄りつけないようになっているのです。

 本殿の手前、拝殿のすぐ横にある「庁の舎(ちょうのや)」。設計者は菊竹清訓で、神社のオフィスといった建物です。

 菊竹は1960年に発表されたメタボリズムの体現者。

 都市、建築には「新陳代謝」が必要という考え方です。東京で仕事が始まった時、その代表作「スカイハウス」を真っ先に見に行きました。。

 庁舎(ちょうのや)は、1963年の完成。この建物を見た瞬間から、夢中でシャッターをきり続けました。

 建物のモチーフは、稲穂を天日で干すそのフォルムです。

 しかし建物全体のイメージを決定づけるのは、側面を覆うルーバーです。これが建物内へ、柔らかな光を落としています。

 この日は朝から雨が降っていました。

 このルーバー状のコンクリートには溝があり、そこにポタポタと雨水が落ちています。

 言ってみれば、これらは全て軒樋だったのです。

 また、それに覆われているのではなく、樋と樋の間にはガラスが入っています。屋根であり、外壁であり、開口部でもあったのです。

 50年が過ぎ、わずかに雨がにじんでいました。

 これらが全て分かったとき、菊竹の狂気を感じました。

 もの創りにおいて、考え方が大切です。しかし、その考え方を動かす、情熱がなければ、何も達成できません。しかも「狂」がつくくらいでなければ、人の心など動かないと感じたのです。

 今回は仕事へ行ったのですが、多くの刺激とエネルギーを貰いました。

 出雲大社はあらゆる縁を結ぶ神様として知られます。それならこれも何か縁なのか。