今年の3月から、太陽の塔の内部が一般公開されています。
2008年以来だそうです。
できれば原型を見ておきたかったと歯噛みしても時すでに遅し。
終わったことは仕方がないので、耐震改修が終わった内部を、ようやく見に行ってきました。
高所嫌いの私にとって、モノレールは乗りたいものではありません。
できるだけ下は見ないようにします。
ファーストコンタクトはその車窓から。
これがなかなかの景色なのです。
塔の右手から背面に回ります。
見る位置によって、刻々と変わる中央の「太陽の顔」。
側面からみるとより怒りを感じます。
この顔部分を実現できたのは、セブンドリーマーズの系列会社、スーパーレンジン工業の技術力が大きいのです。
内部観覧の入口は、「黒い太陽」の下にありました。
来るまで想像もしていなかったのですが、内部は撮影禁止とのこと。
理由を聞くと「著作権の問題などで」とのことでした。
日本の「禁止好き」は何に起因するのかと、文句の一つも言いたくなります。
岡本太郎は、少しでも多くの人に知って貰いたい、見て貰いたいと思っているのではと思うのですが……
仕方ないので、パンフレットを写しました。
「生命の樹」は、高さ70mの塔内を貫きます。
原始生物から、最頂部のクロマニヨン人まで、進化の順にびっしりと生き物のモニュメントが張り付いています。
樹の5色は5大陸を指し、周囲の赤いヒダは「知のヒダ」と名付けられました。
開催当初は、エスカレーターで登りながら観覧したのですが、現在は階段に変わっています。
現行の建築基準法なら、階段には3mまたは4mごとに踊り場が求められ、階段の占める体積がどうしても大きくなります。
また耐震補強によって、壁が20cm厚くなったことで、内部空間が小さくなり、枝部分が階段に刺さっている箇所もありました。
それでも、「見れるようになって良かった」と思える迫力でした。
今度は子供も連れて行こうと思います。
「さすがだな」と余韻に浸りながら、モノレールで移動していると、南茨木駅前の広場に「サン・チャイルド」が見えました。
茨木市出身の現代美術家、ヤノベケンジさんの代表作です。
この夏、福島市が「サン・チャイルド」を展示するも、1ヵ月で撤去を決めたというニュースは記憶に新しいところ。
胸にある、ガイガーカウンター(放射線量計測器)が「000」を指しているのが、0でなければ危険だという誤解を招くというのが、主な理由ということでした。
サン・チャイルドは、東日本大震災を受けて、希望を持てるようにという意図で制作された6.2mの作品です。
原発近くで被災された方々の気持ちは、当事者以外は理解することは不可能です。
また、表現、解釈は自由なので、この問題に正解はありません。
私は自分の仕事にプライドを持っているつもりです。
小規模なリノベーションであっても、互いが幸せになりえると思えば、喜んで仕事をします。
しかし、社会の評価というものには、グループ分け、レッテル貼りが存在します。
住宅作家、クリニックが得意、ビルものが専門等など。
「得意」があるのは素晴らしいことですが、この実績ベースの評価が最重要なら、第1作目をもつことは不可能です。
また、新たなジャンルの仕事がはじまることもありません。
反対の言い方をすれば、そうではないクライアントが一定の割合で居てくれたので、多種多様な作品を持たせて貰うことができました。
これは私に限ったことではないはずです。
ただ、「どれだけ大きな規模の仕事をしたことがあるか」という物差しは確実に存在します。
芸術家で、太陽の塔より大きな作品を持っている人はそう居ないと思うので、その意味では岡本太郎は頂点に居る存在かもしれません。
6.2mの作品を持っている人もごく僅かだと思いますが。
もし、新たな扉を開く鍵が存在するとすれば、それが道端に落ちていることはないはずです。
間違いなく、今手元にある仕事、また身の周りにあるはずなのです。
サン・チャイルドが右手に持つものは、「希望の太陽」というそうです。
その鍵を見つけるには、希望という太陽で、自分の手元、足元をいつも照らす必要がある。
そんなメッセージだと解釈して、自分の励みにするだけなのです。
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■『homify』6月29日に「回遊できる家」掲載
■『homify』6月2日に「イタウバハウス」掲載
■『houzz』5月28日の特集記事に「あちこちでお茶できる家」掲載