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趣味を仕事にする‐1438‐

 芸術家・岡本太郎は「私は趣味などという卑劣なものをもたない」と言いました。

 さすがは岡本太郎、といったところです。

 私の趣味は釣り。

 岡本太郎の域には達していないことになりますが、1年のうちの10日間、湖上に浮いている時間はやはり幸せです。

 妻に「休めそうなので釣りに行こうかと思う」と言うと、「この寒いのに?」と。

 確かに、明け方は氷点下。山頂部には冠雪も見えていました。

 しかし、好きや趣味に寒さは関係ないのです。

 奈良県下北山村にある池原ダムに魅せられて20年強。

 1988年、村が中心となりブラックバスを観光資源として放流しました。

 美しい大自然と共に、村が釣り客を歓迎してくれるのも、ここに通う理由です。

 放流されたのがフロリダバスという種で、 日本でも最大級の魚が釣れることでも知られます。

 そのひとつの基準が60cmオーバー。通称、ロクマルです。

 水面まで上がってきた時、久し振りに「超えたか?」と思いました。

 が、測ってみると57cm、2kg。

 残念ながら60(ロクマル)には届きませんでした。

 春、夏、秋に比べ、数が釣れない冬は基本大物狙い。

 若干濁りがあったこの日は、特大を狙って20cm以上ある巨大スプーン(ルアーの種類)でスタートしました。

 水温は低いものの、新鮮な水が流れ込んでくるエリアにいる、体力のある個体を狙いました。ここまで読みが当たるとまさに爽快。

 湖で食事をしていた時、スプーンを水中に落としてしまい、それに魚が食いついてきたのがその名の由来です。

 ルアーフィッシィングの始まりともいわれ、その後スポーツフィッシングとして、欧米で社会に浸透していきました。

 バスフィッシングにはプロの試合があり、それらに参加するのがバスプロです。

 サッカーにJ1、J2があるように、バスプロの世界にもクラスがあり、最上位のカテゴリーをTOP50と呼びます。

 昨年まで、このカテゴリーで活躍していた北山睦プロと、昼食が一緒になり、その世界での話を聞かせてもらいました。

 ちなみに、2015年に長男へルアーをプレゼントしてくれた山岡計文プロは下北山村の出身で、今年は年間3位の活躍。まさにトッププロとなりました。

 北山プロはTOP50の権利を持ちながら、諸事情で一旦撤退したそうですが、その話がとても面白かったのです。

 トップカテゴリーに参加するのにはいくらの費用がかかる、1位の賞金は数百万円で、6位は微々たるもの。

 また「この時期ならどの場所で、どんな深さを、どんなルアーで、どのようなコースを通すかで釣果は変わってくる。釣れる人と釣れない人の差があるとすればそれくらい」と。

 帰り際も、更に釣りの話を聞かせてくれました。

 トッププロだけあって、極めて論理的。聞いているだけで釣りが上手くなる気がします。

 この閑散期にやってきた甲斐がありました。

 年末年始もここで過ごすそうで、本当に釣りが好きなのだと分かります。

 サッカー少年がJリーガーになるように、好きが仕事になるのは理想的です。しかし、その道が楽であるはずがありません。

 スポーツとはそもそもが遊びや娯楽なので、行為自体に楽しみがあります。娯楽を仕事にする訳なので、もちろん競争は激しいものになります。

 また、それ自体に生産性がある訳ではないので、この大量消費社会、高度情報化社会であるからこそ、職業たりえるのです。

 「職業に貴賎なし」が大原則なので、軽んじるつもりは全くありませんが、はっきり言えば無くなったからと言って、生死に直接の影響はありません。

 若者が車を持たないなど、バスフィッシングも2000年あたりをピークに、どちらかといえば衰退傾向です。

 北山プロにしても、山岡プロにしても、そのあたりを分かっているので、裾野のファンを大切にするのです。

 大相撲の問題をみると、全く反対の印象を受けます。

 私の年代で、相撲ファンを見つけるのは相当に困難です。あまりにも低い道徳観と、世間とのギャップをみると、怒りに近いものを感じます。

 国鉄や郵便の民営化よろしく、国技という冠を外して欲しいとさえ思うのです。

 この類の話しを長男にしたとき、「建築家がいなくなっても、誰も死なないじゃない」といわれました。

 全くその通りです。だからこそ、違いを求める人達に選んで貰えるよう、仕事に打ち込むしかないのです。

 私の釣り自慢から少し話がそれました。

 元監督の野村克也は、タニマチの存在が一時、阪神の選手を駄目にしていたと言っていました。

 タニマチは相撲用語。甘やかす、は全ての巨悪の根源なのです。

 相撲協会は、勇気をもって極めて厳しい判断をしてもらいたいと思います。

 でなければ、未来はないというところまで来ていると思うのです。

メディア掲載情報

◇一級建築士事務所 アトリエ m◇
建築家 守谷昌紀のゲツモク日記
アトリエmの現場日記

生きる伝説‐1176‐ 

 昨日は、長男と一緒に奈良県の池原ダムへ。

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 大阪は良い天気だったそうですが、流石に日本一の降水量を誇る大台ケ原山系。

 予報は一日雨でした。

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 しかしこの季節の雨は、基本的によく釣れます。

 嬉しいとまでは言いませんが、嫌ではありません。

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 初心者でも釣りやすい仕掛けにはしていますが、長男も午前中5匹、昼から3匹。

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 全て自力で釣り上げました。

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 ダム湖がある下北山村はブラックバスを村の観光資源として輸入しており、公式webサイトにも紹介しています。

 そのサイトにあるトボトスロープという施設で、お金を払ってボートを降ろし、入漁料を払って釣りをします。

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 主要産業が林業しか思い浮かばないこの地域。

 自然を楽しみ、お礼としてのお金を払うことで、この環境が守られるなら、むしろ有り難い事だと思っているのです。

 バスフッシングの本場アメリカでは、ルアーで、誰が一番多くのバスを釣るかを競う競技が生れました。

 その試合をトーナメントと言うのですが、優勝すれば賞金が1億円という試合もあります。それらの試合に出る人たちをパスプロと呼ぶのです。

 日本にもトーナメント組織がいくつかあり、最もメジャーなのが、JB・NBC

 バスフィッシングに限れば、JBのTOP50というカテゴリーが、最高レベルの舞台です。

 簡単に言えば、連れた魚5匹の総重量を、3日間で競うというルールです。

 昨年の総合順位15位は山岡計文という選手。彼はこの下北山村の出身です。 

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 ボートを上げて貰い、船の片づけを始めると、山岡計文プロが(こういう呼び方をするのです)居ました。

 この日はガイドだったそうですが、今、日本で15番目にバスフィッシィングが上手い人と言えます。

 声を掛けると、とても礼儀正しく、気さくな人で、聡明な印象も受けました。34歳だそうです。 

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 彼はメーカーとタイアップして、ルアーをプロデュースしています。新発売したルアーを子供にプレゼントしてくれたのです。

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 バスフィッシングを始めて30数年。池原ダム、七色ダムに通うようになって20年以上。彼の名前はトッププロになる前から知っています。

 10年位前は、頻繁にこの湖に通っていたのですが、その頃は2月、3月から釣りに来ていました。

 他の施設でしたがボートを上げると、概ねがボーズの中(1匹も連れない事)、良いサイズを10本も上げた人が居ると聞きます。

 私は全く手も足も出なかった中、どんな釣り方なら、そこまでの魚が釣れるのか、と思ったものです。

 そんな事が何回かありました。その人が彼だったのです。

 トップカテゴリーへ行くまでは、下位の地域カテゴリーで勝ち抜いて行く必要があります。

 池原ダム、七色ダムで、彼は絶対王者という存在でした。自然環境が大きく影響するバスフィッシィングの中では稀有な存在と言えるのです。

 付いたニックネームが「リビングレジェンド(生きる伝説)」。あれよあれよと言う間に、TOP50にまで上り詰めて行ったのです。

 調べてみると2009年から参戦し、2012年の第1戦、早明浦ダムでは優勝していました。早明浦ダムも同じような山上湖で、条件が似ているのです。

山岡計文(やまおかかずふみ)

2015年 TOP50 年間成績 15位
2014年 TOP50第1戦 七色ダム 4位
2012年 TOP50 第1戦 早明浦ダム 優勝
2009年 TOP50 参戦

 釣りが上手く、かつ一般の人にも釣らせる技術を公開できる人が、トッププロへの階段を上がって行きます。

 この日の私も、山岡プロが世に広めた釣り方がメイン。彼がプロデュースしたルアーでも釣りました。

 「どんどん技術を公開していくと、メーカーの人も“影響力のあるプロ”と認めてくれ、プロデュースの話なんかもくるんです」と言っていました。

 私は謙虚でない人を信用しません。たとえ、現在結果を出していたとしても、傲慢ならそこで成長は止まると思うからです。

 事実、素晴らしいなと思う人は一様に穏やかで、皆「柔らかい」という印象を受けました。

 今後は一層彼を応援したいと思います。しかしリビングレジェエンドになんて呼ばれてみたいものです。

 船上の写真で、5匹を水槽に生かしていたのが見えたでしょうか。

 プロを目指すつもりはありませんが、トーナメントに出て、自分の技術を試してみたいという気持ちは、以前から持っています。

 しかし、仕事中に心を奪われるような趣味を持っているようでは成功しないとも教えて貰いました。

 勿論そこまでではないのですが、彼を見て、出てみたい気持ちが少しグラリと……