毛馬水門から知る事実‐1634‐

 今日は秋晴れで、気持ちの良い一日でした。

 近くに所用があったので、毛馬水門辺りを初めて歩いてみました。

 向かって右の上流側を望むと、琵琶湖から豊かな水が供給されていることがよく分かります。

 四大文明が全て大河の畔で発展したように、飲み水としてだけでなく大河は重要な流通路でもありました。

 堤防の上に「蕪村生誕地」の石碑がありました。

 春風や 堤長うして 家遠し

 芭蕉らと共に江戸時代を代表する俳人である与謝蕪村は毛馬村の出身でした。

 春の海ひねもすのたりのたりかな

 教科書にも出てくる句ですが、大阪らしいユーモアが含まれている気もしてきます。

 その句碑が見下ろす先にあるのが「淀川大堰」です。

 水道水、工業用水の確保が目的で、少し上流にある柴島浄水場から各家庭に上水が届けられているのです。

 日本最大級の潮止、取水堰なのです。

 「平野区史」からの抜粋なので、大和川にフォーカスされた資料ですが、一番上の淀川が毛馬あたりでまっすぐに付け替えられたことが良く分かります。

 かつて淀川は、下流部で大川・中津川・神崎川に分派し、度々大きな水害を起こしていました。

 1886年(明治29年)に、大規模な淀川改修工事が始まります。

 そして1910年(明治43年)に、大川に流す水量調整等を目的とする「毛馬洗堰」が完成します。

 ほぼ同じ位置にあるのが、現在の毛馬閘門(こうもん)と毛馬排水機場。

 左(上流側)にあるのが毛馬閘門です。

 淀川改修工事の際、淀川と旧淀川(大川)との高低差が1mできました。

 その高さを調整することが閘門の大きな役割です。

 四大文明の例を引くまでもなく、水運の重要度は現在の比ではなかったはずです。

 毛馬閘門から南の大阪城側をのぞいてみます。

 現在は砂利の採取船が通るのみですが、1962年(昭和37年)までは貨物輸送船が通っていたそうです。

 ここは小さなパナマ運河だったのです。

 これは今春の写真ですが、水のエレベーターで1m降りた船は、大川を下り桜の名所となった造幣局の前までやってきます。

 中央右手に見えるOBPのビル群手前で、寝屋川、第二寝屋川と繋がります。

 更に大阪の奥深くまで荷を運んでいたのです。

 毛馬洗堰のモノクロ写真を上げましたが、右端の3門は現在の毛馬排水機場の南に残っています。

 更にその南には、「毛馬第一閘門(旧毛馬閘門)」も。

 こちらは上流側のゲート。

 ここに水を貯め。

 下流側の大川へと船を送り出していました。

 右の煉瓦壁に、高い位置と低い位置に「係船環(けいせんかん)」があるのが見てとれるでしょうか。

 1974年(昭和49年)まで現役だったそうです。

 これらは2008年(平成20年)に洗堰と共に重要文化財に指定されました。淀川の治水は明治、大正、昭和にかけての一大事業だったのです。

 信玄堤もそうですが、水を治めたものが世を治めました。

 氾濫を繰りかえす旧淀川、旧大和川を味方につけた、もっと言えばそれらの影響を絶対受けない位置に大坂城を築いたから秀吉は天下人となり得ました。

 しかし淀川と大川に1mの水位差があるということから、淀川が天井川に近いものであることが分かります。

 大和川も秀吉が始めた付け替え工事が江戸時代に完成したものですから、川底を深く掘り下げたものではありません。

 10月中旬の台風19号の爪痕が残ったままの関東で、先週末は21号の影響から、再び千葉で河川が氾濫し人命が奪われました。

 税が必要なら、消費税を上げて貰っても構いません。

 乱暴に言えば、治水においては、昭和、大正、明治、江戸の遺構を使っているとも言えるのです。

 大型台風の度に多くの死者がでるという現実は変えようのない事実です。天下人や三の丸、上町に住む人だけが安全な都市計画では何の意味もありません。

 民間に瑕疵保険、耐震性能、省エネ性能を求めるのと、せめて同じ厳しさで、国も大阪も本気で治水に取り組まねばならない時代に入りました。

 無用に不安をあおるつもりはありませんが、淀川は大川より1m上に流れているのです。

 繰り返しになりますが、お守りのつもりで人数分のライフジャケットを家に置いて欲しいと思うのです。

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