この夏、山陰に来たのは、2つの目的があります。
1つは投入堂を見ること。
鳥取の山中にある投入堂は、三徳山三佛寺というお寺の奥院です。平安時代後期、706年の建造とされています。
役行者が法力で岩窟に投げ入れたので「投入堂」。そんな伝説がある建物を、一度見てみたいと思っていまいた。
途中の道路に鳥居があります。山や自然自体を信仰の対象とする、山岳寺院と言ってよいでしょう。
登山参拝の受付には、以下のような看板があります。
投入堂参拝は、厳しい試練の道
観光気分、観光装備での入山はご遠慮願います
この看板に偽りなし。
最低限の準備はして行ったほうが良いと思います。前半から、かずら坂、くさり坂と難所が続きます。
途中で引き返している人高齢者もいました。実際に、年に何人かは亡くなるという話しです。
前半の山場を越えると、まずは文殊堂。
大きな岩に直接柱をたて、大きく空へ張り出す回廊に、手すりはありません。
落ちれば命さえも危うい高さ。
安全確保一辺倒で、反対に生を感じる機会は減っているのかもしれません。
登り始めて1時間程。突然目の前に現れました。
少しその場に居たのですが、目の前に現れた瞬間、誰もが驚嘆の声を上げていました。
期待して見に行った上で、それに応えてくれる建物が、日本にいくつあるのだろう、とも思います。写真家、土門拳が「もっとも美しい建築」と称えた投入堂。
垂直に切り立った岩盤のくぼみに、貼りつくように建つこの寺。どのようにして建築されたのか、未だ解明されていないそうです。
確かに「法力で投入れた」と言いたくなります。
建築とは、その建物だけを指すのではない事が良くわかります。簡素で、力強く、美しいその姿は、この圧倒的なロケーションが、それらを限界値にまで高めているのです。
非常に満足して山を下りました。出来ればあの縁側にも座ってみたかったのですが。
もう1つの目的はアリジゴク。
大阪では見つけるのにあれほど苦労しましたが、ありました。
北条砂丘の松並木の中で、いくつも見つけることができました。
アリジゴクは、ウスバカゲロウの幼体です。
スリバチ状の罠にアリが落ちると、下から砂をかけて、更に下へと導くのです。その名の通り、アリにとっては地獄。しかしその様を見て軽く感動を覚えました。
スコップで掘り起こしましたが、意外に小さいものです。大きいもので体長7mmくらい。
前には進めず、すぐにお尻から砂地に潜っていく様には、哀愁すら感じます。結局、持ち帰ることに。
子供達は、何か気に入らない事が起こると、文句ばかり言い出だします。しかし、子供と私の好奇心を満たす旅が、いつまで続けられるのか、とも。
山陰の旅も今日までです。