大変の後ろにあるもの‐1382‐ 

 昨日は撮影に行っていました。

 5月の上旬から天候が合わずで、2度延期していました。ようやくの晴れでホッとしました。

 2016年の2月に竣工した「高台の家」

 一度撮影をしていますが、前回は本格的な引越しの前でした。

 生活が始まってからの写真と、それ以前の写真とでは空気感が全く違います。

 今回は、ご家族にも参加してもらいました。

 庭木が植わり、家具が入り、この家のもつ雰囲気が醸し出されます。

 庭木はクライアントがこつこつと庭木屋さんに通い、自身で植えていったものです。

 手前にあるのは、砂場兼プランターといったところ。

 トウモロコシ、トマト、キュウリが植わっています。

 庭木のセンスも素晴らしいのですが、遊び心も大事だと教えられているようです。

 2階にあるこの部屋はP室と呼ばれる、ダイナミックな空間です。

 クライアントがフランスまで訪ねたル・コルビュジエのサヴォア邸。その空間構成から展開していきました。

 ソファについては「もっと合ったものを」と言われましたが、十分だと感じます。

 この空間には、本好きのご主人に参加してもらいました。

 その奥にあるのはピアノ室。

 娘さんが、「きらきらぼし」を披露してくれました。

 ちなみに子供部屋はキッチンの隣。

 この距離感が、とてもいいと思っています。

 午前の撮影が終わったあと、P室前のバルコニーでカメラマンと共に、昼食まで頂きました。

 P室の前にあるこの空間が、とても大事だと感じていましたし、実際自分が体感できることがとても嬉しいものです。

 街で評判のサンドイッチ。

 そして炭火焼。

 気持ちよい風に吹かれながら、ノンアルコールビールを飲んでいると、酔ってしまうような気さえします。

 高台にあるがゆえ、当初から寒さを気にしていましたが「寒い時は床暖をつければ、問題ありませんでしたよ」と。

 また「大阪市内なら、全く問題ないんじゃないでしょうか」とも。

 ただ、「冬の結露対策には除湿器を3つ使っています」とのことでした。

 それで解決したので、コンクリート打放しの家が好きなら、躊躇する理由など全くないのでは、と言われたのです。

 壁に断熱材の入っていないコンクリート打放しは一般解ではありません。

 しかし、これだけ「自分の好きを実現できた」と言って貰えたら、私が望むものは何もありません。

 娘さんは、今日が撮影ということで手製のカメラまで準備し楽しみにしていてくれました。

 このセンターテーブルもご主人の手作りです。

 新婚旅行に青森へ行った際、わけてもらったリンゴ箱にキャスターを付けたものです。

 中にはワインのボトルが丁度入るようになっています。

 好きや夢を形にしていくのが私の仕事です。

 もちろんのこと、夢や感動がどこにでも落ちている訳ではありません。

 ここは、私にとっては最も思い入れのある部分です。

 1.2m躯体が張り出し、そこから1.2mの庇が伸び、雨のかからない駐車エリアを確保しています。

 当初は、2.4m全て躯体が張り出す設計にしていました。

 しかし、それを支える鉄筋量とコンクリートが大変多くなり、何度も仕様変更をしましたが予算に収まりませんでした。

 最終的には現在の案を考え、設計を全てやり直したのです。

 感動がどこにでも落ちているはずはありません。大概は、大変の後ろにあるものです。

 ようやく内部写真も撮れました。この家の物語を世に伝え、評価を問うてみたいと思うのです。

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