原寸

 現在進行中の現場に「Ohana PROJECT」があります。

 昨日の午前中は雨でしたが、八尾にある鉄工所へその鉄骨を見に行きました。この辺りも工場が密集しているエリアで、物作りの街なのです。

 図面が手書きの時代は、この「原寸検査」と呼ばれる作業が必須でした。それがCAD化されて省略できるようになったのですが、若いスタッフは見ておくべきだと思ったのです。

 私の実家は1階が仕事場でした。クレーンのある風景は懐かしく感じます。

 クレーン下までの高さ8m、奥行き22m。

 3階建てくらいまでなら、ここで加工を済ませ、現場では組むだけと言っていました。

鉄骨造の場合、柱や梁の加工は、多くが熟練工による手仕事です。

 柱の端部は溶接する面積を確保するため、斜めに削ります。

 これを開先(かいさき)加工と呼びますが、削ったばかりの鋼の断面は本当に美しいのです。

 素材本来の色は、何にも替え難い説得力があります。

 柱の頭部には梁を繋ぐブラケットと呼ばれるユニットが溶接されます。

 「Ohana」の中で一番複雑なブラケット。見方によってはアートです。

 創造という行為は、人の頭の中から出てくるもので、本来アナログなものです。

 アナログなものをデジタル化して縮尺をかけて図面で表現する……。

 CADで図面を描いていると、何をしているのか分からなくなる時があるのです。

 大きさを知るには、現物を見るのが一番です。また実物を見ないと、鉄の重さ、硬さも分かりません。

 そう考えると人の目は本当に良く出来ています。触らなくても見ただけで、この鉄のユニットが軽いものと感じる人はいないはずですから。