WBC連覇 誇らしく思う日本人として

 一昨日はWBC(ワールド・ベースボール・クラシック)決勝戦。見事、日本の連覇で幕を閉じました。私が振り返るのも何ですが、興奮さめやらぬ一人として。

 決勝の視聴率は36%。私の事務所でも、テレビで応援しました。

 3対2で迎えた9回裏。日本はダルビッシュにマウンドを託します。しかし韓国の粘りは強烈で、2アウトを取ったものの、1、2塁のピンチが続きます。ここで韓国は執念のレフト前ヒット。あと一歩のところで優勝がスルリと……。しかし、続くサヨナラのピンチをよく凌ぎました。

 延長戦はどう言っても先攻が不利。日本は是非とも早いうちに決着を着けたいところです。早速10回表にチャンスがやってきます。

 先頭バッターの内川がヒットで出塁。送りバント、岩村のヒットで1アウト1、3塁。代打は小技の効く川崎。絶好のチャンスでしたが、あえなく内野フライ。ため息が残る中、イチローの登場です。

 途中、岩村が2盗して2アウト2、3塁に。普通なら歩かせるこの場面で、韓国は勝負を選択します。試合後のコメントで、ベンチは勝負を避ける指示だったそうですが、そのコメントが必要だったかどうか……

 韓国バッテリーは早々に2ストライクまで追い込みます。速球をファールで粘ったイチローは、沈む球をセンター前に糸を引くよう打球。一挙に2点を勝ち越しました。

 続く10回裏。1人のランナーを出すも、ダルビッシュが抑えて連覇の偉業を成し遂げたのです。

 ずっと話題になり続けた不振のイチローもこの日は4安打。最後の最後はやってくれました。MVPは3勝負けなしの松坂。本人もコメントしていましたが、私なら岩隈、中島、青木あたりをあげたいところです。それでも数字上、妥当なところが逆に凄いとも言えますが。

 WBCの魅力は、超一流の選手が真剣であることに尽きると思います。

 例えば、ピンチの場面で内野手がマウンドに集まった時。通常のシーズンなら談笑している場面もあります。しかしこの大会ではそんな場面は見られません。皆が熱い眼差しで檄を飛ばしているのです。

 国を背負い、後が無い状況で、世界一を目指すという目標が、アスリートの心をかき立てるのでしょう。その姿は美しく、優勝を決める瞬間は、観る側にもビリビリと緊張感が伝わってきました。テレビ解説の清原和博は「僕も23年間やってきたけど、こんな場面は見たことがない」とコメントしていました。

 もうひとつ上げるなら、刹那感と言えば良いでしょうか。負ければチームは解散です。その先のない感じが何とも感情を刺激します。ショートの中島は「もっと一緒にやりたいという思いもある」とコメントしていました。

 チームワークが大切な団体競技で、一ヶ月で結束し、世界一になった日本代表。各選手の能力が一番ですが、根底には「和をもって貴しとなす」という精神があったのかもしれません。

 原監督は帰国後の会見で「スタートした時、金色や茶色だった髪が自然と黒くなったし、長い髪も短くなった。侍には、礼儀、礼節があると1つになってくれた」とありました。金髪が駄目とは思いませんが、それより大切な関係があるとしたら、それは幸せな事だと思うのです。

 この個人主義の時代に、野球は日本が世界に発信出来るスポーツなのかもしれません。

 最後に、今大会でもその存在が唯一無二で有ることを証明した松坂とイチロー。その言葉を再度転記しておきます。

松坂の座右の銘

 「目標がその日その日を支配する」

イチローの言葉

 「体がでかいことにそんなに意味はない。僕は見てのとおり、大リーグに入ってしまえば一番ちいちゃい部類。日本では、中間クラスでしたけども、大きな体ではない。そんな体でも、大リーグでこういう記録を作ることができた。これだけは、日本の子供だけではなく、アメリカの子供にも言いたい。

 『自分自身の可能性をつぶさないでほしい』――と。

 あまりにも、大きさに対するあこがれや、強さに対するあこがれが大きすぎて、自分の可能性をつぶしてしまっている人がたくさんいる。そうではなくて、自分自身の持っている能力を生かすこと、それが可能性を広げることにもつながる」