池を望むということ

 今年の9月から、『アトリエmの現場日記』として建築、特に現場については別の日記にしました。

 区分けしたのであまり書いていなかったのですが 「池を望む家」が間もなく完成します。

 どの作品とて、簡単に進んだ事はありませんが、この現場もなかなかに苦心した、別れるのが寂しい現場になりました。

 その名の通り、家に向かって突き出すリビングが一番の特徴ですが、水面というは本当に良いのものです。

 嵌め殺しの大きな開口から池を見ていると、まず飽きません。

 カメが頭を出したり、鳥が水辺に留まっていたり。生物が見えなくなっても、風が吹くと水面は折々の表情を見せるのです。

 風の無い日は空と雲を映しこみ、風の強い日は、まるで何かが走ったように、一部だけが波立ったり。水というものは非常に繊細で、敏感なものだと改めて認識しました。

 その風景を見ながら暮らすのは、多分幸せで、心を穏やかにしてくれだろうと思います。

 元々この敷地は大きな寮が建っており、撤去後いくつかに分割して売り出されました。「池を望む家」の隣地は(隣も池を望む家ですが)、現在でこそ工事が始まりましたが、2年近く空き地のままでした。

 私のクライアントは、初めて事務所に見えた時から、この地と、ガケの敷地を新居の候補にしていました。クライアントは、とっても変わった人かと言うと全く違い、非常に温厚で常識ある素敵なご夫妻なのです。

 では、何故この地を選んだのか。新居に対して、純粋な夢を持ち、真っ直ぐだったのだと思います。

 高低差のある池に面すれば、素晴らしい眺望を得れるのは当たり前と言えます。しかし、その土地を選ぶには勇気が要ります。選ばない理由を探せば、いくらでもあると思うからです。ドラマ
ティックに言えば、全てはその勇気から始まったと思うのです。

 総括していますが、まだ完全に終わった訳ではありません。今週土曜日、最終検査をする予定です。最後にひと頑張り頼みます、T建築。