この土地を買う、買わない

 この日曜日、奈良へ行っていました。

 以前、建築相談に来所した夫妻から、メールがあったのです。

 「近くに手頃な土地が見つかったので、一度見て貰いたい」という内容で、相談の際もリフォームにするか、新しい敷地で新築するか迷っているとの事でした。
 
 詳細は控えますが、金額的には納得できるが、幹線道路と線路が近いというので迷っていたのです。まずは自宅を見せて貰い、その後敷地へ向かいました。

 農地を開発し、8区画が売りにでる予定です。土地購入の相談があった場合、伝えるチェックポイントは以下のようなものです。

1. 都市計画上の用途地域の確認。→当然ですが、法的に建築行為が可能な場所かどうか。
2. 接道の長さ、種類、巾員の確認。→基本的に4m以上の道路に接していないと建築行為は出来ません。
3. 上下水道、ガス、電気など、ライフラインの確認→特に上水道の引込管が無い、または細い場 合、結構な費用が掛かる場合があるので要注意。
4. 敷地の地盤強度→軟弱な地盤は改良が必要。その場合は、金額を把握しておく。(農地転用は軟弱な可能性が高い) 
5. 敷地環境の確認→時間帯や曜日を変えて見に来る。出来れば近所の人の話を聞いてみる。住人だからこそ分かる情報が聞ける。

 土地に抵当権が設定されていない等は勿論の事として、ざっとまとめるとこのような感じでしょうか。

 もう一点、実際の金額交渉になった時、焦らない事も重要だと思っています。一般の相場より、高く買うのは問題ですが、凄く得をしようという考えを捨てれば、冷静な判断が出来ると思います。

6. 急かされた場合は断る→急かしたり、焦らさて、というのは物を売るときの常套手段。悪意はなくともよく起こる状況という事を頭に入れておく。

 ここで始めの話に戻ります。

 線路が近くにある敷地は、過去に設計した経験があります。

 よって、20mから30mくらい離れれば大丈夫という仮説を立てました。

 区画によってはクリア出来そうです。

 もう一つは、すぐ横の幹線道路。この距離感は経験がありません。

 経験で言うと、やはり30m以上離れていれば、概ね大丈夫だと思います。しかしすぐ横となると……まずは敷地に目印をつけました。

 その場所に立ちながら、昼間の音の大きさがどの位のものなのか、真剣に聴いてみます。候補の区画では、丁度高架になっており、それ程でも……という気もします。

 小一時間、辺りをウロウロし、ご自宅に戻りました。「で、どうでしたか」と勿論問われます。

 もう一度過去の経験を思い起こしてみると、国道に面した家を思い出しました。母の実家です。

 香川県にある金毘羅さんへ向かう国道沿いにあり、電気屋を営んでいます。今でもその店舗兼住宅はあります。盆、正月に帰った時、私達は2階に寝ていたのですが、大型トラックが通ると、揺れを感じました。

 寝れなかったという程の事はありませんが、他の選択肢があるなら、買いではないと判断。その考えをもう一度整理し、夫妻に伝えたのです。
 
 明けて火曜日、お礼の言葉と共に「今回の土地は、見送ることにしました」とメールがありました。

 新築を楽しみにしていると聞いていたので、複雑な気持ちもあります。どの答えが一番正しかったかは分かりません。

 しかし、現実を公平に見て、最も強い動機に従う、が私の哲学です。悔いはありません。

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