地頭

 昨年の後半は「タイタンの妖女」カート・ヴォネガット・ジュニアに手こずっていました。

 非常にシニカルでコミカル。読みごたえもあり面白かったのですが、何故かペースが上がらず。何か月も掛かってしまいました。

 一番最近読み終えたのは「国家の罠―外務省のラスプーチンと呼ばれて―」。

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 ある方に勧められたのですが、あっと言う間でした。

 小泉内閣成立の際、外務大臣に就任したのが田中真紀子。「外務省は伏魔殿」の言葉に象徴される、外務省との確執劇がありました。丁度そんな時期の話です。

 外交官、佐藤優は対ロシアの専門家。特殊情報(インテリジェンス)を担当するのですが、これはいわゆる諜報活動です。

 同じくロシアに強いパイプを持つ鈴木宗男議員のブレーンとして関係を強めて行きます。

 2000年までに北方領土問題を解決し、ロシアと平和条約の締結を目指すという、共通の目標もありました。外務省内にもそんな空気があったとありました。

 しかし、政争、省内の権力抗争に巻き込まれ、筆者の言う「国策捜査」で偽計業務妨害、背任の容疑で逮捕されるのです。

 いわゆる「鈴木宗男事件」、国後島における「ディーゼル発電所」の件が主な容疑です。

 その後500日を超える拘留生活の中、検察との対決。検察官との取り調べの攻防。そして何故か育まれていく検察官との信頼関係。

 真相は分かりませんが、処女作であるにも関わらず、緊迫感が伝わってき、説得力もありました。拘留生活を楽しんでいる感さえありました。

 なかなか見えにくい裁判というもの。外交官という仕事。更に諜報活動のこと。初めて聞く事も多く刺激的でした。

 鈴木宗男が代議士を指して「地頭が良い」という表現が使われています。佐藤氏の造語のようですが、雰囲気はよく分かります。

 知っている、理解できるではなく、伝える事ができる、説得力がある、というのが私の「地頭が良い」像でしょうか。高学歴ではないが、このような人は実際にいます。

 インテリジェンスの世界では「秘密情報の98%は公開情報の中にある」という下りがありました。はっきりとは書いていないが、ヒントはちりばめられているという事です。

 しっかり新聞を読みこんでいれば、それらが見えてくる。行間を読むのが、諜報活動というのは映画と違うものの、非常に面白い話です。

 続けて「自壊する帝国」も読み始めたのですが、今頃になって、著者がかなりメディアに露出していることが分かってきました。

 新聞は読みますが、テレビのニュースや情報番組は見ないので全く分かっていなかったのです。その分新鮮ではありましたが。